太田述正コラム#3647(2009.11.15)
<皆さんとディスカッション(続x658)>
<βΒΒβ>(「たった一人の反乱」より)
≫2ちゃんで本件についてイチャモンをつけたヒト≪(コラム#3645。太田)
 俺だけど、俺は緊急停止スイッチという意味の「キルスイッチ」という言葉に慣れ親しんでいたので、安易に「殺人スイッチ」と誤訳したんだな、と思った次第。
≫脳天気~(略)≪(同上)
 だったらまだNobbyの頑張りが足りないよ!つーか実戦をゲームのように見る、って、ある意味当たり前ではないのか。
 自分が参加した訳でもないし、Nobbyみたいに防衛省に勤めた訳でもないし。まして最近は戦争がゲーム化してるということだし。
 一市民の分際で実戦を知ってる風に話したらそれこそ失礼ではないのか。
 それにしても、「レーダーを殺すために組み込まれた殺人スイッチ」って冗長じゃない?
 つか、「switch」が「swith」になってるよ。うっかりさん。
 「Nobby」って便利だなぁ。
<太田>
 ツイッターでもswithと書いてた。
 どうも、私のクセみたいね。
 ついでに、同じコラムの終わりの方で、オデュッセアス・エリティスのノーベル文学賞受賞が1797年になってた。1979年のミスプリです。
 ブログは両方とも直しといたよ。
<ΓΓΒΒ>(同上)
>「キルスイッチ」という言葉に慣れ親しんでいた<(βΒΒβ)
 アクセルやクラッチを知らない人は滅多にいないだろうけど、さすがにキルスイッチはマイナー過ぎる専門用語じゃね?
 原文は、’a built-in kill switch to shut down the radars’ だけど、シャットダウンやビルトインは日本語辞書に載るレベルだけど、果たして外来語としてどれくらい認知されているか…?
 「レーダーをシャットダウンするためのビルトイン・キルスイッチ」がすっきりするけど、各用語の注釈を入れないと分からん人も多いだろうよ。
 訳文の良し悪しは、日本語になっているかどうかだから、殺人スイッチでも問題ないと思うぞ。
 日本語が分からん状態の訳書って(例えば哲学や思想系)、結構見かけるでしょ。
シャットダウン【shutdown】
コンピューターを使用した後に、システムを停止する操作のこと。物理的に電源を切ることとは異なる。」
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3&stype=0&dtype=0
ビルト‐イン【built-in】
[名](スル)はめ込むこと。作り付けであること。「壁面に―された家具」
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%83%93%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%B3&stype=0&dtype=0
<近藤隆雄>
 <コラム#3645を読んだけど、>サスガ元官僚のDie Hard. 煙幕のはり方は見事!
 それに何十年ぶりか、元気そうで何より。
 小学校に君が編入してきた時はピシッとした白いシャツ、すてきな茶色の皮カバン、来賓が来る度にピアノを弾かされてたっけ。
 その次に見かけたのは六本木のニコラスで、部下数人にランチを食わせていた。
 地味でよれた背広姿、フロシキに包んだ大量の「機密?」書類。
 完全に日本の官僚に変身していて驚いた。
 ところで、これだけ面白く重要な内容のコラムは、日本中どこにもありません。
 また、若い世代の中にこれからの日本を担うリーダーを育てたいという志も僕と同じです。
 是非このコラムをより多くの読者の注目する有力なものに育てて欲しい。
 それには一つ課題があります。
 ディスカッションの質を、太田君の書くコラムと同じレベルの、読むに値するものに高めていただきたい。
 主語のない、完結しない、口語的文章とも呼べない断片的な2チャンネル的なしゃべり方は、単なる「共鳴」であって「議論」ではない。たんぼのカエルの合唱にすぎません。
 例えば、<皆さんとディスカッション>コラム#3608(2009.10.27)冒頭の、太田氏を含む、数名のやり取りは、とても<ディスカッション>と呼べるものではありません。
 以前もそうでしたが、せっかくのこのコラムが、軍事政治オタクの雑駁な駄弁りの場に堕すならば、志ある読者は離れていきます。
 ≪ディスカッション≫「議論」と言うならば、論理的一貫性、主語、述語だけでなく、なぜ、から帰結まで、自論を簡潔に述べること。
 受け手は論旨を更に発展させるか反論する。
 それを重ねることによって、問題の多面的側面が明確になり、本質的な理解が共有されます。
 参加者は、典拠だけでなく、文章の完結、論旨の一貫と最低限の敬語を使用することが、このコラムに期待を寄せる一般読者への最低限のマナーです。
 太田氏も、迎合せずにディスカッションのレベルを上げ、それに見合うものだけを厳選してコラムに採用していただきたい。
 Nobbyの今後の発展と活躍を期待します。
<太田>
 エールを送っていただき、まことにありがとう。
 これで止めときゃいいんだけど、悪いクセでいわでもがなのことを言います。
 「地味でよれた背広姿」というのは、恐らく君の官僚についての先入観が邪魔をして見誤ったか記憶違いをしてるんじゃないかな。
 私は、役所時代、背広は、亡くなった母親が(これも今はもうなくなった店だけど)銀座の某紳士服店で生地を選び、オーダーメイドで仕立ててくれたものしか基本的に着ていなかったはずだ。
 (念のためだが、代金は私が払ってたからね。)
 もっとも、こういうものは、必ずしも贅沢とは言えないって痛感してるね。
 だって、母親が亡くなってから背広をほとんど買わなくなったけど、それまでの背広の使い回しでほぼ十分だったし、何十年も経った今でも当時の、特にカジュアル用に造った背広上着は愛用してるもんね。
 もう一点。
 君の言う欧米的議論の仕方はもちろん重要だし、私も基本的にはそのような議論が望ましいと考えているんだけど、コラム#3608冒頭の「議論」も、改めて読み返してみたところ、そう悪くないんじゃないかなあ。
 これも、私が時々言っていることだが、日本には連歌的「論述」、連歌的「議論」の伝統があり、これはこれで興趣深いものがあるんだよ。
 もちろん、連歌にもできのよいのと悪いのとがあるけど、君が持ち出した例は、できのよい方だと思うよ。
<Ueyama>
 最近時間もとれず、仕事を適当にこなして、時間が出来たら酩酊しながら映画見たり音楽聴いたり活字読んだりで、全然太田コラムを真剣に読むって時間がとれてないんですけど(軽い鬱病だと思いますけど(笑))、なんとなくディスカッションだけは目を通してます。
 なんだか、太田さんのことを真剣に支援しようとしてくれている方が、(Ueyamaなんて怠惰な人間でなくて(笑))昔よりずっと増えてる気がしますね。
 それって、いわゆる「太田テーゼ」がいまいち広まらない、もしくは読者増がそれほど顕著になされないってことなんか帳消しにしてしまうような、重要なことじゃないかと思うんですね。なんとなく。
 すいません、酩酊ついでに余計なことを書いてしまいますが、
≫・・・以上は、客観的「分析」なのだけど、主観的には、「独立」か否かで、政権再編が行われ、「独立」を指向する党が多数を占めて日本が米国からの「独立」を果たし、その後、その党の「独裁」が続いて欲しい、と切に願っているわけです。≪(コラム#3496。太田)
 この「独裁」というのはあくまで中期的な話でしょうか? 
 もしそうでない場合、太田さんはアクトン卿のPower tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.という言葉に何度か言及されていると記憶しているのですが、「独裁」は「専制的権力」ではないのでしょうか? 
 太田さんは自民党に対して「独裁」であるがゆえに「専制的権力」であった、と主張されていたわけではない、ということでしょうか?
<太田>
 独裁に括弧がついていることにご注意。
 私の「その党」のイメージは、綱領のなかった戦前の大政翼賛会に近いんです。
 当時だって、無所属議員がいました。
 こんな党が、戦前と違って立法府が国権の最高機関になった戦後といえども、本来の意味での専制的権力をふるえるはずがありません。
 「その党」に関しては、無所属のほか、共産党も批判勢力として存在するはずですしね。
 戦後日本特有の政官業の三位一体的無能・腐敗の根本的な原因は、日本が属国であったがゆえのガバナンスの欠如にある、というのが、ご承知だと思いますが、私の見解です。
 天下りの廃止、更には願うらくは日本の「独立」がなった暁には、政官業の三位一体性は粉砕されるでしょうから、後は、検察と裁判所に頑張ってもらえば、世界共通の政、官、業それぞれの腐敗は、日本では我慢できる程度まで減少することでしょう。
 当然のことながら、「その党」の中では、自民党華やかりし頃以上に派閥間での競争や足の引っ張り合いがあるはずですしね。
 ところで、近藤君もあなたも、どちらかというと、(しばらく経ってその大部分が公開されるところの)非公開コラムより、(最初から公開される)ディスカッション・シリーズの方を熱心に読まれている感じですね。
 (ディスカッション・シリーズにおける英語の壁の問題についてはここでは触れません。)
 最近の非公開コラムの質が落ちているとは思わないけど、スタイルには若干問題があるのかもしれません。
 原文を切り貼りして翻訳して提供する、というスタイルは、典拠を自分の言葉に直してコラムにするよりラクだからやり始めるようになったんですが、読者にとっては、よりハードルが高くなっているかもしれない、ということです。
 やや脱線しますが、ずっと、新聞等、とりわけ英米の新聞等に掲載された記事やコラムばかり読んでいるものだから、最近、必要に迫られて3冊の洋書を平行して読み出したところ、最初のうちは、長すぎる、まわりくどい、詳しすぎる、分かりにくい、と拒否反応がありました。
 新聞等に載る記事やコラムはその逆なわけだけど、インスタント食品ばかり食べているとまともな料理が賞味できなくなるということか、と反省することしきりです。
 というわけで(?!)、まことに勝手ながら、読者、特に有料読者の方々は、引き続き、ハードル走への挑戦を続けていただけないでしょうか。
 しかし、これじゃ、有料読者が目減りし続けるわけだよなあ。
 ああ、悩ましい。
<Midshipman>
 <コラム#3230>「米士官学校廃止の是非ディベート」<を読み>ました。
http://blog.ohtan.net/archives/51373664.html#comments
≫防衛大学校の根本的な問題点を指摘したにもかかわらず、いまだに全く議論が始まる端緒さえ見えません。≪(コラム#3230。太田)
 では、今の日本の士官養成はどうあるべきですか?
 例えば、海上自衛隊幹部候補生学校の防大出身者と一般大出身者を混成した教育等はどう思われますか?
<太田>
 私の意見は、拙著『防衛庁再生宣言』の中で推奨しているように、第一に、防衛大での軍事関係の座学は、(軍事だって歴とした学問だから)教科扱いにし、その分、卒業必要単位数を減らし、学生の負担を軽減すること、第二に防衛大を(軍事に限らず)指導者を養成する大学ととらえなおし、教科や訓練等を全面的に見直すこと・・そして、任官しないというオプションを明確に提示すること・・、第三に、防衛大を卒業した者は、幹部候補生学校を経ずにただちに任官させること・・幹部候補生学校は一般大出身者のためだけの学校とし、この学校在籍中の期間だけ、防衛大卒の人々に比べて任官を遅らせること・・、です。
 それでは、記事の紹介です。
 鳩山首相の対宗主国「外交」の舵取りは絶妙だね。
 不祥事で辞めるのは普天間問題を決着させてからでいいよ。↓
http://www.asahi.com/politics/update/1115/TKY200911140374.html
 そう。
 韓国が現在享受している自由民主主義だって、植民地時代の朝鮮半島の人々による日本の自由民主主義「に対する脅迫的模倣の欲望」に発してるんだよ。↓
 「・・・日本は、用語や談論に至るまで、東アジアの植民地社会での新女性の形成に直接的かつ強力な影響を及ぼした。著者は「植民地朝鮮の新女性は、普遍的近代性の指標というより、近代の過剰を再現した」と分析した。朝鮮の新女性形成は、文明化の談論と植民地併合がもたらした自己否定から出発し、西欧・日本の近代性に対する強迫的模倣の欲望を表現したという。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20091115000004
 米中の力関係は、決定的な転機を迎えたようです。↓
 ・・・during the Bush and Clinton years, China might release a few political dissidents on the eve of a visit by the president as a good-will gesture. This time, American officials say, they do not expect any similar gestures,・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/15/world/asia/15china.html?ref=world&pagewanted=print
 将来、自衛隊がドイツのように実戦任務に就いた時、日本国民は、「戦地」から帰還した自衛官にどんな風に接するのか、考えさせられます。↓
 ・・・<米国では、>In the Vietnam era, the divisions within American society over the war meant that returning soldiers in uniform faced epithets from protesters. But a consensus has since emerged that decision makers should take the heat for war policies, and young men and women in uniform should be supported for the risks they undertake on behalf of the country.・・・
 <一方、ドイツでは、>In July, Mrs. Merkel awarded four German soldiers who served in Afghanistan the first medals for bravery the country had given since World War II. In September, President Horst Kohler opened a memorial here in Berlin to all those who have died while in military service since 1955.・・・
 ・・・<ではあるけれど、>There’s no real empathy in Germany toward the soldiers who risk life and limb every day,・・・
 ・・・one basically leaves it in Parliament’s hands, and really wants nothing to do with it, and the soldier doesn’t get the moral support・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/15/weekinreview/15kulish.html?ref=world&pagewanted=print
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太田述正コラム#3648(2009.11.15)
<東欧の解放(その2)>
→非公開