太田述正コラム#3671(2009.11.27)
<皆さんとディスカッション(続x670)>
<サヨク>
 「『自分』」は存在するのか?」と問う主体として、すでに「自分」を前提にしてるように思えるタイトルですね(揚げ足取りと誤解しないで下さい)。
 「自己とは一個の他者である」とはランボオの言でしたっけ?
 今のぼくはには最もしっくりする言い回しです。
<太田>
 
 タイトルの中の自分にカギ括弧をつけてあるのが目に入りませんでしたか?
<δΒδΒ>(「たった一人の反乱」より)
≫明朝あなたの体を占拠する人物ががあなたとは違う誰かだと考えることはむつかしいかもしれないが、今から20年後にあなたの体を占拠する人物についてそのように考えることは全くもってむつかしいことではない。≪(コラム#3607)
 ボクの好きな諸星大二郎のマンガを思い出した。
 ある日、子供が変な生き物を拾ってきて遊んでいる。
 父親は不気味なその生き物を捨てろと命じるが、子供が一向に言うことを聞かない。
 仕方なく父親は子供の留守を狙って、その生き物を捨てに行くのだが、捨てに行く途中でその生き物が「オトウサン」と父親に呼びかける。
 なぜか、これは捨ててはいけないものだと悟った父親はその生き物を捨てれずに家に持って帰る。
 数年後、父親と一緒に暮らしている”子供”はその”奇妙な生き物”が成長したものだった・・・ってオハナシ。
<δΒΒδ>(同上)
 俺はコラム<「自分」は存在するのか(その1・2)>を読んでて、フランツ・カフカの「変身」が頭を過ったな。
 ある朝、ベットから起きたら自分が毒虫になってたという話し、下記は要約が載ってる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%89%E8%BA%AB_(%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%AB)
<秋の空>
 太田さんは『Ayn Randがいまだ大きな影響を米国で持っている』とおっしゃってますが、米国在住の者の感覚としては、現代米国イコールAyn Randといいたくなります。
 片田舎の大学でも芸術・建築関係のコンテストがあれば、Howard Roark (Rand の出世作、The Fountainhead の主人公)がどうしたこうしたというコメントや落書きが良く見られるますよね。
 Obama の医療保険制度改革に反対するワシントンのデモ・集会のプラカードにはAyn Rand Was Right(CATO Institute のEdward Crane 2007年の記事、
http://www.cato.org/pubs/policy_report/v29n6/cpr29n6-2.html
の題名をパックものか?)ヒラリー・クリントンは若いころにAyn Randに影響を受けたといわれていますが、
http://www.marginalrevolution.com/marginalrevolution/2009/11/ayn-rand.html
彼女を批判する論説もしばしばAyn Randに引っ掛けて行われるといった具合で、右も左も何かといえばAyn Randですよね。
 引用されているDebi Ghate の記事もAyn RandのThe Virtue of Selfishnesssそのもの。
 Howard Roarkならこんなくだらない記事書かないと思いますが
 最近、Ayn Randの身内以外の研究者・ジャーナリストによる評伝が二冊出て(Goddess of the Market: Ayn Rand and the American Right (Oxford University Press, 2009) by Jennifer Burns とAyn Rand and the World She Made (Doubleday, 2009) by Anne C. Heller)面白かったと思ったら、太田さんが(未公開)コラムを執筆されたのを発見して、もし公開されるのであれば、ぜひ読ませていただきたいです、楽しみです。
 ただ太田さんが The Ayn Rand Institute
http://www.aynrand.org
のことをご存じない(本当に?)のにはちょっと以外な感じがしました。
 家元のThe Ayn Rand Institute 以外にもThe Atlas Society
http://www.objectivistcenter.org/
やThe Journal of Ayn rand Studies
http://www.aynrandstudies.com/
は活発に活動してますよね。
 あとAyn Rand の小説ファンの紳士淑女の出会いを請け負うサービスThe Atalsphere
http://www.theatlasphere.com
なんてのもありますが・・・いかがでしょう?
<太田>
 なかなかいいじゃないですか。
 皆さんに、半年2~3篇のコラム書いていただけりゃ、名誉有料会員にしますよ、と申し上げてるんですが、あなた、いかがですか。
 記事の紹介です。
 まず、事業仕分けがらみのものから。
 昨日書いたように、こういったものを、事業仕分けを始める前に、あらかじめ統一査定方針として、仕分け人達に示すべきなんだよ。↓
 「・・・これまでの議論を通して、霞が関の役所が配下にある独立行政法人や公益法人に多額の基金を積み立て、天下りした役人OBに高額の給料を支払っていた仕組みが明らかになった。・・・
  「モデル事業」として始まった仕事が目立った成果を挙げないのに、何年たっても終了せず、実質的に恒久化されている例も・・・次々と明らかになった。一度手にした予算は翌年度以降も手放さない役所仕事の悪弊である。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2009112702000071.html
 科学技術と軍事安全保障の関係についても、事業仕分けの関連で昨日言及したが、ここに登場する2番目と3番目の科学者は人非人だ、と言いたくなるね。↓
 「・・・マラリアの感染予防は・・・はアフリカの途上国なども悩む人類共通のテーマで、軍が蓄積しているノウハウはワクチン開発などに役立てられる。現実に四国地方の大学や、4大学の研究者が設立したバイオ系のベンチャー企業は、米軍傘下の研究機関と協力した。・・・
 半導体センサーを研究している西日本の国立大学教授。豪州での学会発表を聞いたという米軍関係者が突如、制服姿で研究室を訪問し、億円単位の資金提供を申し出た。危険な化学物質の検出に高感度なセンサーを応用できないかという着想だったらしいが、この教授は即座に拒否した。
 (→化学兵器がテロリストによって米国内等に持ち込まれて米国人等の民間人が大量死してもいいってのね?(太田))
 リハビリテーションなどを支援するロボットを研究している関東地域の大学教授のもとには、米国から航空券が届いた。研究内容を聞きたいという話だったが、現地を訪れてみると軍関係者から研究支援を提案された。米国では軍の研究費がロボット研究に投じられることは普通だが、日本ではあり得ない。自身の研究理念にも反すると、同教授は丁重に断り、無事帰国した。
 (→日本の安全保障をも担うことになっている米国に、ロボットじゃなく、生身の人間で常に奉仕せよ、とアンタは言い放つわけ?(太田)・・・」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec091125.html
 防衛省プロパーの話もいくつか取り上げておきましょう。
 自衛隊の編成装備は「有事」を前提として定められていることから、当然、自衛官の数は余裕をもっていなければならない。
 だから、自衛官の数を切り込もうと思ったらいくらでも切り込める。
 しかし、それをやるのなら、編成装備そのものをまず縮減しなければ、論理的一貫性がない。↓
 「・・・防衛省は今年度と同じ実員の水準を維持する必要があるとして、民間への事業委託で削減する人員と同じ3498人の増員を要求した。これに対し、仕分け人からは「他省庁が人員削減を進める中、民間委託による減員を埋め戻すような増員は認められない」などと指摘され、予算計上見送りとなった。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091126-OYT1T00544.htm?from=yoltop
 ↑補足すると、余裕があるからこそ、本来自衛官にやらせるべきではないことまで、自衛官に事実上やらせてきたということ。(換言すれば、事務官でもよいこと、部外委託できることを自衛官にやらせてきたということ。)それを正そうとする動きに水をかけるのなら、繰り返しになるが、編成装備そのものの縮減をまず図るべき。
 実際問題として、仕分け人達にそう言われりゃ、中共から備品や被服を輸入しなければならなくなるが、ホントにそれでいいのかってこと。
 また、そんなことマジにすりゃ、内局幹部や将官クラスの(他省庁横並びの)天下りもさることながら、それ以外の自衛官の再就職先も大幅に縮減されちゃうことになる。
 そうなった場合、本来の仕事をさせてもらえない、いわば飼い殺しの自衛隊なんて職場に、若年定年制なのに自衛官として入ってきてくれる人がどれだけいるのかよってことさ。↓
 「・・・政府の行政刷新会議は26日午後、事業仕分け8日目の作業を続行し、自衛隊の備品購入(要求額271億円)や制服などの被服購入(89億円)について予算の削減、銃器類・弾薬購入費(118億円)は「見直し」を求めた。いずれも調達ルートの多様化など経費節減の工夫が必要と指摘した。
 備品では、同じ製品でも陸自、海自、空自が一括購入せず、別々に発注していることが問題視された。制服は国内製造にこだわらず、海外からの調達も検討すべきだとの意見が出た。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091126/plc0911261649013-n1.htm
 上述したように、自衛官の数には余裕があるから、実質的な再就職斡旋業務を、それを陸海空自衛隊が自らやることは違法なのに、各自衛隊で、大勢の現役の自衛官がやっているのが実態。
 自衛隊援護協会は、(実質的には何もやっていないのに、再就職斡旋業務をやっているというタテマエで、)かかる脱法行為に合法性の衣を纏わせるための機関であり、同協会自身が、旧労働省幹部と内局幹部や将官クラスの天下りの受け皿になっている。
 つまり、いくらでも同協会への補助金は減らせるわけだけど、根本的な問題に取り組まずに、そんなことやってどうするんだってこと。↓
 「・・・自衛隊援護協会による退職予定自衛官に対する無料職業紹介事業への補助金で要求額は3億円。ハローワークの活用などの検討を求め、予算削減と判定した。早期退職制度拡充などで初級幹部(尉官)に高年齢者が多い自衛官の年齢構成の見直しも求めた。・・・」
http://www.sanin-chuo.co.jp/newspack/modules/news/article.php?storyid=1012994020
 ↑こういった話を、公開の場でできるわけないって納得してくれたかな?
 公開だろうが非公開だろうが、民主党には安全保障政策がなく、しかも、政権を奪取したばかりなので、いずれにせよ、お前サンの言うような、そもそも論に取り組むことは不可能だって?
 だから、まずは、諸君でも取り組める、内局幹部/将官クラスの天下り問題に取り組んだらどうなんだい?
 菅サン、お前もか!↓
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091127/crm0911270700003-n1.htm 
 19日のディスカッションで、空腹を覚えながら就寝する米国人の数の増大、という調査結果をご披露したところです。(コラム#3656。なお、コラム#1155でも同じ問題を取り上げている。)
 ご紹介はしなかったけれど、この調査のやり方や、調査結果の表現に疑義を唱えたコラムが掲載されていました。↓
http://voices.washingtonpost.com/postpartisan/2009/11/are_americans_really_food_inse.html?hpid=opinionsbox1
 ところが、オバマ大統領自身が、この調査結果に言及しつつ、もっと「過激」な発言をしたため、改めて大げさだと軽くオバマを批判する記事が出ました。↓
 ・・・”As American families prepare to gather for Thanksgiving, we received an unsettling report from the U.S. Department of Agriculture that found that hunger rose significantly last year,” President Obama said last week. He cited a Department of Agriculture survey showing that 17 million Americans were “food insecure” in 2008, compared with 13 million in 2007.
 But experts say being “food insecure” is not the same as being hungry.・・・
http://www.latimes.com/news/nation-and-world/la-na-hunger27-2009nov27,0,2717114,print.story
 ちらほらと耳にしていた、朝鮮戦争勃発時の韓国での虐殺事件が、改めてクローズアップされました。↓
The South Korean military and police executed at least 4,900 civilians in the opening months of the Korean War for fear that they were Communist sympathizers・・・
 ・・・at least tens of thousands・・・were killed without trial in the desperate first weeks of the war, when South Korean and United States forces were retreating.・・・
 But it said it could identify only 4,934 victims and could not confirm who had ordered the systematic, nationwide killings, though・・・it came from the “top” of the government. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/27/world/asia/27korea.html?ref=world&pagewanted=print
 中共の人権事情、ほんのちょっぴり燭光が見えました。↓
 (こういう話、メルマガの「台湾の声」、絶対取り上げないんだよな。台湾「独立」には私も賛成だけど、そろそろこのメルマガとるのやめるかなあ。林建良さん、私のコラム読んでます?)
 In a rare dose of candor that contradicts past official statements, a state-run magazine has published an article that details a secret network of detention centers used to prevent aggrieved citizens from lodging complaints against the Chinese government. ・・・
 “The fact that the report focuses on the issue in a substantive and detailed way gives us hope that the Chinese government might end its longtime denial of the existence of black jails and move toward closing them down, liberating the detainees and bringing the perpetrators to justice,” said Phelim Kine, a Hong Kong-based researcher with Human Rights Watch.
http://www.nytimes.com/2009/11/27/world/asia/27china.html?ref=world&pagewanted=print
 同衾するか否か、それが問題だ。↓
 ・・・ women need more rest than men, go to bed earlier, feel cold there more often and are more inclined in the morning to want to sleep in, though they also tend to be the early risers.
 Men, on the other hand, are better at keeping a constant body temperature, which is one reason why the experts in Vienna say men are so well-suited to warming their partner up. Men are typically night owls, snore more often and are better at sleeping through disturbances. Most men are blissfully unaware that their wives wake up a lot and have sleepless hours — and continue to slumber unperturbed at their sides. Differing hormonal activity in men and women also translates into asynchronous periods of light and deep sleep, which happens to be something women have more trouble coming to terms with.
 Under these circumstances, it’s hardly surprising that men claim to sleep more soundly when their partner is in bed than when she isn’t. By contrast, women say they are woken up more often by their partner, either because the noise emanating from the other side of the bed has become intolerably loud or because the unequal weight distribution on the mattress bounces them around as if they were on a trampoline whenever their male bedfellow rolls over (which he does, by the way, up to 30 times a night).
 Researchers also say that the fact that women have a harder time relaxing at night has something to do with the still typical division of household responsibilities within our society. Mothers, who predominantly play the role family caregiver — that is, satisfying children’s needs, caring for the elderly and worrying about teenagers that don’t come home on time at night — pursue their familial “air traffic control” duties at night as a way of preventing conflict and accidents. And it’s not like they can just flip a switch and relax.
 With age, these gender-specific sleep patterns only get more pronounced. Women suffer from restless leg syndrome, while men gradually lose the ability to sleep deeply. Those who like to take naps during the day find that they can’t fall or stay asleep at night. And, despite the fact that most men are amazingly impervious to their own bodily odors, women aren’t. ・・・
http://www.spiegel.de/international/zeitgeist/0,1518,663472,00.html 
 知力の高い躁鬱病患者は、一流の芸術家たりうる、といういい例です。
 だけど、周りの人は大変ですよねえ。↓
 「・・・躁うつ病は、極端に気持ちが高ぶって落ち着きを失う躁状態と、憂うつで無気力感にさいなまれるうつ状態が交代で起こる。ただ、安定期には、これといった症状はなく普通の状態だ。
 「5か月の入院中、調子が悪い時以外はすることもなく、暇で暇でしょうがなかった。それで、何か文章を書いてみようと思いました」・・・
 <こうして小説を書き始めた絲山秋子は、芥川賞を受賞する。>
 ・・・<躁の時、>「これ以上ないほど働きました」。会社では1か月間に回る営業先を「目標100件」としていたが、月140件の訪問を3か月も実行。営業中は気分が高揚し、2台目の自家用車を衝動買いした。そんな8月のある朝、わけもなく突然、「死ぬなら今日だ」との思いにとらわれた。躁(そう)の時の自殺衝動は、思い立つとためらいもなく実行に移してしまうから、死に至る確率が高いそうです。・・・」・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091126-OYT1T00544.htm?from=yoltop
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=16414
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=16839
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=17229
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=17475&from=knav
<FUKO:英文記事和訳>
 ちょっと量が多くなってしまいました。(太田氏の記事抜粋自体が凝縮されたものなのでどうしても全文訳してしまいます)・・・
 括弧の使い方はコラム上の使い方に準じています。
コラム#3667(2009.11.25)より
>子供にはどろんこ遊びをさせようね。↓
 「あまりに清潔でいることは肌の治癒能力を弱めうることを発見した科学者によれば、子供は泥だらけになることを許されるべきである。
 幼い子供時代にバイ菌にさらされることによって、身体はアレルギーに対する準備をする。
 多くの科学者が、先進国における最近のアレルギーの流行は、我々の、清潔さを求める強迫観念が原因だと考えている。」
>科学者の信心ぶりがこんな調子じゃ、改めて、米国は病んでいると思わざるをえないなあ。↓
 「今年の5月と6月にPew Research Center〈米国の非営利調査機関〉によって行われた、米国科学振興協会のメンバーへの調査によると、51%という多数の科学者が神もしくは崇高な力(higher power)を信じていると述べた。一方で、41%の科学者はそれらを信じていないと述べた。・・・
 ・・・42%の科学者は個人的な神を信じ、同じく42%の科学者は信じないと述べる・・・
 しかしながら、科学界は一般大衆よりはずっと宗教的でない。
 Pewの調査では成人の米国人の95%が、神や崇高な力を何らかの形態において信じている・・・
 今年のより早い時期に行われたPewの別の調査によると、科学者の87%が、生物は自然のプロセスによって徐々に進化したと述べる一方で、一般大衆の32%しかこのことを本当だと信じていないということだ。・・・
 米国のほぼ半分の科学者が、自らを、宗教と結びつきはなく、無神論者や不可知論者、または特には何の宗教にも属していない者だと説明するのに比べ、一般の米国人では17%だ。・・・
 ・・・より若い(18歳から34歳)の科学者たちは、より年上の科学者たちよりも神や崇高な力を信じる傾向にある。・・・」
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太田述正コラム#3672(2009.11.27)
<米国の世紀末前後(続々)(その3)>
→非公開