太田述正コラム#3925(2010.4.3)
<皆さんとディスカッション(続x792)>
<MS>
 遠江人さんへ。
 オフ会幹事団のMSです。
 遠江人さんとは、過去に(数年前に)何度か掲示板でやりとりをさせていただいこともあったと思います。ご無沙汰しております。
 Ueyamaさんと太田さんのやりとりのとりまとめ、ありがとうございます。まとめを読んでみて、改めて思い出したのですが、ひとつUeyamaさんに申し上げたい(ご覧になっているかどうかわかりませんが)ことがあります。
 私は、Ueyamaさんが、映画評論企画に関する批判や文学評論に関する提言を、<ご自身も出席しておられた前回の>オフ(講演)会で行わず、後になって太田さんに「提言」したことが非常に不満です。
 オフ会は、太田さんの講演だけでなく、そういった提言等を話し合う場でもあり、そのための時間も設けられており、幹事団ではそのような提言を参加者が出しやすいための雰囲気づくりも心がけているつもりです。
 特に、文学評論の提言はともかく、映画評論企画に対する批判は、オフ会で、その場におられたオフ会幹事BernieさんとTTさんに、ぶつけるべきではないでしょうか?
 彼らが映画評論企画の発案者兼担当であることは、コラムを読んでいれば(映画評論企画の存在を知っている方なら)わかるはずです。また、他の読者の方の意見も聞けたでしょう。
 オフ会という読者同士が顔を合わせて議論できる貴重な場所で提案をせず、すでに存在する企画の担当者を無視したまま、代わりに自分の提言を行うというのは、失礼ではないでしょうか?
 さらにいうと、Ueyamaさんの唐突な批判に対しBernieさんとTTさんがわざわざ丁寧な反論を返したにもかかわらず、Ueyamaさんはかみ合わない返事を返したのみでした。
 太田さんと同じように、私もこの時点で嫌な予感がしており、そのまま、あのような結末になったのを非常に残念に思いました。
 メールであんな精神衛生上よろしくないやりとりをするのならば、オフ会で他の人の発言を押しのけてでも、正々堂々批判をするほうがよっぽどよいではないですか?
 どう思われますか。。。?
 以上は、Ueyamaさんに対してですが、それを踏まえて何を申し上げたいかというと、皆さん、オフ会に参加して、是非いろいろな提言を行ってくださいということです。
 もちろん、メールしか手段のない人は仕方ありませんが、これからは東京だけでなく、地方でもオフ会をどんどん開けるよう、幹事団として努めていく所存です。
 また、オフ会へのSkypeでの参加にも成功しており、基本的には居住地にかかわらず、どなたでも参加できる体制が整いつつあります。
 また、地方在住のため幹事をやりたくてもできなかった人でも、旅費のための基金が整備されつつありますので、幹事に手を挙げて下されれば、お住まいの地方で、オフ会開催が可能です。
 というわけで、皆さん、オフ会および幹事団への参加、是非ともよろしくお願いいたします。
 以上が、私から遠江人さんへの「みんなハッピーになれ」る答えですが、いかがでしょうか?
<太田>
 『異人たちとの夏』という映画(1988年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%B0%E4%BA%BA%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%A4%8F
があります。
 ご覧になっていない方は、ぜひ鑑賞していただきたいが、懐かしくかつせつない話がずっと続いた後、終わり近くで準主人公の女性が突然妖怪である本来の姿を顕すんですね。
 それまでのせっかくの感動がぶち壊しになったという思いと、いや、ひょっとしたら、だからこそこの映画は名作なのかもという思いとが現在でも私の心中を交錯しています。
 さて、私が役人を辞めてからというもの、私と関わった人々の中から、突然「妖怪に変貌する」人が次々に現れてきたのですが、その都度この映画の上記シーンが脳裏を過ぎっています。
 既に触れたA~Dと今回のUeyamaさん(E)のほか、まだオープンにはできないもう一人の読者(F)、そして更にもう一人(G)の計7名がその代表的な例です。
 これほど似たようなケースが頻発するとなると、個々のケースをMSさんのように論理的に分析することもさることながら、それ以上に、これらのケースに共通するものは何かを発見することが重要になってきます。
 既に示唆してきたところであり、いささかきれい事過ぎることは重々承知の上ですが、「吉田ドクトリン≒集団的自衛権行使放棄=利己主義≒反人間(じんかん)主義」の否定を徹底する私と関わることによって、利他主義の仮面をかぶった利己主義者が心理的に追い詰められて行き、当人固有の精神障害傾向が悪化し、私に憤懣をぶつける形で顕在化する、ということではないか、と私は昨年くらいから考えるようになりました。
 そう考えると、それは現在の日本の状況のある種の縮図である、という大げさな見方もあながちできないわけではなさそうです。
 
<少数株主>
 –twitter 民主主義の喪失について、我思う–
 「戦前/戦中の日本が自由民主主義国(最近じゃ「的」入れるの止めた)だって常識がどうして失われちゃったんだろね。」(3:45 PM Mar 27th。太田)
 今の日本人の大半は、民主主義=個人ひとりひとりが公平に扱われるものと考えている。
 これは、下手すれば、個人主義になりかねない。
 民主主義とは、個人を尊重する点までは同じだが、個人は、己を見つめ、他人(すなわち個人の集合体である、国家、世界)を見つめ、その集合体である、結論を尊重することだと小生は考えている。
 民主主義とは、受身では育たず、そだてはぐくむものである。
 戦中も欲しがりません勝つまでは、とか千本針とかで、日本人は、老若男女の大半が、犠牲を厭わず、己の意志で行動していた点で、民主主義が存在していたと思う。
 残念なことは、一部、上級将校が、正しい報道をせず、マスコミもそれをそのまま報道し、その結果が、悲惨なものになった。
 戦後、アメリカの個人主義のみが、正義のように扱われたことが、民主主義の失わせたと考える。
 なお、ウィキペディアの民主主義に、よく似たことが書いてある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E4%B8%BB%E4%B8%BB%E7%BE%A9
<太田>
 民主主義は(自由主義を必要条件とし、)人間主義を十分条件としてこそ成り立つ、という重要かつまっとうな指摘をされているように受け止めました。
 ただ、「上級将校が、正しい報道をせず、マスコミもそれをそのまま報道」していたとおっしゃいますが、仮に、「正しく」報道がなされていたとしても、(一般国民が知らなかった)「最終的には日米戦争に日本は敗北する」だけなら、当時の国民の過半が開戦に反対したでしょうが、(一般国民がうすうす気づいていた)「米国が日本の足をどれだけ引っ張り、最終的にどんな要求を突きつけてきたか」ということまで「正しく」報道がなされていたとしたら、やはり国民の過半は開戦に賛成したのではないでしょうか。
 正しい報道をしてもしなくても結果は同じであったろう、ということです。
 結局、当時の日本の民主主義の悲劇は、平均的国民並みの判断力しか持ち合わせていないエリートしかいなかった点にあります。
 それは、軍事エリートと非軍事エリートの養成システムが分断されていたことの論理的帰結だ、というのがかねてよりの私の見解です。
<ΒΒΣΣ>(「たった一人の反乱」より)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010033100833
↑↑さすが差別のない国、日本ですな
<太田>
 いや、日本が女性差別、そして(移民を排斥する)外国人差別の国であることは紛れもない現実です。
 それでは、記事の紹介です。
 国際的非常識の「国」日本。
 とはいえ、この点でも宗主国とギクシャクするのは大変結構か。↓
 「鳩山政権の郵政改革案について、ルース駐日米大使とリチャードソン駐日欧州連合大使が、世界貿易機関(WTO)の協定に違反する可能性があると警告する書簡を、平野博文官房長官ら関係閣僚に送った・・・」
http://www.asahi.com/business/update/0402/TKY201004020219.html
 国際的非常識の「国」北朝鮮。
 とはいえ、今度こそ、北朝鮮の終わりの始め、という感じであり大変結構か。↓
 「<韓国>国防部と軍当局は哨戒艦「天安」の沈没原因について、公式には調査が必要との立場だが、内部では北朝鮮による攻撃の可能性が高いとみている。
 軍の幹部関係者は1日、「向こう(北朝鮮)の一撃を受けた可能性が60-70%以上と考えるが、果たして証拠はあるだろうか」と語った。これまでの状況や調査の結果、内部爆発の可能性は低く、外部の衝撃だったとしても、機雷よりは魚雷の可能性が高いと見られている・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20100402000036
 米国とイスラエルの関係だっていつどうなるか分からない、ということです。↓
 ・・・Marshall and Truman clashed in a meeting in the Oval Office, on May 12, 1948. Truman relied on presidential adviser Clark Clifford to make the argument. Clifford faced Marshall: the U.S. had made a moral commitment to the world’s Jews that dated from Britain’s 1919 Balfour Declaration, he argued,and the U.S would be supported by Israel in the Middle East. The Holocaust had made Israel’s creation an imperative and, moreover, Israel would be a democracy. He then added: Jewish-Americans were an important voting bloc and would favor the decision. ・・・
 <Marshal thougt, t>he counsel offered by Mr. Clifford’s advice was based on domestic political considerations, while the problem confronting us was international.・・・
 ・・・it・・・was・・・a credible reflection of U.S. military worries that the creation of Israel would engage America in a defense of the small country that would drain American resources and lives・・・
http://mideast.foreignpolicy.com/posts/2010/04/01/petraeus_wasnt_the_first
 残された米露の戦術核問題をどうするか、思案投げ首といった論考です。↓
 ・・・The Davy Crockett<(この記事の写真を見よ)> was one of the smallest nuclear weapons ever made by the United States. Built in the late 1950s, and designed for the battlefields of Europe to stop a possible Warsaw Pact invasion, the warhead looked like a watermelon, being only 30 inches long and weighing about 76 pounds. From a portable tripod launcher, it could be fired at the enemy as close as 1,000 feet or up to 13,000 feet away. It was a weapon for nuclear war at close range. ・・・
 The just-completed strategic weapons treaty that U.S. President Barack Obama will sign in Prague next week with Russian President Dmitry Medvedev does not cover smaller nuclear warheads in both arsenals that are a legacy of the Cold War — the so-called battlefield, or tactical weapons.
 The United States is believed to have about 200 tactical nukes in Europe, all of them B61 free-fall gravity bombs to be used with U.S. and allied tactical aircraft, out of 500 total tactical nukes in the active U.S. arsenal. The Russians are estimated to have about 2,000 tactical nuclear weapons, several hundred in the European part of the country and the remainder in central storage sites. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2010/04/01/the_little_nukes_that_got_away
 (本当の理由は北米駐留英軍経費のコストシェアリングへの反発であったところ、)北米植民地の茶の輸入について、英本国政府が英東インド会社経由のものに限って関税を免除したことに反発したという口実の下、同植民地は独立するに至ったわけだが、英国の、茶の原産地支那からの茶等の輸入額は多く、この赤字を解消するために、(1833年の東インド会社の独占権剥奪以降)英国商人達は、支那にインド産のアヘンを輸出し始め、それがアヘン戦争(1840~42年)を引き起こした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E7%89%87%E6%88%A6%E4%BA%89
 他方、東インド会社は、独占権剥奪以降の経営状況の悪化を挽回するために、以下の書評↓が言うように、茶を支那から移植してインド等で栽培を始め、同会社等がその茶を売りまくることで、英国の経済的、帝国的発展が促進されたわけだ。
 つまり、茶は二重三重に近現代史を動かしたことになる。
 ・・・The East India Company and its successors had established vast plantations in Ceylon, East Africa, Burma and, most important, the mountain regions of India. With it, they fueled an industrial revolution at home, funded a global empire abroad and helped to intertwine the “cuppa tea” with British life and culture forever. ・・・
 ・・・the company guessed correctly that if it could establish vast new plantations in the Himalayas, using the finest Chinese teas, it would reverse its corporate decline while placing the ascendant British empire at the center of the global tea trade. ・・・
 In a fateful 12-month period that began in the fall of 1848, ・・・a Scotsman named Robert・・・Fortune・・・<,>hired by the East India Company,・・・made two tea-collecting trips in eastern China while disguised as a mandarin. The subterfuge was necessary to get around the ban on foreigners traveling to the interior. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/03/26/AR2010032601989_pf.html
 書評より。
 鉄道幹線の敷設は安全保障上の理由からなされ、それが結果としてグローバリゼーションを推進した、というのが書評子の主張。
 私も同感。↓
 ・・・the railroads were the driving force behind the first age of globalization, in the 19th century.・・・
 ”The Anglo-Saxon railways were developed by pure, raw capitalism, remarkably untrammeled by government intervention.”<と著者は主張するが、> The capitalism that built America’s long lines in the 19th century may have been raw, but there was little pure about it. <著者>Wolmar’s own description of the government subsidies and kickbacks behind the Union Pacific and Central Pacific makes clear that this was a form of state-sponsored crony capitalism.
 Moreover, the initial impetus behind the government funding was political: to hold the Union together during the Civil War. Many Californians interpreted Southern secession as their cue for Western secession; to prevent the loss of California and its gold, Lincoln and the Republican Congress promised California a railroad. Similar motives inspired the first trans-Canadian line, when British Columbia was tempted to do what California had threatened. The Trans-Siberian railroad was Alexander III’s answer to the perennial problem of how to keep Siberia and the Russian Far East from flying off into the sphere of Japan or the United States. In North America and Russia, railroads assisted in the pacification of the indigenous peoples, typically to their detriment; in New Zealand, the authorities pushed railroad construction as an alternative to an even direr fate. “The Public Works policy seemed to the Government the sole alternative to a war of extermination with the natives,” a New Zealand official blandly explained. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/03/26/AR2010032601950_pf.html
 あなたはどう思いますか?↓
 ・・・The happiest and most successful people I know have in common with one another not just an ability to function with multiple communities, but a real desire to do so・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/03/26/AR2010032604632_pf.html
 北カフカスのグローバリゼーション・・インターネットとイスラム原理主義の普及・・が今次モスクワ地下鉄自爆テロの背景にあるって話。
 それが、(従来からのそしてイスラム原理主義によって再強化された)女性差別と結びつくと、悲劇が生じるってわけ。↓
 
 ・・・Ms. <Dzhennet >Abdullayeva, 17, was one of the suicide bombers who blew themselves up in the Moscow subway on March 29, and Mr. Magomedov was a militant Islamist who was killed in 2009. ・・・
 Ms. Abdullayeva apparently met Mr. Magomedov through the Internet.
 This happens with increasingly frequency, as young girls strike up Internet relationships with older men who convince them to accept fundamentalist Islam and are persuaded, out of na���vet��� and romantic impulse, to abandon their families, ・・・
 ・・・once women are brought into the militant structure they typically never leave. If a woman’s husband is killed, she typically marries a second, third or even a fourth fighter.
 ・・・Crudely speaking, these women are passed along like trophies,・・・They do not let their girls go.・・・
 The accomplices met the women in a subway station and gave them belts fitted with explosives・・・.  
 ・・・One of the men left with the first woman and the other with the second,・・・It is these two men who set off the bombs using a remote control.・・・
 Ms. Abdullayeva’s life ended at 8:40 on Monday morning at the Park Kultury station. Riding in a train, ・・・a medical student from Malaysia, said he noticed a strange-looking woman near the door “in a very abnormal posture.”
 “She wasn’t wearing a scarf,” he told・・・. “Her eyes were very open, like on drugs, and she barely blinked, and it was scary. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/04/03/world/europe/03moscow.html?hp
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 一人題名のない音楽会です。
 前回の「ブラームスのバイオリン協奏曲第3楽章」の追補から。
 木嶋真優(当時22歳)。2009年のエリザベート・コンクールのファイナルでの演奏です。
 見落としててスミマセン。
http://www.youtube.com/watch#!v=jWXcO5oUhPU&feature=related
 ついでに石上真由子(当時高2)。ところどころ音がはずれてるけど、力強いことと、その立派な面構えに感銘を受けました。
http://www.youtube.com/watch?v=–Zb3vKwUEU&feature=related
 日本の若手女性バイオリニストの活躍は、フィギュアスケート以上ですね。
 若手男性はどうした?
 それでは、倍賞千恵子の第二弾です。(第一弾はコラム#3771)
 今回は、歌謡曲的なものを中心に集めてみました。
さよならはダンスの後に
http://www.youtube.com/watch?v=9bWqaB_NQCM&feature=related
下町の太陽
http://www.youtube.com/watch?v=7_tGISeIY9g
雨に濡れた恋
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=4UYmkxV1PYQ&fmt=18
一杯のコーヒーから 霧島昇と
http://www.youtube.com/watch?v=KUBhLu2z3Es
純情二重奏 霧島昇と
http://www.youtube.com/watch?v=O8neWFnSyAQ&feature=related
愛染かつら歌謡4曲 霧島昇と
http://www.youtube.com/watch?v=Qixj6lHOu9c&feature=related
瞳とじれば
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=VKbMZH3PKV8&fmt=18
銀色の雨
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=eLbht57xDmU&fmt=18
さくらのバラード
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=UaTCKCU8-ZI&fmt=18
水中花
http://www.youtube.com/watch?v=Ktcvpf94iVo&feature=related
 これ↑は絶品。
 オリジナルは井上忠夫作曲・歌唱で、たくさんの歌手が歌っていますが、倍賞に次いで評価したいのは、高橋亜貴子によるものですね。↓
http://www.youtube.com/watch?v=4ffZ0CQivVs&feature=related
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太田述正コラム#3926(2010.4.3)
<カルタゴ(その1)>
→非公開