太田述正コラム#3866(2010.3.4)
<日進月歩の人間科学(続X14)(その2)>(2010.4.4公開)
1 始めに
 リベラル(Liberals)は保守(Conservatives)より頭がいいかどうかについての記事をタイム誌(電子版)が載せていた
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1968042,00.html
(2月28日アクセス)ので、その概要をご紹介しましょう。
2 リベラル v. 保守
 「・・・ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス・アンド・ポリティカルサイエンス(LSE)の<講師(reader)>サトシ・カナザワ(Satoshi Kanazawa<。1962年~。進化心理学者
http://en.wikipedia.org/wiki/Satoshi_Kanazawa (太田)
>)<(コラム#1491)>・・・は、アタマのより良い人々は「進化的に新規な」諸価値をより好んで信奉すると主張している。
 「進化的に新規な」諸価値とは、我々の祖先の環境においては存在しなかった諸価値だ。
 それには、我々が自分達の氏族に食わせるために狩りをしなければならず、また、それには、我々のまともな技術と言ったら火くらいしかなかった時には思いもしなかったところの、遺伝的に無関係なよそ者達を助けるという(カナザワが自由主義と定義するところの)異様な諸観念が含まれる。・・・
 彼は、自由主義と新しいあらゆる種類の様々な経験に対する抵抗感のなさ(openness)との間には強い相関関係があると指摘する。
 しかし、新しい経験に対する抵抗感がないことは、必ずしも知性があることを意味しない。(コカイン<を摂取するの>は愉快だ。しかし、コカインをうっかり飲み過ぎると大変なことになる。)・・・
 <また、>自分を「非常にリベラル」であると規定する若者の平均IQは106であるのに対し、自分を「非常に保守的」であると規定する若者の平均IQは95だった<という研究をカナザワは引用するけれど、>・・・自己規定(self-identification)というものはクセ者だ。・・・
 ・・・<というのは、>アタマの良い人は自分をリベラルっぽく描くことを好むかもしれないが、自分が王様でいられるのならその方が都合が良いことを知っている<・・つまりは、実際には保守的であることが少なくない・・>ものだからだ。・・・
 <このように、>保守がリベラルよりアタマが悪いかどうかは決着がついたとは必ずしも言えないけれど、・・・保守・・・が肉体的に(physically)より強いかもしれないことについては証拠がある。
 カリフォルニア大学サンタバーバラ校の<二人の研究者は、>・・・男性(女性ではない!)で極めて筋力の強いものは良い扱いをされることを当然だと思い、すぐ怒り、自分達を紛争に勝つ可能性が高いと思い、人との間の、或いは国際間の紛争を解決する手段として物理的な力(physical force)が有効であると信じていることを発見した。
 <ちなみに、>自分をきれいだと思っている女性は、同様、より強い攻撃的パターンを示した。
 以上から言えることは、もしあなたがリベラルであって自分が保守<の連中>よりアタマが良いと思っているのなら、そんな態度を連中の前で見せないことだ。
 彼等を怒らせると自分が困るだけだ。」
3 終わりに
 この記者のカナザワに対する「反論」は難癖に近い感じです。
 よって、カナザワの主張は、今回も正しそうですが、サンタバーバラ校の研究者達の研究成果をも踏まえると、日本での、「右」=アタマが悪い=体育会系、「左」=アタマが良い=文化サークル系、というイメージにはどうやら根拠があるらしい、ということになります。
 ところで、私は、この記事が、あたかもマッチョの男性と美人の女性とを同類のように扱っていることが気になります。
 日本でも一流のスポーツ選手の奥さんは美人と相場が決まっていますが、身体がモノを言う狩猟採集経済時代ならいざ知らず、美人の女性がどうしてそんな男性に惹かれるのか、かねてより不思議に思っています。
 一流のスポーツ選手は高額所得者なので、そこに惹かれるのだとしても、引退してからも高額所得者であり続けられるという保証はありませんしね。
 しかし、美人の女性は、保守的であり、だから保守的な男性に惹かれる、ということであれば、まんざら分からないでもありません。
 このあたり、誰か真面目に研究してくれないかなあ。