太田述正コラム#3933(2010.4.7)
<皆さんとディスカッション(続x796)>
<けいc。>
 外国人による麻薬密輸での日英トップの発言の差
 どんだけ間抜けでアホな麻薬の運び屋でも、自国民が他国政府に殺害されるなら擁護するのが当たり前の行為だと思う。
 つくづく日本にはきちんと定義された“国益”が存在しないですね。
 本当に日本政府に消費税、所得税を払うのがバカらしくなる。
 昨年の暮れにパキスタン系イギリス人がウルムチ空港で麻薬を持ち込んだ罪で同じく中共政府に殺された時のイギリス首相の発言。
http://articles.latimes.com/2009/dec/28/opinion/la-oe-rodriguez28-2009dec28
■ブラウン首相の発言
 ”I condemn the execution of Akmal Shaikh in the strongest terms,
and am appalled and disappointed that our persistent requests for clemency have not been granted. I am particularly concerned that no mental health assessment was undertaken.
 『私はアクマル・シャイクが処刑されることについて最も強い非難声明をもって抗議する。死刑判決に関しての(イギリス政府による)継続的な軽減の要求も認められないことについて唖然として同時に失望させられた。特に被告の精神疾患に関する考慮がまったくされなかった点について懸念を禁じえない。』
 ”At this time our thoughts are with Mr Shaikh’s family and friends and I send them our sincere condolences.”
 『現段階においては、我々イギリス政府の願いはシャイク氏の家族や友人とともにある。彼らには哀悼の言葉を送ります。』
■ミリバン外相の発言
 ”I condemn in the strongest terms the execution of the British national Akmal Shaikh. I join the Prime Minister in expressing my deepest condolences to Mr Shaikh’s family and
friends.
 『イギリス国籍であるアクマル・シャイクが処刑されることについて最も強い非難声明をもって抗議する。私も首相と同じく、最も深い哀悼の意を彼の家族と友人に送る。』
「皆さんとディスカッション(続x795)」にコメントがありました。
http://blog.ohtan.net/archives/51959472.html#comments
 それに比して鳩山と岡田の言葉
鳩山由紀夫首相:
 「それぞれの国の司法制度があるので、内政干渉的なことを言うべきではないが、ギョーザ(中毒)事件が一応解決の方向に向けて動いていた矢先だけに、残念だ」
「通常の感情からすれば(刑が)厳しすぎるという思いは当然あるだろうが、国の違いを理解してもらうしかない」
「日中関係にいろんな亀裂が入らないように努力する。影響が出ないように国民にも冷静に努めていただきたい」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100406-00000103-jij-pol
岡田首相の発言:
 岡田外相は程大使との会談で、「これだけ死刑があるということは日本の世論の中には適正な手続きが行われているのかという声もある」と慎重な対応を要請した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100403-00000054-san-int
<太田>
 英国と日本とでは、少なくとも三つの事情の違いがあります。
 一、英国では死刑が廃止されているが日本ではそうではない。
 二、英国人の死刑囚は心神耗弱の疑いがあったのに日本人の死刑囚は通訳の適格性について疑いがあったにとどまる。
http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201004060299.html
 三、それが真実であるかどうかはともかく、中共当局は、北朝鮮の国家的覚醒剤製造・密輸を絶とうとしていて、日本人の死刑囚の摘発・死刑もその一環、と説明しているらしい。
http://mainichi.jp/select/world/news/20100407k0000m030119000c.html
 ご存じのとおり、英国は、北朝鮮の核・拉致問題を直接抱えてはいない。
<蒲鉾>
 “半年前に”太田コラム「正義について」<シリーズ(コラム#3622~3626)>で取り上げた、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の超人気講義、NHKの番組で特集番組が作られて、全講義24コマが放送されるようです。
 (既に2コマ放送済み、次は4月11日放送)
http://www.nhk.or.jp/harvard/index.html
http://www.youtube.com/watch?v=HVCjxs1Dvs8
 (ちなみに、ハーバード大学側がUPしているraw版の講義です)
http://www.youtube.com/watch?v=kBdfcR-8hEY
 生で観るサンデル教授と生徒のディスカッションはとても刺激的で面白い、必見です。
 もしかしたら既に観てる(知ってる)かもしれませんが、件のコラムは書評を元に書いていたようなので置いときますよ。
<太田>
 ご覧になった読者の方々、感想をお聞かせ下さい。
<雅>
 ・・・日本の独立のため、自治社会確立のために、<また、>それを世間に伝達するためにも、今の世の中で手に入る、太田先生が有益と思う本(日本語・英語)を論評付で
HPのどこかに列挙しては頂けないでしょうか?
 そうすれば、私も読み理解も深められますし、他の人にも推薦できます。
 ただ、日本語の場合は(古典も含めて)ですが、訳者の力量によって原文の真意をよくつかんでいる場合と、曲げてしまうこともあると思いますので、どこ(出版社、著者)のどの本が良いとか明確にしていただければ幸いです。
本の論評 見本 
『自助論』 三笠書房 サミュエル スマイルズ
 (この訳が良いかわかりませんが、、)
論 評
 (コラム #2493 より抜粋)
 「確かに、福澤諭吉・・・らとともに明六社を結成し、アングロサクソン化を掲げて久方ぶりの日本の弥生化の旗振り役の一人として活躍した中村正直・・・には、福澤と並んで、あるいは福澤以上に注目すべきだったかもしれませんね。
 というのも、福澤はアングロサクソン文明が(アングロサクソンの学問を含め)いかなるものであるかを歪曲して日本に伝えてしまった・・・のに対し、中村は、アングロサクソン文明がいかなるものかを、最も的確に祖述した著作であるところの、スマイルズ・・・の『Self Help(西国立志篇)』とJ.S.ミル・・・の『On Liberty(自由之理)』を日本に翻訳紹介したからです。
 面白いのは、スマイルズはスコットランド人であり、ミルもロンドン生まれという意味ではイギリス人であるものの、学校教育を一切受けず、すべての教育をスコットランド人である父親から受けたという意味ではスコットランド人であることです。・・・
 だからこそ、スマイルズはイギリスの個人主義を、そしてミルはこの個人主義とほぼ同値であるところのイギリスの自由主義(リベラリズム)・・個人主義/自由主義はアングロサクソン文明そのもの・・を、イギリスのインサイダーたるアウトサイダーとして的確に祖述できたわけ・・・ですし、この両者、というかこの両著を選び取った中村の眼力にも、この両著、とりわけ前者を(福澤の『学問のすすめ』とともに)ベストセラーに仕立てた明治初期の日本大衆のセンスの良さにも感服せざるをえません。
 中村は昌平坂学問所や、その後継である東京大学の教授を勤めており、日本の官学の教授の模範例である、と申し上げておきましょう。 」
<太田>
 どなたか、太田コラムの中から私が推薦しそうな本を探していただけませんか。
 そうしていただきゃ、コメントを付けて、ホームページで公開しますよ。
<βΣΣβ>(「たった一人の反乱」より)
 ・・・<日本の新聞は>謝罪と訂正は一面トップでするべきだ。・・・
http://www.jca.apc.org/usokiji/image2/kiji.jpg
http://www.jca.apc.org/usokiji/image/teisei.jpg
 三洋電機やパナソニック、パロマ等。
 最近ではトヨタも場合によっては通常のCMを中止してまで謝罪や回収のCMをしてるのに、マスコミ、特に新聞は責任感が皆無でシステムが旧態依然すぎる。
 これを改革するには新聞社の2~3社は潰れないと無理だな。
<σσΒΒ>(同上)
http://flowmanagement.jp/wordpress/archives/835
 足利事件当時、読売新聞のトバシ記事もひどいよ。
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 「時限爆弾のスイッチ入れた郵貯・簡保の限度額拡大」というコラムは、国際的非常識の中身を一定の角度から具体的に指弾しており、良い出来。↓
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100405/213833/?top
 オバマの新核戦略の解説として秀逸なコラム。↓
http://www.slate.com/id/2249961/pagenum/all/#p2
 タイガー・ウッズの復帰と公共TVのある番組の放映に言及し、米国人は仏教に正しい目を向けよと訴えるコラム。↓
 ・・・In some ways, Tiger Woods’ recent and very public return to Buddhism is more interesting than his return to professional golf.・・・
 ・・・when you think of Buddhism’s place in mainstream American consciousness, it’s most often seen as, if not a punch line, then a fashionable cause (think Tibet), a counterculture relic (think the Beats and their psychedelic ’60s followers), a marketing gimmick (think “Zen” teas and glossy yoga magazines), a quasi-spiritual travel itinerary (think generations of Western backpacker-seekers in Asia, among whom, I confess, I must count my younger self)?or some combination of the above.
For the most part, outside of religion departments and the pages of Buddhist magazines and blogs, it’s rare for Buddhism to be seen squarely and simply as what it is: a vibrant global religion and spiritual practice that’s been offering “balance” and “centeredness” for 2,500 years and counting.
 Oddly enough, the Tiger Woods spectacle coincides with the arrival on Wednesday night of a high-profile PBS documentary, The Buddha, which sets out to do precisely that rare thing.・・・
http://www.slate.com/id/2249958/pagenum/all/#p2
 カリフォルニアのヨセミテと太平洋沿いのHighway 1 の旅行記。とにかく、なつかしい!↓
http://www.latimes.com/travel/la-tr-highlow-20100404,0,2787943.story
 以下の二つのコラムを同時に載っけるとは、ガーディアンもニクイねえ。
 鯨はお利口さんだから食うなっていつものすり切れレコード。↓
 Whales are dignified, intelligent and sensitive beings. We have known this for some time, and yet still they remain, much to our shame, susceptible to human assault.・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2010/apr/06/whale-hunting-moratorium-japan-iceland
 一見中立的な議論だが、上のコラムと併せて読むと、上のコラムを強烈に皮肉ってるのが分かるって仕掛。↓
 The emotion of disgust is hugely important to our moral lives: go against it and you risk being made a pariah・・・
 If you had a dog, and it died a natural death, how would you feel about roasting and eating it?・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/belief/2010/apr/06/disgust-morality-ethics
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太田述正コラム#3934(2010.4.7)
<パール・バック(その2)>
→非公開