太田述正コラム#4153(2010.7.26)
<皆さんとディスカッション(続x904)>
<太田>(ツイッターより)
 (コラム#4151に関し)現在の政治的イッシューを理解するためには、少なくとも日本及び日本と関係の深い諸外国の歴史を知らなきゃ始まらない場合が多いことが改めて分かるねえ。
<takahashi>(「たった一人の反乱」より)
 <シナや中東で>良質な井戸を共同で掘ろうじゃないかという発想が生まれないところがホッブス的世界の証明なんだよな。
≫takahashiサンもγδδγサンも番組名か少なくとも放送局名くらいは書いてくれなきゃ。≪(コラム#4151。太田)
 このテレビの番組名、全く憶えてないんだよな。
 放送局は多分、テレビ東京かな?
<ΕΓΕΓ>(同上)
 <δγγδサン、>その<コラム#4151で引用した>ウィキの内容は現在の学説の主流ではないらしいので注意してね。
<δγγδ>(「たった一人の反乱」より)
 よろしければ現在の学説の主流というのをお教えください。
http://www.nichiren.com/jp/special_topic/special_topic05/st05_4.html
→これ↑、創価学会系のサイトじゃん。しかも、典拠が出てこない。信頼性ゼロ。≪(コラム#4151。太田)
 あらら。いろいろ調べたけど、これはというのはなかったんだよね。
 まあ創価学会とは気づかなかった。僕は創価学会員ではありませんのでお間違えなくw。
 個人的には自分の家は明治まで姓名が無くて墓も江戸時代中期からのしかなく、当時、墓をつくれるのは相当、お金もちだったと母から聞いたから、そんなものだろうと思っているのだが、これは個人的な話だし。
 うーん、でも無いことの証明は数学的に不可能に近いんだよねえ。
 「「あることの証明」は、特定の「あること」を一例でも提示すればすむが、「ないことの証明」は、厳密には全称命題の証明であり、全ての存在・可能性について「ないこと」を示さねばならないためである。
 この「ないことの証明」(消極的事実の証明)について、その立証の困難さから「悪魔の証明」という表現が比喩的に用いられている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E9%AD%94%E3%81%AE%E8%A8%BC%E6%98%8E
 逆に太田氏の側が氏姓制度が無い以前の日本の一般庶民にも姓がありお墓もあったと証明する方が簡単ですよ。
≫「1876年の太政官指令では、・・・平民<も>・・・武士の・・・夫婦別氏の慣行に従うべきこととした。」(同上)ともある。家父長制ってのは本来そういうもんさ。何度も言ってるように、貴族も武士も弥生人、とりわけ武士は歴とした弥生人なんよ。≪(同上)
 でも氏姓制度はその始まりにおいて後に貴族・武士(つまり弥生人)になる豪族に適用された制度ですよね。
 これを縄文的というのはどうかというのが僕の疑問なんですけど。
≫ちゃうちゃう。弥生人こそ、メリトクラシー志向だから、アタマが良くて腕っ節も強い男を後継者に据えることが可能な仕組みがなきゃ困るんよ。≪(同上)
 これで太田氏と僕の見解の相違点がわかりました。
 僕が起源論<から>弥生とは中国的なもの 朝廷・貴族・武士は中国経由 氏族制度も中国だから弥生と判断したのに対して、太田氏は、
 縄文=平和・秩序 そのための血族主義(育ちより氏)
 弥生=機能的 合理性 能力主義(氏より育ち)
であるはずだという前提で判断しているから氏姓制度をめぐって弥生・縄文論で別れたのです。
≫先祖崇拝と血族集団であることは別だと思うんだけどなぁ≪(コラム#4151。δγγδ)
 これ、<裏付けを>調べるの大変そうだから保留。
 んで、根本的な部分でもしかしたら大きな勘違いをしているのではないかと突然、閃いたんですが・・・。
 実は太田氏の弥生・縄文論は逆なのではないかと。
 弥生人こそ平和と秩序を愛し、戦争が嫌いな平和主義者なのであって、縄文人こそがメリトクラシー志向の合理主義者・冒険者だったんじゃないかって・・・。
 そう考えるといろいろ歴史の謎も解けてくるのですよ。
 でも証明に時間がかかりそうだなあ。間違えてるのかもしれないので、典拠はまた、ちまちま調べていきます。
<太田>
>逆に太田氏の側が氏姓制度が無い以前の日本の一般庶民にも姓がありお墓もあったと証明する方が簡単ですよ。
 「墓」については、こんな↓感じだったみたいね。
「平等な社会
 一.竪穴住居の大きさはどれも同じくらいで、死者は区別なく共同墓地に埋葬。
   →貧富の差や身分の差はなかったと考えられている。
 二.屈葬…死者の手足を折り曲げて埋葬する方法。」
http://www2.odn.ne.jp/~rekisinotobira/note1/1note02.htm (現在、キャッシュされたものしか見ることはできない。)
 「貝塚は共同墓地の意味も兼ねていました.
みんな同じような葬られ方から,縄文時代は身分や貧富に区別されない「平等社会」という事が分ります.」
http://pt-rekishi.seesaa.net/article/154629064.html 
 つまり、個人の墓じゃなくて共同墓地だったわけだが、これは墓がなかったということにはならない。
 いずれにせよ、いかにも、ウジ≒ムラ原理の世界って感じだね。
 (ただし、共同墓にはエライ人間しか入れなかったんじゃないかって説↓
http://www.jomon.or.jp/?q=node/36
もある。)
 「姓」についてはよく分からんが、ヨソのウジ≒ムラの人間と区別するために、地名等を共同の「姓」にしてたとしても驚かないな。
>自分の家は明治まで姓名が無くて墓も江戸時代中期からのしかなく、当時、墓をつくれるのは相当、お金もちだったと母から聞いた
 「墓」と「墓石」とを取り違えてないかい?↓
 「江戸時代になると檀家制度が確立し、人々に先祖に対する供養や葬儀、墓など仏事が生活の中に定着したことにより、庶民まで墓石を建立するようになった。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%93%E7%9F%B3
 「墓石建立が一般化したのは江戸時代に入ってから、しかも、武士や裕福な町人、郷士や庄屋等で、庶民は長い間、河原石を積んだ程度でした。庶民も<墓石のある>墓を作るようになったのは江戸時代後期(1800年代)からです。」
http://1st.geocities.jp/edenno2/haka.html
>太田氏の弥生・縄文論は逆なのではないか
 おお、中村忠之説(コラム#4137、4140(未公開))の賛同者ここにあらわる。
<takahashi>(同上)
 縄文人にも冒険的一面があったことは確かだ。
 縄文人は南太平洋や南米に到達していたのだ。
http://www18.ocn.ne.jp/~tugaru/minamitaiheiyou.html
 年代測定には「熱ルミネッセンス法」により測定され、・・・
 
 科学的な年代測定法なので、疑う余地がない。テレビ番組でも検証されてたぜ。
 タンカーを安定させるバラスト水に土器が紛れ込む可能性も検証されてたが、これもあり得ないと否定された。
 つまり、縄文人は原始的な船で太平洋を渡ったのだ。
<太田>
 こいつは面白い。
 だけど、もう7年も前の文章だね。
 その後の話の展開はないのだろうか。
<takahashi>(同上)
≫私が何を言いたいのか、分かった方は投稿を!≪(同上)
 まず、最初に仏印進駐がなぜ、行われたのかという視点がない。
 仏印進駐は交戦中の中華民国のファシストたる蒋介石政権に対して行われていたイギリスやアメリカ合衆国などによる軍事援助ルート、いわゆる援蒋ルートをインドシナ半島で絶つことが目的だった。
 当時の日本の指導者層はこの選択がやむを得ない選択であり、正しい選択だと考えていたのだ。
 事実、正しかったのだが、なぜか英米を批判する視点は全くない。
 この後、ファシストの蒋介石と共産党の争いでシナ大陸は共産党の天下となってしまったのだ。
 このことを糾弾することなく、WW?中も親英米であったという理由だけで吉田茂を過大評価する風潮を作り出し、その片棒を担ぐことで吉田ドクトリンの延命に手を貸しているのが産経新聞の本質なのだ。
               太田小学校1年生 T
<ΕΓΓΕ>(同上)
 太田さんの言わんとするところが全く分からなかったが、そういうことか!
 太田小学校入学試験 見事に落ちた・・・orz
<太田>
 takahashiサンの解答でおおむね結構だが、補足すると、外務省の吉田茂や陸軍の辰巳栄一等が英米(具体的にはチャーチルとローズベルト)がどちらも正気で、しかも英米が一枚岩だと思っていたのが大きな誤りだったのさ。
 「ロバート・クレイギーとその戦い(続)」シリーズ(コラム#3956~)を読んで欲しいが、日本は、北部仏印進駐を行った1940年の頃に、対英国(のみ)開戦を含む全面南進策をとるべきだったのに、それを妨げたのが、後に吉田ドクトリンを推進することとなる、吉田や辰己ら英米事大主義者だったってこと。
 
<takahashi>(同上)
 日本人は軍事的貢献をしないかぎりアングロスフィア人にはなれんな。
http://meinesache.seesaa.net/article/5224136.html
 それにしても、インターネットを発明したアングロスフィア人には脱帽だ。
 やはり、最強かもしれん。
 シナ文明も昔はレベルが高かったんだが、すっかりだめになってしまった。
 シナも日本もインターネットだけは自力では生み出せなかっただろう。
 漢字の呪いかもしれん。
<太田>
 引用された文章、きちんと読んでないが、おおむね私の考えと同じみたいね。
 そう。日本は軍事的貢献≒独立を、米国は日本への謝罪を行うのが前提だわさ。
<べじたん>
 『国民の文明史』、パラパラ眺めてみました。462ページ中、第二部で200ページほどあるので、詳しく紹介するのは難しそうです。
 (たしか第一部の終わりの方で)縄文化・弥生化の超システムはかねてからの主張だ、という感じで書いていました。
 『日本文明の主張―『国民の歴史』の衝撃、西尾幹二、中西輝政、PHP研究所 (2000/11)』
http://www.amazon.co.jp/dp/4569614167
が、その「かねて」の一つであり、簡単に書いてありましたので、こちらを送ります。対談形式の本で引用文献ゼロです。『国民の文明史』の第二部には、それなりに引用文献がありましたが、巻末ではなく、文中に「筆者、タイトル」のみを書いてある形式でした。
 <また、>『国民の文明史』の目次が詳しく載っているところを見つけたので、ページ番号を添えます。
第二部 日本文明を考える  ・・・PP109~301
第三章 日本文明に見る「超システム」現象  ・・・P109
(1) 「日本文明」とは何か
(2) 日本文明の特質
(3) 「瞬発適応」と「換骨奪胎」の超システム
第四章 「縄文」と「弥生」の日本文明史  ・・・P147
(1) 日本建国期の「弥生化」はやがて「縄文化」へ
(2) 「弥生式変革」の原型をつくった聖徳太子
(3) 天武天皇の文明的選択
(4) 長すぎた平安の「縄文化」と「大崩れ」
(5) 武家政治は「正統」か否か
(6) 文明の衰退期だった室町時代
(7) 「江戸」と「明治」は一つの時代
第五章 日本文明が揺らぐとき  ・・・P215
(1) 欧化の波に揺らぐ日本人のアイデンティティ
(2) 大正期知識人が日本を狂わせた
(3) 愛国者・内村鑑三と明治・大正のキリスト者
(4) 大正と平成の近似
第六章 昭和の大戦の文明史的意味  ・・・P261
(1) 「歴史の危機」をもたらした大正の大改革
(2) 日本を戦争へ導いたのは誰か
(3) 戦後日本を呪縛した三人の法制家
(4) 敗戦による「軍事占領・更地化・一神教」の試練
(5) 日本文明の衰退の兆候
http://www.tsukurukai.com/09_kokumin_book/kokuminbook_bunmeisi.html
 あと、ハセガワの『日本語版へのあとがき』も送ります。
<太田>
 写真撮影→PDF化、という手間をかけて送っていただき、まことに恐縮です。
 中西の主張に関しては、これから送っていただいたPDFファイルを読んでみますが、この目次を見る限り、室町時代の認識が私と違うだけでなく、「江戸」と「明治」を一つの時代としているところは、彼と私の縄文・弥生交替論とがかなり異質であることを推測させますね。 
 ハセガワのあとがきも楽しみです。
 それでは、記事の紹介です。
 メキシコ前大統領ヴィセンテ・フォクスへのインタビューをどうぞ。
 こういう人物がかくもムッチャクチャな発言をするところに、中南米の人々の米国(及びカナダへの)劣等感と怨念の深さ(コラム#4151(未公開))が現れている。↓
Q:What do you think the U.S. should do about the estimated 11 million immigrants who live here illegally, about 59 percent of whom are Mexican, according to a report from the Pew Hispanic Center?
<事実上、密入国者全員を合法化せよと答えている。↓>
A:Document them! As long as they are working, they should be legalized. ・・・
Q:What do you make of John McCain, who, in 2005, helped craft a bipartisan immigration reform bill, but has lately been feeding anti-immigration sentiment. He just said on television that Phoenix is “the No. 2 kidnapping capital of the world,” a fact that various groups have disputed.
<マケイン上院議員に対していくら何でも言いすぎだろう。↓>
A:Yes. It’s a total shame, the new position that he’s holding. When he campaigned for president, he tried to gain votes from Hispanics by positioning himself very positively around migration. I don’t understand his position today. It’s very selfish. It’s incredible that a politician of his stature, of his matureness and age, can be such a traitor to his own ideas. ・・・
Q:What do you think Mexicans have contributed to American culture?
<答えるのに窮するのは分からないでもないが、私でももうちょっとマシな答えができるぞ。↓>
A:Oh, starting with Mexican food! The jalape���os and the tacos and the rest. I think they have contributed family values. And then we have our culture. When you were killing Indian Apaches there, we had built Mayan cities, the pyramids, Mexico City. ・・・
Q:You think the United States is causing Mexico’s crime wave?
<麻薬問題を全部米国の責任にするとはムッチャクチャでござりますがな。↓>>
A:Absolutely, yes. ・・・The U.S. provides the markets and guns that come back to Mexico and allow the cartels to be active. ・・・The cartel gangs are nourished through the drug consumption in the United States. That’s why my position is that we should move as fast as possible into legalizing drug consumption. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/07/25/magazine/25FOB-q4-t.html?ref=world&pagewanted=print
 村上龍の電子出版が大ニュースとして取り上げられている。↓
 ・・・Earlier this month, in a manoeuvre I predict will soon be seen as a watershed, the admired contemporary Japanese writer Ryu Murakami announced that he was publishing his new book, A Singing Whale, in partnership with Apple, as an iPad download, turning his back on his regular Japanese publisher, Kodansha. The book will also include video content set to music composed by Oscar-winning Ryuichi Sakamoto.・・・
http://www.guardian.co.uk/books/2010/jul/25/ryu-murakami-ipad-apple-publishing
 タイム誌が日本経済の袋小路状態を描いている。↓
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,2005689,00.html
 その例として、あのなつかしき仙台を写真で紹介しているのが何ともせつない。↓
http://www.time.com/time/photogallery/0,29307,2005577,00.html
 
 要するに縄文モードってことでは?↓
 「・・・AV(アダルトビデオ)が20代30代の女性にバカ売れしている。・・・
 一方、ピンク映画上映館にも女性客が増えている。・・・
 「・・・男の性的なリーダーシップが現実的にはどんどん後退している分、セックス幻想を満たしてくれるAVに、女性がより傾倒する傾向がある。」
 これが・・・日本大学芸術学部非常勤講師で「女装する女」などの著書がある出版・広告ディレクターの湯山玲子さん・・・の分析だ。・・・<彼女は、>女性がAVに興味を持ち出したのは、女性にも性欲があり、男性と同じような自慰欲求はあることが社会の中で容認され始めたのがきっかけと見る。・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/4904714/
 「・・・沖仁(おき・じん)が・・・今月7、8日にスペイン・ムルシアで開かれたフラメンコギター・コンクールの国際部門で、日本人として初めて優勝した。・・・」
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201007230486.html
 彼↑の演奏はいかが。↓
http://www.youtube.com/watch?v=7gBr0Pux1sw
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太田述正コラム#4154(2010.7.26)
<改めて朝鮮戦争について(その1)>
→非公開