太田述正コラム#4191(2010.8.14)
<皆さんとディスカッション(続x923)>
<γγΕΕ>(「たった一人の反乱」より)
≫朝鮮半島の人々、とりわけ韓国の人々の多く、特に指導層が、百も承知しており、だからこそ最も傷ついているところの、「日本が朝鮮半島の近代化の原動力となった」という事実、>すなわち塩、を韓国の人々の傷口にすり込むようなことをやるのは、「イマジネーション」に欠けた頭の悪い(「能力」に欠けた)ことであって控えるべきだ、という趣旨です。≪(コラム#4189。太田)
 一方的に日本が残虐非道なことをしていたならば、「お前ら悪いことをしたけれども、俺たちは頑張ってこういう国を作ったのだから、何とかしよう」と言えるけど、日本人が「いいこと」をしてしまったために朝鮮の人たちのプライドをかえって傷つけてるわけです。
 できの悪い反抗期の少年が、「今のおれがあるのはおやじのおかげだ」なんて言う気にもならないのに似ているでしょう。
 「おやじのおかげだ」というためには、少年がきちんと自立して自らが親となり、そこで素直に「おやじのおかげだね」とおやじに向かってもらせるのだと思います。
 朝鮮の人たちからの数々のいちゃもんは、この素直に「おれたちがいまあるのはあの統治のおかげだ」と言えないことから発しているのだと思います。
 じゃあ、いつまでたったら、「おやじのおかげだね」と、朝鮮は言えるのでしょう。
 永遠にいえないのでは。
 「日本よ、ありがとう、俺達が今こうしてあるのはあなたたちのおかげだ」ともらせる日なんか、来ない気もしますね。
 日本が臨終のベッドに人工呼吸器つけて横たわってる状態で、日本のTVドラマだったら、ぐれた息子が枕元にやってきて「おやじ、いろいろあったがありがとうな」という殊勝なセリフを吐いて泣かせたりするもんですが、彼らにそれもやれるかどうか。。。
<takahashi>
 ・・・韓国に何かを期待してはだめだ。
 韓国は儒教のせいで何事も上下で見る癖がある。
 残念ながら、日本人は韓国人より劣等な存在なのだ。
 国を失って劣等な日本人の力で餓死者がゼロとなり、近代化したのだから、韓国人が屈折するのは当然だと思う。
 韓国人は無意識でこのことを理解しているので、教育では現実と真逆を教えることに躍起となるのだ。
 だから、日本人にはどうしようもない。
 この理屈を日本に応用すると、「日本人は日本が属国であることを無意識に理解しているので、保守派ほど、属国化を推進することに躍起となるのだ。」となる。
 よって、十津川昭和さん=保守派となり太田さんの天敵となるわけだ。
<太田>
 キミ達の言ってること、そんなにおかしくはないんだけど、上から目線が気になるんだな。
 自立できないまま、日本によって自分達の方向付けをされちゃったことが最大の心の傷になってる韓国の人々に対し、どうしてもっと敬意を抱けないの?
 こういう韓国の人々に対し、大部分の日本人が敬意を抱かないことと、自立することを自ら放棄して米国に自分達の方向付けを委ねちまったまま現在に至ってる戦後日本に、大部分の日本人が、痛みを感じるどころか、何の疑問も抱いていないこととは、私に言わせりゃイコールなんだな。
 キミ達が日本「独立」に関心などないのなら分かるが、「独立」するのがスジだと思ってるのなら、その非論理性は目も当てられないぜ。
 ところでtakahashiさん、日本の保守派は、日本が米国の「属国であることを無意識に理解してい」て、そのことを利用して私益を確保してきた、というのがより正確な表現だろう。
 要するに、彼等は、古今東西、被占領地や植民地において、どこでも見られた買弁
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/174323/m0u/%E8%B2%B7%E5%BC%81/
のような存在であって、日本を属国のままにしておくとか「独立」するといった高尚なことなんて一切考えない連中だってこと。
 十津川昭和サン一派は、一応日本「独立」を目指し始めてんだから、こういう連中とはちったあ違うと思うよ。
<bonkers_blunder>(ツイッターより)
 この↓ような記事
http://www.chosunonline.com/news/20100814000031
を読むと、こちらも感情的になってしまいますが、イマジネーションを磨くためにはどうしたらよいのでしょうか?
<太田>
 塩野七生は、作家ですから、ヨソ(つまり自国以外)の場所(=国際政治)について論じちゃいけない(コラム#4179)のは当たり前だとして、ヨソの(つまり今じゃない)時(=歴史)についても論じちゃダメなんですよ。
 実際、彼女の歴史論は必ずしも事実(証拠)に即してないので、読まない方が無難です。(コラム#1174、1755、1756、1758、1767)
 そんな彼女が、日本、支那、及び朝鮮半島の歴史について、「断罪を避けるためには、徹底して証拠を集めるべきだとの論理を展開した」というので、吹き出しちゃいました。
 特にヘンなのは、その「証拠」が、彼女にとっては「公文書」を意味するらしいことです。
 例えば、慰安婦問題で「証拠」がない、とされているのは、私文書も含めてですからね。
 慰安婦問題で、慰安婦の家族とか親族とか仲介「業者」が残した日記類だって証拠になりうるんだけど、強制性を裏付けるような公文書はもとより、日記等の私文書も皆無なんだな。
 ここから先は私の推測を交えた見解だけど、そもそも、一部のエリートを除いて、朝鮮半島には、個人が日記をつけたり詩歌を詠んだり随筆を書いたり、という習慣が、日本と違って、(ごく最近はともかくとして、)ないのではないでしょうか。
 実際、朝鮮半島には、日本と違って、小説も詩歌も随筆も、めぼしいものが日本による統治が始まるまで出現していません。
 これは、その事大主義から、ハングルができてからも、公文書のみならず文学類までも、外国語である漢文で書くことが当然視され続けたためでしょうね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E6%96%87%E5%AD%A6 
 この朝鮮日報の記者、一見、塩野が「公」文書と記したことにつけ込んで揚げ足とり的に塩野批判を展開したように見えるけれど、この記者、自分達には「私文書」なんてまず存在しないことを知っているから、それほどの悪意なく塩野批判をやらかしているんだと思います。
 なお、自分達に「私文書」が少ないことについて、この記者が密かに対日コンプレックスを抱いていたとしても私は驚きません。
 いずれにせよ、恐らく、塩野批判を行ってやろうという気持ちが、この記者には前からあったに違いない、と私はふんでいます。
 人口が日本の3分の1しかない韓国で、「塩野七生氏の作品は、韓国でも多くの読者がいる。15巻から成る『ローマ人の物語』(新潮社)は、韓国だけで300万部以上が売れた。文庫版を除けば、日本よりも売れたと言われるほどだ。」というんじゃ、なんで古代ローマの話をイタリア人を始めとする欧州人や英米人が書いたものじゃなく、(かつて自分達に近代化のきっかけを与えたところの、旧宗主国人たる)日本人のうちの1人が書いたものでもって、これほど入れ込んで「勉強」しなきゃいけないんだって気持ちを抱いていたとしても、決して不思議じゃないでしょ。
 こういう風に考えりゃ、あなたも全然感情的になんてならないのでは?
 どうやってこの種のイマジネーションを磨くかだって?
 話題になっていることに直接間接に関係する事実(証拠)に幅広く目を通した上で、相手の立場に自分を置いて考えることでしょうね。
<takahashi>
 韓国ドラマには『宮廷女官チャングムの呪い』がある。
 日本の歴史には『村落共同体の呪い』がある。
 別名『セクショナリズム』とも言う。
 富士系のポスト独占に「八幡系が不満」の新日鉄
http://facta.co.jp/article/200805064.html
↑こんなアホなことをやっているのは日本人だけだ。
 八幡製鉄と富士製鉄が合併して新日鉄が誕生したのは40年前なんだぜ。
 どこの国にもセクショナリズムはあるが、ここまでひどいのは病気だ。
 WW2の時も、アメリカさんは海軍が、南方は陸軍さんが、ってな調子だったに違いない。
 農業用水を共同管理することが、法治や公概念の発達を促す良い面をもたらし、これが日本人に自我を共同体に預ける性向を生んだ。
 しかし、時にこの性向はセクショナリズムをより悪化させる作用をもたらす。
 これが『村落共同体の呪い』である。
 この呪いには利点があるとはいえ、これがあるかぎりアングロサクソンには勝てんし、時には中韓にも負けてしまうのだ。
<太田>
 中共にネポティズムと政治アパシー(コラム#220)ある限り、また、韓国に両班精神(コラム#404)ある限り、どちらも日本には勝てないだろうな。
 ただし、日本が自壊ないし消滅しちゃう可能性があるけどね。↓
 ・・・About 2.6 million single men and women between the ages of 35 and 44, or nearly 15 percent of Japanese in that age group, were living with their parents as of 2007, up from 1.4 million in 1997・・・A quarter of a million of these people were unemployed・・・
 Japanese scholars draw a connection between the number of people living with their parents, the falling marriage rate, and the country’s grim economy, which creates fewer employment opportunities every year. The number of job openings in Japan has fallen for the last three years running and collapsed by 23 percent last year alone・・・
http://www.slate.com/id/2263805/pagenum/all/#p2
<智太郎>
 <コラム#4100>「日進月歩の人間科学(続X13)」<を読み>ました。
 偉い方なんですね?  
 内向的な →内省ができる・自分と向き合えるとプラス思考で考え、交通事故の脳挫傷の後遺症害と闘いながら生活して頑張ってます。
<太田>
 引用されたコラム#、勝手に変更させていただいたたけどよろしかったですか?
 イマイチおっしゃりたいことがよく分かりませんが、頑張って下さいね。
<植田信>(2010.8.13)http://8706.teacup.com/uedam/bbs
 ・・・今朝、NHKラジオで「戦争体験談」なるものが流れました。
 今年80歳になる名古屋市の女性の体験談です。・・・
 で、この女性が言うには、戦争は絶対にいけない、と。
 なぜなら、戦争とは、何の罪もない人たちが、何のすべもなく、ただ空襲で死ぬだけだから。・・・
 これが日本人の戦争体験です。
 だから、戦後の日本人は憲法9条を死守せよ、と。
 実に、体験から帰納された信条です。・・・
 というわけで、戦後日本人の「対米従属」は当分、続くでしょう。・・・
<太田>
 植田さん、あなたが結論とした地点から、私は出発したのですよ。
 下掲のように、日本に比べてはるかにひどい戦争体験をしたドイツは再軍備し対米従属も回避したのに、日本は再軍備しないまま対米従属を続けていること、を疑問に思ったところからね。
[ドイツ]
開戦時総人口  :7,000万人弱
一般住民死者  :900,000~3,170,000人
うち空襲での死者:400,000~600,000人
戦死者     :5,533,000人
http://en.wikipedia.org/wiki/Strategic_bombing_during_World_War_II
[日本]
開戦時総人口  :8,000万人強
一般住民死者  :580,000人
うち空襲での死者:230,000~550,000人。(沖縄県を除く)
戦死者     :2,130,000人
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%9C%AC%E5%9C%9F%E7%A9%BA%E8%A5%B2
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1150.html
共通典拠:
http://en.wikipedia.org/wiki/World_War_II_casualties
 本日、その他の紹介すべき記事はありません。
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 一人題名のない音楽会です。
 シューベルトの2回目です。
アルページョ・ソナタ ヨーヨーマ
http://www.youtube.com/watch?v=oh1PuFo-c_M&feature=related 以下
ピアノ三重奏第2番第2楽章 Eugene Istomin piano/Isaac Stern violin/Leonard Rose cello
http://www.youtube.com/watch?v=pQy-cgUYA6g&feature=related
死と乙女 The Alban Berg Quartet
http://www.youtube.com/watch?v=2Yy9szBIKCw&feature=related 以下
弦楽四重奏曲D.956第2楽章 ロストロポヴィッチ
http://www.youtube.com/watch?v=OLtJmOHRJIQ&feature=related 以下
交響曲「未完成」 クライバー(ウィーンフィル)
http://www.youtube.com/watch?v=40ibhUABCPU&feature=related 以下
交響曲「ザ・グレート」 カラヤン(ベルリンフィル)
http://www.youtube.com/watch?v=bkx8infMGy4&feature=related 以下
(完)
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太田述正コラム#4192(2010.8.14)
<映画評論7:レッド・クリフ(その2)>
→非公開