太田述正コラム#4193(2010.8.15)
<皆さんとディスカッション(続x924)>
<遠江人>
 十津川昭和さんについてですが、流石に「ハエ」は応えたと見えますね。
 何にしろ、自分のしている(していた)ことの本質と物事の仕組みが分かって、自分の存在にまで「再考」を強いられるほどのショックを受けたとしたのなら、ご本人にとって、ものすごく良いことだと思います。
 きっといろいろと気づいていただけることがあるでしょう。
 反面、もし不感症の如く何も感じうることが無かったとしたら、ご本人にとって決定的に不幸なことですね。
 それにしても太田さんは相変わらず、無償で人のためになることをするのが大好きですね。
 太田コラムならお馴染み、人のためは自分のためですから、さぞかし心の栄養になっていることでしょう。
 しかし、こんな「おもしろい」ことを「体感」できるメルマガ(blog)は日本で他に無いと思います。この点でいえば読者数ランキングなど如何に無意味なものかよく分かるというものです。
<太田>
 それでもやっぱり裾野が広がって欲しいなあ。
 皆さん、どうぞよろしく。
<bonkers_blunder>(ツイッターより)
太田さんや世界の人たちに対してエイリアンな、戦うことを忘れた日本は消えゆくしかないのかのう。
 どげんしたらよかっぺ?
<太田>
 「独立」か、米国との合邦しかないだんべ。
<takahashi>(「たった一人の叛乱」より)
昭和史の真実
日米関係を破綻させた米国の極東戦略
http://www.history.gr.jp/~showa/mokuji1.html
 太田さんはどうやら、いろいろなところで仕事をしているようです。
 太田さん、いつ、このサイトの監修をしたんですか?
<太田>
 モチ、私とは何の関係もないサイトです。
 目次見た限りでは、「セオドア・ローズベルト」や「英国」や「共産主義/ソ連」の影も形もないところを見ると、でき悪そうね。
<mootiez>(同上)
 池田信夫先生のコラムに対する太田さんの感想を聞きたいです。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51467160.html
<太田>
 日本の論壇は全くと言っていいほどフォローしてないもんで、こういう聞き方じゃなく、「池田さんがかくかくしかじかだと言っているけどどう思いますか」といった具合に具体的な質問をしてください。
<mootiez>(同上)
 過去コラムを少しづつ読んでいますが、人間主義がまだ、今ひとつわからないな。
<太田>
 繰り返しみたいに聞こえるかもしれませんが、「太田さんは人間主義に関し、かくかくしかじかだと言ってるけど、○○という点がよく分かりません」といった具体的な質問をしてくださいね。
 それでは、記事の紹介です。
 本日の「左」の朝日の社説は、全般的に大変できがよろしい。
 論説委員諸君、私のコラムで勉強してるのかも。
 「・・・・・・ 米国の歴史家、ジョン・ダワー氏は近著「昭和 戦争と平和の日本」で、官僚制は「戦争によって強化され、その後の7年近くにおよぶ占領によってさらに強化された」と指摘する。同様に、日本型経営や護送船団方式など戦後の日本を支えた仕組みの多くは、戦時中にその根を持つ。
 ・・・私たちは戦前と戦後を切り離して考えていた。だが、そんなイメージとは裏腹に、日本を駆動する仕組みは敗戦を過ぎても継続していた。ダワー氏はこれを「仕切り型資本主義」と呼ぶ。≪軍と官僚が仕切る総動員態勢によって戦争が遂行されたのと同じやり方で、戦後も、社会は国民以外のものによって仕切られてきた。≫(≪≫は太田がつけた)
 政権交代は、55年体制が覆い隠してきた岩盤に亀裂を作ったといえるだろう。天下り利権や省益を守ることに傾斜してしまう官僚組織、積み上がるばかりの財政赤字。いまや、仕切り型資本主義が機能不全に陥っていることは誰の目にも明らかとなった。
 外交・安全保障も同様だ。普天間基地移設の迷走、そして日米核密約問題は、憲法9条の平和主義を掲げながら沖縄を基地の島とし、核の傘の下からヒロシマ、ナガサキの被爆体験を訴えてきた戦後日本の実相と、今後もその枠組みから脱するのは容易ではないという現実を、白日の下にさらした。 ・・・
 冷戦下、西側の一員として安全保障と外交を米国に頼り、経済優先路線をひた走るという「昭和システム」は、確かに成功モデルだった。だが、時代が大きく変化した後も、私たちはそこから踏み出そうとはしなかった。
 「仕切り型資本主義」は「人任せ民主主義」とも言い換えられる。任せきりの帰結が、「失われた20年」といわれる経済的低迷であり、「顔の見えない日本」という国際社会の評判だ。 ・・・」
 ダメなのは、≪≫↑のところだな。
 戦後も「官僚」が、というニュアンスだが、「米国」だろが。
 それに、戦前も戦後もそのように仕切らせたのは国民だろが。
 これに対し、下掲のシリーズ記事からも分かるように、「右」の産経新聞は、吉田ドクトリンととことん心中するつもりのようだ。
 なお、私が留学した英国のRoyal College of Defence Studiesは、1927年創設の英国防大学(Royal Defence College)が1970年に名称変更したもの
http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_College_of_Defence_Studies
だが、これが、日本の内閣総力戦研究所設立を促した
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100801/acd1008010746003-n1.htm
とは知らなかったな。
 「・・・「内閣総力戦研究所」・・・は<1940>年の9月に勅令をもって開設された首相直属の組織であった。・・・
 第1期生として軍人5人、官僚25人、民間6人の36人が入所した。聴講生として閑院宮・・・春仁中佐が加わると、実力に権威が備わった。・・・
 1941・・・年7月12日、研究生からなる青国(日本)の仮想内閣が組織され、統裁官から出された想定状況に応じて、大規模シミュレーションを開始した。彼らは数週間をかけて、赤国(米国)相手に必死の戦いを挑んだ。
 仮想内閣は兵器増産の見通し、食糧や燃料の自給度、運送ルートと時間などさまざまなデータを解析し、日米戦争の行方を占っ<た>。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100801/acd1008010746003-n1.htm 上掲
→そもそも、課題の出し方がおかしい。対ソ連/共産主義という国是を所与のものとして、そのための最適戦略を検討させるべきだった。その場合、既に時機を失していたとはいえども、対英だけ開戦という解答が導き出されていた可能性がある。(太田)
 「・・・<その結果、>「日本現在の国力をもってしては、敵と互角で戦える期間はせいぜい2年であり、その後は漸次国力が消耗し、最後にはソ連の参戦を誘致して日本は敗れるだろう」・・・<と>感情を交えずに、合理的な判断を下し・・・た。・・・「ソ連参戦」の予測は、ドイツが独ソ不可侵条約を破った以上、日ソ中立条約を破って南下することは論理的な帰結であ<るともしていた。>・・・
 対米英戦争に対する警告は総力戦研究所だけでなく、首相の直属の機関である企画院からも出ていた。客観データを積み重ねた彼らの積算もまた、「米国と戦争すると、とたんに国力が半分になる」という過酷なものであった。・・・
 総力戦研究所はその後も17年に2期生、18年に3期生を受け入れたが、12月に繰り上げ卒業になると、そのまま休業状態になった。・・・
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100808/acd1008080810005-n1.htm
 「吉田がこのハル・ノートを目にしたのは、翌27日である。東郷<外相>の意向で吉田にノートの写しが渡され、彼はすぐに岳父の牧野伸顕・・・に見せている。牧野は敵意が込められたノートを一読して、「この書き方は随分ひどいな」・・・と慨嘆した。
 吉田は東郷に牧野の言葉を伝えた。さらに、ノート左上にあった「テンタティブ(試案)」に注目し、「ベーシス・オブ・ネゴシエーション(交渉の基礎)」を示しており、「決定ではない」ことを指摘した。
 むしろ、誤読を誘うような巧妙な威圧ではないのか<、と>。
 ところが、東郷はハル・ノートを「日本に対する挑戦状」と受け取っていた。・・・
 いったい、吉田、寺崎<太郎外務省アメリカ局長>らによる対米戦争回避の努力をつぶしたのは誰だったのか。
 学習院大学教授の井上寿一によれば、それは決して東条英機内閣の意思だけではなかった。「東条の背後には、名もない、しかし圧倒的多数の国民がいた」との指摘は否定しがたい(『吉田茂と昭和史』)・・・
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100815/acd1008150804004-n1.htm
→当時の日本国民に直接的責任はない。吉田らの英米協調派が英米一体と見ていたことが日本政府全体の判断を誤らせたことこそ問題。
 他方、この日本政府の「誤解」を所与のものとして日本を対米開戦へと追い込み、ドイツも日本に追随して対米開戦するものと考え、その結果として米国を対ドイツ戦に引きずり込もうとしたチャーチル、及びこのチャーチルの目論見に喜んで乗ったローズベルトの2人は、いずれも度し難い大ばか者。
 その理由は次の3点だ。
 第一に、ソ連/共産主義の脅威を増幅させてまでもナチスドイツの脅威に対処することを優先した点。
 第二に、ヒットラーが条約上の義務がないのに、日本が対米開戦すれば必ずそれに追随すると思い込んでいた点。(ドイツにとってマイナスにこそなれ、何のメリットもないのに、ヒットラーは、大ばか者どころか、キチガイであったからこそ追随し、おかげでことなきをえた。)
 第三に、日本軍の力を過小評価し、英領マライや英領ビルマが日本軍に占領されてしまい、それがひいては大英帝国の崩壊をもたらすことを全く予想できなかった点。(ただし、ローズベルトは、自らの手を下すことなく大英帝国を崩壊させることができてほくそ笑んだはずだ。)
 それでは、記事の紹介です。
 日本の主要メディアの電子版は無視しちゃってるけど、ル・ペンら欧州とイギリスの極右の政治家達が昨日、靖国参拝をしたね。↓
 ・・・A group of far-right politicians from Europe has visited a shrine which honours Japan’s war dead, including convicted World War II war criminals.・・・
 Mr Le Pen was joined at the shrine by Adam Walker, a prominent member of the British National Party, and other far-right politicians from countries including Austria, Portugal, Spain, Hungary, Romania and Belgium.・・・
 <Mr Le Pen said,>”What counts is the will that we had to honour those who have fallen for defending their country, whether they are Japanese, or any soldiers of the world, we have the same respect for them,” he told reporters.
When asked about the visit earlier, the 82-year-old earlier responded: “If we talk about war criminals, aren’t those who bombed Hiroshima and Nagasaki also war criminals?”・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-10973225
http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2010/08/15/2003480445
 これ↑お膳立てしたのは一水会↓だとさ。
 一水会って、三島由紀夫の蹶起・自死に刺激されて設立されたところの、「多くの右派民族派団体が反共の立場から「親米路線」を取っていたことに対し、戦後日本を米国の従属体制に成り下がってしまったと規定し、・・・日本の完全なる独立を勝ち取る、として「対米自立」「日米安保破棄」「戦後体制打破」を掲げている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E6%B0%B4%E4%BC%9A
団体なんだね。
 いずれにせよ、この団体、十津川昭和サン達の団体と似通ってる主張を掲げているだけじゃなくって国際的活動をやってる・・資金をどうやって確保してるか知りたいところだ・・点は評価できるが、「日米安保破棄」ってのがいただけないな。
 民族派(ナショナリスト)の限界ってやつだ。
 そうじゃなく、まずは日本の集団的自衛権行使の解禁/米国からの「独立」によって日米安保の名実ともの同盟条約化を達成した上で、NATOの太平洋版の構築を目指さなくっちゃ。
 運動は怒りをやわらげるってさ。↓
 
 ・・・if you know that you’re going to be entering into a situation that is likely to make you angry, go for a run first.・・・
http://well.blogs.nytimes.com/2010/08/11/phys-ed-can-exercise-moderate-anger/?pagemode=print
 子供の時の貧困やストレスは、成人後、身体に響いてくるってさ。↓
 Adversity and stress early in life leads to long-term ill health and early death・・・
http://www.bbc.co.uk/news/health-10965862