太田述正コラム#4433(2010.12.13)
<皆さんとディスカッション(続x1043)>
<οΔΔο>(「たった一人の反乱」より)
 日本のキリスト教徒は人口の1%未満です。韓国3割、台湾も2割越しています。
 アメリカ属国でありながら、日本でのキリスト教布教は全く進んでいません。
 属国化された国の善男善女がキリスト教にかぶれず無事なのは魂まで家畜化されていない証拠と私は思っています。
 皇室も存続しており、太田先生のような革命家も現れました。
 私は老い先短い老人ですが、日本の未来には楽観的です。
 頑張れ太田先生!新著楽しみにしています。
<ΔοΔο>(同上)
 日本にキリスト教が普及しなかった理由の一つとして、ヨーロッパ人の自我は「神(もしくはその代替物である理念や正義)」 に支えられてきたのに対して、日本人の自我は「世間(の目)」に支えられてきたので形だけ向こうのやり方を取り入れてもなかなか根付かないと心理学者の岸田秀が書いてたな。
<太田>
 キリスト教に関連して、οΔΔο、ΔοΔοの両名、とりわけΔοΔοクンに申し上げたいことは以下のとおり。
 心理学者だというのであれば、岸田なにがしは、彼の上記見解を裏付けるところの、欧州人(イギリス人を含まず)と日本人の比較に係る、実験上、あるいは統計上の根拠を明らかにすべきだ。
 遺憾ながら、岸田なにがしの言ってることは、単にルース・ベネディクトのでたらめ本『菊と刀』の受け売りじゃないかな。
 私の仮説はこうだ。
 イギリスや日本のような人間(じんかん)主義的な社会では、人々は、特定の宗教団体(イデオロギー団体を含む)に入らなくても人的ネットワークをつくることができ、幸せになれるのに対し、欧州、中東といった非人間主義的な社会ではそうは問屋がおろさないってこと。
 その根拠は、例えば本日の記事中の記述の裏付けとなっているところの、諸実験ないし統計だ。↓
 ・・・it is not really going to church and listening to sermons or praying that makes people happier, but making church-based friends and building intimate social networks there.
 The results support the idea that friends and acquaintances can have a powerful, even contagious effect on our health. ・・・
http://healthland.time.com/2010/12/12/religions-secret-to-happiness-its-friends-not-faith/
 悩ましいのは、欧州や中東の人々が、特定の宗教団体に入って人的ネットワークを形成し、幸せになったとしても、その宗教団体が原理主義的なものであった場合、政治的・社会的問題を国(地域)内外で引き起こし、それに構成員も巻き込まれ、(迫害したり殺したりして他者を不幸にしたり、他者から)自分が迫害を受けたり殺されたりして不幸になったりする場合があるってこと
 イギリス人や日本人は、そういうけったいな不幸を味わわせたり味わったりすることを、基本的に免れているわけだ。
<chihilo>
 ベートーヴェンの交響曲はお好きでしょうか。
 サヴァリッシュは日本との関係も深いようです。
http://www.youtube.com/watch?v=4TNfFwUZ71g
<太田>
 歌謡曲的クラシックが大好きな私としては、ベートーベン(含む、その交響曲)は、ショパン、モーツアルト、シューマン、チャイコフスキーあたりに比べると、好みの度合いはイマイチなんですが、もちろん好きですよ。
 なお、ベートーベンの交響曲7番第4楽章に関しては、上記サヴァリッシュ指揮によるものと、それに比べて軽快かつテンポが速い、クライバー指揮によるもの(ユーチューブで一番アクセスの多い)とを聴き比べるのも一興かと思います。↓
http://www.youtube.com/watch?v=VLkZvsp62iU&feature=related
 
 それでは、その他の記事の紹介です。
 先ほど岸田なにがしについて述べたことと同じだが、下記のような主張に、いかなる実験上、あるいは統計上の根拠があるのかを問いたいねえ。
 この主張が「学者」たる女性・上野千鶴子から発せられている以上、それが明らかにされなければならないが、恐らくそんなものないんじゃなかろうか。
 上野教授、思いつきのご託宣を垂れ流してるヒマがあったら(?)、きちんと研究生活を送るとともに、できうれば、日本の凄まじい女性差別の現状を、若干なりとも現実に変えるべく、戦って欲しいな。↓
 「女子校文化には、「男ウケのする価値」と「女ウケのする価値」の二重基準がある・・・
 かくして男にとって「いい女」と、女にとって「いい女」の2種類の「いい女」が生まれる。男は一元的な価値のもと、男同士で連帯できても、女が女同士で連帯できないのはこうした二重基準によるものだ・・・」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20101209/217487/?top
 日本人の若者についても、私はいざという時のことは心配してはいない。↓
 「延坪島・・・砲撃のターゲットとなった海兵隊に、入隊を志願する<韓国の>若者たちが殺到している・・・今月1日に始まった、海兵隊の12月度の募集の競争率は、2.3倍を超えた。締め切りまであと5日あるにもかかわらず、昨年12月の最終競争率(2.25倍)を超えたことになる。海兵隊でも最もハードとされる捜索兵科の競争率は15倍にまで達した。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20101212000015
 「・・・ 海兵隊だけではない。今年春に起こった哨戒艦「天安」沈没事件の直後、海軍は志願者が減るのではないかと懸念したが、杞憂に終わった。海軍は今も、競争率が2倍以上に達する狭き門だ。捜索活動中に殉職したハン・ジュホ准尉が属していた海軍特殊旅団(UDT)や、海難救助隊(SSU)の競争率は、3-4倍となっている。奇妙なことに、韓国の若者たちの間では、危険な任務を伴う部隊ほど人気が高まる傾向にある。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20101212000016
 WikiLeaksの今次リークを通じて浮き彫りにされてきた、米外交官の物の見方の歪みが指摘されている。
 確かに、特定の人物や出来事を事大視する歪みがある。
 ただし、より根底的な歪みは、私が累次指摘してきているように、米国人が、白人であれ非白人であれ、伝統社会を捨て去った(捨てさせられた)デラシネであるがゆえに、伝統を背負って生きているところの、米国以外の大部分の国や地域の人々のことが理解できない、という点に由来しているのさ。↓
 ・・・as the most individualistic of all democracies, America creates, rewards, obsesses over stars of every kind and intensely extols personal success. ・・・
 The danger is that personalization, however accurate, can get in the way of sharper assessments of resources, national aims and public attitudes.・・・
 America’s thirst to single out great figures is matched by the desire to be on hand at history’s great events. Repeatedly, however, we fail to put such moments in context, and thus inflate their significance in the grand sweep of history. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/12/12/opinion/12leebaert.html?ref=opinion&pagewanted=print
 このユダヤ人の日本帝国経由の脱出ルートを閉鎖したのは、日本を対米開戦へと追い詰めた米国だぜ。
 MS、USさん、次著のどこかで、先の大戦直前から対戦中にかけて日本がユダヤ人やポーランド人を助けた話も取り上げたいですねえ。↓
 ・・・a largely forgotten Pacific exodus that was much smaller than the stream of thousands of refugees who reached the East Coast. ・・・
 After the outbreak of war in Europe made escape across the Atlantic Ocean difficult, hundreds of European Jews took advantage of a small window of time when the Pacific Ocean was open to passenger travel. ・・・
 <They> crossed most of the world to get to California, fleeing Nazi Germany by way of the trans-Siberian railroad, then boarding ships in Korea and Japan.
 In 1940 and 1941, right up to Pearl Harbor, the Pacific was still open,・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/11/AR2010121102804_pf.html
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太田述正コラム#4434(2010.12.13)
<セオドア・ローズベルトの押しかけ使節(その10)>
→非公開