太田述正コラム#4302(2010.10.8)
<ジョージ・ワシントン(その1)>(2011.1.23公開)
1 始めに
 明日の講演会の演題が「日本人の日本近現代史認識の歪み」(明日公開コラムとして配信予定)ですし、現在、私の日本近現代史認識をテーマにした次著の編集作業が有志の皆さんによって行われていることもあり、どうして、このところ、直接日本の近現代史にかかわるコラムを書こうとしていないのか、疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 確かに、「XXXX」さんから何度も史料の分厚いコピーをいただいているので、書く材料には不足してはいません。
 ぶっちゃけ、同じようなテーマでばかりコラムを書いていると飽きてしまう、ということもあるのですが、次著との関係でも、クレイギーの英国大使としての日本在勤期間の回顧録は、何が何でも読み、コラムにしなければならないと思いつつも、読むことさえ滞りがちなのです。
 というのは、この回顧録・・’Behind the Japanese Mask’・・は、終戦の年1945年の年末の12月に脱稿されており、恐らくは翌年出版されたのでしょうが、この回顧録が日本で今まで余り話題に上らなかった、ということは、クレイギーが、帰国の翌年の1942年に書き、比較的最近まで公開されなかった部内用報告書とはトーンがかなり異なっていたのではないか、とかねてから勘ぐっていたところ、案の定、この回顧録、極東裁判史観とまではいかなくても、戦前の日本に関する悪玉、善玉論に拠った記述ぶりになっていました。
 そうなると、報告書の方は、ただ単純に、興味深いところを抄訳をつくってコラムにすればよかったわけですが、回顧録の方は、行間を読みながら、ケレイギーのホンネが忖度できる箇所を慎重に選んだ上でその翻訳を行い、それにいちいち解説をつけながらコラムにする必要がある。
 というわけで、なかなか本格的に取り組む気にならないまま日にちが経っている、という次第です。
 このほかにも、色々提供を受けているのですが、例えば、重光葵の『外交意見書集』第1巻は、その細かい字で363頁という分厚さに恐れをなしています。
 また、その他の史料も、カタカナ表記であったり、文語体のものが多く、敬遠気味です。
 繰り言めいた能書きはこれくらいにして、今回取り上げるのは、ロン・チャーナウ(Ron Chernow)の ‘WASHINGTON A Life’ です。
 何と言っても、ワシントンは、米独立戦争の指導者であり、初代の大統領ですから、米国を形作った人として、その浩瀚な伝記が出版された以上、取り上げないわけにはいかないでしょう。
 当然のことながら、米国で、既に下掲のように多数の書評が出ているので、これら書評に拠りつつ、この本の概要をご紹介したいと思います。
A:http://www.nytimes.com/2010/09/28/books/28book.html?_r=1&hpw=&pagewanted=print(9月28日アクセス)
B:http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703882404575520061512222160.html?mod=WSJ_Opinion_LEFTTopOpinion
(10月3日アクセス)
C:http://www.newyorker.com/arts/critics/atlarge/2010/09/27/100927crat_atlarge_lepore?printable=true#ixzz11fcy5UKG
(10月7日アクセス。以下同じ)
D:http://www.nytimes.com/2010/10/03/books/review/Cayton-t.html?pagewanted=print
E:http://www.bookpage.com/books-10013698-Washington%3A-A-Life-
F:http://rhapsodyinbooks.wordpress.com/2010/10/05/tlc-book-tour-review-of-washington-a-life-by-ron-chernow/
G:http://www.latimes.com/entertainment/news/la-ca-ron-chernow-20101010,0,6980356,print.story
(10月8日アクセス。以下同じ)
 なお、チャーナウは、1949年生まれでエール、ケンブリッジ両大学で英文学を専攻、いずれも優等で卒業している米国の伝記作家であり、これまで、モルガン家4代※、ワーバーグ(Warburg)家※、及びロックフェラー、ハミルトン※の伝記をものしており、※付の伝記は、それぞれ権威ある賞を授与されています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Ron_Chernow
2 ジョージ・ワシントン
 (1)あの有名なエピソード
 「・・・若きジョージが桜の木を切り、「お父さん、僕、ウソをつくことはできない。僕がウソをつくことができないのは知ってるよね。僕は斧でそれを切ったんだ」というエピソードは、<最初にワシントンの伝記を書いた>ウィームス(Weems)に由来するものであり、一般に彼の創作であると考えられてきた。
 (<このエピソードは>いいなぞなぞになる。もし「僕はウソをつくことはできない」がウソだったら、何が本当か?)
 しかし、ウィームスは、このエピソードは、<ワシントンの遠い親戚である>一人の年老いた女性から私に対して20年前に伝えられたと言っている。これは本当かもしれない。・・・」(C)
(続く)
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太田述正コラム#4514(2011.1.22)
<2011.1.22オフ会次第(その1)>
→非公開