太田述正コラム#4718(2011.5.1)
<皆さんとディスカッション(続x1189)>
<太田>(ツイッターより)
 エドワード8世は王位を捨てて愛を貫き、ダイアナは愛なき皇太子妃生活に終止符を打った。
 これらの「犠牲」のおかげでウィリアムは「ど」平民と恋愛結婚できたとさ。
http://lat.ms/jFPyl9 
 しかし、これは恐らく英王制の終わりの始まりなのだろう。
 (コラム#4544に関し)英海軍と帝国海軍は見合い結婚だったがそれが破綻した頃、英陸軍と帝国陸軍は相思相愛になって内縁関係を後者が亡くなる寸前まで続けたってストーリーだね。
 国と国、組織と組織の関係だって、人と人との関係のアナロジーが相当きくよ。
<ΟΟΕΕ>(「たった一人の反乱」より)
≫小佐古敏荘教授≪(コラム#4716。εεξξ/εξξε)
 何に対して泣いたんだろうな。
 怒るんなら、分かるんだけど。
<ΟΕΟΕ>(同上)
≫政府は福島の子供達の命の優先順位を下げ、・・・放射能被害を拡大させ続ける方針のようですね。≪(コラム#4716.εεξξ)
 太田氏によるとそれが安全保障というものらしい・・・。
 まぁ20ミリという数値の危険性の程度は、正直わからないよね。
 学者の見解も分かれているし。
 だから、20ミリで健康被害がでる可能性と、福島市、郡山市の避難に伴う経済的な損失、莫大な補償金、福島ひいては東日本全体の対外イメージの悪化とを比較すれば、後者の方が守るべき価値があるのだろう。
<ΟΕΕΟ>(同上)
 政府(管総理)が一部の国民の生命財産よりも何かを優先して守る場合もあるというロジックは理解できます。
 法的な基準値の3000倍以上も越える汚染水を流したときですら「ただちに健康に影響はない」の一点張りだったのも、しばらくの間はパニックを防ぐために情報をミスリードして公表していたのではないかと推測は出来ます。(共鳴はできませんが)
 問題は、ある程度事態が落ち着いてきて緊急事態とは言えなくなって来ているにも関わらず、いまだに「安全安心」的なミスリードを続けている理由が自分的には納得できないことです。
 本当に補償金をケチりたいという理由だけで国民の命を犠牲にするような情報を垂れ流し続けているんですかね?
<ΕΟΕΟ>(同上)
 <ΟΕΟΕクン、>国際機関の勧告に従わずに避難させずにいて、放射能の被害が住民に出ればそれによって被る日本の国際的な評価の下落は、相当な問題だと思うが。
 それ以上の価値が<ΟΕΟΕクン>の文章の中にあるとは思えない。
<太田>
 それでは、記事の紹介です。
 まず、大震災関係から。
 しばらく前の記事だけど、世界唯一の原爆被爆国日本の住民である我々は、放射線のリスクについて、もっと冷静な議論をすべきじゃないかい?↓
 「・・・ 広島、長崎の原子爆弾で被爆した人のうち約4万4000人が、その後、どの程度の割合で肺がんなどを発症したかを長期間にわたって追跡調査した放射線影響研究所などの論文と、国立がん研究センターなどが実施してきた生活習慣によるがん発生リスクの疫学研究とを、津金昌一郎・予防研究部長らが比較検討した。
 原爆で100ミリ~200ミリシーベルトの放射線を浴びた集団は浴びていない集団に比べてがんになるリスクが1.08倍だった。生活習慣によるリスクと比較すると、1日1箱たばこを吸う夫を持つ妻が受動喫煙でがんになるリスク(夫が禁煙の妻と比較して1.02~1.03倍)や野菜嫌いな人のリスク(野菜を食べる人と比較して1.06倍)よりもわずかに高い程度だった。
 肥満や運動不足、塩分の取り過ぎなどでがんを発症するリスクは1.1~1.2倍程度で、放射線を100ミリ~200ミリシーベルトを浴びた場合よりも高い。
 一方、男性の喫煙者はたばこを吸わない人よりも1.6倍がんになりやすい。放射線の被曝量でみると2000ミリシーベルト以上浴びた場合のリスクとほぼ同じだという。・・・」
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819595E0E1E2E2EB8DE0E6E2E6E0E2E3E386989FE2E2E2
 次いでアラブ革命関係だ。
 リビア革命だが、改めて言うまでもないけど、国際政治って非情なもんだねえ。↓
 「・・・トリポリ市内の空爆で、最高指導者カダフィ大佐の息子セイフルアラブ氏(29)と大佐の孫3人が死亡した・・・」
http://www.asahi.com/international/update/0501/TKY201105010059.html
 シリア「革命」だが、アサド大統領の従兄弟の大金持ちの実業家が憎まれるのは、彼もアラウィ教徒であるところ、アラウィ教徒が権力を、スンニ派富豪層が富を、という権力と富の分立体制をこの従兄弟が破っちゃったからなんだねえ。↓
 Rami Makhlouf, first cousin and childhood friend of President Bashar al-Assad <is> the country’s most powerful businessman.・・・
 ・・・the tacit understanding that underlined his rule — Alawite officers and Sunni merchants — has weakened, as the sons and grandsons of those Alawite officers enter business.・・・
http://www.nytimes.com/2011/05/01/world/asia/01makhlouf.html?_r=1&hp=&pagewanted=all
 英王室結婚式関係小特集だ。 
 「・・・これまでイギリスのメディアや国民は、ケイトさんが中流で貴族とは無縁の家柄のため、結婚に色よい反応をしてこなかった。そのバッシングの矛先は、ケイトさんの母親・キャロルさんに向けられ、「階級を飛び越えようとする野心家だ」という批判も多かった。・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/5528373/
 しかし、今では、好意的な反応一色だ。
 ケイトとの結婚は、中流階層の上(英全人口の7%。子弟は私立学校に行く)と上流階層との垣根が取り払われたことを意味するとさ。ただし、中流階層の下及びそれ以下の階層(子弟は公立学校に行く)とそれより上の階層との垣根は厳然と残っており、それが、現在の英国の宿痾だっていうんだな。↓
 ・・・Kate Middleton’s advance to becoming a princess shows that the barriers between the upper middle class — roughly speaking, the 7% of Brits educated at private schools, as she was — and the very top have all crumbled. The deep and worsening problem is not there, at the top, but rather in the miserable prospects of social mobility for the majority educated at state schools. This is the thing that most painfully sets Britain, and especially England, apart from other modern European monarchies, such as Sweden, which happily coexist with open, egalitarian societies. This is the true English disease.・・・
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-gartonash-monarchy-20110428,0,7742573,print.story
 そして、ケイトが二歩下がってウィリアムに付き従う謙虚な姿が、将来のお妃としてまことにふさわしい、というのだ。↓
 ・・・”I think it’s good that Kate seems to lack ambition,” said this source. “She’s a strong girl, definitely not a pushover. But her job is to walk two steps behind him. If you’ve got someone who likes being in the spotlight herself, well, that’s when all the trouble started with Charles and Diana. The best royal marriages are when the consort keeps her head down.”・・・
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-daum-royals-20110428,0,2323886,print.column
 しかし、謙虚さ・・自分が自分がとしゃしゃり出ないこと・・は、(自由民主主義国における象徴としての)国王にとっも不可欠なことだ。
 しかし、僕に言わせれば、エリザベス女王自身はそうでも、チャールスを含め、その子供達に謙虚な者は一人もいない。
 どうやら、貴族出身の故ダイアナ妃を見る限り、上流階層にもそういう者は少ないようだ。
 ウィリアムはひょっとすると謙虚な人間なのかもしれないが、要は、英国の王族や貴族からなる上流階層の中から、英国の妃(そして国王)を務め上げることのできる人間が払底しつつあるからこそ、中流階層の上のケイトが将来のお妃として選ばれざるをえなかった、と考えたらいいのではなかろうか。
 だから、僕は、この結婚が英国の王制の終わりの始め<を意味していると言えそう>だ、と記したのだ。
 最後に、中共とインドの国勢調査比較からだ。↓
 女100人に対し、中共じゃ男105人、インドじゃ男106人。
→これは、中共は非自由民主主義なるがゆえの社会保障の遅れと一人っ子政策がもたらしたものであるのに対し、インドの方は伝統的男女差別が英国統治下において放置されたことの名残だ。
 また、識字率は、中共が95.92%に対し、インドは74.04%。
→これは、中共は非自由民主主義なるがゆえの戦略的資源配分がなされてきた成果であるのに対し、インドの方は英国統治がいかに植民地のためではなく母国の経済的利益のためであったかを示すものだ。
http://blogs.wsj.com/indiarealtime/2011/04/30/china-vs-india-the-population-numbers/?mod=WSJBlog&mod=irt
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太田述正コラム#4719(2011.5.1)
<英国人の日本観の変遷(その2)>
→非公開