太田述正コラム#4725(2011.5.4)
<皆さんとディスカッション(続x1193)>
<コラム#4723の訂正>(ブログは訂正済):こんな塩梅じゃ助手が必要だな。
この町の副長(deputy commissioner)であった人物の名前→
この町の副長(deputy commissioner)であった人物(アボット少佐。後将軍)の名前
2機のブラックンホークヘリ→2機のブラックホーク・ヘリ
 (これ↓は、TAさんが指摘してくれたもの。)
NYタイムスは、この町がイスラマバードから35キロであるとしている→
NYタイムスは、この町がイスラマバードから35マイルであるとしている
ビンラディン以外で殺害されたのは、その息子のほか、二人の連絡員だった→
ビンラディン以外で殺害された男は、その息子のほか、二人の連絡員だった
↑たったこんだけの相手に作戦完了まで40分もかかるんだねえ。(太田)
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<太田>(ツイッターより)
 (コラム#4550に関し)「一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル」(阿南惟幾)、「一切語るなかれ」(東條英機)。
 この二人のストイシズムは心を打つが、彼ら以外の旧帝国陸軍の上澄みの人々は、戦後、この組織の名誉回復のためにもっともっと言挙げしてくれるべきだった。
 ビンラディン隠れ家急襲作戦では、CIA本部では映像中継、ホワイトハウスでも部分的映像中継がなされたんだね。
http://bit.ly/l8UlrE 
 大変な時代だ。
 隠れ家の見取り図が、
http://bit.ly/kABinT 
に載ってるよ。
<ΕοοΕ>(「たった一人の反乱」より)
>ホワイトハウスでも部分的映像中継がなされたんだね。 
 それぞれの肩書き、合ってるかは確かめてないけど。↓
http://livedoor.2.blogimg.jp/insidears/imgs/6/4/647235b2.jpg
http://blog.livedoor.jp/insidears/archives/52456369.html
 10年もかかったけど、それでもやっぱり、アメリカが世界最高の軍事組織なんじゃないかな?
 日本のような情報だだ漏れ組織には、ジェロニモ作戦完遂能力はゼロだろうし。
 ところで、ベルギー・ルーバンカトリック大学のピエール・ダルジョン教授、オランダ・アムステルダム大学のジャン・ダスプレモン准教授、法政大学の多谷千香子教授、といった人たちの見解を紹介したな記事を、朝日のブリュッセル特派員が書いてて、日本のネットではそれなりに話題になったんだけど、英米の一流紙では、このような論説はなかったのかしら?(≫<昨>日のディスカッション)
 「ビンラディン容疑者殺害 国際法上の問題、指摘する声も」
http://www.asahi.com/international/update/0502/TKY201105020489.html
<οοεε>(同上)
 ベルギー、オランダ(ヨーロッパ大陸)ってのが面白いな。
 そこに日本人が紛れてて、今回の事件に対して一番厳しい見解をとってるのが、個人的にやるせない。
>法政大学の多谷千香子教授は、明らかに問題があるとする。「米国にとって危険人物なら、誰でも殺して良いことになってしまう」
 明らかに自由主義、民主主義の価値観を共有するすべての国々に対して脅威だったっしょ。
 例え現行の国際法上、グレーゾーンだったとしても、このような利他的な行動(自由主義・民主主義の擁護)は批難されるべきではないし、国際法で禁止されるべきのでもないでしょ。
 これをアメリカの横暴、利己的な行動だとする見解はおかしいし、あまりに超然的な見解すぎてついていけない。
 自分は英米の一流紙の立ち位置を考慮して、無かった方に1ペリカはっとく。
<太田>
 本件に関し、昨日気づいた記事はこの一本くらいだったな。
 アルカーイダと米国は(双方合意の上で公的な)戦争状態にあったのだから、アルカーイダの(最)重要人物たるビンラディンは、殺害対象にされて何の問題もないってわけ。
 これはテロリストに対する警察行動じゃないってことだな。
 ただしだ、諸君。
 ジブラルタルでの1988年のIRAテロリスト容疑者達の英当局による無警告射殺(後で分かったことだが、容疑者達は武器も爆弾も携行していなかった)・・警察行動・・ですら、アングロサクソンの本家本元の英国は合法だったとしているんだから(コラム#803)ね。↓
 ・・・As the operational leader of Al Qaeda in an ongoing conflict with the United States, Mr. bin Laden was a legitimate military target to be captured or killed at any time under the law of war・・・
 In 1996, bin Laden himself declared war on the US, issuing a religious decree authorizing the murder of American citizens wherever they might be found.
Congress responded after the 9/11 attacks with passage of the 2001 Authorization to use Military Force. The measure empowers the president to “use all necessary and appropriate force” against nations, organizations, or individuals who played a role in the 9/11 attacks. The law was written specifically with bin Laden in mind.
 In addition, Presidents Bush and Obama signed secret executive orders authorizing kill-or-capture missions by the Central Intelligence Agency and the military’s special forces.・・・
http://www.csmonitor.com/USA/Justice/2011/0502/Was-it-legal-for-the-US-commandos-to-kill-Osama-bin-Laden
 本日は関連記事がたくさん出てたけど、一つだけ紹介しとこう。
 コー米国務省法律顧問が少し前に言ったことが引用されているが、正当防衛にも言及しているのは、警察行動だった場合だよ。↓
 ・・・Prof Nick Grief, an international lawyer at Kent University, said the attack had the appearance of an “extrajudicial killing without due process of the law”.・・・
 Harold Hongju Koh, legal adviser at the US state department・・・<said that> a state that is engaged in an armed conflict or in legitimate self-defence is not required to provide targets with legal process before the state may use lethal force.・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/03/osama-bin-laden-killing-legality
 
 なお、ビンラディンが射殺されなかった(彼がすっぽんぽんでいたというレアケースを除き、)可能性はほとんどゼロだった。↓
 ・・・The assault force was told to accept a surrender only if it could be sure he didn’t have a bomb hidden under his clothing and posed no other danger.・・・
 Added a senior congressional aide briefed on the rules of engagement: “He would have had to have been naked for them to allow him to surrender.”・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-bin-laden-us-20110504,0,2772221,print.story
<ΕοοΕ>
≫要するに、日本が安全保障の基本を擲ってるもんだから、有事感覚が欠如しとんのよ。≪(コラム#4696。太田)
≫アルカーイダ系のテロを受けたことがなく、対テロ戦争にも直接参加していないとはいえ、困ったもんだ。≪(コラム#4721。太田)
 日本もテロの標的にされれば、当事者意識が芽生えるんだろうね。原発のように。
<οεοε>(同上)
 いつ標的になってもおかしくないのにな・・・。
 こういう話題って全く出てこないのは異常。↓
 イラン原発、サイバー攻撃であわや大惨事 ロシア大使が指摘
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110127/mds1101271135026-n1.htm
<οεεο>(同上)
 震災事故よりもテロで爆発したほうが、原発がいかに危険かを世にしらしめる効果大だったかもねー。
<ΕοοΕ>
 台湾の新聞に日本人有志の感謝広告が載ったそうだよー。
http://hamusoku.com/archives/4644637.html
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 まずはビンラディン死亡関係の残りの記事から。
 あの隠れ家、パキスタン軍の諜報機関(ISI)の監視対象に2003年からなってたんだとよ。ISIの一員がそう言ったそうだが、眉唾ー。↓
 ・・・The house, it turned out, had been on the radar of Pakistan’s Inter-Services Intelligence (ISI) for more than eight years. Construction started around 2001. Two years later, when it was still unfinished, ISI agents raided it in search of Abu Faraj al-Libbi, a senior Bin Laden lieutenant, but left empty-handed, an ISI official said.・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/03/osama-bin-laden-death-raid
 パネッタ米CIA長官が、この襲撃について、パキスタン政府には事前協力要請はしていない、そんなことすれば、ビンラディンに伝わってしまうからだ、とはっきり言明した。
 これで結論は出たな。↓
 ・・・the CIA ruled out participating with its nominal South Asian ally early on because “it was decided that any effort to work with the Pakistanis could jeopardize the mission. They might alert the targets,” Panetta says.・・・
http://swampland.time.com/2011/05/03/cia-chief-breaks-silence-u-s-ruled-out-involving-pakistan-in-bin-laden-raid-early-on/
 襲撃部隊のじゃないけど、SEALSの雄姿の写真集だよー。↓
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/05/03/killer_seals?page=full
 ビンラディン捕捉作戦ををジェロニモ(1829~1909年。アパッチ族の酋長の一人。メキシコ及び米国と戦い続けたが、1886年に降伏)
http://en.wikipedia.org/wiki/Geronimo
作戦と呼んだことに、インディアンの末裔達が抗議している。↓
 ・・・The 19th-century U.S. Army campaign to apprehend Geronimo and stop his raids on settlers did become famous, particularly in military circles, because he eluded capture for more than a decade. By the time of his surrender in Arizona in 1886, more than 5,000 troops had participated in the hunt to track him down. ・・・
 “No one would find acceptable calling this arch-terrorist by code name Man¬dela, Revere or Ben-Gurion,” Harper wrote. “An extraordinary Native leader and American hero deserves no less.”
http://www.washingtonpost.com/lifestyle/style/american-indians-object-to-geronimo-as-code-name-for-bin-laden-raid/2011/05/03/AF2FZIjF_print.html
 ウィキリークスのアサンジ様から日本では朝日新聞がお名指し。
 朝日の名誉であるな。
 もっとも、やっぱ、大した話、出てきてないが・・。
 いずれにせよ、自民党政権がどういう政権だったか、よー分かるねえ。↓
 「・・・総移転費用102億ドル余りの中で約4割を占める米側負担、41億ドル強の中に含まれた「軍用道路整備」の名目による10億ドルという数字に関してだった。
 2本の公電は協定の条文について背景を説明する中で、軍用道路整備費について、06年4月のロードマップ交渉時に「全体の費用見積もりを増やし、日本側の負担割合を(数値上)減らすために盛り込まれた」と明記している。道路はそもそも必要がないものだったのに、いわば見せ金的に盛り込まれた形だ。
 ロードマップ作成時の交渉では、日本側の負担割合が大きな焦点となり、米側が当初、75%を要求。最終的に59%で決着した。しかし、この軍用道路整備費をのぞくと、日本側負担は約66%に跳ね上がることになる。・・・
  一方、公電は、沖縄からグアムに移転する海兵隊8千人、その家族9千人という人数について、予算措置上の上限定員に基づいた数字とし、ロードマップ交渉時には「(日米)双方ともに、この数字が(実態と)かけ離れていることを認識していた」と言明。「日本国内での政治的な効果を最大限引き出すために、意図的に大きく見積もられた」としている。・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/0503/TKY201105030253.html
 「自由民主主義国」インドでは上は政府から、国民の末端まで、腐敗しているって話。
 さもあらんが、どうすりゃいいのかね。↓
 The country faces many of the same problems that triggered a rash of anti-government protests across the Middle East: corruption, staggering unemployment, and shoddy governance. But unlike its Arab counterparts, India is ruled not by a dictator, but by a democratically-elected government ・・・
 ・・・one-fifth of all voters in the last decade accepted cash handouts between 100 and 1,000 rupees in exchange for votes. ・・・
 ・・・business houses, operating in a crowded Indian market, shamelessly engage in corruption to skirt bureaucracy, circumvent rules, and overcome regulatory roadblocks. ・・・
 Kaushik Basu, India’s chief economic advisor and a former Cornell University professor, recently suggested that paying bribes should be made legal — while collecting them will remain illegal, a radical move meant to encourage bribe-payers to report their act once it’s done. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/05/03/fatal_corruption?page=full
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太田述正コラム#4726(2011.5.4)
<英国人の日本観の変遷(その5)>
→非公開。