太田述正コラム#4911(2011.8.5)
<皆さんとディスカッション(続x1284)>
<太田>(ツイッターより)
 有料読者向けに、(しばしば日本の武士道と対比されるところの)騎士道について書き始めているが、騎士道に関し、何か疑問とかウンチクとかあれば、お聞かせいただけるとありがたい。
<ζΙζΙ>(「たった一人の反乱」より)
≫米国で日本アニメファンがどんどん増えてて、最近じゃ若い女の子の参入が続いてるようだね。≪(コラム#4909。太田)
 太田さん曰く「裸の個人主義」で、孤立傾向にあるアメリカ人が、入口はどうあれ日本のアニメに魅力を感じ、引き込まれていくのは人間主義的側面に惹かれるってのも多少あるんやないかね。
 ↓は典型的な人間主義の賛美が散りばめられたアニメざんす。
http://www.dailymotion.com/video/xk4qov_natsume-yuujinchou-san-episode-4-sub-1-2_shortfilms
 原作は少女漫画で原作者も女性ですが、女性が描く人間主義的世界は男性が描くモノよりあたたかい気がするんだな。
 若いアメリカ人がどういったモノに触れているか、暇な時にでもどぞー。
<ζζΙΙ>(同上)
 ボリューム大きすぎ。
 ヘッドフォンしてたから耳が痛いよ。
 それはともかく夏目友人帳か。
 だったらシーズン3の第4話なんて中途半端なところからじゃなくって、シーズン1の1話からオススメしないと太田さん困るんじゃね?
http://rutube.ru/tracks/3302448.html?v=3dfd09ab8ac9e006d30268e42527131c
 個人的にはシーズン1の10話「アサギの琴」が好き。
<ζΙζΙ>(同上)
 いや、まぁ、さすがにそこからってのは暇な時にでもって言うレベルじゃなかったので、比較的独立してる所の人間主義を礼賛している話を紹介しようと思ったのです。
 それに、僕も先日太田さんに衝撃を与えた「異人たちの夏」を観たんだけど、両親が居なく、親戚に育てられ孤独的な主人公と、異人との交流という点で「夏目友人帳」と設定がどこか似てると思った。
 そして「異人たちの夏」のラストに、僕もやられてしまった。
 (亡き両親との暖かい交流と別れの後、少しばかりの感傷に浸っていた所、ラスト三分でなんとも言えない気持ちになった。)
 だからこそ、一貫して異人とのあたたかい交流を描いているところの「夏目友人帳」を紹介しようと、思ったんだな。
<太田>(ツイッターより)
 ・・・<ζΙζΙ、ζζΙΙ両君>オススメのアニメの『夏目友人帳』の見たら、面白くって、小コラム<(後出)>書いちゃったよ。
 日本じゃ、妖(あやかし)(妖怪)=自然≒精神障害者、ってこと。
<太田>
 ゲッ! ζζΙΙクン、ロシア語(キリル文字)の動画サイトでロシア語の字幕が出んのね。
 ζΙζΙクン紹介のは英語の字幕が出るしな。
 それだけ、世界的に流行ってるってことなんだろうが・・。
 ζΙζΙクン紹介のやつとその次のやつ、ζζΙΙクン紹介のやつだけ拝見したよ。
 いや、ぶったまげたぞ。
 まさに、主人公は、役所を飛び出してからの私そのものじゃん。
 周りが実はあやかし(妖怪)(注1)(精神障害者ないしはその予備軍(注2))だらけであることに気付き、彼らに多大の迷惑をかけられ、苦笑しつつも、愛すべき彼らに(少なくとも主観的には)優しく接してきた私ってこと。
 (注1)「妖怪(ようかい)は、・・・人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的な存在のこと。妖(あやかし)または物の怪(もののけ)、魔物(まもの)とも呼ばれる。・・・
 妖怪は祟りや恐怖だけの存在ではなく、時として幸福を授けてくれる存在であ<るが、>・・・これらは、自然崇拝に見られる特徴であり、自然の一部である天気や気候においても、適度な晴れや雨は実りや慈雨であるが、過ぎれば日照りや水害になることと共通する。・・・また、幸をもたらす効果として、より美しくする装いを「化粧」というが、妖怪やお化けをあらわす「化生」が語源ともいわれる。・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%96%E6%80%AA
 (注2)「精神障害者≒妖怪」観が日本人の潜在意識の中にあるように思われる。ちょっとネットにあたっただけでも、以下のような記述が見いだせた。↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%96%E6%80%AA
 「精神障害者に対する恐怖が根底にある口裂け女など、妖怪や都市伝説というのは差別意識との関係が深い」
http://homepage3.nifty.com/hirorin/youma01.htm
 「知人の女性が、大学時代に精神分裂病(人格統合失調症)にかかり、以後、病棟暮らしとなっていた。・・・それは、ただ生きているだけの、廃人、あるいは、なにか妖怪のようにも感じられるのだ。」
http://yaplog.jp/enigko581/archive/3
 「精神病は何かに取り付かれているようです僕は妖怪とかこの世のものではないものに取り付かれているとそう取っています」
http://www.wel.ne.jp/bbs/article/76191.html
 興味が湧いて、『夏目友人帳』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E7%9B%AE%E5%8F%8B%E4%BA%BA%E5%B8%B3
はもちろん、原作者の緑川ゆき(1976年~)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%91%E5%B7%9D%E3%82%86%E3%81%8D
についても調べちゃったよ。
 さて、ここで、「人間主義日本における精神障害」について、私なりの解説をしておきましょう。(これ以降、突然丁寧言葉に変わります。)
 「人口比(生涯有病率)で見てみると日本は年間有病率でイタリアに次ぐ低さ(人口比8.8%)であり、生涯有病率では最低水準(18.0%)である。・・・
 メンタルヘルスの状況から判断すると日本は相対的にストレスの少ない社会であると断言することも可能であるし、日本人はノー天気な国民と決めつけることも不可能ではない。・・・
  重度患者の受診率についてはデータのない国もあるので、中度の患者の受診率で各国を比較すると、ベルギーの受診率が50.0%と最も高く、日本は16.7%で最低である。心の病気に関しては日本の場合は病院に行かない割合が非常に高いのである。日本の場合は、メンタルヘルス疾患の患者が多いのが問題なのではなくて、むしろ、病気にかかっても医者に見てもらわない、見てもらいにくいのが問題なのである。
 なお、ここで比較対象となっている国は10カ国であり、年間有病率の低い順に、イタリア、日本、ドイツ、スペイン、ベルギー、メキシコ、オランダ、フランス、ニュージーランド、米国である。・・・
 国際的な疫学調査を行うと、東アジア諸国(中国、韓国、台湾、日本)は欧米に比べて、いつもうつ病患者の罹患率が低い。...米国で人種別のうつ病調査を行っても、アジア系は、白人や黒人に比べてうつ病の罹患率が低い。」
A:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2140.html
 つまり、日本人の精神障害者数の割合は世界有数の低さであり、発病しても医者にかからない者の割合はどうやら世界一らしいけれど、これは、日本には精神障害発症を防止し、発症した者の面倒を見るシステムが社会の中に組み込まれているからだと思われます。
 私の言葉に置き換えれば、日本は妖怪ならぬ精神障害者をなだめすかしながら、彼らを優しくケアする人間主義社会である、ということです。
 支那人(漢人)の発症率が海外において低く、また本国においてもかつては低かったのは、一族で支え合う社会システム・・儒教がそれにイデオロギー的粉飾を施していた・・があるからでしょう。
 では、台湾と韓国における発症率の低さは?
 支那人と同じ理由がまずあり、それに日本統治時代に浸透した人間主義が加わり、戦後は、経済発展に伴い、一族で支え合う社会システムこそ崩壊したけれど、人間主義は相当程度残り、韓国の場合、これに更にキリスト教原理主義による信者の相互支援が加わったことが発症率を低く抑えている、というのがとりあえずの私の仮説です。
 さて、中国共産党が統治するところとなった支那で、つい最近まで脱儒教政策が推進され、そこへこのところの経済発展により、一族で支え合う社会システムが崩壊しつつあることにより、支那は、米国的な裸の個人主義社会にどんどん接近しつつあります。
 「・・・中国の精神障害者は2009年時点で1億人以上に上り、・・・単純計算では100人中13人が精神障害者であることにな<る。>・・・」
B:http://sankei.jp.msn.com/world/news/110804/chn11080411000002-n1.htm
 このデータ↑を踏まえれば、日本人の精神障害年間有病率は8.8%(A)であるのに対し、Bの13%というのは瞬間風速値なので、支那人の年間有病率は更に高いとすると、支那人の精神障害発症率が、既に、日本人のそれより顕著に高い値になっているであろうことが、そのことを端的に示しています。
 ついでですが、若年者を中心に米国の精神障害者の入院率が長期上昇趨勢にあります。
http://www.taipeitimes.com/News/world/archives/2011/08/05/2003510018
 これは、発症率そのものの上昇を意味していると考えられ、その背後には、米国におけるキリスト教原理主義の後退があるのではないでしょうか。
 だとすると、米国人のストレスは高まる一方であるはずであり、米国の精神障害発症率世界一の座は、引き続き見通しうる将来にかけて維持される、と見た方がよさそうです。
<ζΙΙζ>(「たった一人の反乱」より)
 今回の嫌韓は本当に話が大きくなってるなぁ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110804/221884/?P=1
 ここ数年のフジTVの酷さに溜まりまくってたフラストレーションが一気に爆発したって事なんだろうけど。
<太田>
 この人の文章、とーにかく長すぎるよ。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 ボクの言ったことを経産省「幹部」が裏付けてくれたな。↓
 「・・・「経産省を毛嫌いする菅直人首相に人事をもみくちゃにされないよう、自ら決断したものだ」。経産省幹部は、事務次官ら3人の「更迭」をこう解説した。・・・
 経産省は東京電力福島第1原発事故で、電力会社への天下りなど官民もたれ合いの構図が批判された。さらに幹部のインサイダー取引疑惑や女性問題が浮上。原子力安全・保安院の「やらせ問題」まで発覚し、信頼は地に落ちた。首相は経産省への不信感を強め、保安院の分離を固めたが、省内には「エネルギー政策を丸ごと他省庁に移されるのでは」との危機感すら漂っていた。・・・」
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110805k0000m020134000c.html
 中共資本の日本への怒涛のごとき進出を大歓迎する奇特な日本だってさ。↓
 A few years back, Japan’s Prime Minister’s Office found in a survey that more than 70% of the country did not like Chinese people. But when it is a question of getting Chinese money into Japan, attitudes change in favor of China. ・・・
http://www.atimes.com/atimes/China_Business/MH05Cb01.html
 財政再建がらみで、米国で、過度の国防費削減や前方展開している米軍の削減が行われないように訴える記事、コラムが出てるねえ。
 そうはいってもそうなることは必至だな。
 何度でも繰り返す、日本人よ、このことを忘れるな。↓
http://www.washingtonpost.com/blogs/checkpoint-washington/post/panetta-mullen-warn-against-additional-cuts-to-pentagon-budget/2011/08/04/gIQAHjiluI_blog.html?hpid=z3
http://www.washingtonpost.com/opinions/yes-cut-defense-spending–but-by-how-much/2011/08/04/gIQATLq5uI_print.html
http://www.csmonitor.com/Commentary/Opinion/2011/0804/Look-to-the-cold-war-to-chill-fresh-calls-for-American-isolationism
 どっちもアヘンが主要な資金源だった中国国民党も中国共産党も、ナショナリズムを騙った大匪賊だったってことだ。↓
 ・・・ The Nationalist government relied on opium revenues to fund its expansive modernizations in the 1920s and ’30s; it even maintained a monopoly on opium-addiction cures. In 1945, at the height of the civil war, opium generated more than 40% of the Communists’ budget. All this, while the puppet government convened “Down With Britain” rallies and Mao wrote, in some 15 essays, of the “people’s unrelenting and heroic struggle” against opium imperialism.
Mao did eventually kick China’s opium habit, after he took power in 1949. ・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424053111903520204576483511358796294.html
 ふんじゃ、ツタンカーメンはバスク人だったんかしら?
 ついでに、古典アテネ人のDNAが残ってたら調べてみると面白いかも。↓
 「英国人男性の最大7割と西欧諸国の男性の半分が、古代エジプト王ツタンカーメンと同じ遺伝子ルーツを持っていることが・・・明らかになった。・・・
 現代のエジプト人でこの遺伝子グループに分類される人の割合は1%未満という。・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E7%9B%AE%E5%8F%8B%E4%BA%BA%E5%B8%B3
 ここまで来たら、不老不死のクローン人間をつくり、その人間に生きてるうちに全記憶を移植することで、我々が不老不死を達成することも時間の問題では?↓
 「マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)、ES細胞(胚〈はい〉性幹細胞)それぞれの万能細胞から精子をつくり出すことに、京都大のチームが成功した。その精子を使って受精、出産にも成功。・・・」
http://www.asahi.com/health/news/OSK201108040174.html
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太田述正コラム#4912(2011.8.5)
<イギリスと騎士道(その2)>
→非公開