太田述正コラム#5111(2011.11.13)
<皆さんとディスカッション(続x1378)>
<太田>(ツイッターより)
 昼過ぎから見始めたチャン・イーモウ監督のB級映画『王妃の紋章』、途中からだったけど、意外に面白くて最後まで見ちゃった。
 現在の「世界殺戮史に思う」シリーズ、書くのにムッチャ時間かかるので息切れ気味だったんで、今日の有料読者向けコラム、この映画評論にするかなあ。<(2011.11.12夕)>
 結局、昨夜、「映画評論29:王妃の紋章」シリーズの一回目を書いたんだけど、期待に反して(?)書くのに時間かかっちゃった。
 支那の昔の話は、固有名詞の日英表記の突合だけでも手間かかるもんでね。
 なお、公開時に分かるけど、「世界殺戮史に思う」シリーズと部分的にかぶっちゃったな。
<kunisaki1986>(同上)
 国民党も初めから赤かったんですね。 RT @ohtanobumasa 赤露による支那侵略(その5)・・・ http://blog.ohtan.net/archives/52108616.html
<太田>
 そんなの常識的な話であり、単に戦後の日本人の大部分が忘れさせられてるだけのこと。
 明日配信する、「赤露による支那侵略」シリーズの最終回(コラム#4950)を読み終えてから、もう一度、感想をお聞きしたいねえ。
<べじたん>(同上)
≫’U.S. military doctrine derives from 200 years of battle with…Canad<a>’ から始まるWSJの記事 Why do Americans conduct wars the way they do? 、 読みたいなあ。≪(コラム#5109。太田)
http://forums.flyfisherman.com/showthread.php?3790-America-s-Distinctive-Way-of-War
に全文転載されてますが、 RefControlを入れると見れます。
http://d.hatena.ne.jp/deadnendo/20091213/refcontrol
<太田>
 おおありがたい。
 さっそく引用を。↓
 ・・・The American way of war originated not in the 20th century, and not even in our own Civil War, but rather in a protracted contest with our most enduring and effective enemy of all: Canada.
 <「<17世紀から>ほとんど2世紀にわたってカナダが北米イギリス植民地にとって最大の脅威であった」と筆者は言ってるけど、「ほとんど3世紀にわたってカナダが北米イギリス植民地及び米国にとって最大の脅威であった」と言うべきだった。↓>
 For almost two centuries, Canada was the greatest threat to England’s American colonies and the young United States. The main theater in this contest was what Indians called “the Great Warpath,” the 200-mile route of water and woodland paths that connected Albany and Montreal—and, by extension, New York and Quebec cities. It was here that Americans faced threats, conceived doctrines, and demonstrated martial qualities that we recognize today.・・・
 <民主主義を押し付ける戦争も、その過程でカナダに対してやっているとよ。↓>
 War in the name of democracy? In 1775, the rebelling colonies—not even yet the United States—launched an invasion of Canada. The Continental Congress ordered the covert distribution of propaganda pamphlets in what is now Quebec province. The opening line: “You have been conquered into liberty.” Congress subsequently sent Benjamin Franklin north with a few companions to consolidate the conquest of Montreal, spread parliamentary government, and familiarize the baffled habitants of Canada—ruled for over a decade with mild firmness by a British governor—with the doctrines of habeas corpus and a free press.・・・
 <EU高官のソラナ(Javier Solana)に対し、その北米史の無知を嘲った筆者に、私は、この筆者の日本史の無知を嘲りたい。日本は戦前・戦中も民主主義だったってね。↓>
  “Conquering into liberty” sounds absurd or hypocritical. In the case of Canada, it failed (though of course Canada took its own path to free government). In the cases of Germany, Italy and Japan after World War II, it succeeded. In the case of Iraq, who knows?・・・
http://forums.flyfisherman.com/showthread.php?3790-America-s-Distinctive-Way-of-War
<ΖΦΦΖ>(「たった一人の反乱」より)
 司法制度の欠陥の続きは?
 かなり気になってんだけど。
<太田>
 (続きだよー。)
 (なお、裁判と言っても、判決まで至るものと、和解等で終わるものがある・・「日本全国の地方裁判所における、平成18年の第1審民事通常訴訟事件の既済件数は14万2976件であったが、そのうち判決が6万0543件であったのに対し、和解は4万6426件、その他(訴えの取下げ等)が3万6007件であった。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E8%A7%A3#.E8.A3.81.E5.88.A4.E4.B8.8A.E3.81.AE.E5.92.8C.E8.A7.A3
・・から、本来、場合分けをして論じなきゃいけないんだけど、ここでは止めとくからね。)
 じゃ、どうすればいいか。
 結論を急ぐ前に、ここでもう一つ、根本的な問題を指摘しておこう。
 できるだけ組織で・・より正確に言うと、何でも(私の言うところの、)エージェンシー関係の重層構造で・・業務を行う日本社会の中で、裁判官と弁護士だけは例外に属する、という点だ。
 すなわち、日本の司法界において、検察官だけは組織で業務を行う(=検察官同一体の原則)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%AE%98
けど、弁護士は、もっぱら一人で業務を行う・・それは弁護士事務所に属している場合でも基本的に違いはない・・し、裁判官も、そもそも、簡易裁判所や家庭裁判所は単独審だし、地方裁判所も、民事事件においては、第一審の場合は基本的に単独審であって、高等裁判所以上でようやく3人以上の裁判官による合議審となる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E8%AD%B0%E5%AF%A9
 しかも、合議審と言っても、前に言及した憲法第76条から分かるように、ヒラ裁判官といえども、裁判の中身に関して上司の指示に従う必要はないので、組織で業務を行う、ということでは必ずしもない。
 これでは、(上述の意味で)組織で業務を行うことが基本の(個人主義的ではない)日本において、弁護士や裁判官が効率的・効果的に業務を処理できなくて当然だし、そもそも弁護士や裁判官が上司等によって鍛えられて人間を陶冶したり業務に習熟したりすること自体が困難だ、と言わざるをえない。
 私は、父の訴訟や法的紛争を横目で眺め、私自身の訴訟も様々経験してきているが、実際、弁護士については、全般的に、依頼人に対するサービス業に従事しているという感覚がなく、かつ事務処理が杜撰で業務に係る勉強もしておらず、裁判官については、全般的に、社会事情に疎すぎる上、やはり事務処理が杜撰で業務に係る勉強もしていない、という印象を抱いている。
 弁護士も裁判官も、(本来同程度の資質を持っていたはずの)文系のキャリア行政官僚に比べて、全般的に、格段に無能であり勉強もしていない、と言ってよかろう。
 これは、必ずしも彼らの責任ではなく、社会に出てからの環境の違いがしからしめたものに違いないのさ。
 
(更に続くよー)
<秋の空>(2011.11.10)http://d.hatena.ne.jp/toyotoki11/20111109
 TPPに関する豊丘時竹さんのコメントが太田コラムに載っていたので、レスします。
 WSJ以外に特に取り上げるほどのことではないとの太田さんらしい認識ですよね。
 太田さんは日経を引用されてましたけど、属国日本のレベルの低い日経をどうして太田さんが評価されるのか私には全くわかりませんでした(笑)。
 株式日記のコメント欄に、TPPで騒ぐなら集団自衛権を行使して国防をまともにやれという意見(匿名で書いた自分のも含めて)が何件かあります。
 太田さんが引用した記事はレベルの低いTPP反対論者の陰謀論をもっぱら否定しているのでそれを太田さんは高く評価しているのでしょうけど、(頼まれもしないのにアメリカ様にご注進して日本の主権をないがしろにしている)TPPの内容そのもの、ニュージーランドがTPPに幻滅、アメリカに激怒している実態等へのまともな言及・論考ではないですね。
 当方はTPPは出来損ないのアングロサクソン、アメリカの暴走・断末魔、日本経済のイギリス化(アングロサクソン化)はTPPでは実現しないどころか、むしろ属国化の延長にしかならないと思ってます。
 TPP推進派イコール吉田ドクトリン墨守派ですから。
 残念ながら株式日記のTORA氏は太田さんのこと全くわかってないと思います。
 私はTPPに関する日本国内の論調、賛成派・反対派の言い分、両方ともに首をかしげてます。
 むしろTPPで騒いだ結果、日本の国防放棄と属国状態に日本人が目をさましてくれればいいと思うのですが。
<豊丘時竹>(同上)
 ・・・コメントをいただき恐縮です。
 どうもありがとうございます。
 太田述正コラムはちょっと見たのですが、出かける直前でしたので、詳しくは読んでいません。
 日本の国防放棄と属国状態に目をさましてくれればいい、私もそう感じます。
<豊丘時竹>(2011.11.11)http://d.hatena.ne.jp/toyotoki11/20111111
 ・・・今朝のモーニングバードに榊原英資が出演し、TPPについて解説した。
 アメリカとオーストラリアが、東アジアの自由貿易協定に入れてもらいたいと言ってきているのである。
 それが実際なので、あわててTPPに参加するなどと言ってはいけない。
 また、TPPに入ればいずれ混合診療にされ、健康保険は潰される、という内容だった。
 太田述正コラムでは、TPPは心配ないとのことのようだが、やはり多少の警戒は必要ではなかろう。
 上記の太田述正コラムについては、<「秋の空」さんの>・・・コメントが投稿されているので、それもご参照いただきたいが、さらにもう少しさかのぼれば、下のURL(イタリック)に示した太田述正コラム(#5103、2011.11.9、<皆さんとディスカッション(続x1374)>)で、氏が豊丘時竹の疑問に答えてくださった部分に行きつく。
 #5103の中で、二つの典拠先を示された上で、日本人はTPPに騒ぎ過ぎだと氏は結論している。
 太田氏の考えは、榊原氏とは異なるが、読者諸氏のご参考になろう。
 (若干、論旨が分かりにくいと我ながら感じるが、ご容赦願う)。
 私は、太田氏に賛成したいが、少しずつ先延ばしに対処するのがいいような気がする。
 URL;http://blog.ohtan.net/archives/52108130.html
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 オリンパスの上場廃止を回避するために関係当局が苦心惨憺している様子が目に見えるようだ。↓
 「・・・証券取引等・・・監視委は「飛ばし」などが粉飾決算に当たるとみて金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いを軸に調査。だが、オリンパスは近く、過去の有価証券報告書の訂正を財務省に提出する方針で、現在の有価証券報告書には損失隠しがないとみられることから、監視委は会社の虚偽記載は課徴金など行政処分にとどめる見通し。
 一方、監視委は菊川剛前会長兼社長ら旧経営陣とともに、オリンパス社外のブローカーらが直接的にかかわった企業買収そのものに着目。ジャイラス社買収に関し、当初から助言会社へ渡った資金が損失穴埋め目的で、疑惑発覚まで支払いの詳細が明らかにされなかった点などを踏まえ、一般投資家を欺く偽計取引に当たるとみて調査している。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111113/biz11111302030000-n1.htm
 「・・・偽計容疑を適用すれば、同法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑では告発が難しかった・・・<ところの、>損失隠しに加担した・・・社外関係者まで告発対象にしやすくなる。」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011111201003603.html
 件の2監査法人、実は同じ監査法人が2003年に2つに分かれたもんなんだからね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%9C%89%E9%99%90%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E6%B3%95%E4%BA%BA
 今回、かつての仲間達が再び共同作業をやることになったわけだが、こんな短時間で、「90年代にさかのぼり決算処理を洗い直す」なんてことができるのかね。
 ま、関係当局が総力をあげて目こぼしをしてくれるんだろうが・・。↓
 「オリンパスが証券投資の損失を隠していた問題で、同社が過去5年分の決算を訂正する方針を固めたことが明らかになった。訂正する決算に関わった2監査法人に12日までに監査を依頼した。決算訂正後は現在開示されている財務諸表のうち、自己資本や買収によって生じた「のれん」が減少する見通しだ。・・・
 損失隠しの全容を反映するには90年代に遡り決算処理を洗い直す必要があり、その期間はあずさが請け負う。・・・
 12月14日までに提出できないと上場廃止になるため、これに間に合うよう作業する。
 訂正は損失隠しの疑惑解明を進める第三者委員会の報告も踏まえる。財務局に提出する訂正後の有価証券報告書は過去5年分で、それ以前は訂正部分を開示する見込み。・・・」
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819596E3E0E2E29B8DE3E0E3E3E0E2E3E39F9FEAE2E2E2
 お騒がせの巨人内紛報道を見ていて思ったのは二つ。
 一つは、現在の日本では、株式会社の意思決定システムの商法に基づくタテマエと実態とが乖離している場合があり、そんな場合には、社内の最高幹部間で鋭い意見対立が生じた時に、この対立を、社内で解決し、克服することが困難であること。
 二つは、讀賣新聞社には、その子会社を含め、上層部に人材が乏しそうであること。↓
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111111/crm11111114480028-n1.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111112-00000003-sanspo-base
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/111112/bbl11111220060027-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/111113/bbl11111300170001-n1.htm
 イラクの棄権が気になるなあ。↓
 「アラブ連盟(22カ国・機構)は・・・シリアを16日から資格停止にすると発表した。アラブ諸国に駐シリア大使の召還も求めた。・・・
 採決ではシリアのほか、反政権デモを抱えるイエメン、親シリアのレバノンの3カ国が反対、イラクが棄権した。」
http://www.asahi.com/international/update/1112/TKY201111120615.html
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太田述正コラム#5112(2011.11.13)
<映画評論29:王妃の紋章(その2)>
→非公開