太田述正コラム#5119(2011.11.17)
<皆さんとディスカッション(続x1382)>
<太田>(ツイッターより)
 シリアの有力諜報機関の首都近くの本部を反体制派部隊がロケットと機関銃で攻撃。
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-15752058
 平和的体制変革を標榜する反体制派組織の連合体はこの部隊とは一線を画している。
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-15563900
 アサド体制打倒の車の両輪が揃った感じだな。
 「数十万円で取引される女子大生の卵子 北京の闇市…」
http://j.people.com.cn/94475/7646075.html
 卵子の売買そのものより、闇市の生々しい実態の方が面白い。
<さいへん>
≫そんじゃ、法律が大綱しか定められず、判例にも拘束されない日本の裁判官の問題はともかくとして、どうして弁護士について、日本以外の先進国では、ボクが指摘したような問題が存在しない(ように見える)んだと思う?。≪(コラム#5117。太田)
 これは以前の太田さんの指摘↓が正解ですか?
≫日本の場合、弁護士は、国によって参入規制がなされ、特権を享受していて、競争原理が働いていません。その結果、自己研鑽を怠っている人が多く、専門化も進んでいません。(以上、私の経験による。)≪(コラム#4493 太田)
 あとは日弁連が事件性不要説に立っていて法律事務を独占している問題
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E5%BC%81%E6%B4%BB%E5%8B%95
や、日本独特の弁護士自治制度
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E8%87%AA%E6%B2%BB
とかでしょうか。
<φφΖΖ>(「たった一人の反乱」より)
 <昨>日、ディスカッション上の議論に気付き、自分はまだ議論の全体を把握してないけど、日本以外の先進国では弁護士が提供するサービスに対し競争原理が働いてるからだ、と推測しとく。
http://jnusblog.takimedia.com/japaneseblog/?p=287
<φΖφΖ>(同上)
≫さあ、誰かそれくらい当ててくれや。≪(コラム#5117。太田)
 ほとんど個人で勝手に判断する日本の裁判官の、その個人的判断を推測することが日本の弁護士の仕事になっちゃうのが問題とか?
 それと過去コラムの「人の気持ちが分かる人分からない人」シリーズ<(コラム#4400、4402)>でいうところの共感的確性が日本の弁護士(と裁判官)のような環境では、ほとんど育たず、クライアントに共感できない人が自分の仕事の結果に責任感を持てるかどうかそもそも怪しいとか。
 ・・・補足<すると、>裁判官の個人的判断を推測することが仕事になる=弁護士が社会正義や庶民の考え気持ち等を体現する必要が特に無くなる、ってことです。
<太田>
 さいへんさん、φφΖΖさん、ご正解!
 φΖφΖさんからは、意表を突く刺激的なお答えをいただきましたね。
 話はズレて裁判官の方ですが、私は、裁判員制度・・量刑まで一般市民に判断させる・・に抵抗感を持ち続けていますが、刑事だけとはいえ、裁判官に、娑婆の風をあて、かつ「競争者」を出現させることで、裁判官のお粗末な状況の改善を図ろうと試みた、ということだったのかもしれません。
 そう考えれば、裁判員制度も大いに意義がある、と言うべきかもしれません。
 なお、確かに、裁判員制度も憲法の文面に違反するくさいですねえ。↓
 「最高裁大法廷<は>・・・裁判員制度が・・・合憲とする初判断を示した。・・・
 法律の解釈や裁判手続きは裁判官が担当し、裁判員は事実認定や刑の重さを裁判官とともに判断すると定めた・・・裁判員法の・・・仕組みは、適正だとした。・・・
 「裁判官は内閣が任命すると定めた憲法に違反する」などと、さまざまな違憲論が出ていた<が、>・・・裁判官の独立は「裁判員制度のもとでも、公正中立な裁判の実現が図られており、独立は保障されている」とした。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011111790070056.html
 それでは、記事の紹介です。
 菊川ら包囲網がどんどん狭まっている。↓
 「オリンパスがそれまで長年、会計監査人を務めたあずさ監査法人との契約を2009年に終了させた際、対外的には理由を「任期満了」と説明しながら、内部の一部幹部には、損失計上をめぐる「意見の重大な相違」と伝えていたことがわかった。・・・」
http://www.asahi.com/national/update/1116/TKY201111160633.html
 「・・・オリンパスに対し、英国の重大不正取締局(SFO)は16日、捜査に着手した・・・」
 損失隠しをめぐっては英国の医療機器会社ジャイラスの買収に伴う助言会社への報酬が関連しているとみられている。」
http://www.asahi.com/international/update/1117/TKY201111160695.html
 気が付かなかったけど、民主党からも自民党からも、監査法人にメスが入れられようとしているんだね。↓
 「・・・民主党は10日に「資本市場・企業統治改革ワーキングチーム(WT)」設置、・・・座長に就任した大久保勉政調副会長によると、東京証券取引所の上場ルールや監査法人のあり方、証券取引等監視委員会の検査官増員など幅広い制度の見直しも視野に入れる。 ・・・
  一方、自民党は11日、・・・PT座長の塩崎恭久元官房長官<が>、オリンパスについて「根深い問題がある」と強い懸念を示し、「こうした不正がまかり通るのは企業側の問題と、それをチェックする監査制度に大きな問題がある。会社法のあり方を考えていきたい」と指摘した。・・・」
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201111110101.html?ref=reca
 オリンパスの現在の有価証券報告書も粉飾だったんじゃないか。↓
 「オリンパスが2011年3月期連結決算で、企業の財務の健全性を示す純資産を300億円以上水増ししていたことが関係者の話で分かった。1990年代の財テクで生じた損失の隠蔽(いんぺい)工作を重ね、10年以上も不正な決算を続けていたことになる。・・・
 オリンパスの連結純資産は11年3月期末で1668億円だったが、決算訂正後は約1300億円程度に減る見込みだ。ただ、負債が多すぎて純資産がマイナスになる債務超過の状態は避けられることになり、東京証券取引所が上場を維持させるかどうかの是非の判断にも影響を与えそうだ。」
http://www.asahi.com/business/update/1116/TKY201111160643.html
 そうだとすると、現在の監査法人である新日本監査法人は更に責められるべきだし、ウッドフォードだって責任を免れないのでは?↓
 「オリンパスの米国預託証券(ADR)を購入した投資家1人が、同社と幹部らを相手取り、損害賠償を求める訴えを米連邦地裁に起こした。原告側は集団訴訟とすることを目指している。
  ペンシルベニア州の連邦地裁に14日提出された訴状によれば、原告が訴えているのは、オリンパスと同社のマイケル・ウッドフォード元社長、菊川剛前会長兼社長、高山修一現社長で、不正行為に手を染める原因を作ったと指摘、その結果投資家に損害を生じさせたと主張している。・・・
 ウッドフォード元社長は、自身に対する訴えは「ばかげている」とし、「ADR購入は私の解職後であり、なぜ私が含まれているのか分からない」と話した。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aEmxzxmusFRU
 というのは、オリンパスは3月決算だけど、その有価証券報告書のが開示された(≒株主総会に提出された)のは6月29日であったところ、ウッドフォードは、その時点で既に社長執行役員だったからだ。
 (代表取締役社長じゃなきゃ、有価証券報告書について責任を負わなくてもいいってことはないよね。間違ってたら誰か指摘して。)↓
 「・・・日本の上場会社で3月決算会社の場合、定時株主総会は横並びで6月25日から27日ごろ行われている。・・・有価証券報告書の監査報告書の日付がEDINET・・・(Electronic Disclosure for Investors’ NETwork)は、『金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム』のこと・・・への登録日(通常、株主総会終了日)と一致しており、3月決算ですと3ヶ月後の6月25日前後に集中する。・・・」
http://www.hi-ho.ne.jp/yokoyama-a/shareholdersmeeting.htm#株主総会の開催日
http://info.edinet-fsa.go.jp/
 「ウッドフォード<は、>・・・2011年・・・4月1日付けで社長執行役員(President & COO)となった。同年6月29日には株主総会決議によって、それまで社長を務めていた菊川剛に代わるオリンパスの代表取締役社長(Chairman & CEO)に就任した・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89
 シリア空軍諜報機関本部への反体制派部隊の攻撃はなぜ行われたのかが分かるよ。↓
 <アサドの父親の故シリア大統領は、もともとは空軍司令官であったことから、諜報機関の中でも中心的存在になっていたからだってんだな。たまたまだけど、ムバラク前エジプト大統領も、もともとは空軍司令官だったな。アラブ諸国の空軍は空のことより地上のことの方により関心があるみたいね。↓>
 ・・・Syria’s Air Force Intelligence directorate is a central part of the Assad regime’s repressive apparatus — less concerned with aviation matters than keeping tabs on the opposition. Wednesday’s rocket and machine gun attack on one of its facilities on the Damascus-Aleppo highway, Hasrata, looks like the most audacious and precisely targeted attack yet by President Bashar al-Assad’s enemies. Its symbolic significance will not be lost on Syrian citizens.
 This feared organ of state security owes its ostensibly anomalous role to the fact that the president’s father and predecessor, Hafez, was commander of the air force before coming to power in 1968.・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2011/nov/16/syrian-intelligence-base-attack
 上記諜報機関の本部所在地が地図で示されてるよ。↓
http://www.guardian.co.uk/world/interactive/2011/nov/16/free-syrian-army-attack-damascus
 巨人内紛がらみのこのコラム、興味あるデータを示してくれてる。↓
 「・・・1981年には52歳1カ月だった社長の平均年齢は2010年には59歳7カ月と30年連続で上昇し続け、2010年の社長交代率は2.47%で、過去最低を更新した・・・
 経営者の年齢が高い企業ほど成長率は低くなり、60歳を超えるとマイナスに転じ、70歳以上になると平均でマイナス5%近くになるともされている。・・・
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111115/223879/?top_updt
 米国で、現在共和・民主両党議員が協議している財政再建案がまとまらないことを期待するコラムだ。まとまらないと、金持ち優遇税制が昔に戻って「是正」されるんだね。↓
 ・・・Sane fiscal policies are blocked because one party refuses to accept the need to roll back the excesses of the 2001 and 2003 tax cuts. If Congress does nothing, those tax cuts go away. That’s why a “failure” by the supercommittee to endorse a deeply flawed deal is actually a victory for sensible deficit reduction.
http://www.washingtonpost.com/opinions/how-we-can-succeed-through-supercommittees-failure/2011/11/16/gIQA7hLXSN_print.html
 サッチャリズムが英国に残した深刻な爪痕が示されている。↓
 ・・・When Thatcher came to power, manufacturing accounted for almost 30% of Britain’s national income and employed 6.8 million people. By the time Brown left Downing Street last May, it was down to just over 11% of the economy, with a workforce of 2.5 million.・・・
 ・・・no other major economy has been through our scale of de-industrialisation. ・・・
http://www.guardian.co.uk/business/2011/nov/16/why-britain-doesnt-make-things-manufacturing
 まことに謙虚な人民網記事であることよ。↓
 「中国のアニメ・漫画と日本のアニメ・漫画の違い・・・」
http://j.people.com.cn/95952/7647113.html
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太田述正コラム#5120(2011.11.17)
<豪州への米海兵隊基地設置をめぐって>
→非公開