太田述正コラム#5915(2012.12.20)
<皆さんとディスカッション(続x1755)>
<太田>(ツイッターより)
 「朴槿恵候補の当選確実…」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/12/19/2012121901990.html
 朴さん、おめでとう!
 そして、日本でも女性の天皇や首相が生まれる日の早からんことを。
<太田>
 昨日の宿題だ。
≫閣議決定による解釈改憲は公明党への配慮で無理だから、国家安全保障基本法案(議員立法)による解釈改憲って流れになってるんだと思う。≪(コラム#5913。+jwq8nwy0)
 その根拠は?
 さて、国家安全保障基本法案 (概要)
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-137.pdf
についての取りあえずの感想を述べておこう。
 同法案(概要)にはこうある。
 第10条の自衛権の行使「一 我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生した事態であること。」「四 一号に定める「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃については、その国に対する攻撃が我が国に対する攻撃とみなしうるに足る関係性があること。」「五 一号に定める「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃については、当該被害国から我が国の支援についての要請があること。」「六 自衛権行使は、我が国の安全を守るため必要やむを得ない限度とし、かつ当該武力攻撃との均衡を失しないこと。」
 ボクとしては、「我が国と密接な関係にある他国に対する」という限定を付することには反対せざるを得ない。
 これは、個別的自衛権概念の拡張に過ぎず、集団的自衛権の行使を認めたことにはならないからだ。(従来の個別的自衛権の政府解釈を堅持するのであれば、集団的自衛権を部分的に行使することを認めたことにはなるけどね。)
 こんなものでは、国連の関与がなかったコソボ紛争(1996~99年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%BD%E3%83%9C%E7%B4%9B%E4%BA%89
的なものはもとより、国連の関与の下のPKF(国連平和維持部隊)への自衛隊参加すらできない。
 ボクが口を酸っぱくして言ってきているように、「我が国の安全を守る」必要性など、(核抑止の必要性を捨象すれば、)見通しうる将来にかけてない以上、こんな風に個別的自衛権の概念を拡張(ないしは集団的自衛権行使を部分的に解禁)したとて、自衛隊の出番がないという現状にほとんど何の変更も生じないからだ。
 それどころか、憲法改正が事実上不可能である以上、このような法律を採択することは、日本の米国の属国的地位を恒久化させかねない。
 (台湾はそもそも他「国」じゃないし、れっきとした「他国」である韓国についても、日本同様米国によって守られているから、北朝鮮ないし中共等から本格的攻撃を受けるようなことは、日本ほどではなくても極めて考えにくい。結局、これは、米国、しかも、もっぱら北西太平洋地域以外における軍事介入のために、たまたま北西太平洋地域に所在しているところの米軍を、(核を含む)ミサイル攻撃等から自衛隊が守れるようにすることだけを目的とした法律だ、ということにならざるをえないってこと。
 もちろん、それだけでも、米国は、日本によるこの措置を歓迎はするだろうが・・。)
<qt9TD+xJ0>(「たった一人の反乱」より)
 拉致担当相は拉致問題に携わってきた人をと総裁
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1219&f=politics_1219_016.shtml
 安倍ちゃんって拉致被害者家族の人達からの信頼も厚いし今度こそは解決してくれるかな?
 拉致被害に対しての民主党政権の姿勢には野田を含めて真摯さが足りていたとは言えないしね。
 おかげで拉致被害者家族会からの民主党政権への信頼は極めて低かった。
<mCeItHa.>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
≫典拠ついてないよー。≪(コラム#5913。太田)
 典拠は『さらば吉田茂』(片岡鉄哉 文芸春秋 1992)より
 失礼しました。
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 保守ってんなら、吉田ドクトリンを含む戦後を保守するんじゃなく、せめて、皇族が範囲が広かった戦前に戻せってんだ。
 インチキ保守め。↓
 「安倍政権:「女性宮家」撤回へ にじむ保守色・・・」
http://mainichi.jp/feature/koushitsu/news/20121220k0000m010047000c.html
 ジャニー喜多川
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%8B%E3%83%BC%E5%96%9C%E5%A4%9A%E5%B7%9D
が大きく取り上げられていた。↓
http://www.thedailybeast.com/newsweek/2012/12/16/johnny-kitagawa-japanese-music-legend-speaks-out.html
 米国のウォレン・バーガー最高裁長官は、引退する際、全米ライフル協会/銃器ロビーの憲法修正第2条による銃器保有権の主張を特殊利益集団による詐欺だと切り捨てた。↓
・・・Former Chief Justice Warren Burger, in retirement, called the gun rights movement and its reliance on the Second Amendment “one of the greatest pieces of fraud… on the American public by special interest groups that I have ever seen in my lifetime.”・・・
http://www.csmonitor.com/layout/set/print/Books/Book-Reviews/2012/1219/The-Oath
 1哲学教授による、全米ライフル協会/銃器ロビーの論理が破綻していることを紛れの余地なく「証明」するコラムだ。↓
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2012/12/19/why-gun-control-is-not-enough/?ref=opinion
 米南北戦争中に綿花密輸取り締まりのために、グラント将軍(後に米大統領)が占領していた地域から全ユダヤ人追放令を発し、それがリンカーン大統領によって覆された挿話が詳細に紹介されている。
 グラントの人種主義的偏見が、リンカーンの聖書的偏見・・イスラエルの民が神に約束された地たる米国にやってきたのを追放するなどとんでもない・・によって覆された、というだけのことってのが分かるぞ。↓
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2012/12/19/general-grants-infamous-order/?ref=opinion
 persistent genital arousal disorder (PGAD)
http://en.wikipedia.org/wiki/Persistent_genital_arousal_disorderって女性の症状があんだね。
 男性の持続勃起症(priapism)に相当するという考え方もあるらしい。↑↓
http://www.thedailybeast.com/articles/2012/12/19/suicide-spotlights-persistent-genital-arousal-disorder.html
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 先週末、お休みした一人題名のない音楽会を緊急開催します。
 (連休中に通常の一人題名のない音楽会もお送りする予定です。)
 ガーディアン紙からのクリスマスプレゼント、くるみ割り人形
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8F%E3%82%8B%E3%81%BF%E5%89%B2%E3%82%8A%E4%BA%BA%E5%BD%A2
全幕をどうぞ。(26日までしか視聴できないのでご注意。)
 2009年のロイヤルバレエ公演(the Royal Opera House in Covent Gardenにて)です。
 プリマは吉田都(Miyako Yoshida)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E9%83%BD
であり、彼女のRoyal Ballet でのキャリアの最終年の演技です。
 配役等は次のとおり。
吉田都(the Sugar Plum Fairy) 
Steven McRae (the Prince)
Gary Avis (Herr Drosselmeyer)
Iohna Loots (Clara)
Ricardo Cervera (Hans Peter / The Nutcracker)
Artists of the Royal Ballet
振付(Choreography): Peter Wright after Lev Ivanov
http://www.guardian.co.uk/stage/video/2012/dec/19/royal-ballet-live-nutcracker-one-video
http://www.guardian.co.uk/stage/video/2012/dec/19/royal-ballet-live-nutcracker-two-video
 なお、ガーディアンは解説記事
http://www.guardian.co.uk/stage/2012/dec/18/movetube-nutcracker-beginners
も載せており、その中で、同じくピーター・ライト振付で2001年に上梓された映画バージョン、
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=ugQYItbfUnQ
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=32tVdNP4KdE
そして、1991年の、舞台背景を1970年代に設定したバージョン
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=drFs3cWP1uw
も紹介されているので、関心のある方はご視聴ください。
 くるみ割り人形の公演に行ったことはないのですが、カイロ時代に、曲のレコードがウチにあり、何度も何度も聴いたものです。
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太田述正コラム#5916(2012.12.20)
<米墨戦争と米国の人種主義(その2)>
→非公開