太田述正コラム#8351(2016.4.22)
<皆さんとディスカッション(続x2971)>
<太田>(ツイッターより)
 BBC電子版だけのようだけど、習近平が軍最高司令官(commander in chief of the military’s Joint Operations Command Centre)に就任した、と報じた(軍服姿の習の写真付)。
http://www.bbc.com/news/world-asia-china-36101140
<MH>
≫三菱自を三菱重工が復帰的吸収をするほかないよ。重工は、事実上の国家兵器廠の時代の意識が残ってて、燃費をゴマカシたりすりゃ、戦闘機パイロット等、兵士の命にかかわることから、今回のような不祥事は起こさないだろさ。≪(コラム#8349。太田)
 そんな事は間違ってもあり得ないでしょう。
 同社が三菱Gr内にて存続する限りにおいて、この手の不祥事は亡くならないものであり、他社に事業売却しない限り根治しないでしょう。
⇒三菱グループの会社群の中で、どうして自動車だけに「この手の不祥事」が頻発するのか、が問題なんだよ。
 なお、三菱グループ「内」で問題が「解決」してこなかった以上、自動車について、廃業する、売却する、という形での「解決」のほか、グループ内他社に吸収する、という形の「解決」だってありうる、とどうして思わないの?
 もっとも、私は、後者で「解決」すべきだ、と言ってるワケじゃ必ずしもなく、根本的な問題の所在を浮き彫りにするために、そう言ったんだからね。(後程、改めて説明。)(太田)
一、「三菱自工は既に重工の家来」
 何故なら現在でも三菱重工が筆頭株主(12.63%保有)です。重工の親方日の丸根性が骨身に染みてるので治りません。
 「三菱自動車工業の大株主」
http://www.ullet.com/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E5%B7%A5%E6%A5%AD/%E5%A4%A7%E6%A0%AA%E4%B8%BB
 そもそも世界の著名な大手自動車メーカーで、重工・銀行・商社などの「異業種」が大株主という企業は私の知る限り同社しか存在しないはずです。
 系列すなわち経営の独立性がないということです。
 同社は過去にもリコール隠しの不祥事はありました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E9%9A%A0%E3%81%97
 それを断ち切って再建した<ハズ>だったのですが、やはり三菱グループ内に居る限りはムリでした。
 「安東 泰志 ニューホライズンキャピタル株式会社 CEO(元三菱銀行OB 三菱自工取締役再生委員)
⇒本筋からはずれるけど、そのコラムへの投稿中の「メーカーの技術者は、技術的<に>全く不合理な要求を突きつけられ、逃げ場がなくなって窮鼠猫を噛むような状況に追い込まれたのではないか? 今回の件は、直接的には三菱自動車の問題だが、根底には軽自動車という税制・車両規格の不合理性の限界が潜んでいる。もうそろそろ軽自動車という規格の廃止を本気で考える時ではないだろうか?」は、傾聴に値するね。(太田)
 04年にリコール隠し問題発覚後、ダイムラークライスラーが手を引くと発表し経営危機に陥った際、我々はPEファンドとしてJPモルガンと組んで2000億円の資本を投入(格付
けCの会社への資本投下でした)、再生支援を行ないました。僕がヘッドとなった事業再生委員会では10のCFTを組成し、1000人の社員からのヒアリングと100人の社員の参加を得て徹底的に問題点を洗い出しました。その際に最も問題だったのが、各部署が独立し、タコツボのようで風通しが悪い社内風土、「開発・製造部門が上で販売部門が下」という顧客を向いていなかい文化でした。
 リコール問題については、ふそうと関係なく、普段ならあまり問題にならないような乗用車についてのの苦情もたくさん来るようになり(恐らくはマスコミの影響)、新聞の社会部から徹底的に叩かれましたが、前の経営陣のせいにはできないので、歯を食いしばって信頼回復に努めました。CFTでは、「今回のくやしさを逆に生かし、品質ナンバーワンを売りにしよう」として、敢えて保証期間の延長などの新機軸を打ち出しました。指示改修で済ませていた不具合もリコールするようになりました。
⇒ここまでは、ありきたりの分析でしかなく、しかも、「品質ナンバーワンを売りに」と「開発・製造部門が上で販売部門が下・・・<という>文化」とはほぼ同じことであるという自覚もなさそうなこんなファンド、何の役にも立たなかったのでは?(太田)
 稼働率が低いという理由で銀行が主張していた岡崎工場というキー拠点の閉鎖を止めるために、水島工場の稼働率を上げようと我々が考えたのが日産とのJV化でした。これにも当初は三菱重工は「日産ごときと組めるか」と否定的でした。
⇒三菱重工の判断が正しかったんじゃないの?
 ただでさえ不祥事の土壌があった(後述)ところへ、自社の上層部ならぬ、(事実上フランスの国策会社たる)日産から「技術的<に>全く不合理な要求を突きつけられ、逃げ場がなくなって窮鼠猫を噛むような状況に追い込まれたのではないか」ってこと。(太田)
 PFの統合や開発や購買の改善、さらには経営情システム報や管理会計を改善して情報が社内で共有できる仕組みも作ると同時に、CFTの成果を500項目もの施策に落とし込みました。ところが、途中から銀行が三菱3社の支援を前面に出すことを主張し始めたので(恐らく三菱重工の持分法会社にして金融庁査定を乗り切るという理由)、我々は再建にめどがついたのを契機に手を引きました。
 生え抜きでCFT出身の相川社長が就任し、我々の期待に沿って業績が回復してきたわけで、「砂を噛むような努力をしてきた」社長コメントは、あの状況から這い上がった社員たちの気持ちを代弁するものです。しかし、やはりファンドが去った後、銀行が主張したグループ内輪の支援によって自立心が失われ、甘えと驕りが出てきたのではないかと懸念します。
 今後は世界の数百万台のユーザーへの責任も考えて支援の可否が検討されるでしょう。」
https://newspicks.com/news/1512558?ref=user_345620
※ファンドが入ってた間はガバナンスが効いたが、いなくなり、三菱重工、商事、銀行の3社による経営干渉でまた同じことをやっただけに過ぎません。
二、肝心の親会社三菱重工も直近の業績は怪しい。
 重工は長崎造船所で大型客船を受注しましたが、再三の遅延により、大幅な赤字計上です。
 「三菱重工 悲願の大型客船で底なし損失赤字地獄・・・受注額の倍、納期過ぎ未完成、撤退必須か–受注額を大幅に上回る特損1800億円超
 長崎造船所香焼工場で13年6月、1番船を起工した。だが1年もたたない14年3月、設計変更を繰り返し費用が増加したという理由で、641億円の特別損失を計上すると発表した。同年10月には追加特損398億円、さらに15年5月にも297億円の損失が出ると公表した。
 15年3月期連結決算の売上高は前期比19%増の3兆9921億円、営業利益は44%増の2961億円と過去最高を更新した。
 火力発電所部門を日立製作所と統合したことに伴う売り上げ増が寄与した。しかし、純利益は31%減の1104億円だった。豪華客船事業で特損が膨らんだためだ。
 三菱重工は2月4日、16年3月期の業績見通しを下方修正した。連結純利益は、それまで1300億円(前期比18%増)を見込んでいたが、一転、18%減の900億円となる。大型客船部門で新たに221億円の特損が発生する。累計損失は5年間で1869億円になる。損失の累計は2隻の受注額の2倍近くに膨らむことになる。」
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13904.html
 戦艦武蔵を作った造船所でこの様です。
 期待のMRJ<はどうか。>
 「MRJが4度目の納入延期、今回の理由は何か–三菱重工業、開発費3000億円の回収に暗雲
 初飛行の感動からわずか1カ月半で、三菱重工業の小型旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)が再びピンチに立たされた。最新状況を踏まえて今後の開発スケジュールを
再検討した結果、実施すべき試験項目の追加・見直しなどが必要となり、初号機の納期が守れなくなったからだ。
 MRJ事業は、三菱重工のまさに威信と社運をかけた一大プロジェクトである。開発の長期化で、総開発費は3000億円規模にまで膨張。さらに設備投資や運転資金も含めると、納入開始までの先行投資額(投下資本)は軽く4000億円を超える。巨額の投資回収と累積事業赤字の解消には最低でも1000機近い販売が必要と見られ、そのためにもこれ以上の大幅な遅延は絶対に許されない。」
http://toyokeizai.net/articles/-/98401
⇒大型客船の件もMRJの件も、前向きに挑戦した結果の躓きや苦労なのだから、必ずしも悪いハナシじゃないのでは?(太田)
 話が戻りますが三菱自工は既に中国向けエンジン輸出か稼ぎ頭ですし、国内も日産のOEMが主軸ですから、もはや完成品メーカーは諦めるしかありません。
 「三菱自動車、中国のエンジン合弁会社で生産累計300万基を達成–
 三菱自動車は、中国におけるエンジン生産の合弁会社である瀋陽航天三菱汽車発動機製造有限公司(社長: 藤嶋雅憲、以下、瀋陽航天三菱)が、7月15日にエンジンの生産累計が300万基に達したことを発表いたしました。
 瀋陽航天三菱は、1997年8月に設立され、1998年より生産を開始し、拡大を続ける中国の自動車市場において、三菱ブランドの車体メーカー向けのみならず、多くの中国メーカーにもエンジンを供給することで、2009年に生産累計100万基、2012年に200万基を達成しています。」
http://www.mitsubishi-motors.com/publish/pressrelease_jp/corporate/2014/news/detail4798.html
 このまま日産との提携を打ち切られて消滅かどうなるかですかね。
 三菱グループも、主力の三菱商事は創業以来の赤字ですし、
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD23H5S_T20C16A3MM8000/
重工は上記の通りで、元気なのは三菱銀行のみですから、幾ら「三菱金曜会」が強力だとしても、どうでしょうかね。救済する余裕があるようには見えませんけれど。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97
⇒資源安の影響で(伊藤忠以外の)大手商社が軒並み赤字に転落した
http://mainichi.jp/articles/20160325/k00/00m/020/088000c
中でも、むしろ、三菱商事は、グループ内の他社達から助けてもらうことができるだけに、有利では?(太田)
<太田>
 三菱自動車は、この前取り上げたばかりの、トッパン・フォームズ(コラム#8315)と同じく、外資との合弁企業として当時の親会社の三菱重工から分離されて発足したところ、本来、合弁相手のクライスラー(ダイムラー)との関係が切れた2005年ないし2009年に、元親会社に吸収されるか完全子会社化されているのがむしろ自然だったのです。↓
 「1970年<に>・・・三菱重工業とクライスラーが合弁事業に関する契約締結。1970年<に>・・・三菱重工業とクライスラーとの合弁事業としてスタートし、1993年までクライスラーと資本提携して・・・三菱自動車工業として独立。・・・その後、2000年からドイツに本拠を置くダイムラー・クライスラー(現ダイムラー)と資本提携関係となったが、2000年に三菱リコール隠しが発覚。この不祥事を受けて自動車売り上げが激減し、2005年に解消。クライスラーとの技術提携関係は2009年まで継続されていた。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E5%B7%A5%E6%A5%AD
 で、どうして、三菱自動車で似たような不祥事が繰り返されるのかですが、同社と三菱重工の会長、社長に、それぞれ、どういう人がなっているか、を一瞥しただけで、その原因が透けて見えてくる感があります。
 まず、自動車の方は以下の通りです。↓
 <前社長にして現会長兼最高経営責任者は、重工の意向を汲んだところの、三菱グループからの「出向」です。↓>
 「益子修(・・・1949年2月19日~ )は、・・・早稲田大学政治経済学部を経て、1972年に三菱商事へ入社。同社で自動車畑を歩み、・・・2003年より同社執行役員・自動車事業本部長に就任。2004年、大規模なリコール隠しの発覚により深刻な経営危機に瀕していた三菱自動車工業の再建を託され、同社へ転籍し、代表権を有する常務取締役(海外事業統括)へ就任した。翌2005年1月から同社の代表取締役社長となった。2014年6月に会長に就任したが、引き続き最高経営責任者にはとどまる。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%8A%E5%AD%90%E4%BF%AE
 <現在の社長は珍しく生え抜きですが、父親、及び、自分の専攻を踏まえれば、ゲスの勘繰りでは、重工に入れなかった人物でしょうね。↓>
 「・・・相川哲郎社長の父親である相川賢太郎氏は、・・・三菱重工業で社長、会長を歴任していました。・・・
 相川哲郎社長は、・・・東京大学工学部で船舶機械工学を専攻しています<(1978年卒)>。卒業後、三菱自動車に入社しています。」
http://www.fsight.jp/articles/print/8341
 次に重工の方です。↓
 <これ、異常なほど「公」意識を持っており、よくも悪くも、プライドが高く、かつ、役人的序列意識がある会社であることが分かると思います。↓>
 「・・・三菱重工・・・社内では、事業発祥の地である長崎造船所に対する畏敬の念やOBたちの本流意識が強く、二代前の社長で現相談役の<(哲郎の父たる)>相川賢太郎は「社長になった時よりも、長崎の所長になった時の方が感激した」と語ったほどだ。・・・
 九九年十一月、社長として初めてアナリスト説明会に登場した<当時の社長の>西岡は、「単にもうからないとの理由でわが社が事業撤退すれば、日本の製造業が衰退する」と主張。アナリストから「あなたは日本の首相なのか」と突っ込まれるなど発言内容は不評で、説明会後に株価が大幅に下落したという苦い経験がある。昨年九月には企業トップを対象にした講演会で「経営者は国家を支えるという重要な責務を忘れてはならない」と熱心に訴えた。こうした国益を意識した発言は相川を髣髴とさせるものがある。
http://www.fsight.jp/articles/print/8341
 <その重工が、最近じゃ、東大航空学科系(注)/法学部、の世界であるのは当然と言うべきか。↓>
 「西岡喬・・・東京大学工学部航空学科卒業後、三菱重工業に入社。・・・航空機・特車事業本部副事業本部長、常務、副社長などを経て社長・会長。その後、三菱自動車会長、日本経済団体連合会副会長などを務めた」
http://systemincome.com/tag/%E8%A5%BF%E5%B2%A1%E5%96%AC
 「<社長を経て現在会長を務めている>大宮英明<は、>・・・東京大学工学部航空学科卒業」
http://systemincome.com/tag/%E5%A4%A7%E5%AE%AE%E8%8B%B1%E6%98%8E
 「<現在社長の>宮永俊一<は、>・・・東京大学法学部卒業」
http://systemincome.com/tag/%E5%AE%AE%E6%B0%B8%E4%BF%8A%E4%B8%80
(注)東大工学部の中でも航空学科系・・現在は航空宇宙工学科・・は、概ね進振上最難関で推移してきている。
https://todai.info/shinfuri/technology.php#denjo
 つまり、自動車は、重工から「追い出された」技術者達等、或いは、重工に「入れなかった」技術者達等、のコンプレックスというか怨念が渦巻いている会社であって、しかも、自分達がトップに就くことが殆ど不可能な、植民地的会社でもあって、よってそれは、情報がトップに上りにくい会社でもある、と見るわけです。
 元親会社の重工は、その原因を作り、放置した、という意味において、重大な責任を免れないのではないか、とも。
 そうだとすれば、その不祥事の温床的な社内文化を、自動車が、自分の手で改革することなど、およそ不可能に近いのではないか、と。
 それならば、(あなた同様私も否定しているわけではない)廃業/売却、か、(私だけが示唆していて、重大な責任のある第三者に対して、より厳しいところの、)元親会社たる重工、による復帰的吸収しかない、というのが私の見解なのです。
 最後に、参考まで、本日の関連記事をご紹介しておきます。↓
 「・・・軽自動車の4車種で、燃費を意図的に実際より5~10%良く見積もっていた不正・・・
 不正の影響は軽自動車4車種にとどまらず、さらに広がるかもしれない。同社は多くの車種について、日本で認められていない手法で燃費測定の基になる走行抵抗値を測定していたことを明らかにした。ほぼすべての車種で、不正があった可能性がある。
 三菱自動車は法令順守を徹底し、隠ぺい体質を根絶できなければ、2020年の東京五輪を迎えられないかもしれない。」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/042100321/?n_cid=nbpnbo_mlp&rt=nocnt
 「・・・規模が小さいメーカーであるにもかかわらず、ピックアップトラックや中型SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、小型セダンなど幅広い車種を展開しており、研究開発費用はそれぞれに薄く広く配分せざるを得ない。こう考えてくると、三菱が軽自動車に避ける研究開発費用は、実質的には競合他社の半分程度しかない・・・
 「カネ」も、そして恐らく「ヒト」も足りない状況の中で、競合 他社と戦うことをエンジニアに強いた経営にこそ、最も重い責任が問われるべきだ。・・・
 富士重工業は2008年、苦渋の決断の末に、当時国内販売台数で約2/3を占めていた軽自動車事業からの撤退を決断し、プラットフォームの種類を絞り込み、米国市場にフォーカスするという「選択と集中」によって、今日の健全な企業体質を作り上げることに成功した。今回の事件が示しているのは、もはや三菱自動車が現在の事業構造を維持するのは不可能だということだ。富士重工が軽自動車事業から撤退したのに匹敵する大胆な事業再構築が、待ったなしの状況になったといえるだろう。」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/264450/042100029/?n_cid=nbpnbo_mlp 「・・・自浄作用の働かない三菱自動車は、消費者に引導を渡される前に市場からの退場を検討すべき時かもしれない。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016042202000145.html
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 あーら、そんな面白いことになってたのー。↓
 「将棋のプロ入り、歴史作れるか 奨励会三段リーグ戦、23日開幕・・・」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12321686.html?rm=150
 では、恒例の、中共官民の日本礼賛記事群だ。↓
 日本を理想社会と見る習ちゃんの御声であるぞよ。
 削るところがないので、ほぼ全文を掲載する。人民網サマにはぜひお目こぼしを戴きたい。↓
 「昼時、飛行機が羽田空港に到着した。実は15年前、乗り継ぎのためこの空港を一度だけ利用したことがある。今でも鮮明に覚えているのが空港の分別ゴミ箱。当時、欧米に何年も滞在していた私はゴミの分類についての取材経験もあった。しかし、日本の空港のゴミ箱の清潔さ、分類の細かさ、マークのわかりやすさは非常に印象深かった。(文:丁剛。人民日報社上級記者。環球網掲載)
 バスで中心街を通過し、空港からホテルに移動した。移動中は渋滞も無く歩行者も少なく、大きな屋外広告もとても少なくて、クレーン車を見ることも無かった。こうして見る限り、3800万人の人口を抱える世界最大の都市としてはやや意外な気がした。ふと経済関連ワードである「モデルチェンジ」と「人気」という言葉が思い浮かんだ。
 40年余りもの歴史を持つゴミ分別から、堅固で整然とした都市にいたるまで、日本はどこも秩序が保たれており、これはモデルチェンジと関係している。一方の中国人はどちらかというと人気を重視しており、これは中国の人口や文化にも関係している。
 日本の高齢化はもはやデータの上だけの話ではないと感じたのは、ホテルの外にいた駐車スタッフも、観光地にいた掃除スタッフも、タクシーの運転手ですら高齢者だったからだ。ホテルのエレベーター内に置かれていた腰掛も高齢者用だという。
 日本滞在中も、普段と同じように新聞で経済発展に関するネガティブなニュースをチェックしていた。しかし、日本に来てたった数日だが、GDPなどのデータからは日本の別の一面を見ることはできないと感じた。
 ・・・トムソン・ロイターがまとめた「Top100グローバル・イノベーター2015」では日本企業40社がランクインし、35社の米国を上回っている。マイナス面と見られがちな高齢化さえ、次世代の成長源となっている。全世界で6万種以上ある高齢者用商品のうち、中国市場では2千種類あまりが取り扱われているに過ぎないが、日本では4万種類余りにも上っている。
 データの上では、GDPの240%にのぼる政府債務を抱える日本政府はとっくに破産していてもおかしくない。しかし、これらの国債のほとんどが日本企業や日本国民の貯蓄に組み込まれており、日本国民が国の債務負担を支えているのだ。国民が国を信頼する限り、問題とはならない。
 このデータを見た瞬間、日本の高速道路で見かけたある光景を思い出した。ジャンクションを通るたびに、全ての車が整然と並んで順番待ちし、時には300~400メートルほど車が並ぶことがあっても、無理やり前へ横入りしようする車は1台も無く、中央と右側の車道は常に通行可能な状態となっていた。欧米諸国への訪問経験も多いが、これほど秩序ある光景を見たことが無い。秩序が民族にとって集団行動の原則となっている場合、その民族はきっと尋常でない結束力を見せるだろう。高速道路での光景は経済とは無関係だが、日本経済を分析する際に考慮する一つの要因となると思う。
 経済に関しては、・・・特徴的な4点を挙げ<ることができる。>・・・それは物価が十数年間ほぼ安定していること、貧富の差がそれほど大きくないこと、不動産の値上がり幅が非常に小さいこと、収入は長年ほぼ増加しておらず、消費も低迷し不振が続いているが、失業率もとても低いことだ。
 ・・・各国都市の街角を歩く歩行者の速度を測定<すると>・・・日本人が一番速<い>。ここから日本人は仕事のテンポが速く、勤勉で、大変だということが推測できる。一方で、東京の一角で私は静かで落ち着いた生活を目にした。大阪の同業者数名と話したところ、日本人の生活、特に若者の生活は我々が想像しているようなストレスに満ちたものではない・・・。
 ・・・日本人の若者が結婚相手に持ち家があるかどうかをそれほど重視しない点がとてもうらやましい・・・。東京や大阪などの大都市では、市の中心地から離れた周辺都市を選び50~60平方メートルの不動産を借りた場合、家賃はおよそ月額5~6万円、月収の4分の1程度に相当する。もし不動産を購入する場合は、最長35年の住宅ローンで金利はたったの2%~3%、またはもっと低い。子供ができた場合も、学費はほとんどかからない。安定した職と、医療保険さえあれば、後顧の憂いはほとんどない。夫婦2人の月収が合わせて30万円以上ならばかなり安定していると感じることができる・・・。
 1968年、日本のGDPは西ドイツを上回り1000億ドルに達し、その経済規模は米国に次ぐ世界第二の経済大国となった。しかしこの年の日本の一人当たりのGDPは世界第20位。1971年には日本の一人当たりGDPが2000ドルを超え、3年後にはさらに3000ドルにまで増えた。日本の一人当たりのGDPが1000ドルから2000ドル、さらには3000ドルまで増えるのに要した時間はそれぞれたった6年と3年だった。スピードの上で西側の発展諸国を大きく上回っただけでなく、その社会も基本的に安定を保った。日本が「中所得国の罠」を回避することに成功したのは奇跡としか言いようがない。しかしこの奇跡は、日本経済の発展スピードが速く、日本人が勤勉で、日本企業の効率が優れていたからだけではない。さらに重要なのは、比較的公平な分配制度を確立していた点だ。
 日本は1970年代に高度経済成長期に突入し、80年代にバブルが崩壊するまでの間に、さらに深刻で長期間にわたる景気後退に十分対応できるような福祉制度の構築を基本的に終えている。ここ数年、西洋諸国で生じている規模の大きい経済危機は日本も回避しきれず、時にはその他の国よりもさらに長い期間その危機の影響を受けるに至っている。しかし日本が再起不能に陥ることがないのは、その分配制度の「基礎建築」が優れているためだ。
 日本の経済停滞を示す驚くべきデータから、我々は日本人が艱難辛苦にまみれた生活を送っているように思いがちだ。しかしこの国に悪感情を持っているからと言って、悪い面ばかりを読者に見せてはならない。またこの国が中国に対し面倒を起こしているからと言って、落ちぶれていくとは限らないのだ。40年以上もの間、ゴミの分類を続け、優れた交通システムを構築し、街中にはクレーン車が林立せず、20年もの間ほとんどの人々の収入が安定し、平凡ながら比較的整った社会保障を受けることができるそんな国の経済を、我々はどのように定義づければいいだろうか。
 これは中国の遥か彼方にある国を評価しているのではなく、中国と一衣帯水にある経済大国への正確な評価だ。この国は「中国の夢」を実現していく上で回避することのできない重要な外部エネルギーとなるだろう。」
http://j.people.com.cn/n3/2016/0421/c94473-9047793.html
 <既に、例えば、上海の人民は、堂々と日本を理想郷視し、そのことを口にしているようだね。↓>
http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%e3%80%8c%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%af%e7%90%86%e6%83%b3%e9%83%b7%e3%80%8d%e3%83%8d%e3%82%aa%e8%a6%aa%e6%97%a5%e6%b4%be%e3%81%af%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%82%92%e5%a4%89%e3%81%88%e3%82%8b%e3%81%8b/ar-BBs610D?ocid=iehp#page=2
 <一年近く前に、そのことを感じていた日本人がいたんだなあ。↓>
http://diamond.jp/articles/-/71463
 <「通常」の日本礼賛記事も2つどーぞ。↓>
 「・・・今日頭条・・・記事は、2006年5月、大手の日本企業3社が中国山東省に農業法人を設立<したところ、>・・・<そ>の農業法人が農薬や化学肥料を使用せず、当初は赤字続きだったとしながらも、その狙いは最初の数年間で土地の地力を回復させることにあったと紹介している。牛の糞を主要な肥糧として農薬は極力少なくするなどの循環型農法により、現在は安全で高品質な野菜、牛乳、果物を生産することができている。その農作物は同業者も品質の高さを認めるほどで、売上も大都市で急激に伸びていることを紹介した。・・・
 中国の食品安全問題を風刺する言葉として、中国には「外国人は牛乳を飲んで健康になったが、中国人は牛乳を飲んで結石になった」、「中国人は食品分野で化学音痴を一掃した」というものがある。目先の利益のために食品に有害な物質を用いても構わないとする考えが良く表れている。
 記事は日系の農業法人の取り組みを絶賛したうえで、「5年間、農薬を使わずに損をし続けても、それによって土地は回復し、今ようやく花を咲かせ始めている」と指摘。」
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e8%be%b2%e6%b0%91%e3%81%ae%e3%80%8c%e7%ac%91%e3%81%84%e8%80%85%e3%80%8d%e3%81%a0%e3%81%a3%e3%81%9f%e6%97%a5%e7%b3%bb%e3%81%ae%e8%be%b2%e6%a5%ad%e6%b3%95%e4%ba%ba%e3%80%81%e5%a4%a7%e3%81%8d%e3%81%aa%e3%80%8c%e8%8a%b1%e3%82%92%e5%92%b2%e3%81%8b%e3%81%9b%e3%81%9f%e3%80%8d%e7%90%86%e7%94%b1/ar-BBs2CsY?ocid=iehp#page=2
 「・・・舜網・・・記事はまず、東京の街を歩いていた際に日本の「おばちゃん」に背後から声をかけられたというエピソードを紹介。背中に赤い糸くずが付いていることを指摘したかったらしいが、その際「ごめんなさい、女の子とイチャイチャして付いたのかと思って。そのまま家に帰ったら大変じゃない。私ってホントおせっかいなおばちゃんよね」と言われたことを明かした。そのうえで、「日本では『おばちゃん』は特殊な人びとだ。世の人の気持ちを理解する一方で、非常に個性的である」と評している。
 さらに、日本の「おばちゃん」の特徴として「熟年離婚」という「必殺技」を持っており、今世紀に入って大きな社会現象の1つになっているとも解説。趣味もなく家庭も顧みずに仕事に明け暮れてきた夫を定年後に見切るという熟年離婚のケースには「おばちゃんたちの留まることのない成長」、「家事の合間に積み上げてきた趣味や交友関係に富んだ生活を、定年退職した夫に壊されることにガマンならない」、「子どももすでに独立し、残りの人生の過ごし方を変える時期だと考えている」という理由があると紹介した。
 記事はまた、東京ではすっぴんの「おばちゃん」をほとんど見ることがないとし、「歳を重ねても、日本女性は美への追及をやめないのである」と説明。化粧品メーカーもこれを商機と見て「おばちゃん」向けの化粧品のラインナップを充実させて大きく売り上げを伸ばしているとした。そして、「日本の『おばちゃん』からすれば、外出するのに化粧もしないのは自分に対する無責任であり、すれ違う人への配慮不足なのだ」と論じた。」
http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e3%80%8c%e7%89%b9%e6%ae%8a%e3%80%8d%e3%81%aa%e5%ad%98%e5%9c%a8%e3%83%bb%e3%83%bb%e3%83%bb%e5%80%8b%e6%80%a7%e7%9a%84%e3%81%aa%e3%80%8c%e3%81%8a%e3%81%b0%e3%81%a1%e3%82%83%e3%82%93%e3%80%8d%e3%81%ae%e4%b8%96%e7%95%8c%ef%bc%9d%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2/ar-BBs30VU?ocid=iehp#page=2
 <熊本地震がらみの日本礼賛記事もどーぞ。↓>
 「・・・今日頭条・・・記事は救援物資についての記者の報告を引用。1人あたりの救援物資がわずか1個のおにぎりだったとき、被災者たちはそれでもきちんと列を作り、秩序を守りつつ、わずかな救援物資を受け取った。
 被災した状況下で秩序を保ち続けることは、どれほど難しいことなのだろうか。余震が絶え間なく続き、不安が人びとを支配している状況のなかで、また十分な救援物質を受け取ることができない状況下において、日本人は言い争うことも、わめきたてることもしないと指摘。非常に過酷な状況下でも日本人は秩序を作り出すことができ、穏やかさを保つことができると絶賛した。
 被災者のなかには大切な物を失った人が大勢いるだろう。震災が心に与えた打撃も計り知れない。避難所の不便な生活をいつまで続けなければならないのかもわからない。従来の生活を取り戻すことができるかも不安でいっぱいのはずだ。それでも秩序正しく行動している被災者の姿は中国人の心に深い感動を生じさせている。
 また記事は、避難所のトイレが非常に清潔に使用されているうえにトイレのスリッパがきちんと揃えられていることを報告、「日本人の秩序正しさに驚愕した」とコメントしている。さらに災害の真っ只中でさえ、ゴミの分別がしっかり行われているとも伝えている。」
http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e3%82%8f%e3%82%81%e3%81%8b%e3%81%9a%e8%a8%80%e3%81%84%e4%ba%89%e3%81%84%e3%82%82%e3%81%97%e3%81%aa%e3%81%84%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%ba%ba%e3%80%81%e7%81%bd%e5%ae%b3%e4%b8%8b%e3%81%a7%e3%82%82%e7%a7%a9%e5%ba%8f%e3%81%a8%e7%b5%b6%e8%b3%9b%ef%bc%9d%e4%b8%ad%e5%9b%bd/ar-BBs37XD?ocid=iehp#page=2
 <こんな記事を書いた記者は記者生命を断たれるかもね。↓>
 「・・・中国メディアの網易はこのほど、「日本人は本当に民度が高いのか」と疑問を投げかけ、日本人は決して民度が高いわけではないと主張する記事を掲載した。・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/11443320/
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太田述正コラム#8352(2016.4.22)
<一財務官僚の先の大戦観(その12)>
→非公開