太田述正コラム#0395(2004.6.29)
<終焉に向かうアルカーイダ(その7)>

 (前回のコラム#394に、<全般>の所を大幅に拡充する等の修正を加えてホームページに再掲載してあります。なお、おかげさまで現在メーリングリスト登録者数は973名に達しています。1,000名を早く達成したいものです。)

<イラク>
 次は焦点のイラクです。
イラクでは、アルカーイダ系のテロ活動はまだまだ第二幕の真っ最中のように見えますが、サウディ同様、第三幕に入りつつあると言えそうです。
 先月の拉致米国人Nick Bergの首切り殺害(5月11日ビデオ放映。http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3705409.stm(5月11日アクセス))にイラクの一般市民の一部から嫌悪感が示されてから、ちょっぴり風向きが変わってきたように思います。
 より大きな節目となったのは、5月末から6月初頭にかけての、主権移譲後のイラク暫定政府の首脳陣の発表です。これを契機に、イラクにおけるゲリラやテロは占領軍に対するものというイメージから、我らのイラク政府に対するものというイメージへと切り替わったのです。(http://www.latimes.com/news/nationworld/iraq/la-na-bushiraq28jun28,1,608659,print.story?coll=la-home-headlines。6月29日アクセス)
 これを受けて、はっきりした変化の兆候が6月下旬にあらわれました。
 25日、イスラム教・スンニ派指導者中の重鎮Ahmed Abdul Ghafour Samarrae師がバグダッドのモスクの説教で「我々は、国境の外からやってきた人間が我々とともにイラクで我々の子供達の血を流すようなことは願い下げだ・・100人のイラク人を殺し、100の家族を破壊し100の家を破壊することを誰かに認めるような宗教があろうか・・。誰がそんなことを言ったのだ。こんなことをやるのはどんな連中だ。連中はどこからやってきたのだ。・・それはイラクのレジスタンス運動の人々の着物を着てその名前を勝手に用いてその名声を貶める陰謀だ。連中はイラク人とイラクを傷つけており、占領者達により長くとどまる口実を与えているのだ。」と訴えました。
 同じ日、あの抵抗勢力の象徴たるファルージャでも、武器を持って覆面をした男達がロイター通信のテレビカメラの前で、「米侵略軍はザルカウィ(Abu Musab al-Zarqawi(注8))とその一味であるアラブ戦闘者達が我々の市にいるとぬかしている。・・ザルカウィと戦闘者達を持ち出しているのは、米侵略軍がこのモスクと抵抗(steadfast)の市であるファルージャのイスラムとイスラム教徒を叩くために行っているゲームなのだ。」と声明を発しました。

 (注8)ヨルダン出身で38歳。ベドウィンのBeni Hassan族に属する。オサマ・ビンラディンのお友達。マドリードの列車爆破事件等の黒幕、ベルグ首切り殺害事件の実行犯とされている。(http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3483089.stm。6月29日アクセス)

この声明が出るのを待っていたように同じ日と数日後に米軍は、ザルカウィが潜んでいると目された二つの建物をピンポイント空爆しました。これは、この声明を出した連中のお仲間からのたれ込みがあったからだと噂されています(ロサンゼルスタイムス上掲)。
 シーア派の怪男児、サドル師も負けてはいません。同じ頃、配下のマーディ民兵に対し、政府の治安部隊と協力して「テロリストと破壊工作者(saboteur)達から、混乱と無法状態をつくり出す機会を奪え」と檄を飛ばしました。
 以上からアルカーイダは、主戦場のイラクでの反撃戦で、孤立して戦うことを余儀なくされたことが分かります。
(以上、特に断っていない限り、http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A5662-2004Jun25?language=printer(6月26日アクセス)による。)

 このように見てくると、主戦場であるイラク及びその周辺において、アルカーイダによる自爆等のテロが根絶されるのもそう遠くなさそうだ、という気になってきます。

(完)