太田述正コラム#0437(2004.8.10)
<変化の端緒が見られる韓国(その1)>

 (引き続き、
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/mag2books/vote.cgi?id=0000101909
で投票をお願いします。21位で変わりませんが、20位を射程にとらえつつあります。)
 (本篇は、「続く」となっていたコラム#274(2004.2.29)と#406(2004.7.10)を「完結」に変えるとともに、新たに小シリーズを書き起こすものです。)

1 変化の端緒?

 韓国に微妙な変化が生じてきました。

 韓国は、少なくとも国民の意識の上では深刻な不況下にあります。今年に入ってからの賃金上昇率は物価上昇率の半分に過ぎません。調子がいいのは輸出だけで、その輸出にもかげりが見えています。(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/08/12/20040812000044.htmlhttp://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/08/12/20040812000008.html、及びhttp://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=080000&biid=2004080626588(いずれも8月13日アクセス))
 このこともあずかり、最近の世論調査によれば、韓国民の69.2%は「何の希望も持てず生きている」と答え、35.5%(20歳台では実に47.5%)が「外国に移住する機会があればそうする」としています(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200408/200408090052.html。8月11日アクセス)。
 どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。
1997年の経済危機、いわゆるIMFショック以来の貧富の差の拡大に求める説、2000年のソウルオリンピック以来の拝金主義的風潮に求める説(http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040804/mng_____tokuho__000.shtml。8月4日アクセス)がありますが、そのほか上記世論調査では韓国民は現在の政治に責任がある(ノ・ムヒョン大統領に責任があるとする者41.7%、与党に責任が21.5%、野党に責任が11.8%)と考えているようです(注1)。

(注1)ノ・ムヒョン大統領自身は、朝鮮日報等の有力メディアに責任がある(?!)としている。

 しかし、もっと本質的な原因があるのではないか、という問題提起を朝鮮日報の名物コラムニストの金大中(Kim Dae-joong)(注2)氏が行っています。
 
(注2)「韓国言論人中’影響力1位」、かつ「極右保守言論人の表象」と毀誉褒貶の激しい人物(http://www.kodensha.jp/knew/d12/a30521-2.htm。8月13日アクセス)。もとより、前大統領の金大中氏とは別人。

彼は、せっかく韓国が、米国との同盟関係のおかげで中国・日本との関係によって規定される北東アジア国際環境から解放され、自由と繁栄を築き、グローバルなプレヤーになったというのに、いつのまにか時代錯誤的なナショナリズムによって米国と敵対するようになり、その一方で中国・日本にすり寄り、両国と従属・朝貢関係を結びつつある。まるで昔に戻ったかのようではないか、と嘆いています。
そして、中国が高句麗の歴史を中国史の一環とし始めたのは、このような韓国の動向につけ込んだのである、と警鐘を鳴らしています。
(以上、特に断っていない限り、http://english.chosun.com/w21data/html/news/200408/200408100050.html(8月11日アクセス)による。)
 言うまでもなく、日本に言及している部分は金氏の本心では必ずしもないのであって、彼が本当に言いたいことは、韓国民が(私が言うところの)両班精神の呪縛(コラム#406)を脱ぎ捨て、中国に対する幻想から目を覚まし、米国や日本と改めて信頼関係を樹立しなければならない、ということなのです。

(続く)