太田述正コラム#15163(2025.9.1)
<皆さんとディスカッション(続x6364)/映画評論429:コンティジョン>
<ITulBni5>
≫>第一次アメリカ・ファーストを日本が戦争で潰したのを、トランプかそのブレーンが知らない筈がない。
その、傍証でも結構ながら、根拠は?≪(コラム#15135。太田)
すみません、しばらくコラムを読んでいなかったもので返信遅れました。
根拠としては、現代のアメリカ・ファーストを掲げる集団が、真珠湾攻撃で解散と成ってしまった、前回のアメリカ第一主義委員会の運動が失敗に終わった歴史を考察していないとは考え難い事と、その際に叩き台に成るであろう下掲の著書が、対日戦を否定的に捉えている事がまずあります。↓
『裏切られた自由(上・下)』 フーバーが20年かけ完成させた回顧録…封印されてきた戦争の真実
https://www.sankei.com/article/20180331-JQDMVBYBHJMUREAWBHHP2AQSIY/
その上で、トランプ自身、対日戦争を自分だったらやらなかった失敗だったという、私見では本音を吐露していたのが根拠の補強材料です。↓
「・・・2019年、トランプ大統領が令和になってから初の国賓として日本にいらっしゃった際に、トランプ大統領とメラニア夫人、そして主人と私で六本木の炉端焼きのお店で会食をしました。その時にトランプ大統領は「先の戦争の時に自分とシンゾー(が日米首脳)であったなら、戦争は起こらなかったに違いない」と語っていました。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/27f2413de1b55ec41a21c8625e752e465e1aaaec
<太田>
トランプの方のは知りませんでしたが、当時の日本の指導層をプーチン並みにしか評価していない可能性がありますねえ。
フーヴァーの方については、「(1941年7月の経済制裁は)日本に対する宣戦布告なき戦争であった。
アメリカを戦争へ誘導していったのは他ならぬルーズベルト(大統領)その人であった。それは、これまで明らかにされた冷静な歴史の光に照らしながら、1938年から1941年の期間を客観的に観察すれば、自ずと明らかである。
「日本との戦争の全ては、戦争に入りたいという狂人(ルーズベルト)の欲望であった」と私(フーバー)がいうとマッカーサーは同意した。
私(フーバー)は更に続けて次のように言った。「1941年7月の(日本への)経済制裁は、単に挑発的であったばかりではない。それは、例え自殺行為であると分っていても、日本に戦争を余儀なくさせるものであった。なぜなら、この経済制裁は、殺人と破壊を除く、あらゆる戦争の悲惨さを(日本に)強制するものであり、誇りのある国ならとても忍耐できるものではないからだ」。この私の発言にもマッカーサーは同意した。
(1941年9月の)近衛の和平提案は、駐日アメリカ大使もイギリス大使も祈るような気持ちで実現を期待していた(にも関わらずルーズベルトは拒否した)。
日本は繰返し、和平を求める意向を、示していた。(それにも関わらず行った)原爆投下は、アメリカの歴史において、未曾有の残虐行為だった。これはアメリカ人の良心を永遠に責め苛むものである。」
https://nihonjintoseisho.com/blog001/2019/12/05/history-of-japan-60/
という考え方の持ち主であることはかねてから知っていて(コラム#省略)、高く評価していたのですが、今回、「1941年12月8日 真珠湾攻撃の日、ハーバート・フーバー元大統領(第31代) は 一通の手紙をしたためた。・・・あなたも私同様に 日本というガラガラヘビに 我が国政府がしつこくちょっかいを出し、その結果そのヘビが我々に咬みついたんだということをよく知っています。また日本に対してあのような貿易上の規制をかけたり、挑発的な態度を示さなくても、日本はこれからの数年で内部的に崩壊するだろうことが分かっていました。なぜこのようなことになってしまったのかその過程も知っています。」
https://history.hakken.jp/?p=9273
とも言っていることを今回知り、相手との関係で政治的配慮もあったのかもしれないとはいえ、日本を見下し、日本を理解もしていなかったと言わざるを得ず、がっかりです。
他方、彼の少し前のセオドア・ローズヴェルトは、「『アメリカの新渡戸稲造』(佐々木篁著 岩手放送編 熊谷印刷出版部 1985)
p117-118「ルーズベルトの感銘」1904年6月6日、金子堅太郎と駐米公使高平小五郎がルーズベルトとの昼食会後に小村寿太郎外相に打電した電報として、「食事中大統領語テ曰く、先般拝受セシ書籍中「武士道」ト称スル書ハ、尤モ克ク日本人民ノ精神ヲ写シ得タリ。予ハ此ノ書ヲ読テ、始メテ日本国民ノ徳性ヲ知悉(つく)スルコトヲ得タレハ、直ニ書肆ニ命シ三十部ヲ購求シ、之ヲ知友ニ頒布シテ閲読セシメタリ。又予ハ五人ノ子供ニ各々一部ヲ配付シ、日常此書ヲ熟読シテ、日本ノ如ク高尚優美ナル性格ト、誠実剛毅ナル精神トヲ涵養スヘシト申付ケタリ。」との引用あり。
2 『新渡戸稲造事典』(佐藤全弘、藤井茂著 教文館 2013)
p59「セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt, 1858-1919、第26代大統領1901-09)が『武士道』に感動し、自分も体験したカウボーイ精神との共通点を感じ、数十冊求めて子弟に配り、兵学校や士官学校にも推薦した。」とあり。」
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000177816&page=ref_view
というのですから、彼が、少なくとも、日本を自国ないし欧米並みには評価していることが読み取れところ、世紀をまたぐ頃から米国の指導層が劣化し始めた・・地が露呈してきた=民主主義が機能し始めた・・ことが分かろうというものです。
おっと、肝心なことを書き忘れるところでした。
「第一次アメリカ・ファーストを日本が戦争で潰した」、と、フーヴァーが1964年に亡くなるまでに気付いたかどうかはさておき、「第一次アメリカ・ファーストを日本が戦争で潰した」が「日本が米国を構造的な相対的衰亡過程に追いこんだ」という意味であるとの前提の下ですが、「トランプかそのブレーン」は、彼らのこれまでの言動(典拠省略)に照らせば、戦前の日本ではなく、戦後の、(地理的意味の)西欧、と、日本、と、韓国や台湾、等が、よってたかってそうした、と、思い込んでいるのではないでしょうか。
<太田>
安倍問題/防衛費増。↓
なし。
ウクライナ問題/ガザ戦争。↓
<せっかく、大部分のハマス幹部はガザの外にいるんだから、報道官役なんて遠隔操縦でロボットにやらせたら?↓>
Hamas spokesman Abu Obeida killed in Gaza, Israel says・・・
https://www.bbc.com/news/articles/cm214r5rd29o
妄想瘋癲老人米国。↓
<トランプ関税がそもそも「混乱」の根源!↓>
「トランプ関税巡る違法判断、米国の貿易相手に「混乱」・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E9%96%A2%E7%A8%8E%E5%B7%A1%E3%82%8B%E9%81%95%E6%B3%95%E5%88%A4%E6%96%AD-%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%B2%BF%E6%98%93%E7%9B%B8%E6%89%8B%E3%81%AB-%E6%B7%B7%E4%B9%B1/ar-AA1Lz26B?ocid=msedgntp&cvid=578aaad553164a49c7c77b9eab880c73&ei=20
それでは、その他の国内記事の紹介です。↓
脳死日本の日本人、文芸面でも活躍。↓
「7月下旬の夕刻、作家の柚木麻子は英国ロンドンにいた。足を運んだ先は大手書店チェーン、ウォーターストーンズの本店。柚木を招いたトークイベントに多くのファンが詰めかけ、2024年2月に英訳出版した小説「BUTTER」の根強い人気をまざまざと見せつけた。
同社書籍部門長のベア・カルバーリョは「直近のクリスマスシーズンは『BUTTER』の売り上げが断トツトップだった」と明かす。「著名人の話題作や定番のベストセラーが占める地位を翻訳小説が獲得したのは、並外れた偉業だ」
英国は今、空前の日本文学ブームに沸いている。書籍販売データを集めるニールセン・ブックスキャンの調査によると、24年は英国の翻訳小説売り上げトップ40のうち4割を日本の作品が占めた。柚木の「BUTTER」が首位にたつ。部数は46万部を超え、17年4月に刊行した日本語版の44万部をも上回る。・・・」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD125YI0S5A810C2000000/
だから、先の大戦に日本は勝利した、まで踏み込まにゃ。
それに、そんなん達成した戦争諸目的の一つに過ぎんで。↓
「「実際アジアは解放された」安濃豊氏、9月2日は解放記念日 「保守論壇こそ言及を」・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%81%AF%E8%A7%A3%E6%94%BE%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F-%E5%AE%89%E6%BF%83%E8%B1%8A%E6%B0%8F-9%E6%9C%882%E6%97%A5%E3%81%AF%E8%A7%A3%E6%94%BE%E8%A8%98%E5%BF%B5%E6%97%A5-%E4%BF%9D%E5%AE%88%E8%AB%96%E5%A3%87%E3%81%93%E3%81%9D%E8%A8%80%E5%8F%8A%E3%82%92/ar-AA1LBrHA?ocid=msedgntp&cvid=ee85583900e14bd6afc552b9762515f3&ei=34
日・文カルト問題。↓
<本件に関心を持つことを許す。↓>
「日本の新幹線を導入するインド…半導体など経済安保協力を強化・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/338192
<これもそう。↓>
「「中国で日本人っぽい行動控えて」…日本、自国民に公開警戒令・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/338180?sectcode=A00&servcode=A00
<こんな記事じゃあ懲戒理由が分からんがな。↓>
「日本防空識別圏を侵犯…韓国国防部、空軍幹部10余人を懲戒要求など処分・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/338195
<これなら分かる。↓>
「・・・日本領空を通過して訓練地のグアムに向かう予定だったにもかかわらず、事前に日本の承認を得ていなかったのが問題の発端と、国防部は判断した。・・・」
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20250831000600882?section=japan-relationship/index
中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓
なし。
–映画評論429:コンティジョン–
「『コンテイジョン』(Contagion)は、2011年の<米>スリラー映画。高い確率で死をもたらす感染症の脅威とパニックを描<いたもので、>・・・2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症”COVID-19″の世界的な感染拡大に伴い、デマと陰謀論の拡散、医療従事者の感染および伝染、無症状のまま感染を広げる可能性、買い占めや都市封鎖といった本作で描かれた事象の数々が現実に発生しており、本作のために行われた考証や予測の適確さが再評価された。出演者のローレンス・フィッシュバーン、ケイト・ウィンスレット、ジェニファー・イーリー、マット・デイモンが手洗いの励行・不要不急の外出を控えるなど感染を避ける方法と冷静な対応をYoutube動画で呼びかける一方、考証を務めたイアン・リプキン医師、ハガティ准将を演じたブライアン・クランストンのCOVID-19罹患が複数のメディアで伝えられ<た。>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3
というスグレモノで、仏女優のマリオン・コティヤール(コラム#13043)、英男優のジュード・ロウと米女優のグウィネス・パルトローも出演していたという豪華キャストだ。
なお、フィッシュバーン(Laurence John Fishburne。1961年~)は廃校になったLincoln Square Academy卒の米黒人男優、
https://es.wikipedia.org/wiki/Laurence_Fishburne
イーリー(Jennifer Ehle。1969年~)は、たまたま今まで紹介したことがなかったところの、ロンドンのCentral School of Speech and Drama卒の米女優
https://de.wikipedia.org/wiki/Jennifer_Ehle
だ。
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太田述正コラム#15164(2025.9.1)
<古松崇志『草原の制覇–大モンゴルまで』を読む(その7)>
→非公開