太田述正コラム#0538(2004.11.19)
<ブッシュの大統領再選(番外編2)>

1 始めに

 今回の大統領選挙の結果、米各州ごとの共和党・民主党支持傾向がより鮮明化し、かつ固定化したことがはっきりしました(コラム#524)。
 米国では、このことに関連する様々な分析が行われています。

2 知能指数

州ごとの数値が公表されているSAT(大学入学能力検定試験。英語と算数の能力を総合指数化したもの)等を用いて州ごとの住民の知能指数(IQ)を推計したところ、IQが上位(103、104)の4つの州全てをケリーが制したのに対し、下位(94??98)の13の州のうち、ケリーが勝ったのは1州(ただし、首都であるコロンビア・ディストリクト(ワシントン市))だけで、ブッシュが残りの12州で勝利した、という具合に住民の平均IQが高い州ほどケリー支持州が多い、という結果が出ました。
なお、想像できるように、IQの高い州ほどおおむね一人当たり所得も高い、という結果も出ています(注)。つまり、ケリー支持州はブッシュ支持州よりも一人当たり所得が高いわけです。
(以上、http://sq.4mg.com/stateIQ-income.htm(11月18日アクセス。以下同じ)による。)

 (注)ついでに、(ホンモノの)IQについて解説しておく。
ア IQは少年期以降は殆ど変化しない(http://sq.4mg.com/r_iq_ei.htm)。
イ 男女間に平均IQの差はないが、これはIQがそのように設計されている指数だからにほかならない。ただし、IQの標準偏差は男性の方が女性より大きい。男性は数的処理や空間把握に長け、女性は言語能力に長けている。(http://sq.4mg.com/male-femaleIQ.htm
ウ 所得を決定する要因としては、理性的知能(IQ)よりも感情的知能(社交能力、やる気等)の方が大きい(http://sq.4mg.com/r_iq_ei.htm前掲)。
エ 「人種」のIQを、データの得られている範囲で高い方から並べると、欧米のユダヤ人、東アジア人(中国人・日本人・朝鮮人)、欧米の白人=イスラエル人、アラブ人(エジプト人)=米国の黒人、アフリカの黒人の順となる。厳しい環境(寒冷な気候や迫害)・移住(やる気。奴隷としての移住は逆。コラム#280参照)・漢字の習得・IQの高い「人種」との混血・高い生活水準、が高いIQをもたらすと考えられている。(http://sq.4mg.com/IQblacks.htm及びhttp://sq.4mg.com/IQdifferences.htm

3 教育程度

IQが高ければ教育程度も高いはずです。
これは四年前の2000年の大統領選挙についての分析ですが、大卒以上の学歴のある者の割合の多い10州のうち、民主党のゴアが勝ったのが6州であったのに対しブッシュが勝ったのは4州、割合の少ない10州はブッシュがすべてを制する、という具合に住民の平均的な教育程度が高い州ほど民主党支持州が多いという結果が出ています(http://www.ginandtacos.com/education.jpg)。
 今回の大統領選挙でも、間違いなく同様の結果が出ているはずです。

4 離婚率

一見意外なのが、離婚率が低い州ほどケリーが勝った州が多いという点です。
なぜ意外かと言うと、今回の大統領選挙は価値を最大のイッシューとする選挙であったとされており、ブッシュ支持者は家族の価値を重視する人々であるはずだからです。
しかしよく考えてみると、これは不思議でも何でもありません。
教育程度が高い州ほどケリー支持州が多いわけですが、教育期間が長ければ長いほど、より年長で成熟してから結婚することになりますし、教育程度が高ければ所得も高く経済的事情からの離婚も減るはずだからです。
結局、ブッシュの支持者達は、家族の幸せを味わっていない者が多いからこそ、家族の価値の擁護を唱えている、ということになります。
(以上、http://www.boston.com/news/globe/editorial_opinion/oped/articles/2004/10/31/walking_the_walk_on_family_values/による。)