太田述正コラム#9891(2018.6.17)
<『岡正雄論文集 異人その他 他十二篇』を読む(その5)/私の現在の事情(続X115)>(2018.10.1公開)

 「C 母系制<(注11)>社会が、わが古代に存在したことについては、上古の諸文献や民俗学の提供する「イロ」<(注12)>同母血縁集団、母系制・招婿婚(しょうせいこん)・女酋(じょしゅう)・母神の祭祀などに関する豊富な資料によって、これを想定することができる。

 (注11)「母系制では、概ね次のような特徴を持つ
・母方の血筋をたどる(母系出自)
・母方の財産を相続する(母系相続)
・結婚後も夫婦は別居、もしくは妻方(母方)の共同体に居住する(母方居住制)
 母系制は継承・相続が母方の血縁によることだけを意味するので、よくある母権制的な理解は誤り。むしろ、政治的な支配権は母の兄弟や長女の夫が持つ場合が多い。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%8D%E7%B3%BB%E5%88%B6
 (注12)何のことか不明。

⇒「女酋」という言葉が出てくることからすると、岡も、当時の、母系制の母権制的な理解、という学界の「常識」に囚われていたような印象を受けます。(太田)

 また、この母系制社会は、東南アジアおよびオセアニアの古層たる母系制的栽培民文化に類比されるのである・・・。
 これら三つの異質的社会形態は、ある一つの社会形態から発展的に、系列的に出現したものでなく、それぞれ三つの異なった民族ないし種族の社会形態であった。
 これらの三者は時代を異にして日本島に渡来し、その居住地域にもかたよりをもっていたが、国家広域社会の成立によって、それぞれ職分階層化して貴族層となり、農民層となり、漁民層となり、特にAとBとは相互に接触し、混淆しつつも、なお今日に至るまでその対照的、異質的性格を残している。・・・
 以下・・・日本島に存在したと考えられる民族、ないし種族文化をここに再構成してみよう。
 (一)父長権的支配者文化
 この種族文化の社会構造は、前述の同族制の祖型とも考えられる。
 「ウジ」<(注13)>父系的大家族・氏族組織のうえに立ち、大家族・氏族・種族<(注14)>という縦の三段に構成されていた。

 (注13)「日本の古代における氏(うじ、ウジ)とは、事実上または系譜上、祖先を同じくする同族集団、すなわち氏族を指す。家々は氏を単位として結合し、土着の政治的集団となった。・・・氏では、主導的立場にある家の家長が「氏の上」(うじのかみ)となって、主要構成員である「氏人」(うじびと)を統率し、被支配階層である「部民」(べのたみ)や「奴婢」(ぬひ)を隷属させた。氏は、部民や田荘(たどころ)、賤(せん)などの共有財産を管理し、「氏神」(うじがみ)に共同で奉祀した。・・・
 また、氏の呼称は自己の属する血縁集団に基づいて名乗るものであり、婚姻によって本来所属していた家族集団とは違う氏に属する家族集団に移ったとしても氏を変えることはなかった。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%8F#古代氏族としての「氏」

 この種族は父長<(注15)>的氏族長会議をもち、また種族連合体を構成していた。・・・」(14~15)

 (注15)「父長」は、岡独特の用語であり、「家父長」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%B6%E7%88%B6%E9%95%B7%E5%88%B6
のことなのだろう。

⇒岡は、「父長的氏族長会議」が「日本島に存在した」と言っているわけですが、初耳です。岡の、根拠レスの思い付きでは?(太田)

(続く→完)
——————————————————————————-

–私の現在の事情(続X115)–

一昨夜、金属製コーヒーフィルターをヨドバシカメラで発注し、それが昨日午前中に届き、さっそく使っています。
 焙煎屋で焙煎コーヒー豆を買ってきて冷凍庫に入れておいて、毎日午後、コーヒーミルで挽き、濾紙で濾して、コーヒーを飲む、という生活を送り始めてから、既に結構時間が経ちますが、このところ、濾している途中に濾紙が破れてしまって、仕方なくもう一枚濾紙を使って最初からやり直す、ということが再三起こるようになり、困っていました。
 濾紙のメーカーを変えてみたりもした・・茶色の濾紙から白色の濾紙に変わりました・・のですが、同じ状況が続きました。
 そこで、これは、私が段々せっかちになってきていて、一度に大量のお湯を注ぐようになったからだろうと反省し、ゆっくりゆっくり濾してみたのですが、やっぱり途中で破れてしまうことがあったので、これは自分のせいではない、日本の濾紙業界全体の劣化のせいである、という、独断と偏見に満ちた結論を下し、金属製フィルターを取り寄せた次第です。
 今度は、もちろん、破れはしないのですが、金属製フィルターは濾紙よりも透過性が高いために、挽いたコーヒー全体にお湯が浸透しない状態で濾過されてしまう、という小問題が・・。
 とまあ、この程度の波乱しかない、のどか至極な今日この頃です。