太田述正コラム#10317(2019.1.16)
<映画評論53:ラ・ラ・ランド(その3)>(2019.4.7公開)

 イ 顕示的

 (ァ)音楽の一見無造作な活用

 「・・・<この映画は、>「古のハリウッド」ミュージカル映画の郷愁的リバイバル<であることを謳っているにもかかわらず、>その音楽は、この映画の最も弱い諸部分の一つだ。
 <この映画のために作曲された曲のうち、1曲だけ(注3)は>意欲(scope)と音楽性(musicality)が見られるが、その他<の諸曲(注4)>・・・は、冴えず退屈だ。・・・

 (注3)Another Day of Sun
https://www.youtube.com/watch?v=yaCLMwrRi7k
 この映像は、オープニング・シーンなので、エンディング・シーンもついでにどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=NkD10lhMMrg
 (注4)この映画評論家が挙げているのは、City of Stars
https://www.youtube.com/watch?v=QZLT9LmbhPQ
のこと。

⇒この両曲・・それぞれ、Youtubeに複数アップされている・・へのアクセス数が、概ねこの映画評論家の評価の通りになっており、この映画評論家もほっと胸を撫で下ろしていることでしょうね。(太田)

 <付言すれば、大体からして、>ここ数年、ミュージカルはハリウッドで再活況を呈してきて<おり、事新しくリバイバルする必要などなかったのだ>。・・・

⇒前述したように、ハーヴァード仲良しコンビ制作映画である、というのが、この映画の黙示的ウリの一つなのですから、これは批判になっていません。
 ハーヴァード出じゃない作曲家じゃあマズイのです。(太田)

 <また、>ゴズリングとストーンは偉大な俳優達だが、もとより正規の訓練を受けた歌手達ではないし、この映画を通じて、彼らの声量のなさ(thin vocals)は明らかだ。・・・

⇒「エリート<が>・・・非エリートを引き立て、かつ、使いこなす」というのが、前述したように、この映画のもう一つの黙示的ウリなのですから、非エリートたるゴズリングとストーンが、この映画のために、懸命に歌唱力アップにこれ努めた、という印象をふりまく必要があったとさえ言えるのであり、これまた批判になっていません。(太田)

 <更に、>この映画は、ゴズリング演じるところの、(音楽)アーチストであるセブに焦点を当てるべく、<ストーン演じるミアについては端折っており、>観客は期待を外されたような気分になる。

⇒いやいや、刺身のツマ的な扱いではあれ、ミアは、上昇志向のある典型的な白人女性を、彼女が、どんどんレベルアップする形で乗り換えていくところの、恋人/パートナーらを通じて黙示的に「演じて」いるのであり、観客は、女性を中心に、内心、ニンマリしながらこの映画を鑑賞したはずです。(太田)

 <そもそも、それが>困難な試みであることに加え、(白人のミュージシャン達・・・による)この<ジャズなる>ジャンルに係る現代的諸再構築(reinvention)に抗って、ジャズのルーツに忠実であり続けるところの、アーチストに関する映画を作ろうというのであれば、そのアーチストは黒人であるべきだと思うはずだ。」・・・」(A)

⇒黒人を主人公にするより白人を主人公にした方が、映画が当たる確率は高いですし、白人たるアーチスト達は、ずっと時代が下ってから、ジャズからロックを生み出したしたところ、彼らは、主流かつエリートたりうる・・主流かつエリートになれる可能性は極めて低いけれど、そういったものの現代版に取り組んでいる黒人アーチストもこの映画には登場する(C)・・としても、ジャズの黒人的ルートに立ち返ろうとするセブは、それだけで、主流かつエリートたりうる可能性は摘まれており、だからこそ、ミアに捨てられる、という存在に制作者達はあえてしたのである、と私は見ています。
 言うまでもないことですが、これは、制作者達が、白人の、或いは、米国のエリート層の黒人蔑視意識を逆手に取って、この映画のリアリティを高めているわけです。
 この関連で、この映画評論家が、やはり、ポリティカル・コレクトネスに反するので書かなかったと思われるところの、ゴズリングが、ピアノの特訓を受けて、この映画では、自分のピアノ演奏場面は、全て吹き替えにはしていない(β)、ということも、黒人が始めた、ジャズピアノそのものを、大した才能と技量を要しないもの的に貶めている含意がある、と私は見ているところです。
 なお、制作者達の計算された底意地の悪さは、その他大勢的な扱いで、黒人達がピアノを含めたジャズ演奏を行う場面を何度も設けていることです。(B)

(続く)

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