太田述正コラム#12792006.6.6

<東大法学部群像(その3)>

<補足>

一、不肖の三人

 MFの最高幹部は、村上と丸木強と滝沢建也の三名です。

 村上は5日に逮捕され自宅の捜索を受けましたが、丸木、滝沢の両名も他の1名とともに自宅の捜索を受けました。

 村上は1983年東大法卒ですが、丸木は1982年東大法卒で野村證券あがり、滝沢は1984年東大法卒で警察庁入庁、87??89年(恐らく私同政府留学生として)スタンフォードビジネススクール留学、92年ボストンコンサルティンググループ入社、という経歴で、東大法卒のオンパレードです。

 時間外取引のスキームは丸木が考案し、滝沢が海外の機関投資家と時間外取引での売買を交渉していたとされており、MFは村上のワンマン経営だったといういえども、両名は村上によるドジで確信犯的なインサイダー取引の従犯以上の存在である可能性が高いと言えるでしょう。

(以上、http://www.sankei.co.jp/news/060605/sha005.htmhttp://www.sankei.co.jp/news/060605/kei099.htm(6月5日アクセス)、及びhttp://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060605it14.htmhttp://www.maconsulting.co.jp/page_j/kigyou_tori1.html6月6日アクセス)による。)

こうなると、「東大法学部群像」という本シリーズのタイトルはドンピシャリだったな、と言いたくなります。

高学歴どころか、実質はせいぜい短大卒相当のこの三人が何千億円というファンドを運用していたのですから、アブナイことこの上もなかったというべきでしょう。いわんや、「無学」の村上が唱える株主価値理論なんてハナから相手にすべきではなかったのです。

 滝沢だけはスタンフォードMBAだから高学歴だろう、とおっしゃるのですか?

 残念ながらビジネススクールは経営に係る実学を伝授する場であって学問を授ける場ではありません。東大法卒もMBAもペーパーテストに滅法強いことは折り紙付きだけれど、無学であることに変わりはないのです。

 滝沢は、東大法とスタンフォードビジネススクールのいずれにおいても私の後輩ということになりますが、滝沢と私の違いは、私がスタンフォードで政治学も履修し、学術的論文執筆の訓練を受けたことと、MBA取得後、すぐ役所を辞めるようなことはしなかった、という二点です。

大変口幅ったいけれど、私は、前者によってついに無学ではなくなるとともに、後者によって役所、ひいては国のかたちに対する批判の自由を得た、とかねてから自分自身に言い聞かせているのです。

二、改めて「ドジな確信的故意犯」について

 村上らは本来そんなドジではないとし、彼らが本件でかくもドジったのは、

「村上容疑者に近い関係者はライブドアとは親密なあまり「脇に甘さがあったのではないか」・・「村上さん、村上さん」と慕う堀江被告に話し、仲間内のなれ合いの中で、法律を意識する気持ちが薄れてしまった、とみる関係者は多い。」と村上らを「弁護」する記事(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060606/mng_____kakushin000.shtml。6月6日アクセス)が出たのはご愛敬です。

しかし、「村上世彰代表(46)について元幹部はこう言った。「あいつは裏切り者」 。村上ファンドは、ライブドアに対して、共同してニッポン放送株を買い集めることを提案。昨年2月にフジテレビとの株争奪戦で株価が高騰しているさなかに売り抜けて、30億円前後を稼いだ。・・「だまされた」。元幹部の言葉には、村上ファンドによる抜け駆けへの憤りがにじんでいた。」(http://www.asahi.com/national/update/0606/TKY200606050534.html。6月6日アクセス)というのですから、これが事実だとしたら、MFの村上達は、「仲間」のLDの堀江達に許し難い背信行為をしたわけです。

 村上達は、やくざ同士の仁義さえ破って恥じないのですから、やくざ以下だったということです。しかも、仁義を破れば、しっぺ返しを食らうのは当然であると思わなければならないのに、そのしっぺ返しに備えた形跡は皆無です。

結局、村上達は、いかなる意味においてもドジな確信的故意犯だった、と言えそうですね。