太田述正コラム#12802006.6.6

<東大法学部群像(その4)>

村上が、「企業が最大の利益を上げ、株主にリターンをもたらし、税金をたくさん払わなければ国も成り立たない。こんな考えに(旧)通産官僚時代に目覚め今の仕事を始めた」と公言していた(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060606k0000m040149000c.html。6月6日アクセス)ことからすると、その自分の活動をできなくするような日本に将来はない、と彼は言いたかったのでしょう。

確かに、この期に及んでも、「他の株主が全く指摘してこなかった株主価値、企業価値向上を、村上代表が積極的に提案したのは評価できる」とする高木勝・明治大教授(現代日本経済論)や、「今回の一点をもって、村上代表を一面的に評価してしまうのもどうかと思う。株主への説明責任や配当政策の見直しなど「ぬるま湯体質」の経営者に鋭く改革を迫ったプラス面は評価されてもいいし、日本に新しいファンドの形を示したとも言える。村上代表はコーポレートガバナンス(企業統治)論に火を付けた・・」とする企業買収専門家の中島茂弁護士(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060606k0000m040170000c.html。6月6日アクセス)、また、「日本のコーポレートガバナンス(企業統治)向上に貢献したのは確か。事件で他のモノ言う株主が萎縮(いしゅく)しないか心配だ」とする(村上を社外取締役に招いた)システム開発会社ソフトブレーンの宋文洲会長(http://www.asahi.com/national/update/0606/TKY200606050564.html。6月6日アクセス)等、村上の経歴に幻惑されているとしか思えない識者は少なくありません。

これらの識者に比べ、村上の名を初めて日本中に知らしめたところの2002年の東京スタイルの委任状争いにおける敗北の後、「日本を良くするなんてNGO(非政府組織)ででもやってくれ。調子にのるな」と村上を罵倒した一投資家(朝日上掲)こそ、村上の本質を抉っていると私は思います。

村上がMFを立ち上げた時に掲げた一見国士的な理念は、最初からあくなき利益追求の手段に過ぎなかった、と見るべきなのです。

恐らく村上はずっと以前から利益追求至上主義者だったに違いありません。

そんな彼が、旧通産省に入り、そこに16年間も勤めたこと・・「安月給」で国家のために16年間も奉仕したこと・・は、まことにもって不可解としか言いようがありません。

3 原田武夫

 (1)お断り

 次は原田武夫です。

最初にお断りしておきたいのは、彼は村上とは違って、犯罪を犯した(容疑をかけられている)わけではないのであって、私が問題にしたいのは、私がたまたま読んだ彼の著書の空疎さだけである、ということです。

 その著書とは、「騙すアメリカ騙される日本」(ちくま新書200512月)です。

 原田には、その他にも「北朝鮮外交の真実」(筑摩書房)、「劇場政治を超えて――ドイツと日本」(ちくま新書)、「サイレント・クレヴァーズ――30代が日本を変える」(中公新書クラレ)、「元外交官が教える24時間でお金持ちになる方法」(インデックス・コミュニケーションズ)と多数の著書があるようですが、私はこれらに一切目を通していないこともお断りしておきます。