太田述正コラム#12781(2022.5.30)
<皆さんとディスカッション(続x5185)>

<IkIS3yjM(AoOwBLJU)>

≫野邑理栄子本を読まれた、ということですか。他にも面白そうな箇所があったら、紹介していただけるとありがたい。≪(コラム#12779。太田)

 本として刊行される前の野邑の「陸軍幼年学校体制の研究」学位論文。↓
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis/d1/D1002502.pdf

・児玉含めて幼年学校設立の関係者は始めから幼年学校卒業者を将校の重要ポストに据えようとしていたという指摘がありました。
・筆者は新制陸軍幼年学校と旧制陸軍幼年学校とで分け改革によって実力主義だったものが学歴主義(新制幼年学校出身でないと重要ポストにつけない)に偏重したとしてますね。
・個人的な感想になりますが、陸軍首脳陣の出身校が表に載ってるのですが、大将以上は幼年学校出身者少ないんですよね、杉山も中学出身ですし、筆者の「陸幼制度は閉鎖的で独善的なエリート養成制度」というのがそもそも間違ってるとしか思えない。
・筆者のこれからの研究対象が陸軍幼年学校出身と中学出身との軋轢や対立が陸軍に及ぼした影響について関心が向いてしまって非常に残念です。
・以前海軍ダメ論の手掛かりになればと示した「陸軍将校の教育社会史 立身出世と天皇」(ちくま学芸文庫)<(コラム#12312)は、>サントリー学芸賞取った本ですが、どうやら、まともな学芸本ですらないないようです。↓

 「・・・教育史研究者から本書への批判の代表例は、佐藤秀夫(1999)の書評である。佐藤は、著者に対して「日本近現代教育史研究をナメンナヨといいたい」(p.130)と述べる。佐藤は、(1)近代天皇制教育の研究を進めてきた研究者(佐藤)として天皇制イデオロギーが「内面化」されたとは到底考えていないこと、(2)先行研究の恣意的な読み方への批判、(3)フォローされていない先行研究があるという点を批判する。佐藤が特に厳しく批判するのは、(2)(3)の論点である。このような点については、駒込武(1998)も同様の批判を与えている。本書の先行研究のまとめ方が不十分であることは両者が指摘する通りであり、著者自身も「不十分であった」と認めている点でもある」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihondaigakukyouikugakkai/58/0/58_51/_pdf

 書評が秀逸。↓

 「この本の親本が出た頃に、陸軍の将校だった人を取材していない、という書評を読んだ記憶があるが、平成9年に出ているのだから、昭和の陸幼・陸士の雰囲気は取材出来るのではないか?他の人が陸士・海兵出身者に行ったアンケート調査を使っているのだから、何故、同じ事をしなかったのか?著者は大正天皇の崩御を「天皇が死んだ」と書いているが、マルクス主義の公式史観を無理矢理、「独占資本の利益の代弁者」という教条的なスローガンを日本軍に結びつけた論文が引用されている陸士出身の藤原彰大尉や撫順のようなところに抑留されて新中国式の「人間改造」の対象になった将校ですら取材しなかったのだろうか?」
https://honto.jp/netstore/pd-book_31020583.html

<太田>

 ウクライナ問題。↓

 <高らかなる楽観論にちょっとしたスパイスが・・。↓>
 「・・・東部ルガンスク州のガイダイ知事は29日、同州内でウクライナ側の事実上の最終拠点となっているセベロドネツク周辺の一部から露軍を後退させたと発表した。また、28日までに同市郊外のホテルを占拠した露軍部隊もウクライナ軍の攻撃で孤立化していると明らかにした。ただ、全体として同市をめぐる攻防は兵力に勝る露軍の優勢が強まっているとされ、ウクライナ側は「状況は厳しい」との見方を崩していない。・・・
米シンクタンク「戦争研究所」は・・・「セベロドネツク攻防戦で露軍は攻勢限界点(攻撃側が優勢を維持できる頂点の状態)に達し、攻防戦の勝敗にかかわらず、その後の攻勢は弱まるだろう」と分析。ウクライナ軍に反攻作戦を展開する機会が生じるとした。」
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e3%80%8c%e9%9c%b2%e8%bb%8d%e3%81%af%e5%be%8c%e9%80%80%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%82%a6%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%8a-%e6%bf%80%e6%88%a6%e7%b6%9a%e3%81%8f%e6%9d%b1%e9%83%a8%e6%8b%a0%e7%82%b9/ar-AAXQEOA
 <念のため、この「戦争研究所」の戦況報告をチェック。チョー楽観論だわー。↓>
 ・・・Ukrainian forces conducted a successful limited counterattack near the Kherson-Mykolaiv oblast border on May 28, forcing Russian forces onto the defensive. This Ukrainian counterattack is likely intended to disrupt Russian efforts to establish strong defensive positions along the Southern Axis. While the Ukrainian counterattack does not appear likely to retake substantial territory in the near term, it will likely disrupt Russian operations and potentially force Russia to deploy reinforcements to the Kherson region, which is predominantly held by sub-standard units. Ukrainian counterattacks may additionally slow Russian efforts to consolidate administrative control of occupied southern Ukraine.
 Russian forces continued to assault Severodonetsk on May 29 but did not make any confirmed advances; Russian progress in intense urban combat will likely be slow. The Russian campaign in eastern Ukraine—which previously aimed to capture the entirety of Luhansk and Donetsk Oblasts—is now focused almost entirely on Severodonetsk. Russian troops are unlikely to be able to conduct multiple simultaneous operations and will likely further deprioritize advances southeast of Izyum and west of Lyman in favor of concentrating available forces on Severodonetsk in the coming days.・・・
https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign-assessment-may-29 <NYタイムスまで楽観論乗り。↓>
 ・・・The announcement of the Ukrainian counteroffensive — “Hold on, Kherson, we’re coming!” the military said Sunday morning on Twitter — signaled what may prove to be a new chapter in a war that has political, economic and humanitarian significance far beyond Ukraine’s borders.・・・
 The Ukrainian military headquarters said in a statement that its forces had broken through a Russian line of defense and pushed the Russians into less favorable terrain near the villages of Andriyivka, Lozove and Belihorka. The counteroffensive also sought to threaten Russia’s supply routes on bridges over the Dnipro River.・・・
 <ゼレンスキーの部下達の意気軒高ぶりだって全く変わってない。どーなってんだー。↓>
 Mykhaylo Podolyak, an aide to Ukraine’s president and envoy to peace talks held earlier in the three-month-long conflict, said in a post on Telegram over the weekend that Russia simply could not be trusted.
“Any agreement with Russia isn’t worth a broken penny,” Mr. Podolyak wrote. Until Russian troops withdraw from Ukraine, he said, “negotiations are being conducted by a separate ‘delegation’ on the front line.”
https://www.nytimes.com/2022/05/29/world/europe/ukraine-russia-war-kherson.html
 <やっとこさ、ワシントンポストはちょっぴり悲観論気味。
 ははーん、武器援助促進を図るためのゼレンスキー演出・主演・ウクライナ軍助演の迫真の演技に一部の人々が誑かされてるだけだったりして・・。↓>
 Ukraine suffers on battlefield while pleading for U.S. arms–‘They’re just raining down metal on us,’ said a soldier fresh from the front line where Russia is advancing・・・
https://www.washingtonpost.com/world/2022/05/29/ukraine-war-tide-turns/

 それでは、その他の記事の紹介です。

 一番目の記事本体より、途中から登場する、矢野康治次官の「写真集」は一体何なのさ?↓

 「逮捕の財務省「次官候補」 警察での取り調べに弁解もできない泥酔状態だった・・・」
https://www.news-postseven.com/archives/20220530_1758768.html?DETAIL
 <続き。↓>
 「泥酔逮捕の財務次官候補 “熊本の神童”“政治家と張り合える”と言われたエリート人生・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e6%b3%a5%e9%85%94%e9%80%ae%e6%8d%95%e3%81%ae%e8%b2%a1%e5%8b%99%e6%ac%a1%e5%ae%98%e5%80%99%e8%a3%9c-%e2%80%9c%e7%86%8a%e6%9c%ac%e3%81%ae%e7%a5%9e%e7%ab%a5%e2%80%9d%e2%80%9c%e6%94%bf%e6%b2%bb%e5%ae%b6%e3%81%a8%e5%bc%b5%e3%82%8a%e5%90%88%e3%81%88%e3%82%8b%e2%80%9d%e3%81%a8%e8%a8%80%e3%82%8f%e3%82%8c%e3%81%9f%e3%82%a8%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%88%e4%ba%ba%e7%94%9f/ar-AAXRraL

 そりゃそうなんだが、このアイディアを誰が思い付いたのか、知りたいのよね。↓

 「・・・守護・地頭も、実際は「守護職(しゅごしき)」「地頭職(じとうしき)」です。おわかりでしょうか。頼朝が配下の武士たち=御家人たちに所領を与える権限、それが「守護・地頭制」の本当のキモなのです。
 謀反人の探索と討伐、そのための戦費の確保という名目で、言い換えるなら、戦時体制下における戒厳措置という形で、頼朝は御家人たちに所領を与える権限を獲得しました。多くの研究者が、1185年(文治元)を鎌倉幕府成立の重要な画期、とみなすゆえんです。」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70338?utm_source=editor&utm_medium=mail&utm_campaign=link&utm_content=list

 日・文カルト問題。↓

 <メンタルが前近代で非科学的な国民からなる国がどうして先進国入りできたの分析こそ必要。↓>
 「「慰安婦は売春婦の一種」発言で刑事訴追された韓国人教授の告白 「本質は悲惨な貧困」・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/9fff0bdd2fcf1691533011d19e55266098a6e09f
 <殆ど報道価値なし。↓>
 「自民党の参院選公約、敵基地攻撃能力保有など防衛力強化盛り込みへ・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/05/30/2022053080788.html
 <同じく。↓>
 「韓国と日本の拉致被害者記憶法・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/05/27/2022052781338.html
 <これもそう。↓>
 「「20年目の日本勉強会…理解を積み上げてこそ友好も深まります」・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/05/27/2022052781337.html
 <これもまたそう。↓>
 「「80兆ウォン規模のNAND市場掌握せよ」 米日の攻撃的投資でサムスン・SKの圧倒的優位揺らぐ・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/05/27/2022052781336.html
 <結構、よく分かってんじゃん。↓>
 「・・・韓国メディア・韓国経済・・・記事・・・は・・・日本最大の輸出品目が自動車と鉄鋼だという点は変わっていないが、「家電輸出の空席」を埋めたのは日用品と食品で、とりわけ化粧品輸出は20年間で11.7倍に拡大したという。自動車と果物の輸出は、20年間でそれぞれ14.1倍と6.6倍に増えている。日本の農産物輸出規模は11年の福島第一原発事故による影響を乗り越え、昨年初めて1兆円を超えた。低価格の中国製品に押され1990年以降、急減していた玩具産業も復活しており、玩具輸出は20年間で2.6倍に増えたという。「アニメ人気で海外需要が増えた」ためだとしている。
こうした日用品、食品の好調に関しては「日本製であることが海外では品質保証書として通用するため」だと、・・・分析している。
 この記事に、韓国のネットユーザーからは「日本沈没」「いまだに印鑑、ファクシミリ、紙の書類を使うアナログ国」「食品もそのうち世界市場から閉め出される」などのコメントが上がっている。
 一方で、「しかし完成品の製造に必要な部品は全て日本製だ。日本崩壊だなんて言ってる場合じゃないよ」「ディテール、耐久性、デザインなど、どれだけの格差があるか。いくら中国が模倣をしても、日本製品のクオリティーはまねできない」「産業の現場に行けば、重要な装備はほぼ全て日本かドイツ製だよ。精密技術では勝てない」「日本は東日本大震災のあと、輸出国から金融サービス国に変わったんだ。日本は輸出ができないと言ったところで何の意味もない」「日本にけちをつける前に、台湾にも負けてる韓国の心配をすべきだ」「クッポン(極端な愛国主義)に酔った国民たちよ、韓国もいずれ日本のようになると、なぜ分からないの?」など、「よその心配をしてる場合じゃない」という声が多く寄せられている。」
https://www.recordchina.co.jp/b894979-s39-c20-d0195.html

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

 <お利口さんでしゅねえ。↓>
 「・・・中国のテックメディア「IT之家」は28日、米ブルームバーグの報道を引用する形で、萩生田光一経産相が27日の閣議後記者会見で、テレビを1つの部屋でまとまって見ることや別々の部屋でエアコンを使わないことなど、節電を呼びかけたことを伝えた。
 これについて、中国のネットユーザーからは「日本は科学技術先進国ではなかったのか?」「まるで途上国」「中国でも大規模停電があった。『予防注射』は必要だと思う」「こういう意識は大切」「家族一緒にテレビを見るなんて久しくしてないな」などの反応が見られた。」
https://www.recordchina.co.jp/b895026-s25-c30-d0192.html
 <出た出ーたが続くなあ。↓>
 「羽生結弦がアイスショーに参加、中国ファン「羽生結弦の『解放日誌』」・・・中国ポータルサイトの百度(バイドゥ)・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b895025-s25-c50-d0192.html 

太田述正コラム#12782(2022.5.30)
<鈴木荘一『陸軍の横暴と闘った西園寺公望の失意』を読む(その18)>

→非公開