太田述正コラム#12849(2022.7.3)
<皆さんとディスカッション(続x5218)>

<太田>

 ウクライナ問題。↓

 <このままウクライナ軍が反撃できなくてもp、いや、ウクライナが東西に分割されたとしても、ロシアの大敗北は変わらないのよ。↓>
 「・・・英エクスプレス紙は6月24日、「ロシアを地上から消滅させる」べく、NATO軍が即応部隊の6倍規模への増強を図っていると報じていた。  
 同紙が「プーチン最悪の悪夢」と表現したこの計画は果たして、現実のものとなった。  
 NATO加盟国は首脳会議の場で、即応部隊を現行の7.5倍となる30万人以上に増強するほか、ポーランドに米軍の大規模な司令部を設けること、スウェーデンとフィンランドの加盟手続きを開始することなどで合意した。ポーランドへの米軍司令部の配置については東欧で初の例となる。  
 英スカイニュースは合意の正式発表に先立ち、「冷戦後最大となる防衛体制改革」になるとして取り上げている。同紙はプーチンのウクライナ侵攻が、結果的には全30カ国というNATO加盟国の防衛体制を「根本的に再考する引き金となった」と指摘する。
 ウクライナの危機を目前に、NATO加盟国の結束は深まる結果となった。米ホワイトハウスの声明によると、アメリカのバイデン大統領はプーチンの誤算を冷笑し、次のように語った。  
 「プーチンは欧州の『フィンランド化(中立化)』をもくろんでいました。結果、彼が得んとしているものは、欧州の『NATO化』というありさまです。彼が絶対に望んでいなかったことですが、欧州の安全保障には不可欠なものです」  ウクライナ東部で支配域を広げるロシア軍だが、このところまた厳しい状況が聞かれるようになった。テレグラフ紙は6月23日、「ロシア将校らはこのところ、主に講師と教官、そして料理担当をかき集め、前線部隊を編成することを余儀なくされている」と報じている。兵士不足の解消を図るべく、国内の軽犯罪の囚人に恩赦を与え、戦地へ移送する案も浮上しているという。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/8d127c4a0e2dcfda7f9ca8ac5e7b64b5e62a6038
 <そりゃ、そうなる可能性だって排除はできない。↓>
 As Ukraine war bogs down, U.S. assessments face scrutiny–The growing conjecture is fueled by U.S. assessments of other wars, notably Afghanistan, where officials habitually sidestepped questions of whether success was sustainable・・・
https://www.washingtonpost.com/national-security/2022/07/02/ukraine-russia-us-assessments/?itid=hp-more-top-stories
 <だから、引用前段はありうるが、後段はありえない。↓>
 「嘘だった「武器支援でウクライナ反転攻勢は可能」との報道。西側の武器供給が止まる<から>・・・
 <よって、>おそらくウクライナは負ける。・・・」
https://www.mag2.com/p/money/1206406?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000204_sun&utm_campaign=mag_9999_0703&trflg=1
 <で、現在の戦闘の焦点はコレ。↓>
 Ukraine counters Russia’s claim that it has surrounded Lysychansk・・・
https://www.washingtonpost.com/world/2022/07/02/russia-ukraine-war-putin-news-live-updates/
 
 それでは、その他の記事の紹介です。

 人間主義って言ってくんない?↓

 Japan’s Secret to Taming the Coronavirus: Peer Pressure–The country has never mandated masks or vaccinations, but it’s evaded the worst of Covid, thanks to a fear of public shaming and the “self restraint police.”・・・
https://www.nytimes.com/2022/07/02/world/asia/japan-covid.html

 何を「思う」のもご自由だが、戦後日本の女性達は、違う動物であるところの、男、を搾取することによって、世界一の長寿を享受しているの。
 文句あっか?↓

 「「専業主婦も生き方の一つ」そんな日本の保守的なジェンダー観にヨーロッパの人々が思うこと・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/23680fec0574e2b4eddccbb68d20876c71028970

 羊頭狗肉記事。
 囲碁にせよ、将棋にせよ、プロの強弱が、これからは、AIの使い方の巧拙と記憶力で決まる時代になったんで、読みの力を競う「プロ棋士」は絶滅し、一定上の読みの力を持つという必要条件下でAIの使い方の巧拙と記憶力の良し悪しを競う「ポストプロ棋士」の時代に変化しつつある、というのが私見。↓

 「「囲碁AI」の最強時代到来、プロ棋士の存在価値は薄れてしまうのか?・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/cbdc3784d482e95e4e678077d88d1422f7e7c663

 日・文カルト問題。↓

 <こうゆーの、前政権時代に載せろー。臆病者!↓>
 「反日スローガンを叫んでいるうちに「超格差」を失った5年間–「もう二度と負けない」 空虚なスローガン叫ぶ間に半導体産業の優位性失う–日本のスナック菓子食べながらワークショップしていた正義記憶連帯のような「デタラメ反日主義」やめよ・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/07/01/2022070180103.html
 <ハテ、少しは対ウオンで下がったんだっけ?↓>
 「「100円=1000ウォン」の公式崩壊を喜ぶ韓国のオタクたち・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/07/01/2022070180101.html
 <アイゴー?↓>
 「韓国で、2021年には1人当たりの即席めん消費量が最も多かった国はベトナムで、韓国は「王座を譲った」と報じられると韓国人からは「プライドが傷ついた」、「負けられない」などの声が相次いだ。・・・中国メディアの観察者網・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b897046-s39-c30-d0198.html

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

⇒習ちゃんは、夏休みに入られたよーです。(太田)


<太田>

 學士會会報すら溜まっていたのに、調べたら、東大、スタンフォード関係の会報類が山のように溜まっていることを発見。
 私にとって、この何年かが、日本通史執筆関連作業でいかに忙しかったのか、ということだ。
 そこで、順不同で、概ね最近のものから遡る形で、何日かに分けて、私の印象に残った掲載記事の紹介を行うことにした。

 「・・・<中国の>最大の問題は、・・・成長の鈍化です。中国社会をまとめる宗教や価値観がないことも大きく、中国は道教の世界なので、儒教は広がりません。仏教に帰依する者が多く、キリスト教の地下宗教やイスラム教も増加中ですが、中国全体をまとめる力はありません。民主主義などの政治思想はご法度です。・・・」(國分良成(注a)(こくぶんりょうせい)「習近平体制の今後と日米中関係」(『學士會会報No.947 2021-II』より)

 (注a)1953年~。慶大法卒、同大博士、慶大教授を経て防大校長(2021年退任)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%8B%E5%88%86%E8%89%AF%E6%88%90

⇒During the Qing dynasty (1644–1912), however, due to discouragements of the government, many people favored Confucian and Buddhist classics over Taoist works.
https://en.wikipedia.org/wiki/Taoism
 Kuomintang(Chinese Nationalist Party) leaders embraced science, modernity, and Western culture, including (to some extent) Christianity. Viewing the popular religion as reactionary and parasitic, they confiscated some temples for public buildings, and otherwise attemp The Chinese Communist Party, officially atheistic, initially suppressed Taoism along with other religions. During the Cultural Revolution from 1966 to 1976, many Taoist temples and sites were badly damaged, Taoist clergy were forced to disrobed and sent to labor camps.
 Persecution of Taoists in China eventually stopped in 1979, and many Taoists began reviving their traditions. Subsequently, many temples and monasteries have been repaired and reopened, but the destruction of cultural revolution was substantial.
https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_Taoism
 というわけであり、清、中華民国、中共、と、三代にわたって政府によって弾圧されてきたというのに、「中国は道教の世界」とする根拠が示されていない。
 なお、中共下で「中国社会をまとめる宗教や価値観がない」なんてことはなく、人間主義(人性(ヒューム)主義)であることを、私はかねてから指摘しているところだ(コラム#省略)。(太田)

 「・・・本居宣長は、この国を「日本」などとは呼ばなかった。『日本書紀』・・・も、研究上は利用したものの、好まなかった。彼によれば、その書名自体、「辺(ホトリ)ばみたる題号」(周辺だという自己意識の露呈した書名)(『古事記伝』一之巻「書記の論(アゲツラ)ひ」)だった。そこで彼は、常にただ『書記』と呼んだのである。」(渡辺浩(注b)「国号考」(同上)
 
 (注b)1946年~。東大法卒、同大助手、助教授、教授、副学長、法政大法教授、同大名誉教授。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E6%B5%A9_(%E6%94%BF%E6%B2%BB%E5%AD%A6%E8%80%85)

⇒それどころではなく、この国は、「「日本国」を中世の中国語で発音した音が語源」であるというのが有力説であるところの、ジパングが転じたジャパン(Japan)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%B0
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3
が国際的な公式国称になってるんだが・・。(太田)

 ご本人による「医学修行と文学修行」(学士会『NU72021.9 No.37』より)を読んで、東大文(仏文)卒、TBS勤務、九大医卒、吉川英治文学新人賞等を受賞した作家の帚木蓬生(注c)を知った。

 (注c)ははきぎほうせい(1947年~)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9A%E6%9C%A8%E8%93%AC%E7%94%9F

 なぜ、彼が印象に残ったかというと、大森駅近くの眼科医の長澤和弘氏が私の眼のかかりつけ医で、彼が、東大文卒・修士、千葉大医、という経歴
https://oomori-eyeclinic.com/profile.html
(コラム#省略)だから。
 
 伊藤由佳理「曲面の秘密–マリアムの魔法の杖」(東京大学校友会ニュース『淡青44 2022/03』より)を読んで、女性唯一のフィールズ賞受賞者ミルザハニ(注d)を知った。

 (注d)マリアム・ミルザハニ(マルヤム・ミールザーハーニー=英: Maryam Mirzakhani。1977~2017年。「国際数学オリンピックで金メダルを1994年(香港)、1995年(トロント)に受賞し、天才少女として国際的な注目を浴びた。・・・ハーバード大学 (PhD)<。>・・・フィールズ賞(2014年)・・・これは女性としても、イラン人としても初であった。・・・スタンフォード大学の数学の正教授に31歳で就任(2008年)<。>・・・2013年、乳がんが見つかり、それが脊髄にまで転移し2017年7月15日アメリカの病院で死去。・・・2020年5月12日、映画「曲面の秘密」が公開される。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%B6%E3%83%8F%E3%83%8B
 「追悼、マリアム・ミルザハニ──女性初のフィールズ賞数学者の軌跡を振り返る・・・」
https://wired.jp/2017/07/17/maryam-mirzakhani-3/

 なぜ、彼女が印象に残ったかというと、女性にいかに天才が少ないかを改めて突き付けられた思いがしたからだ。
 あえて、これ以上ない冒涜的かつ下世話な言い方をすれば、ミルザアニ・ネコはワンと鳴いたがネコだけの病で死んだ、というわけだ。

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太田述正コラム#12850(2022.7.3)
<伊藤之雄『山県有朋–愚直な権力者の生涯』を読む(その21)>

→非公開