太田述正コラム#2187(2007.11.20)
<額賀さん大好き>
1 始めに
 例の記事を書いた朝日新聞の記者からは、多分朝6時頃には最初の電話が他社からかかってくるだろうと聞いていたのですが、案の定、6時少し前に電話がかかってきて叩き起こされました。
 その後、簡単な朝食をとり、後30分弱の昼飯休憩を除き、ビッグマックを夕食代わりにほおばりながらの取材まで、場所を、自宅、自宅最寄りの駅前のマクドナルド、駅の近くの駐車場、自宅と移しつつ、連続14時間の取材を受けました。
 この間、疲れるどころか、だんだん口調が滑らかになっていった感があり、この調子でいくと近い将来、私のトレードマークの「フフフ」も「口べた」も解消して、一部の「ファン」の方々をがっかりさせるのではないか、と心配です。
2 額賀さん大好き
 それにしても額賀さん。
 守屋以上にあなたが好きです。
 初めてあなたにお目にかかったのは、私が審議官をしていた1999年7月12日でした。
 もっとも、あなたは何でもかんでも全面否定されているから、このことも否定されるかも知れませんね。
 その時私は、元防衛庁長官のあなたに防衛白書の案の説明を行ったのですが、短期間とはいえ、防衛庁長官をされたあなたが私に「中期防って何ですか」と尋ねられたのには、そんなこともご存じないのか、とぶったまげました。
 驚くと同時に、知らないことを恥ずかしがらずにお尋ねになるあなたの不器用さ、素直さに私は感銘を受け、密かにファンになりました。
 ですから、仙台防衛施設局に赴任後、そのあなたが建設・土木事業で口利きをされていることを知り、裏切られたような気持ちになりましたよ。
 しかし、このところの守屋事件に関わるあなたの対応を拝見していると、やはりあなたは不器用で素直な方なのだなあと思います。
 宮崎氏や守屋と宴席で同席したことなど一度もないとあなたはおっしゃっていますが、何も「防衛庁長官の時に」同席したとまでおっしゃる必要はないものの、同席したことがあったかもしれない、となぜおっしゃらないのか、私には理解できません。
 同席したっていいじゃありませんか。
 そういうあなたですから、山形県の土木・建設業者の口利きをされたことも全面否定されるだろうと予想していましたが、案の定そうでした。
 だけど額賀さん。
 何で口利きをしちゃいけないのですか?
 自民党ないし自民党系の政治家が土木・建設業者の口利きをした場合、防衛施設庁(当時)が、この業者を、資格要件を満たしていないようなケースを除き、必ず指名競争入札で指名する手はずになっていることをあなたがご存じであった可能性は高いと思っていますが、その旨証言する人は現時点では容易に現れないでしょう。それに、仮に証言をする人が出てきたとしても、指名されたって落札するとは限りませんよね。ですから、指名するくらいのサービスを施設庁が口利きをした政治家にしたっていいじゃないか、と開き直られればいいのです。
 そもそも、当時土木・建設業者のための口利きを行っていた自民党ないし自民党系議員はご自分だけではないこともあなたよくご存じだったはずです。
 自分一人だけがどうして指弾されなければならないのだ、ということもおっしゃればいいのです。
 でも、あなたは不器用で素直でいらっしゃるからこそ全面否定された。
 全面否定された以上、私と朝日新聞を名誉毀損で訴えられてしかるべきです。
 訴えないのであれば、あなたはウソをついたことになるからです。
 ですから、一刻も早く弁護士とご相談の上、訴えを提起されることをあなたにお奨めします。
 私のねらいは、守屋の「不祥事」が守屋個人の問題でも、防衛省キャリア共通の問題でもなく、全省庁のキャリア共通の問題であることをアピールするところにあることと同様、額賀さんの「不祥事」もまた、額賀さん個人の問題でも、防衛族議員共通の問題でもなく、自民党及び自民党系議員共通の問題であることをアピールするところにあります。
 ですから、額賀さんが口利きを全面否定され、更に裁判等を通じてわれわれと長期間にわたって争われることは、この口利き問題への国民の関心を持続することにつながると考え、歓迎するところです。
 大好きな額賀さん。
 心からご健闘を祈ります。
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<元官僚・現医師・河辺啓二>        
 先日の日テレ「太田総理」の収録の際はお疲れ様でした。
 その後、私の名前の検索エンジンで太田さんのHPに私の名前が登場していることを知り、そのHPを拝見させていただきました。そこで、太田さんが誤解されておられていることを知り、ここにメールいたします。
 私のことを「技官」だと紹介していましたが、これは誤りです。「工学部卒」ということで「技官」と思われたのでしょうか。確かに工学部卒事務官は異色かもしれませんが、経済学は数学を使うので、理系から経済職を受験する人は、結構多いのです。私の略歴は以下のとおりです。
 「東京大学工学部4年生のとき、国家公務員採用上級(甲種)試験(現Ⅰ種)「経済」区分に合格。同卒業後、キャリア事務官として、農林水産省および総務庁(現総務省)に勤務。官僚としての閉塞感を覚え、現役最後の1年間に、官僚の業務をこなしながら受験勉強をし直し、東大理科Ⅲ類に合格。同医学部卒業後、東大病院内科等を勤務。平成10年に、東京から群馬に移り住み、開業する。」
 私は、昭和54年の国家公務員採用試験上級甲種「経済」で合格者90人中26番で合格しました(したがって、翌55年入省です)。霞が関では、行政・法律・経済の3区分の合格者を事務系とされるので、いちおう、私も、キャリア事務官でした。東大法卒が主な同期の連中は、現在、官房課長or各局筆頭課長になっております。「河辺さんは技官なので、技官は接待されない」という趣旨のことを言うのを憚られたそうですが、言ってほしかったですね。そうすれば、技官・事務官問題に発展し、私の持論を展開することができたのになぁと思っております(この件については、拙著『官僚と医師はなぜ同じ過ちを犯すのか』や『政治家がアホやから役人やめた』の中で述べております)。なお、「競演」した他の元官僚・国会議員の中に技官出身の方がおられます。
[付け足し 1]
 数か月前まで世間をお騒がせした安倍内閣の閣僚には、農水省OBが多いため、特に私には興味深かったです。自殺した松岡元農水相、「絆創膏」の赤城元農水相、「しょうがない」の久間元防衛相、・・・。若林元環境相(現農水相)は、なんとかしのいでいたようですが。この方々のうち松岡さんのみ技官上がりで、他は、みな私と同じ上級職農水事務官出身です(農水省には「法経学士名簿」というキャリア事務官名簿があり、毎年OBにも送られて来ます)。赤城クンは、私の3年後輩でよく知っています。世間で言われるほど、そんな悪いヤツでないと思うのですが・・・。
[付け足し 2]
『太田総理』放映の中で、私の「(官僚に対して)低い報酬で高いモラルを求め過ぎる」の発言が紹介されましたが、会場の皆さんも、視聴者の方々も「モラル」を「道徳moral」の意に取ったでしょうね。私は「士気morale」のつもりだったのですが、言葉足らずでした。発音が違う(moralは第1音節にアクセント、moraleは第2音節にアクセントがありますよね)ので、このことを直ちに「(報酬は)低くない」と反論したバイリンガルのケビンさんに私の英語の発音で説明したら笑いが起きたでしょうね。ちょっと残念・・・(笑)。
<太田>
>私のことを「技官」だと紹介していましたが、これは誤りです。
 大変失礼いたしました。
 これを機会に、今後ともよろしくお願いします。
 メールありがとうございました。