太田述正コラム#2355(2008.2.9)
<天下りについて(その1)>(2008.3.24公開))
1 始めに
 TV番組等では、何度も天下りを政官業癒着構造の核心であると語ってきたところですが、コラムではほとんど取り上げたことがありません。
 そこで、天下りについてです。
 防衛省、防衛省以外の省庁、の順序で取り上げましょう。
2 防衛省
 (1)防衛省をめぐる政官業癒着構造が一目で分かる表
 (社)日米平和・文化交流協会の主な会員企業等の受注金額、天下り、献金
受注企業名     受注金額     防衛省からの天下り  自民党への献金
三菱重工業     1兆6951億円      38人      1億2097万円
川崎重工業       7935億円      18人        1259万円 ○
三菱電機        6045億円      24人        9840万円
日本電気        4440億円      27人        7800万円 ○
東芝          2671億円      14人      1億6154万円
石川島播磨重工業    2640億円      17人        6087万円
富士通         1564億円      14人        8040万円 ○
富士重工業       1414億円      10人      1億1125万円
日立製作所       1151億円      14人      1億6838万円 ○
伊藤忠商事        980億円       3人        9700万円
アイ・エイチ・アイ
 ・エアロスペース    972億円       8人         —
三菱商事         539億円       3人      1億1000万円 ○
住友商事         273億円       3人      1億1000万円
山田洋行         226億円       4人         —
神戸製鋼所        131億円       2人        5030万円
丸紅           47億円       2人        1300万円
  総計      4兆7979億円      201人      12億7270万円
防衛省提出資料及び政治資金収支報告書にもとづき作成。
注1.受注金額は、2001年度から06年度の総額。
注2.天下りは、2000年7月から06年12月の防衛大臣承認分。
注3.献金は、2001年から06年の「国民政治協会」に対する献金総額。
注4.アイ・エイチ・アイ・エアロスペースは石川島播磨重工業の100%出資子会社
(2007年12月4日 参議院外交防衛委員会 日本共産党 井上哲士 提出資料④)
太田脚注1
 (社)日米平和・文化交流協会については、コラム#2340参照。
 「秋山直紀氏が常勤理事を務める社団法人「日米平和・文化交流協会」の理事が相次いで退任していることが分かった。軍需専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者(69)=前防衛事務次官の守屋武昌容疑者(63)への贈賄容疑で再逮捕=も06年まで理事を務めており、東京地検特捜部は協会の事務所を家宅捜索。こうした点を懸念しての動きとみられる。・・協会理事には有力な防衛族議員らや米国の元政府高官も名を連ねる。しかし、宮崎元専務が逮捕された07年11月上旬以降、同月27日付で佐藤謙・元防衛事務次官と米津佳彦・山田洋行社長、同年12月5日付で前原誠司・前民主党代表が退任。・・公明党の赤松正雄・衆院議員、葛西敬之・JR東海会長も同月上旬の時点で協会ホームページの理事名簿に名前がなくなった。それ以前にも、福田首相が07年3月に理事を退任。8月27日付で額賀福志郎・財務相、9月25日付で石破茂・防衛相が退任した。一方、久間章生・元防衛相は06年9月、防衛庁長官(当時)に就任すると同時に退任したが、07年8月3日付で再度、理事に就いている。・・03年2月には協会が福岡県・苅田港の毒ガス弾処理の調査委託業務を防衛庁から受注。「定款外の事業だ」との指摘が出ている。また、05年9月、当時非常勤だった秋山氏に年1020万円の報酬が支払われていることや、常勤職員がいないことなどについて外務省から改善命令を受けた。」(
http://www.asahi.com/national/update/0106/TKY200801060155.html  
。1月7日アクセス)と報じられている。
     また、「福岡県苅田(かんだ)町の海底で発見された毒ガス弾の処理方法を決めるための調査業務を巡り、旧防衛庁が入札前の03年初め、社団法人「日米平和・文化交流協会」の受注に便宜を図っていた・・。協会の秋山直紀専務理事(58)に対し、同庁側が受注に不可欠な調査の専門家を紹介するなどしたため、協会が落札に成功したとされる。・・調査報告書提出から約8カ月後の03年11月には実際の処理業務の入札があり、大手メーカーが20億6000万円で落札。防衛専門商社「山田洋行」は無害化処理装置の部品の納入やダイバー手配を下請け受注した。同社元専務、宮崎元伸容疑者(69)=贈賄容疑で再逮捕=は東京地検特捜部の調べに対し「秋山氏に受注を依頼し、見返りに1億円を送った」と供述している・・」(
http://mainichi.jp/select/today/news/20071230k0000m040084000c.html
。2007年12月30日アクセス)とも報じられている。
太田脚注2
 受注企業名中の(株)は省略した。○は(財)浩志会(コラム#2256、2337、2340)会員企業であり、私が追記したもの。
太田脚注3
 アイ・エイチ・アイ・エアロスペースは石川島播磨重工業に加える形で比較することが望ましい。
 (2)所見
 これは、防衛省をめぐる政官業癒着構造が一目で分かる表ですね。
 表中の天下り人数が、ストックではなく、フローであること、自民党への献金は必ずしも防衛省絡みのものだけではないこと、等さまざまな留保が必要ですが、受注額が多いと天下り人数も多いという傾向がはっきり読み取れます。
 ただし、受注額と天下り人数とが必ずしもきれいな比例関係にはないところを見ると、かつての防衛施設庁関係企業への防衛施設庁等のOBの天下りのように単純な数式で天下り人数が決まっているというわけではなさそうです。
 それにしても、相互にお友達らしい「日米平和・文化交流協会」の専務理事の秋山氏と山田洋行の(元)専務の宮崎氏という両フィクサーの回りを政官業の魑魅魍魎がうごめいているという観がありますね。
(続く)