太田述正コラム#2600(2008.6.10)
<皆さんとディスカッション(続x160)>
<ueyama>
 –秋葉原通り魔事件–
 平成19年の殺人(未遂)事件の発生件数は1,199件で、実際の死亡者数は574人でした。(
http://www.npa.go.jp/toukei/seianki6/h19hanzaizyousei.pdf
)この数字はどうやら戦後最低のようですが、交通事故での死亡者5,744人(
http://www.npa.go.jp/toukei/koutuu48/H19.All.xls
近年死亡者数は減少を続けていますが、これは「24時間以内での致死者」が減っているだけです。)や、自殺での死亡者30,777人(
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai07/dl/gaikyou.pdf
)に比べると、表現は適当ではないでしょうが「たったの」574人しか死んでいないといっても差し支えないのではないかと思います。
 私は今回事件のあった現場まで徒歩5分程度のところに住んでおり、ヘリが上空を飛び回ってるので何かあったのがわかったという感じなんですけど、ちょっとだけ報道に触れて(あんまり興味ないですから、ほんのちょっとです)一番に思い出したのは、少し前にはいじめ自殺をマスコミが大々的に報じることによりいじめ自殺者が相次ぎ、つい最近では硫化水素自殺を大々的に報じることにより硫化水素自殺者が相次いでいることでした(典拠無し。妄想です)。
 今回の事件を起こしたバカも
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080323/crm0803231345005-n1.htm
このあたりの事件にインスパイアされたんじゃないかと妄想しますけど、こういった事件や事象を詳細に、動機や心理にまで踏み込んで報道(といえるレベルなのかどうか私は見ないので伝聞程度にしか知りませんが)するのがまともだとはとても思えません。
 もちろんただ単に視聴率がとれるものが報道されているだけでしょうから、こんな自分にとってどうでもいいはずのものを喜んで視聴対象にする方々にも疑問を覚えますけど。警察庁もこんなことでインターネットをやり玉にあげるより、マスコミ規制でもしたほうが効果をあげるでしょうにね。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080501AT1G3001W30042008.html
<太田>
 私は、日本の自殺率、特に青少年の高い自殺率と、日本でたまに起きる青少年による大量殺害事件との関連を指摘するガーディアン(前回引用)・・正確には立正大学刑事学教授の小宮Nobuo氏の見解・・は傾聴に値すると思います。
 もちろん、今回の事件の犯人が精神疾患に罹っていたとすれば、この指摘は今回の事件に関しては的外れだということになるでしょう。
 しかし、その場合でもなお、今回の事件から学ぶべきことはありそうです。
 日本では精神疾患に対する偏見が強いため治療を受けていない人が多いという指摘も、今回の事件の関連で(米国のメディアから)出てきているからです。
 この場合は、1997年の神戸での14歳の少年による11歳の少年の殺害・首切断事件(サカキバラ事件)、昨年の福島県での17歳の少年による母親殺害・首切断事件等の線上に今回の事件が位置づけられることになります。
 (以上、
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1812808,00.html
(6月10日アクセス)による。)
 今回の事件の犯人が精神疾患に罹っていなかった場合、これを日本特有の問題の露呈と考えず、学校、またはグループ、もしくは社会から疎外されていると感じる若者の憤懣の鬱積という世界共通の問題の露呈であるととらえるべきであるとの指摘も(台湾のメディアから)出ています。
 この場合は、1989年のカナダ・モントリオールのEcole Polytechniqueでの青年男子による14人の女性殺害事件、1995年のオウム真理教が12人を殺害した地下鉄サリン事件、1999年の米国での12人の生徒が銃殺されたコロンバイン高校事件等の線上に今回の事件が位置づけられることになります。
 (以上、
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2008/06/10/2003414311
(6月10日アクセス)による。)
<774>
 コラム#2426「健在なり朝鮮日報」を読みました。
 【コラム】世界から見た韓国の位置(上・下)東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員 2008/06/08
http://www.chosunonline.com/article/20080608000020
http://www.chosunonline.com/article/20080608000019
 朝鮮日報は親日であるという太田先生の説、納得できました。
<太田>
 タイトルを見て私が読み過ごした記事です。引用していただいてありがとう。
 「同じ部品と同じ装備を使いながらも、より安く、より質のいい製品を作り上げる技術に関しては、 韓国が日本を上回るケースもある。しかし、部品や素材面で相変わらず日本を頼りとしなければならない構造は、今も昔も変わらない。このように日本の技術力 がなければいつでも崩壊してしまうという貧弱な基盤・・・対日貿易赤字は1990年の59億ドル(約6136 億円)から2007年には298億ドル(約3兆992億円)へと5倍にまで膨らんだが、この数字がすべてを物語っている。・・・こうした日本の深さに追い付いていく ためには、日本が傾けてきた数十年、数百年にわたる努力は欠かせない。しかしこれまで韓国は、こうした過程をすべて省略し、自らを誇示することだけに夢中 になってきたのではなかったか。」(朝鮮日報上掲)
 これは、旧日本帝国の日本列島地方と朝鮮半島南部地方の経済の強い結びつきを指摘した記事、と受け止めることもできますね。
<新規有料購読申し込み者>
 新聞を読む暇が無く、かつ新聞はつまらないので読みたくない映像作家です。
 兵頭二十八先生のブログで紹介されていたのを機に無料メルマガを取っていましたが、やむにやまれず購読を決意致しました。
 軍事・外交に限らず国内の政治状況も幅広くフォローをお願い致します。
<太田>
 軍事・外交(安全保障)に日本人は関心がなくても、世界の人々は強い関心を持っています。
 ということは、グローバル化した世界の一員である日本の国内の政治状況も、安全保障的視点からアプローチするとよく分かる面があるのではないでしょうか。
 少しでもお役に立てば幸いです。
 ところで、「朝生」のプロデユーサーが、私が出演した前回の「朝生」に関する25頁にも及ぶ報告書を送ってきてくれました。
 この番組に寄せられた視聴者の意見がメインですが、これは省略するとして、この3時間の番組の平均視聴率をご紹介しておきます。
 関東3.6%、広島5.7%、名古屋4.1%、静岡3.6%、仙台3.4%、関西及び岡山・香川3.3%、札幌2.7%、福島2.4%、新潟2.3%、北部九州2.2%
 あんな時間帯としてはかなりの高さですね。
<細田>
>その「感想を述べたようなコメントに対しても、太田氏が呪文のように『典拠』を求めておられた」箇所をぜひ指摘してください。(遠江人)
 やけに典拠にこだわる人だと感じたのは、たまたまコラム#2584を読んだ時。
 たとえば、この中の <こくぴと> さんのコメントなどは、典拠の必要を感じないし典拠を示す事も難しいと思う。
 勘違いしている人がいるようなので念の為に繰り返すが、自分は「典拠自体」を批判しているのではなく、必要以上に「典拠にこだわる姿勢」に疑問を感じたのだ。
>太田コラム読者のみんなで判断しますから。よろしくお願いします。(遠江人)
 論理的な反論や自分の指摘をさらに掘り下げてくれるのなら結構だが、主旨から外れた矮小化に向かう話は好まないので悪しからず。
<こくぴと>
 
 私も自分の経験から考えたことを書きましたので、自分のコメントのどの部分に典拠が必要なのか正直よくわかりませんでした。
 不勉強故、典拠が必要なものとそうでないものの区分けの基準がよく理解できていないのだと思い、それを学べるものがが欲しいと考えたところ、ちょうど遠江人さんが書き込みをして下さったので、取り急ぎお礼を申し上げた次第です。
<遠江人>
 後輩の次官や局長(現役の社長や会長)が自由に腕を振るえるように制度を変えるべきというのは、逆に言えば、次官や局長をやった先輩が省内に留まる(元社長や会長が顧問として会社に残る)ことを前提としていると思います。
 そもそも、組織に影響力を行使しうる可能性のあるような存在を組織内にとどめようとするほうが異常ではないでしょうか。「ホンダやソニーはそんなことしてません」というのは正にそのことを指摘しているのだと思います。
 そんな構造を抱える組織は健全といえるのか。だから典拠を示してください。というのは理解できることだと思うのですが、如何でしょうか。
本田宗一郎 – BIGLOBE百科事典
http://jiten.biglobe.ne.jp/j/c5/23/3a/e8288bfbc5c9d8c2cc53dba525508eb5.htm
 「また両者は、「会社は個人の持ち物ではない」という考えをもっており、本田と藤沢は身内を入社させなかった。盟友の井深大が、自らの会社名を「ソニー」と名付けたことに対し、後年本田は自らの名を社名に冠したことを非常に後悔したという。」
 現実問題として、元社長や会長である顧問からの有形無形、意識無意識の影響力を完全に排除することなどできるのでしょうか。これは日本に限らず人類共通という意味においてです。
 そもそも本当に会社のことを考えるなら、わずかでも自分が残ることの影響を考慮して会社に残ろうとしないだろうし、会社側もそういう可能性をあらかじめ排除することが合理的だといえるのではないでしょうか。ソニーとホンダはまさにそういう企業なのだと思います。
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太田述正コラム#2601(2008.6.10)
<オバマ熱の欧州とアングロサクソン論>
→非公開