太田述正コラム#13924(2023.12.22)
<映画評論100:ヒトラーを欺いた黄色い星>(2024.3.18公開)

1 始めに

 「ナチス政権下のベルリンで終戦まで生き延びた約1500人のユダヤ人の実話を、実際の生還者の証言を交えながら映画化。1943年6月19日、ナチスの宣伝相ゲッベルスは、首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言。しかし実際は約7000人のユダヤ人がベルリン各地に潜伏しており、そのうち約1500人<(注1)>が終戦まで生き延びた。運良く収容所行きを免れ、ドイツ人兵士に成りすましてベルリン市内の空室を転々としていたツィオマは、ユダヤ人を救うための身分証偽造を行う。

 (注1)1,700人説が正しいようだ。
https://portlandgermanfilmfestival.com/the-invisibles-die-unsichtbaren-wir-wollen-leben-opens-the-german-language-film-festivals-in-portland-and-seattle/
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Invisibles_(film) α

 戦争未亡人を装って映画館に出かけたルートは、ドイツ国防軍の将校にメイドとして雇われる。16歳の少年オイゲンは、ヒトラー青少年団の制服を着て身元を偽りながら、反ナチスのビラ作りに協力する。極限状態の中で彼らがどのようにして住居や食料を確保し、ゲシュタポや密告者の監視の目をすり抜けたのか、歴史の知られざる真実を描き出す。
 2017年製作<。>・・・原題:Die Unsichtbaren<(The Invisibles)>・・・監督<は>クラウス・レーフレ<(Claus Räfle)(注2)>」
https://eiga.com/movie/88514/

 (注2)生い立ち、学歴等は分からなかった。

2 本題

 4人の主人公の本人の証言動画は2009年に撮られた(α)ものですが、そのうちの一人の高齢男性が、「ユダヤ人を嫌うことと数百万人殺すこととは全く異なることだ」的なことを語っていますが、’Numerous massacres of Jews occurred throughout Europe during the Christian Crusades. Inspired by the preaching of a First Crusade, crusader mobs in France and Germany perpetrated the Rhineland massacres of 1096,’
https://en.wikipedia.org/wiki/Ashkenazi_Jews
という次第であり、欧州におけるユダヤ人虐殺にはナチス当時までに既に850年の歴史があり、そんなことを語るユダヤ人が21世紀にもなってまだいたことの方が私には驚きでした。
 というのも、ユダヤ人虐殺の原因は極めて単純なのであって、’ Jews lived almost exclusively in shtetls, maintained a strong system of education for males, heeded rabbinic leadership, and had a very different lifestyle to that of their neighbours’(上掲)で、しかも、彼らが金持ちだった(典拠省略)からであり、その結果、’ all of these tendencies increased with every outbreak of antisemitism.’(上掲)ということにあいなったわけですが、これは、鶏が先か卵が先か、という話ではなく、近現代までは、ユダヤ人=ユダヤ教徒、であって、論理必然的に、アシュケナージの場合で言えば、周囲のキリスト教徒たる住民達とは全く違った文化を墨守していたところの、「豊かな」ユダヤ人側が先に原因を作ったのです。
 例えば、この映画の中で、ベルリンに侵攻したユダヤ人たるソ連兵が、たまたまユダヤ人の青年達を見つけ、彼らがドイツ人だと思って銃口を突き付けた時、自分達はユダヤ人だと主張した彼らに対し、敬虔ではないユダヤ人でも必ず暗唱できる律法(創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記)
https://jp.quora.com/%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%83%A6%E3%83%80%E3%83%A4%E4%BA%BA%E3%81%AF-%E8%81%96%E6%9B%B8%E3%82%92%E6%9A%97%E8%A8%98%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%8B
の特定の箇所の一斉暗唱を命じ、それにこの青年達がほぼよどみなく応じる場面が出てきます。
 そんなこと、相手がユダヤ人以外で何人かを確かめる必要が生じた場合に考えられますか?
 国歌を斉唱させることはありえても、特定の宗教の聖典の一節を暗唱させるなんてことはありえないでしょう。
 こんな人々は、自ら迫害の種をまき散らしながら生きているようなものなのです。