太田述正コラム#13998(2024.1.28)
<映画評論114:始皇帝 天下統一(続x22)>(2024.4.24公開)

 前出の始皇帝の巡遊(巡遊)
https://chinahistory.web.fc2.com/point49.html
についても、その狙い等を解明したいところですが、それは別の機会に譲るとして、最後に、TV映画「始皇帝 天下統一」についての「周辺的な」感想を記しておきたいと思います。
 一つは、脇役である女優の方はさておき、男優にミスキャストが多い印象を受けたことです。
 そんなことは、制作陣だって分かっている筈なのにそうなっているのは、演劇界に人材が乏しいことの反映である、という気がしました。
 支那では、「古代<支那>の俳優は、・・・歌舞音曲や語り物を演ずるボードビリアン的な芸人であ<り、彼ら>が、ドラマチックな物語性に富む本格的な演劇を演ずるようになるのは、13世紀の「元の雑劇」からであった<上、>・・・13世紀の元の雑劇も、19世紀に形成された京劇も、みな音楽劇であっ<て、支那>で話劇が普及するのは、日本や西洋の影響を受けた近代からである」という演劇史の浅さ、と相俟って、「演劇のステイタスが低かったこと」
https://www.isc.meiji.ac.jp/~katotoru/20180213.html (「」内)
が想起されました。
 もう一つは、このTV映画については、Amazon Primeだけでなく、チャンネル銀河ではこれから提供され、
https://www.ch-ginga.jp/detail/shikoutei/
U-NEXTは提供中、
https://video.unext.jp/title/SID0079018
TSUTAYAはDVDレンタル中、
https://movie-tsutaya.tsite.jp/netdvd/dvd/goodsDetail.do?titleID=5738471737
といった具合で、これまでに日本で視聴した人はかなりの数に上ると考えられることであり、「<支那>史上初めて天下統一を果たした始皇帝と、それを支えた武将李信が主人公で・・・第17回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞した」漫画キングダムが、「2020年12月に発売された60巻をもってシリーズ初の初版100万部を達成した。」上、それが、テレビアニメ、実写映画、舞台、ゲーム化されていること、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%80%E3%83%A0_(%E6%BC%AB%E7%94%BB)
から、この時代に滅法詳しい日本人が何万人もいることに、私は忸怩たる思いがしました。
 というのも、諸子百家のうちの少なからぬ人々がTV映画「始皇帝 天下統一」に登場するところ、私自身、知らないか忘れていた人も少なくないことから始まって、その他の重要な諸人物や重要な史実群の中でも知らないか忘れていたケースも少なくなく、若い頃、父親の蔵書を中心に支那の諸子百家についての諸書籍や『史記』(の邦訳)等に目を通していて、支那通の端くれくらいの自覚があった私の鼻を折られた思いがしないでもないからです。
 これを前向きに言い換えれば、主パソコンが壊れくれたおかげで、自分が「無知」なまま、生涯を終えることを回避できて本当によかった、といったところでしょうか。

(一応完)