太田述正コラム#2975(2008.12.15)
<中共における08憲章について(その2)/太田総理出演記>(2009.1.31公開)
 「・・・当局が08憲章で怒ったことと言えば、現在の政治体制を「悲惨な(disastrous)」と形容し、自由な選挙を求めたことであり、一党支配を終わらせよ、政治活動でパージされた人々の復権を、軍及び裁判所から共産党を引き揚げさせよ、宗教の自由を、と呼びかけたことだ。
 大変なリストであることは確かだが、それだけではない。この文書は、共産党支配は「人々から権利を奪い、尊厳を破壊し、通常の人間の交わりを腐敗させた」と告発した。
 この憲章は、1989年の流血が中共での批判の声をほとんど沈黙させてから出現した、最も大胆な変化を求める呼びかけの一つだ。303名の学者、法律家、そして若干の<元>官吏によって署名されたが、彼らは現在捜査対象となっているところ、中共の指導者達にとってほとんど前例のない危険な時期に発出されたわけだ。・・・
 欧米では好況も不況も何度も経験しているが、中共の新しい富裕階級はこれまで好況しか経験がない。だから、不況になったらどうしたらいいか分からないのだ。中共の指導者達だって全く同じだ。・・・」
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/dec/12/china-humanrights
 「この前代未聞の大胆な声明は、国際人権デーの前日に発せられた。・・・
 この請願の首謀者の嫌疑をかけ、警察は筋金入りの反体制派の劉暁波(Liu Xiaobo)を月曜遅く、彼の北京の自宅で逮捕した。・・・徹夜で自宅の捜索を行い、パソコン、本等を押収した。
 この文書へのもう一人の著名な署名者である、政治理論家にして活動家のZhang Zuhuaは、同じ頃に逮捕され拘束されたが、長時間に及ぶ尋問の末、翌朝釈放された・・・。彼の自宅も捜索され、持ち物が押収された。Zhangは劉が「国家権力転覆教唆」の嫌疑で拘束されていると語った。・・・
 劉は今53歳だが・・・元は北京の人民大学の哲学の教授だったが、現在は独立中国ペンセンターの所長をしている。彼は、1989年の天安門広場での学生達の抗議活動への支援の廉で20ヶ月を牢獄で過ごした。
 1996年には、彼は中国共産党を批判したとして労働収容所に3年間送られた。最近では、北京五輪前の政治的反体制派の一斉手入れの一環として、7月の初めに数日間拘束された数多くの中共市民の一人となった。・・・
 これら逮捕の報道は、中共の内閣情報局(State Council Information Office)のWang Chen局長に対する国営メディアのインタビューが放送されたのとほとんど同じ時間になされた。彼は、人権の分野で中共が「歴史的前進」を遂げたと語った。彼は同時に、「「前途にはまだ沢山の課題と困難が待ち受けている」けれど、他国が中共の内政に干渉しないように警告を発した。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/10/AR2008121002854_pf.html
 「・・・<この08憲章は、>ソ連時代のチェコスロバキアで、当時の共産党政府に国連人権諸条約の批准と、その2年前に締結したヘルシンキ協定(Accords)の人権義務規定の尊重を求めたところの、元祖たる77憲章に倣ったものだ。
 その署名には、後にチェコの大統領になるヴァーツラフ・ハヴェルやその他の著名作家達が名を連ねた。
 この元祖と同様、08憲章の起草者達は、それを中共憲法の枠内のものとするよう配意した。彼らは政府に、北京が調印はしたけれど、実行には移していないところの、国際社会政治諸権利規約(International Convention on Civil and Political Rights)の批准を訴えた。・・・
 中共の人権擁護家達という、もう一つの非公式活動家集団は、自分達は政府の官僚達<の一部>の激励を<密かに>受けているとも言明している。・・・
 彼らは、署名者達が逮捕されたことを非難する声明を発した。
 「<人権>記念日に直接関連して行われたところの、人権活動家達の弾圧は、国際的な人権規範に対する侮辱であるとともに、政府が自ら表明したところの、中共における人権推進へのコミットメントがウソであったことを示すものである」と彼らは続けている。」
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/china/3690568/Chinese-dissidents-emulate-anti-Soviet-heroes-with-Charter-08.html
 「・・・<逮捕後、>Zhang Zuhuaの銀行口座に入っていた貯金が<捜査当局によって>他に移された。・・・ 
 劉の妻・・・は、彼女の夫が連行された後、自宅で12時間にわたって警察の監視下に置かれ、トイレに入った時にドアを閉めることすら認められなかった。・・・」
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/asia/article5313746.ece
(いずれも12月14日アクセス)
(完)
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–太田総理出演記–
 居酒屋タクシーという話題では、私の出番は余りなかろう、機会を見て属国論、買弁官僚論をぶとうと思い定めて日テレに赴きました。
 今回は、出演者が多いためでしょう、これまで何度かご一緒した中野雅至(元厚労省)のほか、初対面の岸博幸(元経産省)氏
http://spysee.jp/report_print/index/%E5%B2%B8%E5%8D%9A%E5%B9%B8
とも相部屋でした。
 ディレクター達との事前の打ち合わせで、テリー伊藤が、「どうして公務員がこんなにだらしないのか」といった質問をすると聞いたので、それに期待して収録に向かいました。
 最初のうちは、なかなか発言する機会がありません。
 愚にも付かない質問にちょっと答えた後、意外にも太田光がテリー伊藤がするはずだった質問をしてくれたではありませんか。
 すぐ答えたのは岸氏でした。
 「大部分の役人は真面目に仕事をしている」というのです。
 私は、「そうは思わない。」と割って入り、属国論、買弁官僚論をしゃべりました。
 食糧管理、年金制度、そして高速道路の起源の話もしました。
 みんなショックを受けたようなおももちで、テリー伊藤が、「そんな古い話は関係ない」と言い、太田光が、「独立するためにはどうしたらいい? 集団的自衛権が行使できるようにする? 急に話が簡単になっちまうな」、と言ったかと思ったら、岸氏まで私の属国論を批判しました。
 まあ、言いたいことは言ったからいいや、と思って収録を終えて部屋に引き揚げる途中、岸氏に「あなた、本当にそう(日本が属国じゃないと)思ってるの?」と聞いたところ、「米国陰謀論はウソだ」とおっしゃる。
 「いや、日本は自分で属国になってるのさ。私の本を機会があったら読んでみたら」と答えたところ、「経産省での仕事を通じて、日本は属国ではないと確信している。そんな本を読むつもりはない」ととりつく島もありません。
 そもそも、経産省の仕事自体が、(米国の商務省や通商代表の地位の低さが示しているように、)国の仕事としては「軽い」上に、ご本人の、安全保障に関する感度がにぶい、ということでしょうね。
 中野氏は、逆に、もっと時間があったら、太田さんの考えを十分に展開できたのに残念でしたね、と私に言ってくれました。
 『実名告発 防衛省』についても、書名をご存じでしたし、私のコラムを、「有名なコラム」と持ち上げてくれました。
 というわけで、結構面白い経験ができたと思います。
 後は、日テレがどうするかが見物です。
 少しは、私がまくしたてたところを生かしてくれることを期待したいですね。