太田述正コラム#3189(2009.4.2)
<皆さんとディスカッション(続x444)>
<ΑαΑ>(「たった一人の反乱」より)
 太田さん、不躾な私の書き込みに対して丁寧な回答を<コラム#3185で>いただきありがとうございました。
≫国際問題、安全保障問題に関しては、日本のメディア・・日本人による典拠と言い換えてもいい・・に拠っちゃあダメなんですよ。≪(コラム#3185。太田)
 同じ事象に対して、他国が大筋で共通の認識であるにも関わらず、日本だけが何故こうも特殊な解釈をするのかと、以前から日本メディアの異質性には思うところがありましたが確かに酷いですね。
 太田さんの丁寧な説明のおかげで色々と考えさせられました。
 日本人の典拠を徹底的に否定する太田さんの態度に不遜な感覚を抱き、偏った知識をひけらかすだけの人間なのかと思い込んでいましたが、太田さんの真摯な対応を見るに誤解だったようです。
 今回の失礼な書き込み本当に申し訳ありませんでした。
 でも国際問題、安全保障問題を真剣に勉強するのならば相対的に日本語以外への理解を深める必要もあるんだなぁ。
 最低限の国際感覚を持つ為の道のりは果てしなく遠いですね…。
<太田>
 どういたしまして。
 この際、テポドンの話をもうちょっと補足しておきます。
 「・・・地上発射型のパトリオット・システム「PAC3」<については、>・・・北朝鮮が保有している弾道ミサイルのノドン(射程約1300キロ)・・・<を>迎撃<する>能力が確認され<ているが>・・・ノドン・・・について<は>、米政府<は>「(開発中の)海上配備型のミサイルと地対空誘導弾で迎撃が可能になる」と日本政府に伝えてい<る。つまり、現在海上自衛隊のイージス艦に搭載されているSM3ではノドンを迎撃することはできないわけだ。>・・・<なお、>地上配備のPAC3はそもそも短距離ミサイル(スカッドなど)を対象にしたもの<だ>。しかも、守る対象は狭い地域の基地や軍隊<だ>。日本全土を守ろうとすれば、PAC3を100カ所に配備しなければならないという国防省の試算があ<る。>。実際に当たるかどうかは、別問題<だ>。・・・」
http://www.gensuikin.org/nw/ntw1.htm
 
 つまり、SM3はテポドンには有効だがノドンには無効らしいということです。
 田母神閣下の詐欺的言説は、相当あくどい、と言うべきでしょう。
 なお、
 「・・・国際シンクタンク「国際危機グループ」(本部・ブリュッセル)は31日、北朝鮮が核爆弾の小型化に成功し、日本を射程に入れる中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ)用の核弾頭を配備した、との報告書を公表した。関係国政府の内部メモに基づく情報という。・・・
 報告書はまた、ノドンの実戦配備数を最大320基と見積もった。・・・」
http://mainichi.jp/select/world/news/20090401dde001030016000c.html
の前段の中身はコラム#3182で書いたところですが、後段については、初耳です。
 日本の主要メディアがこの後段の話を余りとりあげていないところにも、そのどうしようもない安全保障音痴ぶり・・というか、日本国民一般と同様の安全保障への無関心ぶり・・が如実に表れています。
<深雪@邦人返せ北朝鮮>
 北朝鮮ががテポドン2号に燃料注入開始したようだ。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=113483&servcode=500§code=500
 このテポドン2号改良型は射程が8500~10000km。よって、日本を直接狙ったものでない。ならば、テポドンはその射程が日本のそれではないから今回の北朝鮮の行為を見逃せというのは正論だろうか。
 北朝鮮は核爆弾の小型化に成功し、日本を射程距離におく中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ)搭載用の核弾頭を製造した可能性があると米韓情報当局が指摘している。併せて北朝鮮は、日本のほぼ全土を射程に入れるノドンを多数実戦配備しているという。
http://www.swissinfo.ch/jpn/news/international/detail.html?siteSect=143&sid=10516082&cKey=1238466676000&ty=ti&positionT=5
 既に必要量のプルトニウムを抽出済みであるヨンビョンの廃炉を、あたかも北朝鮮が核放棄をしたかのように見せる、ヨンビョンの廃炉爆破ショーは私達の記憶に新しい。IAEAをはじめとする手ぬるい国際社会の対北核査察の現状は、その核の脅威がもっぱら日韓・というより日本にのみあることに由来する。どのみち、早晩北朝鮮が崩壊すれば、南北統一下の朝鮮半島にあって、北の核は南のものとなる。
 私達日本は、北朝鮮が既に保有している危険性の高い核弾頭を前にして、テポドンだからといって、自国の国土を飛び越えるルートを持つ他国のミサイル発射に対して、安穏と構えていていいものだろうか。私達は以下の共通認識を確認している。
国際連合安全保障理事会決議第1695号 訳文
http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/area/n_korea/abd/un_k1695.html
 ならば、国際ルールに則って自国防衛の当然の備えを公に見せる覚悟は、自主防衛の基本ではないだろうか。
 ロイターによれば、北朝鮮が打ち上げるのは弾頭でなく人工衛星の可能性高いと米高官が述べたという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090401-00000676-reu-int
 しかし、この高官にどれほどの確証があるのだろう。ロケットのペイロードカバーが「球根」だというだけの事で、地上のインフラはではそれを受信するだけの施設があるというのか。はなはだ疑問だ。また、人工衛星打ち上げへのステップは、北朝鮮が別の能力をつけるためのステップと重なると指摘されている。
 このしたたかな北朝鮮の戦略を前にして、私達はヨンピョンの廃炉爆破ショーを思い出すといい。表向きの建前で事を済ませられる国と、そうでない国がある。北朝鮮の核開発によって最も大きな実害を被る国は私達の日本なのだ。今回のPAC3の発動が、戦略として米国に踊らされたテポドン狂騒曲だとしても、自国に危害をもたらす飛翔物は撃ち落とすという宣言を、負戦後始めて世界に示した日本の政権与党と防衛省を私は評価したいと思う。
 重複するが、今回のPAC3配備が米国の策に起因するものだとしても、国家自立の要は自国の自主防衛にあることを思えば、国民に覚醒を促す一助には充分なるだろう。国会での福島瑞穂氏の発言に対して、多くの国民が失笑したように、その程度の覚醒にはなる。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/235882/
<太田>
 深雪さん、私の裏芸だけでなく、表芸の方にもおつきあいいただき、恐縮です。
 しかも、準コラム級の投稿ですねえ。
 エライ!
 私は北朝鮮の核弾頭付き弾道ミサイルが脅威でないと言っているのではなく、中共やロシアの同様のミサイルの脅威にくらべればものの数ではない、と言っているだけです。
 まだ拙著『実名告発 防衛省』はお読みいただいてないようですが、同書の216~217頁で、米国と合邦するか米国から「独立」するか、そして「独立」を選んだ場合、核武装するかしないか、の選択肢を読者につきつけています。
 そして、前者に関しては「独立」、後者に関しては、双務化された日米安保だけなら核武装、NATO的な多国間同盟が東アジア・太平洋に構築されれば非核武装、を推奨したところです。
 ご参考まで。
 なお、
>自国に危害をもたらす飛翔物は撃ち落とすという宣言を、負戦後始めて世界に示した日本の政権与党と防衛省
とおっしゃるが、深雪さん、わが政権与党と防衛省を買いかぶりすぎです。
 彼らにそんなガッツなど絶対にないことを私が保証しますよ。
 防衛省がイニシアティブをとったと報じられています(コラム#3121)が、そうだとして、当初、米側が米国防省・日防衛省ルートで日本列島を横切るテポドン2の迎撃を強要してきたことに、防衛省が慌てふためき、必死に官邸等の根回しを行ったのだと思います。
 だって集団的自衛権の行使どころじゃない、まったくの平時での敵対的な軍事力の行使ですよ。
 そんなこと絶対に日本側からは出てこない発想です。
<ΑΑα>(「たった一人の反乱」より)
 おーたんとたもさんのファンの俺。
 背広組も制服組もかっこええ~。
<太田>
 後生だから、たも(田母神)さんと私とを一括りにしないでくれ!
 田母神閣下は、クビになったって言ったって、あくまでも体制側の方、正確には自衛隊の方、より正確には航空自衛隊の方であらせられるのに対し、かくいう私は、天下の素浪人でっす。
 つまり、私と違って、閣下はしがらみだらけの方なんですわ。
 だから、航空自衛隊の天下り先確保のために必要不可欠なPAC3保有の意義を、詐欺的な言を弄してまで強調しなきゃならないワケだし、自衛官幹部一般の間でチョー不人気な村山談話は・・こっちは閣下も本気なんだろうけど・・攻撃したくなるワケなんだよね。
 
<後からすみません>
≫私とディスカッションをしていたつもりなのであれば、≪(コラム#3187。太田)
 ディスカッションというのは、記事の表題をお借りしただけです(同じ御主張を繰り返されるだけで、お示した疑問へのお答えがなかったので、私も『議論』という語は避けました)。
≫やはりご意見に典拠をつけて欲しかった・・・私がサービスで代行してあげますが≪(同上)
 大変失礼ですが、意味がよくわかりません。公然周知と思われる事実と御主張を元に、論理的に自分の意見を述べただけですので、特に根拠等を示す必要はないと思いますが。
それから、御指摘の記事は私の意見ではありませんネ(こんな立派な文章は書けませんし)。
 ただ、今日の記事でやっと「議論」らしくなってきたと思います。要は、仮に自民党政権が政官財癒着体制にあるとしても小沢氏を免責することにはならない、(自民党も政権運営は人任せだったし、)官僚や地方議員出身者がいれば民主党の政権担当能力は心配ない、といった御主張でしょうか。
 私も前半のご意見には賛成です。ただ、実質的な選択肢が自民党と民主党しかないと考えておりますので、政権ローテーション(癒着をなくす最も有効な手段です)の為に、また、全体としてみれば民主党のほうがより癒着が少ないとも思いますので、軽率に判断をしたくないだけです。
 後半については、そうは思いません。まあ、世間では実績のない方が信用を得るのは難しいとだけ申しておきます。
<太田>
 ディスカッション(議論)は氏素性を明かしてやるものです。
 匿名でやるのなら、氏素性の分かっている人、できればそれなりの「権威」のある人、の言説を典拠にひきつつ意見を開陳していただきたい、ということですよ。
 一番最後のご「意見」は、小沢の展開した自民党との大連立の必要性を代弁されたもののように聞こえますね。
 ねっからの小沢心酔者とお見受けしました。
 ひょっとして小沢事務所の方?
 小沢の落剥ぶりに、さぞかしご無念なのでしょうね。お気持ち、よっく分かります。
<stun>
≫元公安調査庁の菅沼氏≪(コラム#3187)
 「ヤクザの6割は同和、3割は在日」と外国人記者クラブで答えて2chのコピペでよく引用されている人ですね。
 そのネタ元になった彼の”友人”の広域暴力団山口組のNo.2は在日なのですが・・・。
 「ヤクザの6割は同和」と宣伝する事で闇社会の在日による寡占化がますます進みそうですね。
 元高級官僚でも彼のように外国勢力の尖兵になるような人は珍しくないのでしょうか?http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%85%E6%B2%BC%E5%85%89%E5%BC%98
<太田>
 ソ連の脅威を強調することがはたしてソ連を利することなのか、むつかしいところですが・・。
<杉山頴男>(2008.10.8)(http://www.budotusin.net/dialy/fdiary.cgi?page=20
・・・
 淺學の徒、「寸善」と云ふ言葉があることを知つた。
 『屬國の防衞革命』(光人社)での兵頭二十八さんの「まゑがき」からである。共著の太田述正さんとの見解の相違をあることを承知での共著の辯である。拔粹する。
 「わたしが太田述正氏の考えと一致しないことは無論多々あるけれども……(中略)。若き吉田松陰は、誰であれ他者の意見には「寸善」がないことなどなく、それを見出して学ばなければならない、という手本をしめさなかったか?」(新かな新漢字)
 吉田松蔭、軍學者を範とし、拙者も「論座」の寸善を見出して學ばなくてはなるまい。反省。
 
 さう、圖書館に『屬國の防衞革命』を注文するのを忘れてゐた。國立市民にぜひ讀んでいただきたい好著である。拙者、お二人の共著にささやかなりにも手を貸したことから版元さんからはすでに獻本され讀み終はつたが、これも左翼の戰術の寸善を學んでのことである。
<太田>
 その節には、大変お世話になりました。
<河童野朗(男・19歳)>(2008.11.18)(http://www.ytv.co.jp/takajin/bbs/bbs_res.php?bbs=BBS4&thread=14
 –たかじんのそこまで言って委員会 大会議室–より
 以前登場されたことがきっかけで、・・・太田述正・・・氏の著された「防衛庁改革宣言」を読みました。其の中では防衛庁に関することのみならず、日本の安全保障問題である憲法9条問題について深遠で説得力のある考察がなされていました。特に現在の9条問題が吉田茂氏に大きな責任があるということ、現在、田母神氏の論文でも問題になっている本当のシビリアンコントロールとは如何なるものであるのかとうことの考察に驚かされました。
 私はとても感動し、また同時に現在の日本の安全保障問題に危機感と失望を感じました。
 是非、太田氏にこれらの問題のゲストでも、パネリストでもかまいませんので登場してもらい、視聴者にひいては日本国民に貴重な一石を投じていただきたく思います。
 どうかよろしくお願いいたします。
<???>(http://cdet.jugem.jp/?cid=203
 太田 述正—-この人のメルマガほど情報量が多く、考えさせられるものはない。太田さんのコラムを読み出してからはWillもSAPIOも買わなくなりました。
http://www.ohtan.net/
<植田信>(http://www.uedam.com/hright.html
傑作サイトの紹介 
 モンティ・パイソン http://www.youtube.com/watch?v=yiZt79UKUFQ  by T・K  
 太田述正の動画サイトhttp://takajintv.blog101.fc2.com/blog-date-200711.html 
           by U・J
           http://jp.youtube.com/watch?v=_X9oOHgpBqI&feature= 
           by U・J
 B・フルフォード  http://www.768.jp/ondemand/list/vod.php?vod_id=42 
           by A・S
推薦図書 
 荻原真・著 『西洋哲学の背骨』新曜社
 太田述正・著 『実名告発防衛省』金曜日
<太田>
 これらお三方、私に対して肩入れをしていただき、まことにありがとうございます。
<フリーメーソン】ユダヤの陰謀【イルミナティ】28>(http://hissi.org/read.php/kokusai/20081119/QzBFdkk2NUg.html
そえじま門下・・・ 文化などというものは本来存在せず、したがって日本文化も
         存在しないので、そんなものは全て捨て去って、西洋の思想・
         文化に鞍替えすべきと主張する危険集団。世界権力を過度に
         崇め立て、反抗する気を削ごうとするのも特徴。
太田述正・・・  核武装をして独立すべしと主張するが、何故か英国を崇拝しており、
         日本は移民を受け入れるべきと訴え、武装難民を阻止するのに
         最適なクラスター爆弾の破棄を絶賛する人物。
連山・・・  社会ダーウィニズムを信奉。イルミナティと、混血融合することを選 択。
天木直人・・・  憲法9条を護持した状態で、日米安保条約を破棄するという
         自殺行為を、国民に推奨する輩。
小沢一郎・・・  日本における正統な共産主義政党である社会党(日本共産党
         は所詮亜流)の後継の民主党を従え、世界暗黒共産主義体制
         に貢献しようとしている。
<太田>
 私を、小沢大センセと並べて評価していただけるとは光栄至極でっす。
<伊藤成彦>(2009.03.08)(http://chikyuza.net/modules/news1/article.php?storyid=580
・・・
一、一九七一年に防衛庁に就職し、三〇年にわたって防衛庁のさまざまな部局を経て、仙台防衛施設局長を最後に自ら退職し、防衛庁・防衛省の現状を内側から告発する太田述正『実名告発防衛省』(金曜日)は、「戦後一貫して政権を掌握してきた自民党を中核とする政官業癒着構造の下で、日本の官庁はほとんどすべて腐敗・堕落しているが、その中でも防衛省の腐敗・堕落ぶりは特にひどい」として、その実態を克明に描き出している。
 例えば、防衛産業の「山田洋行」から長年にわたってゴルフなどの接待を受け、賄賂を受け取っていたとして検挙され、有罪の判決をうけた守屋元防衛次官について、著者は述べる-ー「守屋がなぜ足かけ五年も次官を続けられたのか。言うまでもなく、防衛省の人事権者たる歴代防衛大臣(防衛庁長官)の強い意向が働いたからだ。両者の間に防衛利権がらみの癒着関係があり、守屋が政治家たちの弱みを握っていた、と勘ぐられても仕方がない」と。そして著者自身が政治家から働きかけられた体験を基にして、退職後に「斡旋利得議員リスト」を作って公表したが、そこには次のような歴代防衛大臣(防衛庁長官)と国会議員の名がずらりと並んでいる--額賀福志郎(元防衛庁長官、衆議院議員)、加藤紘一(元防衛庁長官、衆議院議員)、依田智治(元防衛事務次官、参議院議員)、玉澤徳一郎(元防衛庁長官、衆議院議員)、中谷元(衆議院議員)、伊藤公介(衆議院議員)、浜田幸一(元衆議院議員)、浜田靖一(現防衛大臣、衆議院議員)、大島理森(衆議院議員)。本書が『実名告発』と題された所以だ。
二、このように政治家たちの「斡旋利得」を鋭く追求する著者の筆先は、「改革への提言」では2つの方向に分裂する。一つの方向は、「防衛産業との癒着に徹底的にメスを入れること」で、「官製談合と非官製談合の完全廃止」「天下りの完全廃止」「防衛省の中央組織の抜本的改革」「政官業癒着構造の粉砕」などで、それは大いに結構な提言だ。しかし、もう一つの方向は、退廃・腐敗の最大の原因は、「戦う組織であるはずの自衛隊が、現実に戦うことを禁じられていることにある」という。「戦うことを禁じられているということは、自衛隊が具体的な任務を与えられていないということだ」と見る。そして、「戦うことを禁じられているとことから、自衛隊の意識が弛緩し・・・具体的な任務を与えられていないがゆえに、防衛省・自衛隊は特にひどく退廃・腐敗するに至ったのだ」となり、その原因は「日本が米国の保護国(属国)だという問題」から、「1つの方法は、米国と合邦し、その一部に成ること」「もう一つの方法は、米国から自立を果たすこと」で、そこから「核武装を選択するか否かだ」ということになって、田母神元幕僚長の主張に接近して行く。
三、太田氏は東大卒の文官で、田母神氏は防衛大卒の武官なので、防衛省・自衛隊を見る視角は違うが、防衛省・自衛隊の現状を不正常と見ている点では共通し、両者とも対米従属を批判して日本の独立を主張し、独立の証として自前の核兵器の保有をめざす点でも共通している。つまり、この二人の幹部の主張の根底にあるのは、自衛隊という存在を幹部として真面目に考えれば考えるほど「疎外感」が深まることへ苛立ちだ。それを太田氏は端的に、「防衛庁は構造的かつ深刻なモラル・ハザードの下にある」と述べている。では、この「疎外感」「モラル・ハザード」の原因は何処にあるのか? 太田氏はこれも端的に、「その最大の原因は、戦う組織であるはずの自衛隊が、現実には戦うことを禁じられていることにある」と述べている。では、何が戦うことを禁じているのか? 両氏はそれに直接触れることを避けているようだが、言うまでもなく日本国憲法だ。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」して、戦争放棄と非武装を定めた憲法に反して武装組織としての自衛隊を作ったところに矛盾の根源がある。
・・・
四、自衛隊は朝鮮戦争開始直後にマッカーサー司令部が指示した警察予備隊の創設から始まったと見る説があるが、それは正確ではない。マッカーサー司令部の指示は、在日米軍が朝鮮戦線に出動した後の治安対策として、警察力強化のための「予備隊」の設立で、軍隊ではなかった。この問題を研究した小倉祐児氏は、「マッカーサーは再軍備と保安部隊創設を明確に分けて考えていた。警察予備隊は、マッカーサーにとって憲法第九条と何ら矛盾するものではなかったのである」と述べている。実際マッカーサーは、解任後直後の1951年5月に米国上院で行った公聴会で、日本の憲法第9条を説明して、米国も戦争と軍備の放棄に努めるべきで、「戦争廃絶後に必要な軍備は、自国の地理的な領域内に限って平和を維持するための警察とコンスタビュラリー(予備隊、保安部隊)の軍備だけで、これは国際的な戦争とは全く異なる次元の問題です」と述べている(詳細は拙著『武力信仰からの脱却』影書房、151-154 頁を参照)。
 従って警察予備隊は軍事組織ではなかったが、それを1952年7月に「警察力の不足を補う」という言葉を削除して保安隊に変えた時から、軍事組織化が始まり、1954年3月に日米相互防衛援助協定(MSA)によって米国から「防衛力強化」を義務づけられて防衛庁・自衛隊へと変貌した。それは同時に、憲法を審議・制定した1946年9月15日の貴族院委員会で「自ら武力を撤して、平和団体の先頭に立って平和を促進する」と誓った吉田首相の裏切りであり、彼は自衛隊法・防衛庁設置法の成立後に無残な姿で退陣した。
・・・
 今この時に根本的に考えるべきことは、自衛隊をどうするかということだ。
五、自衛隊がこれまで存続できたのは、災害救助活動による面が大きいが、しかし自衛隊は専門の災害救助組織ではない。そして現実に今、内外から求められているのは、高度の技術・装備・人員を備えた専門の災害救助組織だ。そうであれば、自衛隊を国際的にも派遣できる専門の災害救助組織と、マッカーサーが「警察予備隊」として指示した警察活動を補強する「コンスタビュラリー」の2組織に分割して、隊員が「疎外感」「モラル・ハザード」に苦しむことのない組織に改組すべきではないか。
<太田>
 番号は、勝手にふらせていただきました。
 三までは申し分ないんだけれど、四から急におかしくなりますね。
 マッカーサー証言を引用されていますが、彼は夜郎自大の自己正当化人間です。
 その彼が自己正当化につながる言辞を弄した場合は疑った方がいい。
 (その逆の場合は、その証言には信憑性があるということです。)
 自衛隊成立史のまともな本を何冊かきちんと読んでおられたら、マッカーサーが「コンスタビュラリー」として警察予備隊・保安隊をつくったなどというばかげたことおっしゃるはずがないんですが・・。
 警察予備隊の管区隊は、米側が米陸軍師団編成の師団をつくれと指示してきたところ、これに抵抗して、海外派遣できないように、兵站部門を大幅に削った管区隊(後に師団へと名称変更)編成にしたのは日本側ですよ。(典拠省略してゴメン。)
 
 また、五のご意見、私との対談(コラム#2955)の時の辻元清美のおばさまのご意見と同じですね。
 どうやら、社会民主党ないしそのシンパの方々の公定意見らしいが、じゃ、どこの国の軍隊も廃止すべきだっての?
 まさかホントにそんなこと思ってないでしょ。
 だから、要するに日本は米国の属国のままでいようってことね。
 どうして今だにこんな極楽とんぼみたいな識者の方々が日本にはいるんだろ。
 世界の七不思議だねえ。
 さて、本日の記事です。
 日本の技術力はすばらしいと人民網がおっしゃってます。
http://j.peopledaily.com.cn/home.html
 日本の文化力はすばらしいともおっしゃってます。
http://j.peopledaily.com.cn/94475/6627579.html
 要するに日本のソフトパワー礼賛ですな。
 だけど、ソフトパワーの中核たる経済力が中共と比較して衰退しつつあることは気にしないでねと言われていると同時に、まちがってもハードパワー(軍事力)増強に乗り出さないでねと言われているようで、あんましいい気持ちしないね。
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太田述正コラム#3190(2009.4.2)
<米国流キリスト教賛歌本をめぐって(続)>
→非公開