太田述正コラム#3221(2009.4.18)
<皆さんとディスカッション(続x460)>
<深雪>
  ≪ハーグ陸戦法規第43条、非占領国固有の立法を改廃する権限はない≫に基づく、被占領国家体制下で作成された日本国憲法は反故にするべきだ、という論理は未だ生きている<のでしょう>か。
<太田>
 来たな、深雪さん。
 なお、質問する時でも、最低限の典拠は付けるようにしてくださいね。
 「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(Convention respecting the Laws and Customs of War on Land)の付属書「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」(Annex to the Convention REGULATIONS RESPECTING THE LAWS AND CUSTOMS OF WAR ON LAND)の
第43条[占領地の法律の尊重] 「国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的の支障なき限、占領地の現行法律を尊重して、成るべく公共の秩序及生活を回復確保する為、施し得べき一切の手段を尽すべし(The authority of the legitimate power having in fact passed into the hands of the occupant, the latter shall take all the measures in his power to restore, and ensure, as far as possible, public order and safety, while respecting, unless absolutely prevented, the laws in force in the country.)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B0%E9%99%B8%E6%88%A6%E6%9D%A1%E7%B4%84
http://net.lib.byu.edu/~rdh7/wwi/hague/hague5.html
 この問題については、日本では結構熱い議論がなされています。
 例えば、
http://constitution.blog109.fc2.com/blog-entry-58.html
参照。
 しかし、日本国憲法の問題としてはもとより、一般論としても、英語圏では、「ハーグ陸戦法規」に関する各種典拠をざっと見る限り、こんな論点は無視されています。
http://www.answers.com/topic/hague-conferences
 私個人としても、関心はありません。
 気に食わなきゃ、(主権回復後の)日本が、日本国憲法を改正するなり、廃止するなりすればよいだけのことだからです。
 私が関心のあるのは、どんな目的であれ、日本国憲法が、主権回復後半世紀以上経ったというのに、一度も改正されていないこと、それ自体です。
 ご存じのように、ここから、日本では、大日本帝国憲法も日本国憲法も、すなわち憲法なるものは規範性を有さない、ということが日本人一般にとっての暗黙裏のコンセンサスになっている、という仮説に私は到達したわけです。
<ααγα>(「たった一人の反乱」より)
 正確さを欠く Wikipedia に対する 武田邦彦教授の苦言。
http://takedanet.com/2008/07/wikipedia_b4ac.html
 編集者次第で、けっこう恣意的に記載されてるんだ…いまさら なんだが。
 ま、一応
http://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:%E6%AD%A3%E7%A2%BA%E3%81%95%E3%81%AB%E7%96%91%E5%95%8F%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E8%A8%98%E4%BA%8B
 こんな例もあるし・・・
http://www.j-cast.com/2008/03/21018121.html
<太田>
 一般読者のための積極的貢献ありがとう。
 ま、武田邦彦や平野綾や私のような個人にせよ、電通のような法人にせよ、自分に関わる項がウィキペディアに立てられたら、たまには自分で目を光らせるべきだし、また、そうすることが、結果としてネチズンとしての社会貢献にもなるのでしょうね。
<衣笠泰男>(2008.11)(http://www.justmystage.com/home/gunjihougaku/newpage59.html
 わが自衛隊は、領域外における武力行使が原則としてできないという憲法9条の政府解釈の立場から、我が国に武力攻撃事態が発生した場合でも米軍との統合運用はできないことになっているようです。
 しかし、これでは、いざ戦闘状態になった場合日米両軍の間で様々なトラブルの発生が予測されます。我が国は、既に完全に貴官達戦無派世代に代替わりをしています。従って戦闘という異常な事態を実感せよと言う方が無理ではないかと思います。しかし、現実を避けて通る訳には参りません。戦闘状態に陥った場合、予想もしなかった事態が次々に発生し、それに即時適切な対応をしなければ、取り返しのつかない状況に陥ります。演習とは全く違うのです。
 従って、日米両軍が統一指揮のもとに一体的に対処しなければ、必ずその対応に齟齬を来たし両軍の間に誤解や、責任のなすり合う事態が生じて感情的対立に発展し、結果として敵の攻撃に晒される以前の段階で我が防衛力自体が自壊するのではないかと危惧しています。
 平時の行政事務の段階でも米軍との間に様々なトラブルがあるようでありますので(太田述正著「防衛庁再生宣言」日本評論社刊参照)、現状のままだと、非常事態になった場合は、どうなるのかと心配しています。防衛庁全庁挙げてこの問題に取り組み、国家国民のために政治のレベルに対しご検討を、お願いする外に手はないように感じています。
<太田>
 航空自衛官OBの方のようですが、拙著をとりあげていただき、ありがとうございます。
 『実名告発 防衛省』及び『属国の防衛革命』についても、機会があれば、とりあげてください。
<すずめちゃん>(2009.2.13)(http://oite.blog.so-net.ne.jp/archive/2009021
 ・・・政官業の癒着が言われて久しいが改善されることはない。それは、仕組みに手が入れられていないからです。
 『実名告発防衛省』というのを読みました。著者は変人扱いされたりしましたが天下りの実態などまともなものでした。どこかでこの人の動きを無視しようとする動きがあるのように思ったりしました。・・・
<太田>
 私自身は、自分はごく普通の人間なのだけれど、世間の人々の過半が変人なのだ、と思っています。
 すんません。
<川にゃ>(2009.4.6)(http://nf.ch-sakura.jp/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=1356&forum=8&start=20
元防衛庁の太田述正氏のブログによると、小沢○郎代表は、海上自衛隊によるインド洋給油の中止という、アメリカの存在を忘れて安全保障を政局に利用した結果、アメリカに脅された可能性が大、とのことです。
 その後、給油反対の看板を下ろす大義名分を得るために大連立に走ったようです(2007年11月4日のブログ)。
 アメリカに脅されたんなら、その場面をビデオに撮っておいて、記者会見の席で捨て身で公表したら面白いのに。
 小沢○郎もかつては中国に対して「中国軍が調子に乗ってると、日本は核武装する。」と一発かました根性の持ち主なのです。
<太田>
 小沢ボーヤはビョーキなんですよ。(後述)
<米田富彦>(2008.10.23)(http://72.14.235.132/search?q=cache:1p-uTkrMN6kJ:espania.okigunnji.com/2008/10/post-7.html+%E5%A4%AA%E7%94%B0%E8%BF%B0%E6%AD%A3&cd=394&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
 異端審問所(Inquisicio’n:インキシシオーン)とは、宗教的な要素よりも、むしろ一つの政体の中での内務省的な要素を多く含むような・・・公的かつ権力的な機関でもあり、所謂、思想警察・思想検事・思想裁判の三つを兼ねたようなところがあります。
 「スペイン史」というより、組織管理(モラール:士気の維持)、”督戦”に関する方法論などをキーワードとして、戦略と情報の観点から見つめ直すと色々と興味深い点が発見されるでしょう。
 (スペインの異端審問所”は、また別の意味で”特殊な性格”を有しています。
 現在、書店で発売中の『属国の防衛革命』の兵頭二十八氏との共著者・太田述正氏による「アングロサクソン文明と軍事研究ブログ」
http://blog.ohtan.net/archives/51150809.html
に興味深い解説が行われておりますので、ご参考になさってください。)
<太田>
 同志社大学と京都外国語大学でスペイン語非常勤講師をされている方のようですが、拙著と私のブログの「宣伝」をしていただき、ありがとうございます。
 記事の紹介です。まずは、小沢秘書逮捕事件関係から。
 「・・・ 民主党の小沢一郎代表がまた党首討論を拒んでいる。今国会で党首討論は一度も開かれておらず、4月に入ってからの与党の呼びかけを3週連続で断っているのだ。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090418/stt0904180359000-n1.htm
 「国民新党の亀井静香代表代行は17日、民放の討論番組の収録で、民主党の小沢一郎代表の進退問題について、「民主党が今のまま衆院選になったら惨憺たる状況になり、政権交代が実現しない。小沢さんが党のために身を捨てないと空気を変えられない」と述べ、代表辞任を促した。・・・また、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。ズルズル行ったら選挙を戦えなくなる」と語り、早期の判断が望ましいとの考えを示した・・・」
http://news.biglobe.ne.jp/politics/790/san_090418_7900736432.html
 小沢ボーヤは、官僚憎しというオブセッション取り憑かれた、ひきこもりなんだわさ。
 ボーヤ、検察官僚にぶったたかれたもんだから、余計ひきこもりがひどくなってるわけよね。
 何度も言うように、早く引退させて、サナトリウムでビョーキを治療してやんなきゃ、廃人になっちまうよ。
 ボーヤの家族や友人は何してんだ!
 次は、タイ情勢です。
 「タイのバンコクで17日朝、反タクシン元首相派勢力「市民民主化同盟(PAD)」指導者の一人、ソンティ・リムトンクン<(Sondhi Limthongkul)>氏(61)の乗用車が武装グループの銃撃を受け、ソンティ氏と側近ら計3人が負傷した。・・・
 バンコクはタクシン派の反政府デモが収まったが、依然、非常事態宣言下にある。・・・
 警察などによると、ソンティ氏は運営する放送局に向かう途中、ガソリンスタンドで襲われた。グループは4人以上と見られ、複数の自動小銃を100発以上発砲し、逃走したという。PAD幹部は、手口などから軍や警察関係者の犯行との見方を示した。」

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090417-OYT1T00924.htm
 アジアタイムスは、
・・・UDD operatives had for the past two years funneled arms through Cambodia to Thaksin-aligned supporters in the country’s northeastern provinces, where his grassroots support runs strongest.・・・
と14日に、世界のメディアでただ一つ、報じたことを自慢しています。
 なお、
 ・・・Last year, many perceived that Sondhi’s second PAD movement had received tacit royal blessing when Queen Sirikit attended the funeral of a PAD supporter who was killed last October 7 during a melee with police in front of parliament.・・・
と、タイ王室は、明確に黄シャツ隊寄りの姿勢を示してきたところです。
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/KD18Ae02.html
 それにしても、黄シャツ隊の首魁のこのソンティ・・もちろん華僑系
http://en.wikipedia.org/wiki/Sondhi_Limthongkul
・・と、赤シャツ隊の黒幕である(同じく華僑系の)タクシンが元々は、以下のように、お友達だったというんじゃ、タイの原住民も浮かばれませんね。
 ・・・Sondhi owns and runs a raft of media businesses, including two newspapers and a television station. He was once a close friend of Thaksin Shinawatra, the former prime minister, but their relationship soured, and Sondhi organized massive demonstrations in 2006 that were instrumental in provoking the military coup that removed Thaksin from power. When Thaksin’s political heirs won the 2007 elections, Sondhi’s movement — a conservative-minded alliance of urban, middle-class royalists, academics and businessmen — returned to the streets. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/17/AR2009041701879_pf.html
 いずれにしても、黄シャツ隊はほとんどお咎めなしってんじゃ、赤シャツ隊が怒るのも当然です。
 ・・・For their role in last year’s demonstrations, which included the occupation of government offices for several months, Mr. Sondhi and other yellow-shirt protest leaders were arrested on various charges. All were released on bail, and a rebellion charge against Mr. Sondhi was dismissed, although he still faces other lesser charges.・・・
http://www.nytimes.com/2009/04/19/world/asia/18thai.html?ref=world&pagewanted=print
 その他の記事です。
 アジアタイムスの名物匿名コラムニストSpenglerが、初めて自分自身のことについて語っています。
 彼はユダヤ人で、大学学部時代は経済学を専攻し、その後、ニューヨーク市立大学で音楽学のPh.D候補者になったんですね。
 結局、Ph.Dはとらず、今度はウォールストリートで働いたらしい。
http://www.atimes.com/atimes/Front_Page/KD18Aa01.html
 コラム#3168「人間は残虐行為が大好きだ」(未公開)でとりあげた本の新たな書評が出ました。
http://www.guardian.co.uk/books/2009/apr/18/cruelty-kathleen-taylor-book-review
 細かいケチをつけていますが、どんなものでしょうか。
 英国のテレビの歌謡コンテストに出た、スコットランドの片田舎の47歳のおばさん、スーザン・ボイル(Susan Boyle)が、英米で大人気を博しています。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/16/AR2009041602419_pf.html
 彼女の姿と歌声を、
http://www.youtube.com/watch?v=9lp0IWv8QZY
でどうぞ。
 スレート誌は、彼女を筆頭に、ビブラートにおいて傑出した、これまでの世界のクラシック/ポピュラー歌手、及びクラシック器楽奏者の特集コラムを掲載しました。
http://www.slate.com/id/2216332/
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太田述正コラム#3222(2009.4.18)
<歴史について(その1)>
→非公開