太田述正コラム#3152(2009.3.14)
<自由主義とは何か(その2)>(2009.4.19公開)
 「・・・しかし、果たして<ヴォルフが言うように、>我々は経費削減を至上命題とするような多国籍企業によって我々の会社が買収されないようにしてもらうべきなのだろうか、また、米国も6人に一人の勤労者が障害手当(disability benefits)をもらっているオランダのような福祉国家になれと言うのか、はたまた、米国は失業保険が手厚過ぎて人々が勤労意欲を減退させるような国になれと言うのか、そしてまた、米国は賃金や職における差別を禁止する規制が強すぎて逆差別になるような国になれと言うのか。<そんなことは願い下げだ>・・・」
http://www.newmajority.com/Show_Book_Review.aspx?ID=7f5bced2-742d-4700-abc9-3b16764f57c8
 (4)再び自由主義について
 「・・・ヴォルフは、自由主義者達は、危ういことに未来を人工的に創り出そうとする左翼とは違って、また、現代生活における諸課題に対して行わなければならない適応を、伝統に強く執着し過ぎる形で行おうとする保守主義者達とも違って、<中庸を行く、つまり>無限の未来があるという<楽観的な>理想を抱いていることを隠さないという。」
http://www.commentarymagazine.com/viewarticle.cfm/the-future-of-liberalism-by-alan-wolfe-15089
 「・・・ヴォルフは・・・自由主義の定義にあたって・・・保守主義者達も共有できるかもしれない中核的諸原則から出発する。
 すなわち、自分達がどのような生活を送るかについてできるだけ多くの人々がその決定に参画できるべきであるとする。・・・
 ヴォルフに言わせれば、自由主義者であるとは、人間の目的意識や潜在能力について楽観的であり、かつ新しい観念に対して寛容であり、かつまた個人的選択を好むことなのだ。
 彼はまた、自由主義者達は、「包摂的であり排他的でなく、詮索するより受け容れ、悪口を言うより敬意を払い、拒絶するより歓迎する傾向がある」と記す。
 自由主義者達はまた、不平等は巨大な社会的コストを発生させると考えるし、目的よりも手段、情熱よりも手続き、行政的特権よりも憲法的正当性を重視する。
 ヴォルフに言わせれば、本当の自由主義者は、実際的で、真面目で、懐疑的で感情的にならない。
 政治右翼も極左も、<自由主義者達とは>対照的に、浪漫主義的心情を抱いているのであって、彼らは衝動的に軍事的冒険や国内的十字軍に乗り出して行く一方で、人間は自然の呪いを受けていて、その運命を変えることはできないという信条に基づく敗北主義的傾向をしばしば露呈する。・・・
 イマニュエル・カント、ジョン・スチュアート・ミル、ベンジャミン・コンスタン<と並んで>、ジョン・メイナード・ケインズ、<ニューディールの>デラノ・ローズベルト<大統領や偉大な社会のジョンソン大統領をヴォルフは自由主義者として挙げる。>・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/02/27/AR2009022701025_pf.html
(3月1日アクセス)
 「・・・ヴォルフの独特の主張は、自由主義への鍵は、諸性向ないし思考の諸習慣の一揃いにあるとするものだ。・・・
 <それは、>「平等へのシンパシー(a sympathy for equality)」、「熟慮する性向(an inclination to deliberate)」、「寛容へのコミットメント(a commitment to tolerance)」、「公開性を好むこと(an appreciation of openness)」、・・・「成長志向(a disposition to grow)」、「現実主義選好(a preference for realism)」、そして「ガバナンスの重視(a taste for governance)」だ。
 自由主義<は>政治<、あるいは政府に対し、>楽観的コミットメント<を行う。>・・・
 <これに対し、>自由主義より左のマルクスの場合は要するに、国家が消滅していくことを欲していたし、自由主義より右の現代保守主義者達は、ロナルド・レーガンが言ったように、政府こそが問題なのだった。
 一方自由主義者達にとっては、問題は悪い政府だったのだ。・・・
 ヴォルフ<の挙げた>「現実主義選好」を言い出したのもカントだ。
 我々は<ブッシュ政権という>科学に敵対的な反自由主義的政権下の生活を経験したばかりだ。・・・
 私は、ヴォルフが、自由主義を人間の個人性と人権の尊重、ないし貧者の物質的福祉への関心によって定義しようとする哲学的アプローチをとらないことを評価する。
 現代の自由主義者達はこれらの理想に対し深甚なるシンパシーを抱いているが、これらの理想は自由主義者の専売特許ではないからだ。
 自由主義を諸教義の一揃えではなく、明確かつ複眼的な諸気質であるとする<ヴォルフの>考えは、有益な貢献であり私の心を打った。・・・」
http://www.slate.com/id/2210158/pagenum/all/#p2
(3月11日アクセス)
3 終わりに
 私自身、リベラル(自由主義者)であることを宣言しているわけですが、ヴォルフの自由主義への気質的アプローチは気に入りました。
 なお、「成長志向」を自由主義的気質に入れるのは、自由主義右派ということになるのかもしれません。
 私は、「成長志向」なので、おみしりおきを。
(完)