太田述正コラム#14782(2025.2.23)
<橋爪大三郎・峯村健司『あぶない中国共産党』を読む(その11)>(2025.5.21公開)
「・・・統一戦線工作部<(注9)>は、資本家を騙して財産を没収する係だった。
(注9)中国共産党中央統一戦線工作部(UFWD=United Front Work Department)。「中国共産党中央委員会の直属で、中国共産党と党外各民主党派(中国共産党に協力する衛星政党)との連携を担当する機構。1942年に設立。文化大革命中は業務が停止していたが、1973年6月に復活。・・・
民族、宗教についての業務、特にダライ・ラマに協力する国内外のチベット解放活動に対する工作や、海外における祖国統一工作、非共産党員の幹部養成も職務に含まれている。業務の性格上から全国政治協商会議と連携が多い。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%85%B1%E7%94%A3%E5%85%9A%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E7%B5%B1%E4%B8%80%E6%88%A6%E7%B7%9A%E5%B7%A5%E4%BD%9C%E9%83%A8
中国共産党はこうやって、ありったけの資源をかき集めながら、社会主義建設を進めたんです。
統一戦線工作部は、中国共産党を理解するうえで非常に重要な組織です。
当時の資本家の取り込みだけでなく、現在でも台湾をはじめ、日本やアメリカなど、世界に対しても統一戦線工作を仕掛けています。
2007年<に>・・・政治局常務委員に抜擢され・・・た・・・習近平の能力や人となりについて、複数の共産党幹部らに尋ねました。
「彼<は、>・・・我が党内で台湾問題に最も精通している傑物だ」という答えが異口同音に返ってきました。
習近平は南部の福建省で17年間も勤務していました。
実は台湾の対岸に位置する福建省には、台湾向けの統一戦線工作の拠点が置かれています。
つまり習近平は長年にわたり、対台湾統一戦線工作に従事していた「プロ」なのです。」(71~73)
⇒「習近平<は、>・・・一気に中央政治局常務委員にまで昇格するという「2階級特進」を果たし、中央書記処常務書記、中央党校校長に任命された」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3
ことから、その時点で「傑物」であることが公的に確定していた以上、「傑物」の話の価値はゼロである一方、「我が党内で台湾問題に最も精通している」は、中共当局の峯村朝日新聞特派員に対する諜報工作であった・・その後の対台湾軍事威嚇政策の本気度の高さを日本に刷り込むのが狙い?・・、可能性が大です。
いずれにせよ、「長年にわたり、対台湾統一戦線工作に従事していた」というのは、著者らの独自見解であるところ、その典拠が示されていないことから、私は、その当否の判断を保留しておきます。
ちなみに、習近平の英語ウィキペディアには、2012年に共産党の総書記になり、事実上中共の最高権力者になるまでにおける、彼の統一戦線工作部との関わりは一切出てきませんが、’2018<,>・・・<t>he powers of the Central Propaganda Department was strengthened, which now oversaw the newly established China Media Group (CMG).[229] Two State Council departments. one dealing with overseas Chinese, and other one dealing with religious affairs, were merged into the United Front Work Department while another commission dealing with ethnic affairs was brought under formal UFWD leadership.’
https://en.wikipedia.org/wiki/Xi_Jinping
と、彼は、統一戦線工作部の管轄を大幅に拡大しているところです。(太田)
(続く)