太田述正コラム#15138(2025.8.19)
<丸橋充拓『江南の発展–南宋まで』を読む(その39)>(2025.11.13公開)
「・・・南宋江南の地域・・・を壟断する「強者」にはさまざまな属性の社会集団が存在するが、その代表といえば一に豪民、二に胥吏であろう。
第一の豪民とは、平板な表現をすれば「地域のボス、有力者」ということになるが、その実態はたとえば近世日本の豪農・豪商のような特定の職業集団ではない。
・・・中国の地域有力者は自集団の構成員を、農業や商業・流通業、あるいは徴税や専売等の官業請負などに振り分け、複合的な多角経営を展開することがしばしばだった。
地主や富商という「表の顔」は同時に、不動産の買い占めや専売品の密売等の「裏の顔」を合わせもつものであった。
私設の暴力組織(要するに用心棒)をちらつかせての横紙破りも辞さないから、それが暴走すれば法に触れるような事態もしばしば起こる。
しかし、仮に取り締まりの対象になり、投獄されるようになったとしても、彼らにはさしてこたえなかった。
役人を買収して量刑に手心を加えさせる者、獄中に酒を持ち込んでどんちゃん騒ぎを繰り広げる者など、まさに怖いものなしの振る舞いが当たり前のように出現する。
獄吏とて、数年で異動する地方官より、地域で長く威勢を振るうボスたちの方が怖いから、迂闊なことはできないのである。<(注106)>」(162~163)
(注106)「中南米は犯罪組織の巣窟だ。
一番注目を集めるのは麻薬組織カルテル。カルテルはコロンビアとメキシコを軸に中米3カ国、ベネズエラ、ペルー、エクアドル、ブラジル、ボリビア、チリ、アルゼンチンなど中南米の大半の国に浸透している。・・・
ベネズエラは政府自らが犯罪組織化している国だ。
特に、政府の配下にある軍隊は麻薬組織をもっている。
そのトップにいるのがマドゥロ大統領と元軍人で現在政府のナンバー2としての実権を握っているディオスダド・カベーリョ氏だ。・・・
<また、>ベネズエラの<ある>・・・犯罪組織は、<ある>刑務所<を>支配<していて、>刑務所の所長や刑務官は彼らの犯罪行為を黙認しているだけであった<が、>・・・<2023年>9月20日に1万1000人から成る警察と軍隊がトコロン刑務所を包囲して、この犯罪組織を一掃し<ている。>」
https://agora-web.jp/archives/231107012324.html
「ハイチ<では、>・・・公式には否定されているものの、・・・ギャングたち<と>・・・政権および反政権の政治家との癒着が噂されている。・・・
ギャングが横行する中で、国内の治安が極端に悪化。
地続きの隣国であるドミニカ共和国へ移動する国民が増えた。
2024年、ドミニカ共和国側は、過剰な移民を問題視して同年中に27万6000人のハイチ人を強制送還した。
2025年現在もギャングの勢力は拡大する一方であり、・・・4月22日には、国連の最高代表はハイチが「完全な混乱」の「引き返せない地点」の瀬戸際にあると警告した。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%81
⇒支那は、秦による天下統一以降、(中共成立後はさておき、)一貫して、水滸伝的社会であり続けた、と言ってよさそうです。
「注106」から、支那は、中南米的(=準ハイチ/ベネズエラ的)社会であり続けた、と言い換えることもできそうですね。(太田)
(続く)