太田述正コラム#3488(2009.8.28)
<皆さんとディスカッション(続x581)>
<ΞΑΞΑ>(「たった一人の反乱」より)
 昨日ぐだぐだと質問してしまったΞΑΞΑです。
 けっきょく、人民網の記事や太田さんの分析を読んでも、政権交代によって政官業の構造的腐敗が解消されるという根拠は、「民主党の言っている事を信じる」という理由につきるみたいですね。
 まあ、やってくれそうな政党は他に見つからないし 今回は民主に入れようと思います。
<太田>
 とにかくここは、民主党に2/3を与えましょう。
 鳩山の不人気にもかかわらず、民主党がここ↓まで来れたってのは皮肉ですがねえ・・。
 「毎日新聞は26、27日、衆院選の投開票日(30日)を前に全国世論調査を実施した。比例代表でどの政党に投票するかを聞いたところ、民主党との回答が44%で、自民党の21%を大きく上回った。政党支持率では民主党が39%と、過去最高を記録した前回7月調査の36%を更新。自民党は約半分の20%と水をあけられている。毎日新聞が19~21日に実施した特別世論調査と情勢取材では民主党が衆院定数480の3分の2に当たる320議席を超す勢いを示したが、その勢いを持続したまま終盤を迎えた。・・・
 麻生太郎首相(自民党総裁)と民主党の鳩山由紀夫代表のどちらが首相にふさわしいかの質問では・・・「どちらもふさわしくない」が51%を占め、同じ方式で7月に実施した前回の全国世論調査から6ポイント減ったものの5割を超えている。・・・」
http://mainichi.jp/select/today/news/20090828k0000m010090000c.html
 米クリスチャン・サイエンス・モニター、私の「米国と官僚機構へのぶん投げ論」と「二段階革命論」を剽窃したんじゃないか?↓
 ま、大いに結構だけど・・。
 ・・・the expected winner, the Democratic Party of Japan (DPJ), may also usher in a second revolution once it is firmly in control: Revising the country’s close ties with the United States and shedding many postwar shackles in hopes of turning Japan into a “normal” nation — one that can say “no” to the US.
 Despite having the world’s second largest economy, Japan has been held back in becoming a global leader by a scarcity of real competition in its politics. Powerful bureaucracies have largely guided Japan in its main postwar goal — building a strong economy — while the US largely took care of Japan’s defense. The Liberal Democratic Party (LDP), which has ruled for most of the past 54 years, focused on getting reelected, relying on big yen from big business — thus the country’s moniker “Japan Inc.” ・・・
http://www.csmonitor.com/2009/0827/p08s01-comv.html
 もっとも、同じ記事のこの箇所↓は???だけど。
 (お前サンの旧宗主国のイギリスはどうしてくれる?)
 まあ、戦前にも日本に民主主義はあったということを前提にしているので、ぎりぎり許しましょう。
 The Japanese never had a popular revolution for democracy — the reformist samurai in the 19th century and then the Americans in 1945 imposed it. ・・・(CSM上掲)
 それにしても、ここは泣けるじゃないの。↓
 日本の自立(=「独立」)への期待を米国の記者に言われるなんて。
 有権者の皆さん、発憤してください。
 While this enhanced democracy may diminish US interests — which include using Japan as an “unsinkable aircraft carrier” in Asia — there are long-term benefits to rooting Japan’s future more deeply in the wishes of its people. (CSM上掲)
<けいc>
 前回中曽根外相がイランを訪問するのをアメリカはいい顔をしていなかったようですが、最近イランが日本に対して熱いラブコールを送る理由は何なのでしょうか?
http://www.tehrantimes.com/Index_view.asp?code=201837
<太田>
>前回中曽根外相がイランを訪問するのをアメリカはいい顔をしていなかったよう
についても、典拠を付けて欲しかったですね。
 イランは、その核計画をめぐって米国等から様々な経済制裁を受けているのですから、日本にも「熱いラブコールを送る」のは当たり前です。
 記事の紹介です。
 体質的にアルコールに弱い人、あるいはアルコールを受け付けない人は含まれませんからね。↓
 People who spurn alcohol tend to be miserable social misfits, researchers have suggested. Teetotallers had higher levels of depression and anxiety than moderate drinkers and were likely to lack social skills・・・
http://www.guardian.co.uk/society/2009/aug/27/study-alcohol-depression-anxiety-norwegians
 ベルルスコーニのような男をのさばらしている男尊女卑のイタリアでさえ、「男女格差指数」(gender gap index)は全130カ国中67位(下掲NYタイムス記事抜粋参照)だけど、わが日本は、何と98位だよ。(ちなみに、韓国は109位。)
http://www.weforum.org/pdf/gendergap/rankings2008.pdf
 ・・・Compared to those in other European countries, conservative ideas in Italy die hard, in part because of our famously patriarchal culture but also because of the huge influence of the Roman Catholic Church, whose political and social interference in public affairs seems to have become even stronger since Mr. Berlusconi first became prime minister in 1994. (The church, for example, has threatened to excommunicate doctors who prescribe the abortion pill as well as patients who use it.)・・・
 Italy ranks 67th out of 130 countries considered in a recent report of the World Economic Forum on the Global Gender Gap Index, ranking lower than Uganda, Namibia, Kazakhstan and Sri Lanka. According to the Organization for Economic Cooperation and Development, just under half of Italy’s women have jobs, compared with an average of nearly two out of three. At the same time, Italian men have 80 more minutes of leisure time per day・・・
http://www.nytimes.com/2009/08/27/opinion/27volpato.html?ref=opinion&pagewanted=print
 しかし、遺憾ながら、自立を掲げる私のコラムの愛読者たる女性達ですら、怒りと危機感をもって、日本の男女差別状況の抜本的改善にいささかなりと寄与しようとしている人は皆無に近いね。
 今度の総選挙にだって、民主党からも女性候補者がたくさん立候補しているけれど、みんな、男の権力のおこぼれにあずかろうというさもしい、奴隷根性の連中ばかりだ、と言いたくなるな。
 中共、言い面の顔だなあ。↓
 ・・・The invitation to the Dalai Lama, according to news reports, came from the leaders of seven southern cities who belong to the opposition Democratic Progressive Party, which promotes formal independence and has its traditional base of support in the south. ・・・
 George Tsai, a political analyst and professor at Chinese Culture University in Taipei, said Thursday that the invitation was “purely politically motivated, aiming to harass both Ma and China.”
“While both Ma and Beijing are put in a very awkward position, the D.P.P. is in an absolutely no-lose position,” he said. ・・・
 The president rebuffed a possible visit by the Dalai Lama last November, saying the timing was not right. The Dalai Lama has visited Taiwan before, in 1997 and most recently in 2001, when Chen Shui-bian, Mr. Ma’s predecessor, was president. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/08/28/world/asia/28taiwan.html?ref=world&pagewanted=print
 恒例の一人題名のない音楽会ですが、夏休みの最後を飾る、3日連続の武満徹特集を組んでみました。
 本日は、その「その1」です。
1 始めに
 武満徹(1930~96年)は、20世紀を代表する世界的作曲家の一人ですが、その彼にピアノを与えることができず、しかも、公式の音楽教育を施すことさえできなかった戦後日本の貧困な文化状況を我々は恥ずべきです。
 どうしてそんなことになったかは、例えば、ウィキペディアの日本語版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E6%BA%80%E5%BE%B9
と英語版
http://en.wikipedia.org/wiki/T%C5%8Dru_Takemitsu
を読み比べるだけでも、何となく分かります。
 前者も、決してできの悪い内容ではないのだけれど、質量とも、後者には全く及びません。
 ちょっと次元が違うけど、その違いを、随筆と学術論文の違い、と形容することもできそうです。
 違いは、例えば、それぞれの出だしのセンテンスを見ただけでも明らかです。
日本語版:現代音楽の分野において世界的にその名を知られ、日本を代表する作曲家である。
英語版:Japanese composer and writer on aesthetics and music theory
 後者の方が、はるかに武満の全体像に目配りをしていることがお分かりになるでしょう。
 やや大げさに言えば、これは、明治政府が、東京帝大の一環として芸術関係学科を設けなかったこと、その後できた(東京美術学校と並立した)東京音楽学校、及びその後継たる東京芸術大学音楽学部(注)の楽理科や作曲科の入試制度が柔軟性を欠いていること
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%BD%E7%90%86%E7%A7%91
http://www.geidai.ac.jp/enter/pdf/faculty20090727m.pdf
、に根本的な原因があるような気がします。
 (注)「1876年(明治9年)、工部大学校付属「工部美術学校」が設立され、お雇い外国人によるヨーロッパ式の教育が行われたが1883年に廃止された。その後、1885年(明治18年)に文部省<に>・・・「図画取調掛」が設立される。その後1887年(明治20年)・・・に「東京美術学校」と改称・・・
 1879年(明治12年)、文部省に・・・「音楽取調掛」が設立され、・・・1887年(明治20年)10月4日に「東京音楽学校」と改称される・・・
 1949年・・・、「東京美術学校」と「東京音楽学校」が統合され、・・・東京芸術大学<が>設立された。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%8A%B8%E8%A1%93%E5%A4%A7%E5%AD%A6
 その結果、武満を芸大入試で落としてしまい(日本語ウィキ)、結局、武満に最後まで音楽等に関し、基本的に自学自習を強いた上、極度のタコツボ化によって日本の音楽学を含む芸術に係る学問の発達が阻害されてしまったため、武満の評価が日本では質量ともに十分行われないまま現在に至っているのではないか、と私は思うのです。
2 編曲の達人としての武満徹
 武満は、数多くの編曲を手がけています。
 その代表的なものを一瞥するだけで、彼が極めて多様な音楽の影響を受けていることが見て取れます。
 武満はピアノにあこがれつつもピアノを持っておらず、ギターに親しんだと考えられます。
 ギターで、好きなメロディーを編曲しつつ弾いた、というのが武満の作曲活動の原点だったのではないでしょうか。
 武満が、一番最初に惹き込まれたのはシャンソンでした。(上記両ウィキ)
シャンソンAmours Perdues のギター編曲
http://www.youtube.com/watch?v=D0f6wHJYbUQ&feature=related
(グレコ(Juliette Greco)(コラム#3472)が歌う原曲)
http://www.youtube.com/watch?v=7IYjA2FKY94&feature=fvw
 もちろん、武満には日本のメロディーも染みこんでいました。
中田章 作曲「早春賦」のギター編曲 村治佳織(コラム#3448)演奏
http://www.youtube.com/watch?v=UzbKiw2EnJg&feature=related
(その原曲)
http://www.youtube.com/watch?v=DfevI6akimY&feature=related
 武満は、戦後、米軍基地で働いていた時期があります。
 その時に、米軍のラジオ放送で、米国の音楽漬けになります。(日本語ウィキ)
 1939年に公開された下掲の米国の映画の音楽にも聴き入ったと想像されます。
映画「The Wizard of Oz(オズの魔法使い)」からOver the Rainbowのギター編曲 村治佳織(同上)演奏
http://www.youtube.com/watch?v=eA3mp7KTGFU&feature=related
(その原曲に近いもの)
http://www.youtube.com/watch?v=Y2YrrQNBNFc&feature=related
ビートルズの「Yesterday」のギター編曲
http://www.youtube.com/watch?v=ijniy1DkIX0&feature=related
(その原曲)
http://www.youtube.com/watch?v=ONXp-vpE9eU&feature=fvw
 ギター曲ばかりになったので、最後に一つ、合唱曲を。
日本古謡「さくら」の編曲 混声合唱
http://www.youtube.com/watch?v=IFh_K3HYiNE&feature=related
(続く)
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太田述正コラム#3489(2009.8.28)
<人間主義の普遍性>
→非公開