太田述正コラム#4125(2010.7.12)
<皆さんとディスカッション(続x890)>
<鯨馬>
「サルバドル」の映画評ありがとうございます。続き楽しみにしてます。
<太田>
 件のシリーズは、飛び飛びの連載(コラム#4119、4122。未完でどちらも未公開)になっていますが、あしからず。
<鯨馬>
 バネッサ・パラディ<(コラム#4123)>はこちらの曲しか知りませんが、いかがですか?
Vanessa Paradis – Be my Baby
http://www.youtube.com/watch?v=pwKn6fhtxtQ
 たまたま見ていた最近の写真ではもうほとんど妖怪変化ですね…。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100711-00000002-mvwalk-movi.view-000
<太田>
 彼女、俳優としては米国での活躍が知られているようですが、英語の歌じゃシャンソンの範疇には入れにくいと考え、選びませんでした。
 なお、後段については、美人の歌詠みという点でちっとは共通点のある小野小町を思いだしますねえ。↓
 「花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に」(小野小町 古今集)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%87%8E%E5%B0%8F%E7%94%BA
 卒塔婆小町(能の演目)
http://www.asahi-net.or.jp/~HF7N-TKD/explanationJ/Jsotoba.html
<新日本人>
 <コラム#679>「パキスタン(その2)」<を読み>ました。
 防衛省OBと言えば、エリートな方で、一般人(私のようなもの)より知識と経験の豊富であるというイメージですが、人間をアッラー(Allah)として崇拝の対象としている人々をイスラームに所属させているなどびっくりするような内容を堂々と載せている。
 イスラーム=一神教(偶像崇拝禁止)
<太田>
 私は、単に「インド亜大陸、就中パキスタンのイスラム教は、19世紀末にインド亜大陸のパンジャブ地方で生まれた、イスラム教に由来する・・・アラーはイギリス人であると<する>・・カディアニ(Qadiani。Ahmadiとも呼ばれる)派(教)の強い影響を受けている。」と言っているだけですよ。
 ちゃんと読みましょう!
<bonkers_blunder>(ツイッターより)
 今回の自民党、みんなの党の勝利は本当に残念です。
<太田>
 今回の選挙結果を、日本と英米の記事をもとに分析してみましょう。
1 少数説I:消費税論議が原因
 表記の単純な見方をしているのが米ウォールストリートジャーナルと英ガーディアンです。↓
 Judging the Democratic Party of Japan
 Voters deliver a clear message: No tax hikes, please.・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703580104575360251147328086.html
 ・・・After initial approval ratings of nearly 70%, his plans to start a national debate about doubling sales tax sent his ratings plummeting in the runup to the election.
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jul/11/japanese-government-elections-naoto-kan
 この説に基本的に拠りつつも、日本における中央(都市部)と地方(農村部)のズレに着目するのが朝日です。↓
 「・・・比較的農村部が多く、経済的「弱者」の多い1人区では、消費税増税への反発が強く、反民主的な投票行動を誘発したとみられる。・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/0712/TKY201007120024.html
 「・・・「消費税10%」を掲げた自民党を有権者は勝たせた。菅首相も「議論そのものが否定されたとは思っていない」と述べた。 ・・・」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
2 少数説II:消費税論議+ガバナンス問題が原因
 消費税論議とガバナンス問題とをあげるのが讀賣です。↓
 「・・・ 民主党の最大の敗因は、菅首相の消費税問題への対応だ。
 自民党の消費税率10%への引き上げ公約に乗る形で税率引き上げに言及したが、税率アップの狙いや使途などについて十分説明を尽くさず、低所得者対策に関する発言も揺らいだ。・・・
 選挙中の本紙世論調査では、税率アップについて3人に2人が「必要」と答えていた。消費増税への理解は着実に進んでいるとみていいようだ。・・・
 首相の方針に対して、民主党内から公然と批判が出るなど、党内不一致も露呈した。
 無論、鳩山前首相、小沢一郎・前幹事長の「政治とカネ」の問題をはじめ、米軍普天間飛行場移設問題の迷走、子ども手当などバラマキ政策の行き詰まりなど、前政権の失政も響いた。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100712-OYT1T00157.htm
3 多数説:ガバナンス問題が原因
 米ニューヨークタイムスと英ファイナンシャルタイムスと米ロサンゼルスタイムスは、消費税問題にも言及しつつも、それも含めて、要するに民主党にガバナンスが欠如していることが原因であるとしています。↓
 ・・・ Mr. Kan saw his approval ratings quickly drop, first by proposing a tax increase before an election ? a political no-no in almost any country ? and then by seeming to vacillate when the proposal proved predictably unpopular among voters.
 The apparent flip-flopping appeared to raise broader doubts here about whether the inexperienced Democrats, an alliance of L.D.P. defectors and former socialists who once seemed permanently relegated to Japan’s opposition sidelines, could mold themselves into an effective governing party. ・・・
 Kan’s handling of the tax issue backfired by reminding people of the hapless Hatoyama,・・・People here are desperate for leadership, and for change.” ・・・
http://www.nytimes.com/2010/07/12/world/asia/12japan.html?_r=1&ref=world&pagewanted=print
 ・・・While many voters accept the need for a tax increase, inconsistent comments by the premier about how lower income groups might be shielded from its effects were seized on by opposition parties and a highly critical mainstream media as signals of a weak will and economic incompetence.・・・
http://www.ft.com/cms/s/0/634ee81c-8d12-11df-bad7-00144feab49a.html
 ・・・<Kan>’s not an indecisive guy ? he’s passionate and resolute,・・・<b>ut when he backtracked on the tax issue, he looked like just another waffler.・・・
 And Kan’s pledge to work with Washington on its base relocation, Kingston said, could mean an ugly backlash at home.
 ・・・Kan says he wants to play ball with the U.S., but will the Okinawans let him? They are angry and they are promising to disrupt construction of an offshore runway for the new base. ・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-japan-elections-20100712,0,5912164,print.story
 この記事↑は、普天間問題についての菅政権の対応までこきおろしていますが、全くその通り。
 米ワシントンポストは、消費税に言及することなく、端的にガバナンスの問題・・枝葉末節な政策論議ばかりをしている・・に原因を求めています。↓
 ・・・No Japanese prime minister in the past four years — there have been five in that span — has found the muscle or will to confront a stagnant economy and a worrisome national debt. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/07/11/AR2010071100380_pf.html
4 私の意見
 私は、多数説、より正確には英米の多数説、をとります。
 ただし、はっきり申し上げておきたいことは、(菅政権誕生以前に既に鳩山・小沢コンビのひどい体たらくから)民主党のガバナンスに見切りをつけたと考えられる日本の少なからざる有権者の判断は誤りである、ということです。
 なぜなら、ガバナンスがないのは民主党ではなく、というか、民主党だけではなく、政権を担っていた頃の自民党だって同じであり、要するにそれは、米国の属国日本にガバナンスがないことの反映に他ならないからです。
 政権交代がなった結果、日本そのものにガバナンスが欠如していることが、幸いなことに、より鮮明に露呈した、ということ以上でも以下でもないのです。
 ですから、もう少し気長に構えて、引き続き民主党にフリーハンドを与えるべきだったのです。
5 みんなの党について
 ところで、みんなの党の躍進が話題になっていますが、この党に関しては、讀賣の上出社説が的確な評価を下しています。
 「・・・みんなの党は、公務員の大幅削減や天下り根絶などを唱えて、2大政党にあきたらない人々の票を吸い上げ、躍進した。
 しかし、今後は、その議席数にふさわしい責任を果たさねばならない。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策や言動は、改めざるを得ないだろう。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100712-OYT1T00157.htm
 みんなの党の十八番である公務員改革問題への同党の政策を、私の過去コラムでの関連指摘とつきあわせてみてください。
 いかに、同党の政策がムチャクチャか、お分かりになることでしょう。
<bonkers_blunder>(ツイッターより)
 今後の消費税増税にあたって、財務省はインボイス制度を導入したり、低所得者保護のために生活必需品を消費税の対象外にしたりするつもりはあるのでしょうか?
<太田>
 財務省が何をどう考えていようと、そんなこと関係ありません。
 決めるのは、政治家であり、究極的には有権者の皆さんです。
 なお、紹介すべきその他の記事はありません。
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太田述正コラム#4126(2010.7.12)
<映画評論5:サルバドル/遥かなる日々(その3)>
→非公開