太田述正コラム#4435(2010.12.14)
<皆さんとディスカッション(続x1044)>
<太田>(ツイッターより)
 (コラム#4433に関し)米国人における人物と出来事の事大視とは、表面的なものに気を取られて、より根底にあるもの、あるいは構造的なものに気付かない、ということだ。
 ハリウッド映画の多くは、まさにそうだな。外国音痴な点もね。
<唯我独尊>
≫イギリスや日本のような人間(じんかん)主義的な社会では、人々は、特定の宗教団体(イデオロギー団体を含む)に入らなくても人的ネットワーク
をつくることができ、幸せになれる≪(コラム#4433。太田)
 幼い頃から慣れ親しんできた米国の映画において、宗教が関係したシーンを抵抗なく受け入れてきました。
 このコラムを読んで、あらためて人間社会と宗教というものを考えさせられ、そして合点がいきました。
 かく言う私は、自然に対する畏敬の念と信仰心は持っていますが無宗教です。
 宗教に関係した人間に接し、さらに宗教に関係した書物、報道などに接してきた結果、その果てしない矛盾と究極の身勝手さに幻滅させられました。
<けいc。>
≫捜索兵科≪(コラム#4433。太田)
 とは英語で言うとforced reconですかね?
<太田>
 日本語を使いましょう。
 隠密偵察に対比されるところの威力偵察のことでしょうね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%B5%E5%AF%9F
 それでは、記事の紹介です。
 菅首相の発言もやや軽はずみだが、それよりも、仙谷官房長官、センスが悪すぎらーね。
 ガイドラインの趣旨を繰り返しただけだって言やいいのに。
 小沢の次に、仙谷もクビだな。↓
 「・・・平成9年に改定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)は、周辺事態における協力課題の一つに民間人など非戦闘員の退避を挙げ、(1)自国民退避と現地当局との関係に責任を有する(2)輸送などで協力(3)第三国の国民の退避援助を検討-とも打ち出した。
 だが実際には3万人に及ぶ在韓邦人を抱えながら、自衛隊法上、「安全が確保できない」状態で自衛隊派遣ができないままだった。
 菅首相の11日の発言<(コラム#4429)>は、こうした現状に早急な対応が必要だとする趣旨とみられるが、これを仙谷氏が全否定した。
 言い方は政権末期を感じさせた。仙谷氏は「全く検討もされていないし、韓国との協議入りもない。一切承知していない。相手(韓国)もある。歴史的経緯もある。そう簡単な話ではない」と切って捨てた。
 そして続けた。「何かできるのか頭の体操をしておかなければならないというイメージではないか」。首相が明言した方針を「頭の体操」と片付けた。
 首相は、延坪島砲撃後に邦人救出の課題について説明を受け、政府内で十分な検討がなされていない問題に、先走って発言したというのが現実のようだ。
 首相は野党時代には、沖縄県での記者会見で勉強不足のまま「(米海兵隊は)沖縄に存在しなくても日本の安全保障に支障はない」と語った“前科”がある。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101214/plc1012140030000-n1.htm
 陸自定員の削減は、いずれにせよ不可避だが、防衛費の引き続きの削減には、中共、目をシロクロさせてるだろうな。
 いずれにせよ、米国のご機嫌は大いに損なうだろうて。↓
 「・・・政府は・・・週内にも改定する「防衛計画の大綱」で焦点となっていた陸上自衛隊の定員を現状の15万5千人から1000人削減し、15万4千人とすることを決めた。・・・
 「中期防衛力整備計画」についても、・・・微減の23兆4900億円とすることで合意した。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101213/plc1012131023000-n1.htm
 次の下掲は分かってた話だけどね。
 いずれにせよ、米国、このことだけじゃ納得しないぜ。↓
 「・・・日米両政府は在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の総額について、2015年度までの5年間、現行水準を維持することで合意した。・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/1213/TKY201012130410.html
 さて、新しい防衛計画の大綱についての英米の記事を紹介しておこう。
 一言で言うと、動的積極防衛を目指してるってわけ。↓
 Japan is expected to adopt a more “dynamic” forward-leaning military posture, involving sophisticated new weaponry, mobile rapid-response units and closer security alliances with friendly countries・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2010/dec/13/japan-era-pacifism-china-threat
 その基礎になってるのは、今年8月に採択された、新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会『新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想–「平和創造国家」を目指して–」だって。↓
 ・・・The new guidelines are expected to draw on recommendations produced last summer by a government-nominated panel of experts. ・・・(同上)
 そういえば、退職後、9年以上なしのつぶての防衛省が、初めて私のところに送ってきたのがこの報告書だったな。
 読む気にならずに抛ってあるが・・。
 さっき、ぺらぺらと頁を繰ったけど、本文の最初の頁の、
 「日本は、第二次世界大戦後、防衛については基本的に抑制的な姿勢を維持しつつ、米国との同盟によってその安全を確保する政策をとってきた。日本がが60年以上にわたって享受してきた平和と安全と繁栄はこの政策によるところが大きい。」
て吉田ドクトリンを称賛していたところで、やっぱしバカバカしくなってそれ以上読むの止めたぜ。
 ところで、「動的積極防衛」構想に基づき、「機動即応部隊」を設けるってのは、それだけとりゃ結構なことだが、集団的自衛権行使を禁じる政府憲法解釈を撤廃せずして、そんな構想やそんな部隊に、一体何の意味があるのよ。
 防衛協力をより密接化したいと言われたって、豪州や韓国も、困っちまうぞ。↓
 ・・・The guidelines also call for Japan’s Special Defense Forces to coordinate more closely with allies, including the United States, Australia and South Korea. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/12/AR2010121203790_pf.html
 案の定、各論に行くとてきめんにおかしくなる。
 まず、総論的各論だけど、中共が、(米国が日米安保の対象と明言している)尖閣諸島を含め、日本の領域に対して、その一部を占領するためにちょっかいを出すなんてことはありえないさ。
 米軍が協力すれば確実に奪回されちゃうし、日本の朝野は、ちょっかいを出された瞬間に本格的再軍備に舵を切るだろうからだ。↓
 ・・・The guidelines will deemphasize the concern about a Russian invasion from the north, instead calling for mobile units that could move quickly to any spot where there’s a threat, particularly in the event of a North Korean attack or a naval clash with China around the southern Nansei Islands.・・・(同上)
 最後に個別の各論だ。
 戦闘機の増と戦車の減については、まあよしとしよう。↓
 Japan will・・・add several fighter jets. It will also reduce its number of tanks by more than 200. ・・・(同上)
 しかし、「機動即応部隊」の一環として(?)在来型潜水艦を増やすのは効率が悪すぎらーね。
 第一、近海だけでしか使えないじゃん。↓
 ・・・Japan will increase its submarine fleet from 16 to 22 ・・・(同上)
 論理矛盾なのは、「機動即応部隊」ならぬ、南西諸島防衛のための「固定即応部隊」を同諸島において増強しようとしている点だ。
 ・・・refocusing of Japan’s army and other forces toward securing the line of small islands in the southern Nansei chain・・・
http://www.ft.com/cms/s/0/cac4bfec-05d7-11e0-976b-00144feabdc0.html#axzz183gxtZP8
 また、これは防衛計画の大綱とは直接関係がないが、(上でも触れたところの)これまでの防衛費削減政策を今後とも継続させるってんだから、中共や北朝鮮の「脅威」もへったくれもないよね。これが最大の論理矛盾だな。↓
 ・・・the defence ministry cannot even be sure of stemming years of defence budget cuts.・・(FT上掲)
 ホルブルック(コラム#30、2333、2431、2788、3206)が亡くなった。
 合掌。↓
 Richard C. Holbrooke, the Obama administration’s special representative for Afghanistan and Pakistan since 2009 and a diplomatic troubleshooter who worked for every Democratic president since the late 1960s and oversaw the negotiations that ended the war in Bosnia, died Monday evening in Washington. He was 69 ・・・
http://www.nytimes.com/2010/12/14/world/14holbrooke.html?ref=world&pagewanted=print
 
 今、こんなコラムを掲げるとは、NYタイムスもトチ狂ったか。↓
 ・・・Can anything be done to put an end to the simmering conflict in the Yellow Sea? Yes, and the solution could be quite straightforward: the United States should redraw the disputed sea boundary, called the Northern Limit Line, moving it slightly to the south. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/12/13/opinion/13harrison.html?pagewanted=print
 ヒッチェンスが、今度はキッシンジャーを葬り去ろうとしている。↓
 ・・・Chatting eagerly with his famously racist and foul-mouthed boss in March 1973, following an appeal from Golda Meir to press Moscow to allow the emigration of Soviet Jewry, Kissinger is heard on the tapes to say:
The emigration of Jews from the Soviet Union is not an objective of American foreign policy. And if they put Jews into gas chambers in the Soviet Union, it is not an American concern. Maybe a humanitarian concern. ・・・
http://www.slate.com/id/2277744/
 朝鮮日報が日本人ジャズ・ピアニストの上原ひろみを絶賛してた。↓
http://www.chosunonline.com/news/20101213000045
 この際、彼女の演奏をどうぞ。↓
The Tom and Jerry Show
http://www.youtube.com/watch?v=-HcKrd3K8_A&feature=related
Spain (Chick Corea との連弾)
http://www.youtube.com/watch?v=BRU1o-sCnqY&feature=related
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太田述正コラム#4436(2010.12.14)
<セオドア・ローズベルトの押しかけ使節(その11)>
→非公開。