太田述正コラム#4885(2011.7.23)
<皆さんとディスカッション(続x1271)>
<太田>(ツイッターより)
 これ↓
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110722/crm11072211360011-n1.htm
は個人プレーだが、組織ぐるみでやっているのが天下りってやつだ。
 全く同じ官民癒着構造だぜ。
 大幅な財政赤字削減を巡るオバマ政権と共和党との協議が難航しており、米国が債務不履行(デフォルト)に陥る可能性が出てきた 。
http://www.asahi.com/business/update/0723/TKY201107230101.html
 これも、米国が議院内閣制ではなく、時代遅れの厳格な三権分立制であることに起因する制度ストレスの表れだ。
<太田>
 この話の補足だ。
 オバマに超法規的な一方的債務上限引き上げを促すコラムだ。↓
 <フランクリン・ローズベルトは、大統領就任演説で、行政権と立法権は完全に台頭だが、未曾有の有事には行政権が優位となる、と議会を脅しあげた。↓>
 ・・・Franklin D. Roosevelt saw this problem clearly, and in his first inaugural address in 1933, addressing his plans to confront the economic crisis, he hinted darkly that “it is to be hoped that the normal balance of executive and legislative authority may be wholly equal, wholly adequate to meet the unprecedented task before us.”
 “But it may be,” he continued, “that an unprecedented demand and need for undelayed action may call for temporary departure from that normal balance of public procedure.” In the event, Congress gave him the authorities he sought, and he did not follow through on this threat.・・・
 <今回の問題で、オバマもまたそう宣言すべきだ。そうすれば、ローズベルトの時と同様、議会はついてくるだろう。↓>
 Mr. Obama needs to make clear that he will act unilaterally to raise the debt ceiling if Congress does not cooperate; if he does so, then we predict that Congress will cooperate by enacting the McConnell plan or a similar fig leaf, and so Mr. Obama will not need to follow through on his threat, and the constitutional crisis will pass — just as it did with Roosevelt. Republicans will be publicly outraged, but privately relieved. They do not want an economic catastrophe; they can avoid violating their no-taxes pledge; and they retain the power to fight the budget battle another day. As for the president, he really has no other choice.・・・
http://www.nytimes.com/2011/07/22/opinion/22posner.html?_r=1&hp
<TA>
 「人間主義・唯一神・人権」シリーズ(未公開)についてですが、「人権」に関し、太田さんが何を言わんとしているのかがわかりません。もっと言うと、コラム#4880(未公開)の「1 始めに」の項での太田さんの論述が(難解過ぎて)理解出来ません。
 結局、人間主義社会(日本やイギリス)であれば「言わずもがな」的なことまで法律化(明文化)しようとする行為を批判しているのでしょうか。それとも、「人権」という概念自体に、唯一神信仰を組み込まなければ説明ができない「矛盾」があるということなのでしょうか。
<太田>
 このシリーズは、冒頭部分で「人権」のことだけを語りながら、その後はもっぱら、「人間主義」と「神」について論じ、最後の部分で、それに気が付いて、とってつけたように「人権」にもう一度触れた、という経緯があり、形式的には構成にやや難があったと反省しています。(実質的には、よた気味であるけれど、そんなに構成に難はなかったように思います。)
 それだけに、「人権」に関する部分以外はご理解いただけたようで、ほっとしてます。
 さて、「人権」についてですが、二つの解釈を述べておられるところ、どちらも間違いではありませんよ。
 前の解釈は、「人権」「人権」と喧しく叫ばなければならないのは、その社会が非人間主義社会である証拠である、という私の指摘につながり、後の解釈は、「人権」はなぜ守られなければならないのか、の説明として、一、イギリスの歴史が「人権」確保の歴史で、そのイギリスで人々が(相対的に)自由と繁栄を享受してきたから、二、神がそう命じたから、三、それが遺伝子的に人間の本来の姿だから、という三つのうち、二がウソだ、という私の指摘につながる解釈だからです。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 核問題について、「右」の人々の間でホンネトークが始まっただけでもよかったのかもね。↓
 「・・・これまでは、原発推進派にとっても、原発はあくまで「原子力の平和利用」であり、核兵器とは明らかに一線を画すものとされていた。しかし市場経済を重視する人々の中からも河野太郎衆議院議員やソフトバンクの孫正義社長のような、「脱原発の旗手」が登場するなど、経済合理性の観点からも原発は割が合わないと見られるようになってきた。そこで、最後に残る原発推進の論理が、核武装のための原子力利用ということなのだろうか。」
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201107220227.html
 「右」の人々の愛する自民党はかくのごとしだ。結果、否応なしに、ホンネトークをせざるをえなくなったってことだろうな。↓
 「自民党の政治資金団体「国民政治協会」本部の2009年分政治資金収支報告書で、個人献金額の72.5%が東京電力など電力9社の当時の役員・OBらによることが・・・分かった。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011072201000982.html
 フムフム。↓
 「・・・なでしこジャパン<は>・・・決勝までの6試合で、内容的には大きなアップダウンがあった<が、>ボール保持率(ポゼッション)」の点からいうと、すべての試合で相手を上回っていた・・・<また、>大会を通じての日本の総パス数は2704本で1試合平均451本だった。そのうち成功数は2125本(成功率78.6%)で1試合平均354本と、すべての数字において群を抜いていた。
 このように、なでしこジャパンのサッカーがパスを多用する「ポゼッション」スタイルであることは間違いない。・・・」
http://www.nikkei.com/sports/column/article/g=96958A88889DE1E0E7E1EBE4E1E2E0E2E2E5E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E0EBE2E3E0E2E3E2E1EBE3E3
 経済問題が背景にあって、アラブの春が出来したわけだけど、そのアラブ諸国が今不況にあえいでいる。
 「革命」の必然的コストだろうけどね。↓
 
 ・・・the Arab Spring・・・, which were spurned by rising food prices and unemployment, have bequeathed a cruel irony to their makers: A worsening of the very same conditions that sparked the Arab Spring.
 The economies of Egypt, Jordan, Lebanon, Morocco, Syria, and Tunisia are projected to shrink by a collective 0.5 percent this year, reversing 4.4 percent growth in 2010・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/07/22/the_arab_recession?page=full
<FUKO:翻訳>
 ご無沙汰しておりましてすいません。
 せっかく名誉有料読者扱いにしていただいているのに、それに見合った働きをしておらず、申し訳ないです。
 とりあえず久しぶりに2本和訳をしましたのでお送りいたします。
コラム#4875より
 米国の教育の荒廃ぶりを糾弾している。↓
 ・・・第一次世界大戦の直前には、英国の若者のうち高校を卒業したものはわずか1%だったが、これに比べ米国においては9%であった。
 1950年には、米国の若者の大多数が高校を卒業していたが、これに比べ英国の若者ではたったの10%であった。
 大衆教育における米国の卓越は1970年代から損なわれ始め、いまや多くの国が高卒率、成績、大学の出席率においてわれわれ米国を追い越した。・・・
 中共の経済統計には水増しがつきものってことはよく知られているが、鉄鋼生産量のように過少申告されてるケースもあるってのは初耳だな。↓
 世界の鉄工業で使われる主要な原料の最近における高騰についての見通しをもたらした新しい分析によると、中国は鉄鋼生産量を一年に約40百万トン(大雑把に言ってドイツの生産量と同じ)ほど過少申告している。
 英国の鉄コンサルタント会社のMepsによる調査が示すところでは、去年の中国の鉄生産高は、672百万トン(およそ世界の生産高の半分)であったが、これに対し中国当局から報告されたのは627百万トンであった。・・・
<太田>
 14点さしあげます。
 点数はご自分で控えておいてくださいね。
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 ハメリン特集の最中ですが、「英国を象徴する音楽」特集をお送りします。
 曲の選定は(※を除き)、ガーディアン掲載ブログ↓に拠っています。
http://www.guardian.co.uk/music/tomserviceblog/2011/jul/20/patriotic-music-ma-vlast
(7月21日アクセス)
1 大英帝国
The Crown of India Suite Op 66 (注1) Edward Elgar作曲 ユーチューブには全曲アップはされていない。
 Mogul Dance(March of the Mogul Emperors) 本人指揮 ロンドン交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=pypy7wE-OZE
 Intermezzo South Salem Saxons Symphony Orchestra
http://www.youtube.com/watch?v=HYG2-DjE7bo&feature=related
(注1)もともとは、ジョージ5世とメアリー王妃のインド皇帝・皇后戴冠式のためのインド訪問を記念して、1912年に演じられた仮面劇(masque)・・この場合は歌曲・・用の曲。同年に、エルガーは、これからの抽出曲にIntermezzoを加えて、音楽だけのオケ曲に再構成し、自らロンドン交響楽団を指揮して初演した。
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Crown_of_India
http://www.elgar.org/3crown.htm
2 英国
God Save the Queen (King)(英国の国家)※(注2)
http://www.youtube.com/watch?v=tN9EC3Gy6Nk
(注2)「ニュージーランドでは今日でも『神よニュージーランドを守り給え』とともに国歌のひとつである。カナダ、オーストラリア、バハマ、ジャマイカ、マン島では王室歌 (Royal Anthem) として採用されている。イギリス連邦ではないが、リヒテンシュタインでは同じ旋律を流用して独自の歌詞を乗せて国歌としている(かつてのスイス・ドイツ帝国・ロシア帝国も同様であった)。・・・
 一般に編曲者として知られているのはトマス・アーン<(Thomas Augustine Arne)>である。1744年にイギリス上陸に失敗した小僭称者 (Young Pretender) チャールズ・エドワード・ステュアートは、1745年に側近のみを引き連れてスコットランドに上陸した。ハイランド地方の氏族は小僭称者の下に結集し、政府軍をプレストンパンズ (Prestonpans) において破り、以後ジャコバイトはイングランドへ向けて侵攻を開始した。ジャコバイトがイングランド中部ダービーまで南下してロンドンを脅かす<(コラム#181、1136、1696、1797)>中で、アーンは君主と国家の安寧を祈って「神よ、国王陛下を護り給え」を編曲した。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E9%99%9B%E4%B8%8B%E4%B8%87%E6%AD%B3
Enigma Variations(1~14番) Edward Elgar作曲
http://www.youtube.com/watch?v=Dsw4IhZ_uQ0&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=2WFL06es-HI&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=AbocgV_QYEk&feature=related
 お急ぎの方は、9番のNimrodだけでもどうぞ(バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団)
http://www.youtube.com/watch?v=sUgoBb8m1eE&feature=related
The Lark Ascending Vaughan Williams作曲 バイオリン:Janine Jansen(BBC Concert Orchestra)
http://www.youtube.com/watch?v=wbcuteYm-EA
http://www.youtube.com/watch?v=FsOOQB0uA5Q&feature=related
Tallis Fantasia Vaughan Williams作曲
http://www.youtube.com/watch?v=5y7nJL1hpUU
Gothic Symphony(世界最長の交響曲) Havergal Brian作曲
 (聴くのは下掲の出だしの部分だけでいいでしょう。)
http://www.youtube.com/watch?v=CgUmpSWB-fc 以下
3 イギリス
God Save the Queen (King)※(前出)
 この曲↑は、その編曲の経緯(前出)からして、「イギリス」の国歌の趣のあることに注意。
Land of Hope and Glory (注3) Edward Elgar作曲
http://www.youtube.com/watch?v=podh1wht9RY
(注3)「エルガーは国王エドワード7世の提案を受けて、戴冠式頌歌の終曲「希望と栄光の国」に「威風堂々<(Pomp and Circumstance)(コラム#3269)>」第1番の中間部の旋律を用いた。歌詞はイギリスの詩人アーサー・クリストファー・ベンソンによる。現在のイギリスにおいては国威発揚的な愛国歌かつ第2国歌的な扱いを受け<ている。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A8%81%E9%A2%A8%E5%A0%82%E3%80%85_(%E8%A1%8C%E9%80%B2%E6%9B%B2)
 このブロガーや、この曲をユーチューブ(画面に「イギリス」国旗が掲げられている)にアップした人物が、どうしてこの曲を英国ではなくイギリスを象徴する曲としたのか、今一つよく分からなかった。
4 スコットランド
Flower of Scotland(スコットランドの「国歌」)(注4)
http://www.youtube.com/watch?v=RPaJhlIIYjM
(注4)「スコットランドの非公式な国歌・・・スコットランドのフォークグループ、ザ・コリーズ(The Corries)のロイ・ウィリアムソン(Roy Williamson)によって『スコットランドの花』は作られた。・・・ウィリアムソンは1960年代中頃にこれを制作、1967年にBBCの番組の中で演奏、発表した。その歌詞・・・は、1314年のバノックバーンの戦い<(コラム#4570)>を題材にしている。この戦いでロバート1世率いるスコットランド軍は劣勢にもかかわらずエドワード2世のイングランド軍に大勝利した。タイトルともなっている「スコットランドの花」とはスコットランドの国花であるアザミを指している。夜の闇にまぎれてスコットランドを攻撃しようと裸足で身を潜めていたヴァイキングたちが、アザミのとげを踏み、その痛さに思わず声をあげたことによって、スコットランドの人々が侵略の危険を察知した、という言い伝えがある。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E8%8A%B1
Land of the Mountain and the Flood (注5) Hamish McCunn作曲
http://www.youtube.com/watch?v=bGDFZfgNYlo
(注5)1887年作曲。タイトルはウォルター・スコット(Sir Walter Scott)(コラム#4177、4197、4414)の叙事詩 ‘The Lay of the Last Minstrel’ からとられている。
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Land_of_the_Mountain_and_the_Flood
5 ウェールズ
Men of Harlech(ウェールズの軍事俗謡) (注6)
http://www.youtube.com/watch?v=hz9_ELpil9w
(注6)・・・a song and military march which is traditionally said to describe events during the seven year long siege of Harlech Castle between 1461 and 1468. Commanded by Constable Dafydd ap Ieuan, the garrison held out in what is the longest known siege in the history of the British Isles. “Through Seven Years” is an alternate name for the song. Now some associate the song with the earlier shorter siege of Harlech Castle around 1408, which pitted the forces of Owain Glyndŵr against the future Henry V of England.”・・・
http://en.wikipedia.org/wiki/Men_of_Harlech
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太田述正コラム#4886(2011.7.23)
<映画評論26:トゥモロー・ワールド(その2)>
→非公開