太田述正コラム#2886(2008.11.1)
<私の二冊の本の出版秘話(その1)>(2012.2.2公開)
 (このシリーズは、公開しません。)
1 始めに
 共著『属国の防衛革命』と単独著『実名告発 防衛省』は、それぞれ、兵頭二十八氏と(株)金曜日が私に注目してくれたおかげで生まれた本です。
 つまり、この2冊の本は、それぞれ、兵頭氏と金曜日と私の出会いの産物なのです。
 しかし、単独著の方は、実はもう一人、YYとの出会いがその完成に大きな役割を果たしました。
 そこで、共著については兵頭氏とのやりとり、単独著については、そのゲラ刷り初稿に対してYYが私に寄せたコメントをご披露することにしました。
 長文なので、斜め読みしていただいても結構ですが、本をお求めの方は、つきあわせる形でお読みになるのも一興かと存じます。
2 『属国の防衛革命』
 (1)始めに
 何の前置きも必要ないと思います。
 (2)兵頭氏とのやりとり
 兵頭二十八(本名・斉藤 浩、1960年~)氏の名前を知ったのは今年の3月6日であり、私は、当日のコラム(#2405)に「空母や原潜もアメリカ議会は輸出させません」と<氏のブログに>あるのは、誰かがコメントで批判しているようにおかしい。米国は原潜を英国に輸出しているからです。」という辛口のコメントを載せています。
 その兵頭氏から、光人社のU氏を通じて共著出版のお誘いが3月17日に来ました。
 「私から、インタビューしてもらって原稿を起こす方法か、私のコラムから切り貼りで原稿を見繕う方法かをとってもらえるのならいいですよと答えておきました。先方が難色を示しているので、この話は実らないかもしれませんね。」と当時のコラム(#2428)に書きました。
 すると、その3日後の20日に、兵頭氏から次のようなメールが届きました。
 太田さま、時下ご清祥の趣き、大賀に存じます。
 わたくしは兵頭二十八と申します、フリー・ライターでございます。(昭和57年1月から59年1月まで、陸上自衛隊の任期制隊員でした。入隊時にはまだ「自衛官番号」が6桁でした。)
 まずこのようなぶしつけなメールを差し上げますことをおゆるしください。
 3~4年ほど前、グーグルでなにかの調べ物をしていたときに、偶然に太田様のメルマガの「バックナンバー」の頁にヒットし、そのときからブックマークをして、しばしば拝読をしております(メルマガは不本意ながらメールソフトが自動排除してしまいます)。
 ご著書も購読させていただき、感心をいたしました。内容の過半に共鳴できると感じました。
 じつは小生も1995年に銀河出版から『日本の防衛力再考』を上梓し、それいらい、〈1985年には必ずソ連軍が北海道に上陸すると長谷川慶太郎氏が断言していたから東地連で入隊をしたのに、上富良野の戦車隊に希望通り中隊配属されたら、最前線のはずの第二師団でも、そのような脅威はまったく意識されていないことがよくわかった〉という、阿呆な実体験談を、あちこちの活字媒体に書いたものでございます。
 それで1~2年ほど前から、何故太田様はメルマガに書くことがこんなにありながら、いっこうに2冊目の単行本をお出しにならぬのか、それが不思議だと感ずるようになりました。
 ここ数ヶ月、太田様の知名度が上がってきたと拝察いたしますが、本格的な長文のご寄稿が、メジャーな紙媒体で見られないのは、なんとも惜しいことだとも思っておりました。
 わたくしは、防衛論の末端に連なる小物にすぎませんが、太田様のお考えが、もっと世間に広く認知されてよいと、僭越ながら思うのであります。
 先月、雑誌の『諸君!』の担当編集者氏に対し、太田様と小生との座談を載せる気はないかと打診したところ、これは、残念ながら断られてしまいました。
 さらばと、小生のためにいつも無料で企画コーディネーターを買って出てくださっている在京の杉山穎男さんを経由しまして、月刊『丸』を出している老舗の軍事系出版社であります光人社に《変則的共著》の企画を提案しましたところ、こちらは、先日、通りました。
 このような経緯で、このたびあらためましてわたくしから直接に、太田様に企画のご提案を申し上げるものです。
 本企画の目的は、
  表の一、太田様の深いご主張をもっと多数の日本人に知って貰う。
  表の二、マンネリ傾向のある日本の防衛論議に刺激剤を投下し、すこしでも高水準化を誘導する。
  裏の一、「兵頭は早くから太田氏を評価していた」という記録を活字で残す。
  裏の二、共著者としての印税収入の機会を発生させるという形での、カンパ。
   ――にあります。
 この企画は、小生が函館居住で、おまけに年収○○○万で扶養家族を抱えておりますためにめったに上京できませんので、対談抜きの《変則的共著》にするのが、実現性が高いだろうと愚考しました。
 イメージしております《変則的共著》の形式ですが、2000年6月に扶桑社から出版されています『日本の失敗と成功 : 近代160年の教訓』(岡崎久彦, 佐藤誠三郎著)です。
 佐藤氏は1999年に逝去され、原稿が遺されていた。それに、岡崎氏が加筆して、総文字量を約2倍にして「共著」に仕立てたものです。
 この制作作業はおそらく、まず佐藤原稿の全文に編集者が小見出しをつけて、多数のブロックに分割し、そのブロックごとに、岡崎氏が小見出しの趣旨に沿う短文の私見を書き下ろしては割り込ませていったものでありましょう。
 仕上がりの体裁は、「小見出し1」「佐藤のテキスト」「岡崎のテキスト」→「小見出し2」「佐藤のテキスト」「岡崎のテキスト」→「小見出し3」……という具合に、2人の独立した文章が、交互に出てくるようになっております。
 岡崎氏の加筆部分は、佐藤氏の補足になっていることもあれば、異論表明になっている部分もあります。しかし「宗門論争」のような対立はありません。
 このスタイルの利点は、太田さまのご主張と、あらためて書き起こして付加しますつもりでおりますわたくしの短文が表示する考えが、多少違っていても、読者にとって特段に抵抗なく読み進めることができるところにあろうかと愚考します。
 太田先生が現在ご多忙で、書き下ろしをしている時間がないこと、および、これまでお書きになったご文章から、こちらで抜粋をする作業をご希望である旨、杉山さん経由で拝承しました。
 過去のメルマガからのおおまかな抜粋は、小生がやっていいでしょうか?
 出版時期がおそらく8月以降になると予期されますことから、わたくしは、今回の書籍は、「守屋スキャンダル」とも防衛庁ともむしろ無関係な広範な話柄をちりばめて行きたいと願っております。
 そして、抜粋した生テキストをさらにリライトする作業を、わたくしは、高道周吾さんというフリーの編集者に頼もうと思います。高道さんは、池袋のNP通信という税理士向けの業界新聞を出していた会社に勤めておられた方で、無難なリライトができる人です。(出典明示の処理は、もちろん太田さまのご方針に準拠させます。また、高道さんによる下書きのあと、太田様による「著者校正」のプロセスが入ることは無論であります。)
 いくらなんでもブログのテキストをそのままコピーして活字にしたら、読者は不満に感ずるだろうと思っております。それでは本の価値は間違いなく下がります。
 共著者として少しは手を加えているのだなと太田様のコアなファンの方にも思わせる体裁が必要であります。
 もし、メルマガのテキストを一字一句も変更されるのは厭なのだというご尊旨でしたら、お知らせください。この企画のご提案は、ぜんぶ撤回します。
 なお高道さんも、この作業をボランティアでやってくれます。つまり、これも広義の「カンパ」であります。
 ひとつ、ごゆるりとご検討を賜れましたなら幸甚です。小生は、急いではおりません。
 末筆ながら、先生のますますのご多祥とご健筆を祈り上げます。
                         怱々 不一
                      平成二十年三月二十日
                        兵頭 二十八 再拝
追伸:光人社の書籍の印税率およびその支払いタイミングは、普通の大手出版社よりもずいぶん低く、遅い、とお感じになるだろうと思います。(なんと、月賦で分割振込みされてきます。)しかし、そのような類例の無いシステムの版元だからこそ、この企画にもゴー・サインが出されたのだ、とご認識ください。また恐れ入りますが、もしこの企画が実現した暁には、共著者のあいだの印税の配分は、テキスト量に関係なく、わたくしと太田様とで「折半」にさせてください。(単純に折半としておきませんと、将来の別な企画のときに、面倒な前例となることを懼れます。)印税は、書籍が発売になってから数ヶ月後に、コーディネーターの杉山氏経由で振り込まれることになるでしょう。なお杉山さんは中間マージンを一銭も取りません。その点はご懸念ご無用でございます。
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兵頭 二十八 拝
(参考:4月7日付の兵頭氏から私宛のメールより)
 杉山氏と兵頭の関係について、ご説明します。5年以上も前でしたでしょうか、故・徳田虎雄氏がタレント候補を何十人も参議院選挙に担ぎ出したことがありました。このとき初代タイガーマスクの佐山聡氏が立候補して落選しているのですが、杉山氏は元ベースボールマガジン社の『週刊プロレス』および『格闘技通信』の初代編集長だった縁があって、その佐山氏の応援をしただけでなく、なんと自分自身も徳田さんの政党から立候補して落選をしているのです(徳田氏はプロレスラーの前田日明に立候補を慫慂したのですが、前田氏が固辞したために、前田氏から相談を受けていた杉山氏が代打に出た恰好)。このとき、ベースボールマガジン社を退職していた杉山氏は『武道通信』という趣味的なミニコミ誌を立ち上げていて、そこに時折原稿を寄稿していました兵頭が、佐山氏および杉山氏の選挙カーに同乗して、一緒に選挙戦をたたかいました(当時は小生は東京都内に住んでおりました)。そのときいらいの同志的な関係が継続しております。杉山氏は、損得抜きで小生の出版企画のコーディネートをしてくださっているわけです。小生が新紀元社から出した2冊の本も、杉山氏が斡旋してくれた結果です。
 この兵頭氏の提案を私が快諾し、私の提案で二人の間で契約を締結することになりました。
 3月24日には、兵頭氏が、私を「チャンネル桜」の座談会に彼の代わりに出したらどうか、と同チャンネルに提案し、実現したという話を同氏のブログに記載し、これに気付いた私がコラム#2449に転載したことを覚えておられる方もいらっしゃると思います。
 
 そして、4月7日午後、兵頭氏が上京された折、氏と京急蒲田駅付近の喫茶店で面談するとともに、契約書を交換しました。
 わずか、2ヶ月後の6月13日、氏からすべての原稿がメール送付されてきました。
 そのおそるべきスピードにびっくりしました。
 そして、私の担当部分を読んで、その完成度の高さに2度びっくりしました。
 私の担当部分を先に読んでから、6月21日、初めて兵頭氏の原稿を全部、斜め読みをしました。最初に兵頭氏を知った時に感じたのと同様の危惧の念・・不正確な記述が多い・・を改めて痛感したので、同日、象徴的な箇所を選び、次のようなメールを兵頭氏に送信しました。
兵頭二十八 様
 貴稿をいただいて斜め読みし、今一度読み返しつつありますが、比較的最初の部分でひっかかってしまいます。
 「武装警察」とは何を指しておられるのでしょうか。
 いかなる意味においても、アングロサクソン諸国にはそんなものはありませんし、フランスのGendarmerieやイタリアのCarabinieriはあくまでも国防省隷下の第四軍ですよね。
 ご教示いただければ幸いです。
・・・
 <また、>
 「別宮暖朗氏が指摘したように、陸軍大臣と海軍大臣は決して対等であっていけない。近代国家においては、イギリスだろうとアメリカだろうと、必ず陸軍大臣が、一国の「戦争大臣(国防長官)」なのだ。」
のくだりも、(後段はともあれ、前段は、)
Britain, alone among European states, the navy was also a guarantor of national integrity. Politically unstable, with an apparently weak government and an undoubtedly weak army, Britain had no real defence apart from her navy.
http://j2k.naver.com/j2k.php/japanese/www.answers.com/topic/navy
等に照らすと、よく分からない部分です。
 そもそも、英陸軍にはRoyalを冠することが認められていないくらいですが・・。
 出過ぎたことのようですが、共著である以上は、共著者が書いた部分についても第三者に説明ができるくらいのことは求められると思ったものですから、あしからず。
                            太田述正
 これを受け、6月22日に、以下のようなやりとりがなされました。
<兵頭→太田> 
 太田さま、お世話になっております。
 すいません、すでに別な仕事にかかってまして今はすみずみまで読み直している時間がちょっとないのですが、〈国内権力バランスの取り方は各国によって伝統も理論も違う〉ということはどこかに留保したつもりであります。また小生の本を買ってくれる人は小生が過去の本で「憲兵隊」についていろいろ書いたことを知っているでしょう。(米国の州兵の話とか、オーストラリアのタスマニア暴動で登場したSWATはどこから来たとか、いろいろ書いてきたわけです。もちろん本書ではありません。)
 そこで太田さまの「あとがき」の中では、わたしが「まえがき」で書いていますのと同様に「兵頭の話には必ずしも同意していない」「兵頭の過去の本については知らない」「本書は共著ではなく2人の意見のオムニバス」等と、明瞭にビシッとクギを指しておいてくださればよいのです。わざわざ1章ごとに著者を明記していますのも、こうしたことのための用心なんです。
 ゲラを赤字で直すチャンスはありますからもし誤字等致命的な間違いだと思われたことは今後もご遠慮なさらずどしどしご指摘ください。(しかし太田さまから見ての不審な箇所がぜんぶ払拭されることはなかろうかと予め予見いたします。すいません。)
 なお、本の発売と同時に、太田さまのメルマガで、「こんどの共著だが、わたしは兵頭のこの部分は間違っていると思っている」と大々的に異見表明されるのも大歓迎いたします。本の発売前でも構いません!
 不自然のようにお感じになると思いますが、〈そういう企画なんだ〉と割り切っていただけないと、将来の類似の第二弾展開にもつながりにくいでしょう。そういうもんなんです! 何卒ご高配を賜りまして、ご進行くださいますように。
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兵頭 二十八 拝
<太田→兵頭>
兵頭 様
 さっそくのご返事どうもありがとうございます。
 しかし、私がとりあえず指摘させていただいた2点については、私が「兵頭の話には必ずしも同意していない」なのかどうかすら判断のしようがない、ということを申し上げているのですが・・。
 「兵頭の過去の本については知らない」というディスクレーマーも、過去のご本でも典拠が省略されているのだとすれば、意味はないでしょう。
 「憲兵隊」は、内務省所管の武装警察として始まったということなのでしょうか? じゃそれはいつ国防省に移管されたのでしょうか? それはフランスでの話ですか?
 それにしても、米「州兵」の起源と内務省とは何の関係もないはずでは?
 SWAT(に相当するものは現在では日本でも警察にある)の始まりは軍に対抗するものであったということなのでしょうか。
 お前はそんなことも知らないのかとおっしゃらずに、一言ずつご教示いただければ幸いです。
 ついでに、別件を指摘させていただきます。
(北朝鮮や)中共の弾道弾が日本に到着する時間は米本土に到着する時間(15分?)より短いのでは?
 これは、核シェルターの有効性ともかかわってくるような気がします。
 (もっともこれこそ「兵頭の話には必ずしも同意していない」点かもしれませんが・・。)
 なお、司馬遼太郎批判(これは拙著でも展開している)と陸軍の再評価(コラムで部分的に展開している)については、全面的に賛成です。
 違和感を覚える部分はごくわずかですので、お気を悪くなさらないように。
             太田 述正
<兵頭→太田>
 太田さま、このたびはいろいろとご心配くださいまして、わざわざのご教示、重ねていたみいります。
 わたしが憲兵隊等に言及しているくだりは、来月、ゲラを読みまして、その時、わたしが、これはどうも不適切だと判断しましたら、添削することを検討しようと思います。
 ここで「勉強会」をやるのは、勘弁してください。申し訳ないです。
 もちろん、今後もご指摘は、随時、いくらでも賜りたいと存じます。
 また来年くらいになったらわたしにも余暇ができるかもしれません。そのとき、もしご迷惑でなかったら、いろいろとまた、私的に勉強をさせていただいたりして、将来の文業に、それを活かすことができればいいな、と念願しております。
 今回、特におたずねをしたかったのは、小生がさしでがましくもご高著『防衛庁再生宣言』に筆を及ぼしましたくだりで、なにか太田さまにご迷惑な表記でもなかったか、ということなのでございます。それは無いということで、宜しいですね?
 
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兵頭 二十八 拝
<太田→兵頭>
兵頭 様
>わたしが憲兵隊等に言及しているくだりは、来月、ゲラを読みまして、その時、わたしが、これはどうも不適切だと判断しましたら、添削することを検討しようと思います。
 どうもありがとうございます。
>『防衛庁再生宣言』に筆を及ぼしましたくだりで、なにか太田さまにご迷惑な表記でもなかったか
 ありません。
 「過分に」言及していただき、光栄に存じます。
>来年くらいになったらわたしにも余暇ができるかもしれません。そのとき、もしご迷惑でなかったら、いろいろとまた、私的に勉強をさせていただいたりして
 大歓迎です。
               太田
 (3)光人社とのやりとり
  ア 部落・在日問題に触れた部分の削除
 このことについて、コラム#2685(2008.7.23)「部落・在日問題」で次のように触れました。
 太田述正×兵頭二十八『属国の防衛革命』(光人社)に掲載予定でゲラにも入っていた、部落・在日問題に触れた部分が、光人社が専門家と相談した結果、部落・在日関係者から強い批判を招く懼れがあるとして、削除されることになりました。
 そして、その後に、削除された部分を掲載しました。
  イ 差別用語の直し
 このことについて、2008年8月6日、mixiで次のように触れました。
1700前:お昼近くに電話をかけてきていた光人社の牛嶋氏から電話あり。差別のところで、ロレンスの言葉が禁止用語だという。無難な言葉に言い換えてもらうことになった。
 「作家のD.H.ローレンス(David Herbert Lawrence。1885~1930年。
http://mss.library.nottingham.ac.uk/dhl_biog_brief.html
(6月14日アクセス)
は、「病人、びっこ、かたわ(the sick, the halt, the maimed)」をみんなかっさらってきてぶち込む、クリスタル・パレス並に大きい死の収容所(lethal chamber)を作りたいものだ、と語っています。」(コラム#380)
 を転載したくだりが、共著の私の担当部分にあります。
 出版社の光人社から、どぎつい表現なので、「びっこ、かたわ」→「身障者」、「ぶち込む」→「収容する」に変更したいとの申し出があり、了承しました。
 なお、もともとどうして’halt’を「びっこ」と訳したのか、今となっては思い出せないのですが、
THE LAME, THE HALT, THE BLIND. The World of Graham Greene
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001127430/
といった本のタイトルもあるところを見ると、同じような文脈でよく使われる表現のようです。
 IT用語でhaltというと「停止させる」という意味ですが、オンラインのgoo英和辞典によると「ためらいながら歩く[言う]」という訳が出てくることから、「びっこ」と私が訳したのではないかと思います。
 言葉ってむつかしいものですね。
 (4)終わりに
 9月16日、『属国の防衛革命』が発売されます。
 企画が持ち込まれて、ちょうど半年で出版にこぎ着けたことになります。
 兵頭氏に改めて感謝と敬意の念を捧げたいと思います。
 
 なお、兵頭氏は私の投げかけた疑問を踏まえ、諸処で文章を手直しされました。
 それでも、疑問を投げかけた箇所だけをとっても、私の疑問が完全に晴れたわけではありません。
 例えば、
http://www.aynrand2001japan.com/aynrandsays/aynrandsays20081019.html 
をお読みなると分かるように、本というのは恐ろしいもので、それに書かれていることを真実であると受け止める読者が出てきます。
 やはり兵頭氏には、学術書ではないとは言っても、典拠を具体的に明らかにする形で執筆をしていただきたかったと思います。
 更に申し上げれば、兵頭氏は、氏と共著が何冊もある別宮暖朗氏の影響を多々受けておられるように拝察するところ、別宮氏も、従って兵頭氏も、欧州とアングロサクソンを欧米として一括りで考えておられ、しかも、その欧米世界を欧州大陸主要諸国で代表させる、という世界観に立脚されておられるようにも受け止めました。
 そこが、私が兵頭氏が書かれた部分に感情移入できないもう一つの理由であるように思います。
 しかし、繰り返しますが、だからこそなおさら、兵頭氏が私を高く評価され、共著の出版を決意されたことに感謝と敬意の念を捧げざるをえないのです。
(続く)