太田述正コラム#5285(2012.2.7)
<皆さんとディスカッション(続x1456)>
<太田>(ツイッターより)
 1962年、ホワイトハウスの研修生だった19歳の女性はケネディに誘われ処女を捧げた。情事は18か月にわたって続き、ケネディ暗殺の数日前にも彼女はケネディと寝たんだと。
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-16900106
 2003年に初めて言及されたこの話、ついにその主人公が本を出した。
ピサの斜塔の大修理が終わり、傾きが若干「是正」された後、傾き度世界最大の斜塔探しがたけなわとなった。
 現在のところ、どうやら、スイスのサンモリッツにある斜塔らしいってさ。
 日本や韓国からの観光客を期待してるみたいだよ。
http://www.nytimes.com/2012/02/07/world/europe/with-leaning-tower-of-pisa-straighter-others-vie-for-title.html?ref=world&pagewanted=all
<TA>
≫簡単に言えば、ボクは、彼<(橋下弁護士(現大阪市長))>との最初の「出会い」から現在に至るまで、一貫して、彼も彼の「政策」も、全く評価していないってこと。≪(コラム#5281。太田)
 個別の政策論の是非は置くとして、私は地方分権の旗手あるいは先駆者としての橋下市長の「活躍」を好もしく思っていたのですが、国政への関与(↓)については違和感を感じています。
 橋下市長“国政殴りこみ”の全真相!連携相手の筆頭はみんなの党
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120131/plt1201311826007-n1.h
tm
 国政において何をやりたいのかが今一つ見えてこないことにも違和感を感じるのですが、愛知の河村市長や石原都知事らとの連携の話もある以上、地方分権・道州制が「大義」になるのかもしれません。しかし、自身が国政に関与しての地方分権の推進は、いわば国主導の改革です。これまでの国主導による地方行政を地方主導に変えるのを地方分権というとするならば、地方分権は、あくまでも地方主導によってなされるべきものだと思うのです。
 「二段階革命論」(コラム#3398)を唱える太田さんが橋下氏の「活躍」を評価しない理由が今もってよく飲み込めないのですが、私も橋下氏に胡散臭さを感じ始めました。
<太田>
 例えば、『朝まで生テレビ』での橋下の主張の田原総一朗による紹介を見てみましょう。
一、現在の大阪市の24区を解消し、8~9の特別区(自治区)にして区長公選を行うという。そして、大阪市をなくす。
二、公務員を「身分」から「職業」に変えようとしている。一般企業では不況だとリストラがあり、従業員の数が減らされる。失敗すれば降職や減俸もあるが、公務員の場合はそうではない。定年まで身分が保障され、定年後は天下りもある。公務員は「職業」ではなくひとつの「身分」になっているというのだ。橋下さんはこれを「職業」に変えようとしている。
三、今、公立教育の権限を持っているのは教育委員会である。大阪市で言えば市の教育委員会だが、教育委員は一種の名誉職であって機能していない。実際には教育委員会の事務局が強い権限を握っている。・・・ 橋下さんは特別区ごとに教育委員会を置き、区長や知事が関与できるようにするとも言っている・・・
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120131/297845/?rt=nocnt
 これらへの、私のあらあらのコメントは以下のとおり。
一、前段は、事実上市長権限でできるのでは?(区を整理統合した上、公募者の中から候補者を絞って供託金を出させた上で人気投票にかけ、一番人気のあった候補者を区長に任命すればいい。)
 (前段について、上記だけでは我慢ならないと言うのなら、後段とともに、東京都にならった大阪府制改編の地方自治法(?)改正を政府に働きかければいい。)
 そもそも、府と市の二重行政の解消については、先般のダブル選挙の結果、障害は取り除かれたはず。
 後のことは、どうでもいいことだろ、勝手に推進しなよ、というだけのこと。
 
二、不況でリストラ? 大災害等の危機管理に公の観点からあたらなきゃならないので、公務員における若干の人員過剰は必要悪だし、不況になれば公務に対する需要はむしろ増える面があるってわけで、民間と違う点が多々あるぜ。
 また、公務員についてだって「失敗すれば降職や減俸もある」し「定年まで身分が保障され」てもいないタテマエだけど運用がそうなっていないというだけのことだ。橋下が運用を変えればいいだけのことさ。
三、「委員は議会の承認により首長によって任命される」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%99%E8%82%B2%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A
のだから、橋下が何を言いたいのかさっぱり分からない。
<ΒαΒα>(「たった一人の反乱」より)
 首相「人件費削減と消費増税、セットでない」
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819481E2E4E2E0988DE2E4E2E0E0E2E3E08297EAE2E2E2
 公務員の人件費削減してそれでダメなら消費税を増税するのが筋なんじゃないの?
 そういう公約で与党になったんじゃないの?
<太田>
 公務員の人件費削減なんてやらない方がいいに決まってるさ。
 まず、日本の国家公務員の(対人口比)数・・軍人も非軍人も・・は、先進国中最低水準だし、給与水準は、恣意的に下げるべきではなく、給与水準決定ルールの改訂を通じてなすべきだし、いずれにせよ、給与カットは、短・中期的には財政再建に資するとしても、長期的には、国家公務員の質の低下を招くことが不可避だからだ。
 次元が違うと思うかもしれないが、次の話を考えて見てくれたまえ。
 なんで短期的な快楽を求めて長期的には自らを破壊するヤクに人は手を出すのか。
 そんなことは進化の原理に反するのではないか?↓
 ・・・In a perfect world, nature would have already programmed us to avoid self-destructive short-term thrills, and we would be perfectly rational actors, never taking needless risks. Dangerous activities like drug use and reckless driving highlight an important gap between what might seem on paper to be optimal for evolution and biological reality.・・・
 <原始的な(快楽原理で動く)反射システムが、後になって人間に備わったところの、理性的思考システムに優先してしまうから。↓>
 The paradox of drug and alcohol abuse is that addicts know that their lives are worse off in the long run. But in the immediacy of the moment, our reflexive systems—precisely because they are so much older—still hold the steering wheel.・・・
http://www.thedailybeast.com/newsweek/2012/02/05/whip-its-why-can-killing-brain-cells-feel-good.print.html
 それでは、その他の記事の紹介です。
 東京新聞(2012.2.3 朝刊22面)に私の話が載っていたので転載しておく。
 「・・・あまり耳慣れない「講話」について。1999~2001年に仙台防衛施設局長(当時、現在の東北防衛局)で局長を務めた太田述正氏の解説によると「一般企業でも上司が部下を前に訓示することがあると思うが、防衛施設局でもそれと同じ。ただ、通常業務の一環というよりは「新年の講話」など、少しあらたまったものを指す言葉だった」となる。
 他の局でも、局長が職員に投票を呼びかける講話をするのだろうか。「自分の局長時代はもちろん、前任者や、他の防衛施設局の例も聞いたことがない」と太田氏。「米軍基地が集中し、県知事選や主要市長選で基地問題が大きな争点となる沖縄特有なのではないか」とみる。・・・
 前出の太田氏は「66人も職員を集めて、どこかで情報漏えいされる危険性を考えないなんて、あまりに脇が甘い」と嘆く。一方で、「選挙に立候補した省庁OBを現役職員が応援するといったつながりは、政権交代後に弱まる傾向にある」とも。とすれば、沖縄防衛局が今回行ったリストの作成や講話は、時代の逆をいっている。
 「防衛省の仕事は仮想現実の防衛計画を立てたり、国会対策や地元対策をしているだけ。国民に身近な政策を実施し、批判を含めて反響を実感する機会が少ないため、いつまでも古い体質が残っている」と、太田氏は冷ややかだ。・・・」
 海兵隊を大幅縮小する、或いは、海兵隊等を中共や北朝鮮の近傍から引き離す、という財政的、軍事的に合理的な選択を米国が行うことを、日本と韓国による米軍に対する異常なる「思いやり(米軍駐留経費負担)」が妨げている、ということが改めてよーく分かるね。↓
 「・・・ 両政府は、海兵隊のグアム移転を普天間移設と切り離して先行させるとともに、移転の規模を当初の8千人から4700人に縮小することで大筋合意。残りは豪州やフィリピンなどにローテーションで派遣するとしている。
 日本政府関係者は6日、「沖縄の痛みを全国で引き受ける国内分散案も浮上した」と説明。米側から岩国移転案を打診されていることを明らかにした。韓国内の米軍基地などに移転する案も示されたという。・・・
 日本側は米側に対し、グアム移転の費用負担の減額を求める方針だ。・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/0207/TKY201202060686.html
 「・・・『文芸春秋』2010年9月号は「6月にカナダのトロントで開催された主要20カ国・地域(G20)サミットを契機として、韓米首脳会談が行われ、、その席で李明博(イ・ミョンバク)大統領がバラク・オバマ大統領に対し“普天間基地移設が、日米同盟にとって最悪のシナリオに陥った場合、韓国国内の軍施設を提供したい”と提案した」と報じた。当時、大統領府(青瓦台)は「小説でも、このようなものはない」とこれを一切否定した。
 最近では▲北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の死去▲沖縄の米海兵隊3300人のローテーション配置決定▲5000億ドル(約38兆円)以上にもなる米国の国防費削減―などといった要素が、米海兵隊の韓国ローテーション配置の可能性を高めているという見方が出ている。韓国政府高官はこれまで何度か「米海兵隊の一部が韓国に配置された場合、複数の対北朝鮮戦略を駆使できる」という立場を表明してきた。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/02/07/2012020700796.html
 「・・・李明博(イ・ミョンバク)政権は、・・・同時に中国・北朝鮮や韓国国内の一部からの反発を懸念して悩んできた。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/02/07/2012020700794.html 
 「・・・ 今回の計画見直しで、日米は、沖縄からグアムへ移す米海兵隊を当初の8000人から4700人に縮小することで大筋合意している。米政府は、残り3300人を米ハワイやフィリピンなどに一時駐留させる「ローテーション方式」を取る方針だが、今回の打診は、この一時駐留先に岩国基地を組み込むものだ。背景には、日本国外の基地での部隊受け入れには予算面などで課題が多い事情があるとみられる。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120206-OYT1T01284.htm
 日本のTPP加盟に対する反対論が米国労使双方から噴出するとともに、米国政府も有難迷惑視。
 日本のTPP加盟反対論者は、心して読め。↓
 Japan’s push to enter a broad Asia-Pacific trade pact faces one of its toughest challenges this week: acceptance from Washington.
Opposition from American manufacturers and unions, combined with doubts about Tokyo’s ability to deliver on promises, could create obstacles.・・・
 Meanwhile, U.S. government regulators, while welcoming Japan’s interest, fear that domestic opposition in Japan and Tokyo’s weak political leadership could mean added risk of complications in the multilateral negotiations.
Washington officials, noting Japan’s political hurdles to meet pact standards, have said any new entrants to talks won’t delay conclusion of the pact. ・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203315804577206473485890372.html?mod=WSJ_World_LEFTSecondNews
 アングロサクソン文明の嫡流ケインズと、欧州文明の嫡流のハイエク、が永遠の好敵手となるのは当たり前。↓
 ・・・ Keynes came from the heart of a Cambridge tradition (later continued in that other Cambridge in Massachusetts) that saw economics as a humane discipline or moral science, providing tools for earnest attempts to do good in the world. Hayek, by contrast, with his background in the Austrian school, was absorbed in a quest to understand the abstract beauties of the price mechanism, with some impatience for restless advocates of quick-fix solutions.・・・
 <ケインズのハイエク批判は、要するに合理論批判。ハイエクのケインズ批判は、要するに経験論批判。↓>
 The most damning thing that Keynes said about Hayek’s work was that it was “an extraordinary example of how, starting with a mistake, a remorseless logician can end up in Bedlam”. His logic was thus an irrelevant abstraction, its beauty purely formal. The most damning thing that Hayek later found to say about Keynes’s general theory was that it was “a tract for the times”.・・・
http://www.guardian.co.uk/books/2012/feb/03/keynes-hayek-nicholas-wapshott-review
 殺人率は、米国のみならず、世界的に(とりわけ最近)低下しつつある。↓
 ・・・In 2001, homicide killed more than twice the number of people worldwide who died in wars (an estimated 557,000 people versus total war deaths of around 208,000). But just as in the United States, violent crime rates have been falling across a large part of the planet. The data is patchy, but in 2002, about 332,000 homicides from 94 countries around the globe were reported to the United Nations. By 2008, that had dropped to 289,000. And between those years, the homicide rate fell in 68 reporting countries and increased in only 26. ・・・
 <ただ、依然として米国の殺人率は西欧の1700年代の水準!↓>
  ・・・typical homicide rates in Europe dropped from about 32 per 100,000 people in・・・the 13th century・・・down to 1.4 per 100,000 in the 20th century. (Sadly, of course, for all of their decline, U.S. rates are still more than three times that — a rate above・・・the Western average for the 1700s.)・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/02/06/there_will_not_be_blood?page=full
 太平天国の乱は世界史上の内戦の中で最も死者が多かったもの。↓
 ・・・Chinese civil war lasted from 1851 to 1864, overlapping in its end with America’s Civil War. Mr. Platt describes it as “not only the most destructive war of the 19th century, but likely the bloodiest civil war of all time.”
 <あらゆる残酷行為が行われた。↓>
 Some 20 million people lost their lives, many of them in grotesque ways. There are enough beheadings, flayings, rapes, suicides, disembowelments, mass killings and acts of cannibalism・・・
 <英国が通商上の理由からこの内戦に介入したために、米国は、同時期の南北戦争への英国の介入を回避できた。↓>
 Britain’s disastrous intervention, for trade reasons, on the side of the dynasty in this Chinese war prevented it from becoming involved in ours. ・・・
 <英国人は支那人を、支那人の士大夫階級は英国人を、それぞれ徹底的に見下していた。↓>
 ・・・the British saw the Chinese as a profoundly inferior race.・・・
 thought the Britons were “uncivilized and unruly, and they didn’t understand the Confucian concepts of loyalty and trust・・・
http://www.nytimes.com/2012/02/07/books/autumn-in-the-heavenly-kingdom-by-stephen-r-platt.html?_r=1&hpw
 ケネディの情事(上掲)の詳細が出てた。↓
 <ホワイトハウスのプールサイドで、ケネディは研修生に対し、秘書の男性への口での奉仕を指示し、彼女はその指示に従った。↓>
 ・・・During a noonday swim, with David Powers sitting at the edge of the pool while Kennedy and Mimi splashed around, the president said to her, “Mr. Powers looks a little tense. Would you take care of it?” Understanding that she was being instructed to give Powers oral sex, Mimi obliged.・・・
 <ケネディが暗殺される1週間前の最後の情事の時、彼女は婚約していた。ジャクリーヌが一緒に行くと言い出さなかったら、ケネディはこの研修生をダラスに連れて行くつもりだった。↓>
 The last time Beardsley saw the president was in mid-November 1963. She had by this time become engaged to a young man・・・, who would become her first husband. Their courtship and engagement all took place while she was conducting her affair with Kennedy. Amid plans for her wedding, Mimi visited with Kennedy at New York’s Carlyle Hotel on Nov. 15, a mere week before he was assassinated in Dallas. Alford hints that she could have been in Dallas with him had Mrs. Kennedy not decided to go along for the trip.・・・
http://www.thedailybeast.com/articles/2012/02/06/interns-memoir-details-affair-with-president-kennedy.print.html
 ベートーベン、シューベルト、ブルックナー、ドボルザーク、ヴォーン・ウィリアムズはみんな、第9交響曲を書いたところで死んだ。これを第9交響曲の呪いというだとよ。↓
http://www.guardian.co.uk/music/2012/feb/05/pass-notes-ninth-symphony
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太田述正コラム#5286(2012.2.7)
<モサデグ・チャーチル・米国>
→非公開