太田述正コラム#6588(2013.11.22)
<皆さんとディスカッション(続x2090)>
<太田>(ツイッターより)
 「フィリピン支援隊派遣で分かった韓日の違い…」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/11/21/2013112101296.html
 ついに社説で、日本を見習え、日韓関係の在り方を見直せ、と朝鮮日報がはっきりと言い出した。
 ぜひとも、全文に目を通して欲しい。
 この種の記事を、今後は連日のように目にすることになる、と思いたい。
<TA>
≫以前、太田さんが取り上げていた朝鮮日報の記事 「【コラム】日本を見る目、世界が馬鹿なのか」って日本語版のみで韓国語版には掲載されてないんだな。まんまと対日世論工作の一貫に騙される所だったぜ。
http://premium.chosun.com/site/data/html_dir/2013/11/12/2013111203645.html 
≪(コラム#6586。w8j9Ab700)
 URLを貼ったのは別の方ですよ。
 この記事をGoogle先生に翻訳してもらいましたが、「<朝鮮>語版には掲載されていないんだな」に対する反証のようです。
<太田>
 この産経の記事からしても、件の記事、朝鮮日報の元版(朝鮮語版)にも載ってるのは間違いなさそうですね。↓
 「・・・韓国紙、朝鮮日報の楊相勲論説室長は同紙13日付で、反日ムードの中で勇気ある反省の弁を述べている。日本という「戦犯国家」と戦った米英豪露までが、日本の集団的自衛権行使を歓迎する立場をとり、被害を受けた東南アジア諸国も日本軍の再登場を望んでいると嘆いてみせた。
 楊室長は日本がいかに国際的に称賛され、逆に韓国が激高しやすい国民性かを率直に認める。ただ、この楊論文をもって韓国が対日融和に転じたと見るのは時期尚早で、むしろ事実を書いた楊室長の身の危険さえあると伝えられる。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131120/amr13112012510006-n1.htm
<ねこ魔人>(昨日の続き)
2.歴史観の転換と継続
 上述の通り、やなせ氏は従軍経験があることもあり、戦争についても本書では述べられています。
 氏は、21歳の従軍当時、「天に代わりて不義を討つ」と歌う軍歌が唱えるように、日支事変は聖戦であるというという風潮であり、氏も、「ぼくも兵隊になった時は、日本は中国を助けなくてはいけない、正義のために戦うのだと思って戦争に行った」と述べています。
 しかし、(無論、戦前の日本は戦後から一貫して自由民主主義国家であったが、敗戦による戦前史観の消失によって)、氏は、中国側から見れば日本もまた悪魔のような侵略者であり、日本が軍国主義から民主主義に変化し、国内でも正義が逆転したという事態が発生したと錯覚することで、結局は正義とは存在しないという考えを持つに至ったようです(20~21p)。
 さらに氏は続けます。「正義はある日逆転する。逆転しない正義は献身と愛です。」と。
 これは氏の言葉を借りると、「飢えている人に一切れのパンを差し出すこと」であり、氏の基本的考え方になったようです。
 だから、アンパンマンがパンで出来ており、パンで出来た自分の頭をお腹の減った者に分け与えることは、献身と愛の象徴だといえるのでしょう(21~22p)。
 このように、氏の歴史観は、戦前の従軍当時は、まさに横井小楠コンセンサスが昇華したところの対赤露抑止論そのものであって、自由民主主義の旗手たる日本軍の一員として、国民党・共産党というソ連が全体主義勢力と戦うことに誇りを見出していたに違いありません。
 これは、近衛首相の、「時局に処する国民の覚悟」と題する大演説の中での、抗日が支邦の共産主義化へと転じている中、日本が支邦に正義人道のために介入して、抗日勢力を滅亡させ、支那に正義人道のために介入して、抗日勢力を滅亡させ、支邦に平和をもたらすべきであると述べていることと実に合致します。
http://blog.ohtan.net/archives/52184901.html
 しかし、大半の日本人に見られるように、敗戦により対赤露抑止論が消失し、従軍した日支事変や戦前の日本の正当性に疑念を抱き、日本を軍国主義国であるとさえ見なし、果てには支邦から見たら日本は悪魔のような存在であったとしています。
 しかしそれは、氏は戦前の日本とアメリカの同質性を仮定して語っているに過ぎず、実際には、日本から見たアメリカは日本のみならず、東アジアに災厄をもたらした文字通り悪魔である一方、支邦から見た日本は自国に法の支配をもたらす、あえて比喩を用いるならば天使のような存在であったという事実を見逃しています。
(http://blog.ohtan.net/archives/52032759.html)
 それでもなお、「献身と愛」という表現を用いて、後述しますが、戦前の日本から人間主義は一貫して継承されていることが指摘されています。
 やなせ氏の歴史観では、日本の政策レベルの視点では転換していても、その根底にある日本精神は精確に捉えられていたといって良いのではないでしょうか。
 そもそも、これは「3.善悪の区別の曖昧さ」でも後述しますが、根本にある人間主義の精神を強く持っているからこそ、相手を絶対悪と決めつけ、相手を滅ぼす戦争を忌み嫌っているのです。
 最後に言及しておくと、ここまで読んで分かることがあります。
 それは何かというと、実は、少なくともやなせ氏にとっては、食べられないことはおそらく耐えられ「た」のです。
 さもなければ、「1.飢えの経験とアンパンでできたヒーローの発想」で、氏が食べられないことは何にもまして耐えられないと言っているにもかかわらず、その飢えの状態が継続する日支事変を終戦まで戦い抜くことができたことの説明がつきません。
 戦後の歴史観の大転換を経て、やなせ氏はこのことに意識的に言及しなかったのでしょう。
 まさに、支邦を助ける使命感が、飢えに打ち勝ったのです。
(続く)
<太田>
 読者の皆さん、ねこ魔人サン投稿へのコメントをどーぞ。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 私の予想(コラム#6564)は当たらなかったな。
 ひょっとして、ボクも亡くなる3日前までコラムを書き続けられるのかも・・。↓
 「島倉千代子さん:新曲「からたちの小径」 12月に発売・・・」
http://mainichi.jp/select/news/20131122k0000e040157000c.html
 女性は子育てだけじゃなく、親の介護のためにも仕事を犠牲にする傾向が男性より強いことが分かった。
 (何度も言ってるように、女性の方が男性より人間主義的なんだよ。(太田))↓
 ・・・According to a new study, women aren’t just more likely to make career sacrifices to spend time caring for their kids. They’re more likely to drop out to care for their parents, too.・・・
 Seven percent of the women in the sample “assisted with parents’ personal needs,” compared to 3.6 percent of men; 20 percent of women “helped parents with chores, errands, and transportation,” compared to 16 percent of men. And female caregivers were much more likely to exit the workforce to execute these duties. ・・・
http://www.slate.com/blogs/xx_factor/2013/11/21/elder_caregiving_women_are_more_likely_to_drop_out_of_work_to_care_for_aging.html
 米国とEUが中共を仲間はずれにしたところの、経済統合の試みを全球的に行っていることを指摘した記事だ。↓
 ・・・ Successful conclusion of the Trans-Pacific Partnership talks would cement US economic integration with much of east Asia. A parallel Transatlantic Trade and Investment deal would reinject cohesion into Washington’s relationship with Europe. Alongside these regional pacts, the EU is negotiating bilateral deals with India and Japan. To complete the patchwork, the US and EU are leading talks between more than 20 advanced and rising economies to liberalise trade in services.
 <これは、多国間主義(multilateralism)から多くも少なくもない国間主義(midi-lateralism)への転換と言えなくもない。↓>
 Pull the strands together and the message is that the west has given up on the grand multilateralism that defined the postwar era. More striking still, each of the proposed new agreements would leave China on the sidelines. The exclusion of the world’s second-biggest economy is more than a coincidence.・・・
 The attraction of the new “midi-lateralism” is that it would strengthen the west’s grip on global standards and norm-setting.・・・
 <中共は多国間主義へのただ乗りをしていると目されているってさ。↓>
 China is seen as free-rider on the multilateral system. The US and Europe want evidence Beijing is ready to open up its economy.・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/69fc0970-51f8-11e3-adfa-00144feabdc0.html?siteedition=intl
⇒この動きを、NATOの太平洋への拡張によって、軍事安全保障とリンクさせる必要があり、その要となるのが「独立」日本だっちゅうのがボクの考えだ。(太田)
 以上のような流れの中で、ウクライナがEU志向からロシア志向へと舵を切り始めた。
 (しかし、そもそも、ロシアは、中共とつるんで世界の爪弾きになっていいのかね。(太田))↓
 Kiev has put a stop to negotiations on signing a landmark trade pact with the EU. The announcement came hours after the country’s parliament rejected the release of imprisoned Ukrainian opposition leader Yulia Tymoshenko so she can receive medical treatment abroad. ・・・
http://www.spiegel.de/international/europe/ukrainian-parliament-votes-against-bills-to-release-tymoshenko-a-934887.html
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太田述正コラム#6589(2013.11.22)
<アングロサクソン・欧州文明対置論(その4)>
→非公開