太田述正コラム#7514(2015.2.28)
<映画評論45:ベイマックス(その3)>(2015.6.15公開)
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<参考:日本のロボット産業は本当に大丈夫なのか?>
 湯川鶴章(1958年~。カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒。時事通信社等を経てネットメディア編集長)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B9%AF%E5%B7%9D%E9%B6%B4%E7%AB%A0
の最近の一連のネット上の発信に拠って、安川電機社長(「社長」)の楽観論の検証をしておこう。
 「・・・人間の赤ちゃんは2歳ぐらいで言葉を覚えるようになる。それまでの2年間で、物の概念をつかもうとしているのだという。家の中にはどうやら父親と母親という2人の大人が存在するらしい、という概念を2年間かけて学習する。そのあとに、「パパだよ」「ママだよ」と概念には記号があることを教わるので、初めて「パパ」「ママ」と話せるようになるのだという。・・・
 この2歳までの脳の学習の仕組みをなかなかコンピューターで再現できなかった<のだ>が、それがDeep Learning<(注4)>で可能になった・・・
 (注4)[深層学習]。「コンピューターに学び方を教えた<結果、>・・・。コンピューターが<漢>語を学び、写真に写っている物を認識し、医療診断をする。(あるディープ・ラーニング・プログラムは何時間ものYouTubeビデオを見た後、「猫」の概念を自ら学び取<った。>・・・」
 [・・・従来職人技だった特徴量抽出を<コンピューターが>教師なし学習でやってしまうという点で画期的・・・]
https://www.ted.com/talks/jeremy_howard_the_wonderful_and_terrifying_implications_of_computers_that_can_learn?language=ja
http://matome.naver.jp/odai/2140635573608360401 ([]内)
 <この>Deep Learningで超えた山が、人工知能研究で一番大きな山。・・・
 自分自身で学習できるようになった人工知能は、今後ロボットに搭載され、ロボットという身体を通じてさらに多くを学んでいくことだろう。・・・
 人工知能やロボットが普及することで・・・今後、物理的な仕事はどんどんなくなる・・・と断言<できる。>・・・」
http://blogos.com/article/101137/
 「・・・<その結果、>これまでは技術革新が単純肉体労働者の仕事を奪ってきたが、これからの技術革新は、これまで安泰と考えられていた知的労働者の仕事を奪おうとしている。・・・
 今後20年間ぐらいは人工知能の改良のために医師の力を借りなければならないだろうが、最終的には平均的な能力の医師は不要。医療の90%から99%は医師の診断よりも、優れていて安価な方法で対応できるようになる・・・。・・・
 弁護士の数は今の10分の1になるのではないかという意見もある。・・・
 過渡期には、仕事が消滅して所得がなくなる人と、人工知能を駆使して所得を増やし続ける人との格差が拡大していくことになるだろう。最終地点はユートピアだとしても、過渡期はディストピアになる可能性が高い。・・・
 所得を獲得できる仕事を少ししかしていない、あるいは所得になるような仕事をまったくしていないという人が、今後は急増する。・・・
 日本でも<欧州>でも勤労道徳が強調される・・・価値観を徐々に捨て去るときが今、来ている・・・」
http://blogos.com/article/106673/
(2月28日アクセス)
 「社長」の楽観論は、「単純肉体労働」をロボットがどんどん代替していく現在の時代には当てはまっても、そのすぐ先の上記のような時代にもあてはまるのだろうか、ということだ。
 「・・・人工知能のコア技術に関しては欧米に先行され始めた感があるが、活用、普及を急げば日本の経済成長につながる可能性がある・・・」
http://blogos.com/article/106214/
 「・・・すべての事業領域に人工知能が活用されようとしている。ただ明らかに日本企業は乗り遅れている。・・・日本にはコア技術に投資する大手企業は存在しない。・・・
 <しかし、>日本のIT系の学会の規模はどこも、米国の同系統の学会の約10分の1の会員数なのだが、人工知能の領域だけは海外の学会と会員数はそれほど遜色がない・・・。「海外の人工知能の学会であるAAAIの会員数が5000人規模なのに対し、日本の人工知能学会の会員は3000人。しかも年次会議への出席者はAAAIが500人程度なのに、日本の人工知能学会は約1000人も集まる・・・
 そういう人を結集して、技術開発、研究開発をちゃんとやっていけば逆転も不可能ではない。・・・」
http://blogos.com/article/105430/
 「・・・<しかも、>基礎研究で後塵を拝していても、実際のビジネスで影響力をつかめればいいという意見がある。・・・」
http://blogos.com/article/101617/
 「・・・<たとえば、最近、>モノのインターネット(IoT)に対する注目が集まり始めた。これから何兆個ものデバイスがネットにつながる。それらのデバイスが生成するデータは爆発的に増加する。これまでのコンピューティングの仕組みでは対応し切れなくなる。そのときこそ人工知能が必要になる。
 IoTというと、あらゆる機器に通信機能を持たせて情報をクラウド上のサーバーに吸い上げるというイメージが主流。末端の機器は、センシングデバイスでしかない。センシングで得た情報を解析し判断を下すのは、人間だ。
 <これに対し、日本のベンチャー企業の>プリファード・インフラストラクチャー(PFI)・・・の考えるIoTでは、末端の機器はセンシングデバイスでもありアクチュエータ(駆動装置)でもある。末端の機器から得た情報をネットワークが解析、人工知能が判断し、末端の機器がアクションを起こす。人は介在しない。・・・」
http://blogos.com/article/105055/
 要するに、日本が軍事研究を本格化させるとともに、優秀な人材を世界から集めるしくみを作ることができれば、現在の、実用ロボット/A.I.における優位を維持できる可能性はある、ということだ。
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(続く)