太田述正コラム#0577(2004.12.28)
<プーチン大統領の罪状(その3)>

4 自国民を虐待するロシア政府

囚人の数の全人口に占める比率が、れっきとした国の中では米国に次いで世界で二番目に高いロシアですが、衆目認めるところ、囚人が世界で一番ひどい目にあっているのがロシアです。
ロシアの約75万人の囚人のうち、何と三分の二が病気にかかっているのです。
約12万人が精神疾患にかかっており、9万人近くが薬物依存症であり、5万人以上が結核にかかっており、3万5,000人がエイズに感染しています。アルコール中毒も蔓延しています。
刑務所では狭いスペースに囚人を詰め込んでいるため、病気や悪習慣がどんどん広がる一方で、医療やケアの体制が極めて貧弱だからです。
(以上、http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/3713858.stm(10月5日アクセス)による。)
また、ロシアでは旧日本軍も真っ青なるほどいじめ(hazing)が横行しており、毎年ロシアの新兵数千人が傷つき、数十人が死亡しています。
2004年の前半だけで、いじめで亡くなった兵士は25名、自殺した兵士109名中いじめが理由で自殺した者は60名にのぼります。
新兵は、登録の際に上官や同僚から金品を盗まれ、最初のショックを受けます。
配属先の部隊では、眠りを妨げられたり、食事を与えられなかったり、夜通し何の意味もない作業を命ぜられたりします。
反抗すれば、眠りを禁じられたり、無理矢理体操をやらされたり、殴られたりします。
いじめを訴え出たりすれば、更にひどいいじめが待っています。
士官はいじめを見て見ぬふりをしているといいます。
このため、青年達は徴兵逃れに死にものぐるいになっていますし、ロシア軍の士気も落ちるところまで落ちています。
安全保障の重要性をことあるごとに強調しているプーチン大統領が、これを放置していることへの批判が国際的に高まっています。
(以上、http://www.nytimes.com/2004/10/21/international/europe/21russia.html?oref=login&pagewanted=print&position=(10月22日アクセス)による。)
 
5 内外で評判が180度違うプーチン

 これだけの「悪行」をプーチン大統領が重ねてきているというのに、彼がコントロールしている大テレビ局等がプーチン宣伝機関に堕してしまったこともあって、プーチンの反民主主義的にして強権的な統治スタイル(注1)に大方のロシア国民は酔いしれ、プーチンへの個人崇拝熱が高まっています。

 (注1)プーチンは自伝の中で、選挙の洗礼を受ける必要がなかった帝政ロシアの皇帝達を羨み、選挙に際しては「不誠実にも実行できないことを公約しなければならない。つまり、その候補者は実行できない公約であることが分からない馬鹿か確信犯的嘘つきかのどちらかだということになる」、と正直すぎるくらい正直に語っている。

 プーチンの誕生日には、プーチンに対し、生徒達が詩やお祝いの手紙を捧げたり、ロシア各地から名産品が献上されたり、青年唱歌隊が賛美歌を捧げたりすることが広汎に見られ、プーチン御用達の柔道着やスキーウエアが人気を集めています。
(以上、http://books.guardian.co.uk/reviews/politicsphilosophyandsociety/0,6121,1168774,00.html(4月10日アクセス)による。)

 しかし諸外国においては、欧米を中心に、プーチンの評判は地に落ちています。
 ユーコス問題では、米国のヒューストンの裁判所がユーコスの公売に待ったをかけ、その結果ガスプロムは直接ユーコスを落札できなくなりました(注2)し、チェチェン分離独立派の有力者の政治亡命を英米は受け入れています。

 (注2)ドイツ銀行を中心とする国際コンソーシアムは、米国の裁判所の決定を尊重し、ガスプロムにユーコス落札経費の融資をすることを取りやめた。

 また、ウクライナの大統領選挙への介入ではプーチンは世界の観衆の面前で大恥をかきました(コラム#553)。
(以上、http://www.nytimes.com/2004/12/19/international/europe/19putin.html?oref=login&pagewanted=print&position=(12月20日アクセス)等、による。)

 ロシアは、プーチンの下で、フセイン時代のイラクのようなパーリア・ステート(鼻つまみ者国家)への道を確実に歩んでいるのです。

(完)

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