太田述正コラム#9662005.11.24

<私の移民受入論(その2)>

 (コラム#965は、長かっただけに、(一部の読者に送ったものの中に)禁則文字が使われていたり、誤記があったりして失礼しました。HPとブログを訂正してあります。)

5 具体論

 (1)難民受け入れの拡大

難民と認定されると、永住許可要件が一部緩和され、退去強制事由に該当する場合でも在留特別許可を受けることが可能となり、社会保障の面でも日本国民と同じ取り扱いがされるようになり、日本永住ひいては日本への帰化への道が開かれます。

ところが、日本で難民認定制度ができた1982年から2001年までに実際に認定された数は、わずか291名にとどまっています。2000年の認定数を国際比較してみると、英国は1万185名、ドイツは1万1,446名に対し、日本はわずかに22名に過ぎず、事実上ゼロであると言ってもいいでしょう。

 (以上、http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan13-07.html20051124日アクセス)による。)

日本は島国であり、近傍には北朝鮮くらいしか難民輩出国がないので、日本にたどりついて難民申請をする人が少ない、ということもあるのでしょうが、これでは到底経済大国として、国際的責任を果たしているとは言えません。

北朝鮮からのいわゆる脱北者については、スパイの嫌疑がある者等を除いて、日本渡航を希望する者は全員難民認定をして受け入れる、或いは(中東・アフリカを除く)外国の難民収容所に出向いて難民申請を受理する等、難民受け入れの飛躍的増加を図るべきでしょう(注1)。

(注11975年以降、南ベトナム等の共産主義化に伴い、いわゆるインドシナ難民が発生し、日本も1万人以上を受け入れたが、特段問題は生じていない。

 

また、この関連で、政治亡命を基本的に認めないこととしている、非常識な政府方針(http://www.kt.rim.or.jp/~pinktri/afghan/massmedia6.html1124日アクセス)も当然改めるべきでしょう。

 (2)外国人労働者受け入れの拡大

日本は昨年の段階で、投資・経営や教育、興行など16の専門的・技術的な在留資格に限り、外国人労働者を受け入れています(http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20041006/mng_____sei_____002.shtml200410月6日アクセス)が、単純労働者の受け入れは行わない、との方針は堅持しつつ、専門的・技術的な在留資格の拡大を図ることで、外国労働者の受入数を大幅に増やしていくべきでしょう。 

これは、法の網をかいくぐって事実上増えてきている、単純労働者(その中には売春婦も含まれる)の流入を抑制することにもつながります。

 このような観点から、フィリピン側からの強い要請に受けて(典拠省略)、昨年1129日に締結された日本・フィリピン経済連携協定で、「一定の要件を満たすフィリピン人の看護師・介護福祉士候補者の入国を認め、日本語等の研修修了後、日本の国家資格を取得するための準備活動の一環として就労することを認める(滞在期間の上限、看護師3年、介護福祉士4年)。国家試験を受験後、国家資格取得者は看護師・介護福祉士として引き続き就労が認められる。介護福祉士については、日本語の研修修了後、課程を修了した者に介護福祉士の国家資格が付与されることとなる日本国内の養成施設へ入学する枠組も設ける。」ことが取り決められた(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/philippines/hapyou_0411.html1124日アクセス)ことは画期的です。

 次はこのスキームを保育士(旧保母・保父)へ拡大することが望ましいと思います。その際、外国人保育士に、保育施設で働くことを認めるだけでなく、一般家庭向けのベビーシッターとして働くことも認めるわけです。

 その保育士が英語(や中国語)を話せれば、需要は極めて大きいのではないでしょうか。

 このような外国人労働者のうち、日本に定住したり、日本人と結婚したりして、日本に帰化する人が出るのは、当然受忍することになります。

(続く)