太田述正コラム#2703(2008.8.1)
<不貞について>(2008.9.9公開)
1 始めに
 5月に、分量があることもあり、URLだけ記録しておいた、米ニューヨーク・マガジン記事
http://nymag.com/relationships/sex/47055/
を本日読みました。
これは、有り体に申し上げれば、不貞に関する記事です。
 結論から申し上げれば、こういった類の話題については、科学的研究が余り行われていないためか、散漫な印象の記事でした。
 しかし、米国に係るこの問題に関する興味深い記述がいくつかなかったわけではないので、ご紹介しておきましょう。
2 興味深い記述
 遺伝子データベースの最近の解析によれば、父親と言うことになっている人物と違う男性から生まれた人が10%にのぼることが明らかになった。
 女性が不貞を働き、しかも伴侶たる男性に気取られなかった事例だけでこんなにある、ということだ。
 しかし、結婚している男性の不貞率は約25%、結婚している女性の不貞率は約15%といったところであり、男女差は歴然たるものがある。
 だからこそ、既婚の人々がセックスの遊び相手を求めるmeet2cheatというウェブサイトでは、三ヶ月会費として、男性からは59米ドル、女性からは9米ドル徴収している。
 そして、トルストイの大作、『アンナ・カレーニナ』を読めば分かるように、不貞は女性をより美しくする(太田。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~michimar/book/113.html
(8月1日アクセス))かもしれないが、男性より高くつく。すなわち、女性の不貞が露見すると、結婚は終焉を迎えがちだが、男性の不貞が露見しても、結婚生活は続く場合が大部分だ。
 これは、マスターベーションの回数を見ても分かるように、男性の方が女性に比べて性的欲求が高いことから、不貞が大目に見られる度合いが大きいというのが一つの理由だ。
 より大きな理由は、不貞の社会的経済的インパクトが男性の場合には甘く女性の場合には厳しいからだ。
 ところで、どうして不貞はいけないことなのだろうか。
 性的排他性(sexual exclusivity)を求める人が多いからだ。
 このような人々が恋に落ちると嫉妬心が起きる。特定の女性を愛するようになると、彼女が別の男性と関係を持つと落ち込んでしまう。寝込んでしまうことすらある。逆に恋に落ちていない状況下では、あらゆることが許される。
 ちなみに、貞節(faithfulness)とは性的排他性の、宗教的含意のある別呼称だ。
 性的排他性を求める人が多いからこそ、結婚制度がある。
 しかし昨今、性的欲求の強い人々の中から、嫉妬心や所有者意識を持たず、性的排他性を求めない人々が出てきている。
 こういう人々にとっては、結婚制度は意味を持たない。
 なお、結婚年齢はどんどん上がってきており、結婚前の性行為を女性は8.2年、男性は10.7年経験するに至っていること等から、性行為と結婚が次第により切り離されつつあることにも注目すべきだろう。
 欧州諸国では、米国よりもこういった点で先に行っている。
 例えばドイツでは、自由恋愛の容認の下で、夫と妻は別々にバカンスをとるようになっている。
3 終わりに
 日本では、米国同様、いまだに性的排他性を求める人が多そうですが、私としては、少子化を婚外子を増やすことによって打開するためにも、日本人が徐々に意識を変えることが望ましいと考えていますが、なかなかむつかしいでしょうね。