太田述正コラム#14004(2024.1.31)
<映画評論116:レッド・スパロー>(2024.4.27公開)

1 始めに

 昨日、Amazon Primeで鑑賞したところの、「『レッド・スパロー』(Red Sparrow)は、2018年に<米>国で製作されたスパイ映画<は、>監督のフランシス・ローレンスと主演のジェニファー・ローレンスは『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』以来のタッグ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%AD%E3%83%BC α
https://en.wikipedia.org/wiki/Red_Sparrow β
だそうです。
 主演のジェニファー・ローレンスと(もちろん全く別人である)ジェニファー・ロペスの区別すらつかないくらい、依然として映画に無知な私ですが、ローレンスの闊達な演技とも相俟って、この作品のストーリーの面白さと迫真性に舌を巻きました。
 それが、あたかも、その4年後に、ロシアがウクライナ戦争をしかけることを予見していたかのような、ロシアやその指導者達の悍ましさを訴えたものだったからです。

2 本題

 この映画の原作は、Jason Matthews(1951~2021年)が、2014年のロシアのクリミア半島等侵攻直前の2013年に出版した同名のスパイ小説
https://en.wikipedia.org/wiki/Red_Sparrow_(novel)
であり、彼も彼の奥さんもCIAで働いていたことがあって、彼は、世界各地で表の顔は米外交官として、裏の顔は現地のスパイ網の構築と管理を行ってきた人物だった
https://en.wikipedia.org/wiki/Jason_Matthews_(novelist)
というので、ある程度納得した一方で、その時点で、この小説を上梓していたことに、私は改めて驚かされました。
 (ちなみに、彼は、 received a bachelor’s degree from Washington and Lee University in Virginia, where he studied Spanish and French. <And then> earn<ed> a master’s in journalism from the University of Missouri, Columbia
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjZzL757ISEAxVEklYBHWGfBJoQFnoECAwQAw&url=https%3A%2F%2Fwww.nytimes.com%2F2021%2F05%2F02%2Fbooks%2Fjason-matthews-dead.html%23%3A~%3Atext%3DMatthews%2520received%2520a%2520bachelor%27s%2520degree%2Cfor%2520a%2520job%2520in%2520Washington.&usg=AOvVaw0AkqMsbaDUI0sbZ1SBCuqQ&opi=89978449
です。)
 マシューズは、2013年の時点で、2014年のクリミア半島等侵攻と2022年のウクライナ侵攻の両方・・といっても事実上一つの戦争ですが・・を予見していたかのようである、と、言えそうだからです。
 (原作には、実に、プーチンその人が登場するようです!(β))
 とまれ、この映画の封切り後の映画評は、余り芳しくなかったようで、私が敬遠するNYタイムスの評だけが、’found the film to be “preposterously entertaining” and credited its success to Lawrence’s performance, writing that “like all great stars, [Lawrence] can slip into a role as if sliding into another skin, unburdened by hesitation or self-doubt.’ と、この映画を絶賛した(β)のは、恐らくは、同紙が当時、既にプーチンのロシアの危険性を直視していたからなのでしょうが、悔しいけれど、さすが同紙です。
 それに比し、私の敬愛するガーディアンの評が’found the film to be sexist, writing that “it busies itself with the grim surface pleasures of ogling its central character as she is degraded in every way possible.’ だった(β)というのも、私としては残念でなりません。
 なお、セックス・スパイは昔からいたけれど、戦後の冷戦時代に、ソ連が、依然としてセックス・スパイを組織的に使っていて、釣るつもりがテキに本当に恋をして釣られてしまった女性スパイをその「赴任」地で公然と葬り去る、なんてことまでやらかしていたことは事実であり、
https://www.telegraph.co.uk/films/0/russias-queens-sexpionage-real-red-sparrows/
諜報機関員としてそういうことに携わっていたであろうプーチンが牛耳るポスト冷戦期の現在のロシアもまた同じようなことを続けているのは間違いないでしょう。
 反プーチンの人物を国内外で暗殺し続けてきているプーチンのロシアなんですからね。